2020オリンピック・パラリンピックを考える都民の会主催の『第5 回提言討論会 戦争とスポーツを考える』に参加して 秋本 信孝 9 月 28 日、東京大会組織委員会は 2020 オリンピックの追加種目を①野球・ソフトボー ル②空手③スケートボード④スポーツクライミング⑤サーフィンと発表した。来年の 8 月 のIOC総会で正式決定になる見込み。 さて本題に戻そう。第 5 回提言討論会は、去る 9 月 7 日大塚・ラパスホールで行われた。 今回の提言者は青沼裕之(武蔵野美術大学教授・スポーツ科学研究所事務局長)と宇都宮 健児(弁護士・元都知事候補)のお二人。 青沼氏からは 1940(昭和 15)年東京オリンピック の招致と返上の経過は「建国 2600 年を記念する事 業の一環」であり、「挙国一致の事業」とすること であり、1938 年の返上は軍事的理由によるものであ ったことを当時の政治情勢や資料を通して語った。 当時オリンピック開催を所管していたのは厚生省で あったが、1938 年 7 月「国を挙げて戦時体制に備えているときにオリンピックだけをや ることは不可能だ」として中止を発表。国民体力の国家管理こそが厚生省設置の重要な目 的であった。体力の向上とは、身体のみでなく心身の鍛練を意味するものであった。厚生 省体力局は 1939 年より体力章検定を実施。種目は 100 m、200 m、走幅跳、手榴弾投、 土嚢運搬、懸垂であった。日中戦争の激化、太平洋戦争勃発で国家主義の高揚と軍事的利 用が進み、武道の軍事的改変、体力科学・医学の軍事的利用、文部省による学生野球の統 制→消滅、プロ野球の消滅へと繋がっていった。青沼氏の調査によれば、「戦争は野球振 興にとって障害であり、無意味だ」と考えた人がいたかどうかは不明であるとのことであ った。平和で自由な社会においてしかスポーツは存続できないし、スポーツは人間的自由 とともに花開くのであると結んだ。 宇都宮氏は、オリンピック憲章の「人間の尊厳と人権の尊重、平和な世界の確立」のた めには①東日本大震災の被災者や原発事故の被害者にも歓迎されるオリンピックにしなけ ればならない②世界の国々とりわけアジア諸国との平和的・友好的な関係づくりが重視さ れなければならないとし、「戦争法案」の問題点は①立憲主義に違反する法案②米国に追 従する法案③自衛隊統合幕僚監部の「暴走」が存在する④「積極的平和主義」の欺瞞―抑 止力の強化は軍拡競争を招き、緊張を高める。 戦争法案と憲法改悪を許さないために何をなすべきかでは、①運動をさらに広げていく ②憲法改悪を許さないためには来年の参院選挙が極めて大事である③憲法改悪の動きはピ ンチではあるが、憲法の立憲主義の理念や基本的人権の尊重・国民主権・恒久平和主義の 原理を日本社会に定着させるチャンスでもある、と主張した。 フロア討論の中で、「今国会で何が起きているのか」「横田基地にオスプレイなんてと んでもない」「新国立など五輪準備についての動き」などの報告があり、最後に都民の会 事務局長の萩原純一氏より「戦争法案に反対する声明」の提案 があり、採択され閉幕と なった。 (2015/09/29 記)
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