ネパールにおける政策過程に関する一考察 ギミル・ハリ・パラサド 1.研究の概要 本研究は、ネパールにおける民主主義を前提とした政策の作り方を追究する。ネパール において政策づくりや実施にかかる政府機関として 1956 年に成立されたネパール国家計 画委員会に着目し、5カ年国家計画の内容やその決定プロセスを分析する。またネパール の社会・経済・政治の現状を分析しながら、ネパールにおける政治情勢と政策の実施過程 との関係性を射程に入れ、ネパール社会の実態に合うより良い政策の作り方を提案する。 なお、ネパールでは現在、13 年次国家計画政策を実行中であり、これの計画は 2015 年ま でに国連のミレニアム開発目標を達成することと、2022 年までに後発途上国から発展途上 国になること等が目標とされている。 2.先行研究 ネパールの政治情勢と政策実施過程について Madhu Sudan らはネパールでは、弱いガバ ナンス、政治的不安定、政治家の非民主的な動きによって政策実現を出来てない(Madhu Sudan 2011: 4)と述べている。また、谷川昌幸は、ネパール共産党毛沢東主義派による 10 年間紛争、紛争による影響に加えて、カーストや民族の対立、ドナーからの援助慣れなど の長年にわたる社会問題が原因となって、開発をとりまく環境は悪化しつつあると述べて いる。さらに、汚職、治安の悪化、政党による介入と脅迫、頻繁なゼネストなどにより、 多くの開発事業は計画通り進めることが出来ず、成果は上がっていないと分析している (谷 川昌幸 2010:22) 。博士論文は、以上の指摘も念頭に置きながら、ネパールにおける政策 の作り方について考察する予定である。 3.これまでの研究と今後の研究の方向性 私は修士論文では、ネパールの政治過程を歴史的に叙述し、選挙分析を行い、今後の政 治の方向について多面的に考察した。今年度前期課程では、ネパールにおけるこれまで上 手く行かなかった政策の実施過程に関する問題について分析してきた。今後は、三つの側 面(経済政策、政治政策、社会政策)から現状を分析し、ネパールにおける政策の作り方 について考察する。 4.参考文献 Madhusudan Gautam. And Bidhya Pokhrel (2011) Foreign Aid And Public Policy Process In Nepal、 South Asia Institute Of Advanced Studies, SIAS-ASD Collaborative Fellowship Program Discussion Paper pp.2~23 谷川昌幸(2010 年)「連邦制とネパールの国家再構築」『長崎大学教育学部社会科学論叢』 72 巻、pp.15〜30. 8
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