在宅復帰・在宅生活支援における家族会の意義

第 25 回全国介護老人保健施設大会岩手(H26.11.17)
在宅復帰・在宅生活支援における家族会の意義
~アルボース家族会からの考察とその有効性~
吉田拓也
1)
、瀬間良礎
1)
、大塚彰太
1)
、美原恵里
2)
1) 脳 血 管 研 究 所
介護老人保健施設アルボース
支援相談員
2) 脳 血 管 研 究 所
介護老人保健施設アルボース
施設長
【目的】
平 成 24 年 度 の 介 護 報 酬 改 定 に お い て 在 宅 強 化 型 老 健 施 設 の 施 設 基 準 が 設 け ら れ 、老 健 が
果たすべき機能として在宅復帰・在宅生活支援が明確化された。在宅支援の実現に対し、
介護者となる家族への支援は必要不可欠である。家族支援を目的として、当施設では平成
9 年 か ら 家 族 会 を 開 催 し て い る 、頻 度 は 年 6 回 、参 加 家 族 は 平 均 30 世 帯 、内 容 は 3 部 構 で 、
1 部 は 座 学 に よ り 家 族 へ の 啓 発 、2 部 は 家 族 の 介 護 体 験 談 、 3 部 は 意 見 交 換 会 と な っ て い る 。
家族会を通して、介護者である家族同士が交流をすることにより、同じ境遇を持つ仲間と
なり、安心感や不安の解消に繋がっていると思われる。今回、在宅復帰・在宅生活支援に
対して、家族会の有効性を調査したので報告する。
【方法】
平 成 22 年 度 か ら 平 成 25 年 度( 全 23 回 )の 期 間 、家 族 会 に 参 加 し た 家 族 を 対 象 に 、家 族
会後にアンケート調査を実施した。アンケート内容は、座学、介護体験談、意見交換会の
各セッションの評価、および、家族会で取り上げて欲しい講演内容について、多肢選択・
自由記載方式とし、複数回答可とした。
ま た 、 平 成 22 年 3 月 ~ 平 成 26 年 3 月 の 間 に 当 施 設 を 入 所 し た 利 用 者 の 家 族 を 対 象 に 、
家族会に参加している群(参加群)と参加していない群(不参加群)に分け、在宅復帰率
や、リピート率について検討した。
【結果】
家 族 会 に 参 加 し た 家 族 延 べ 618 人 中 568 人 か ら ア ン ケ ー ト を 回 収 し た( 回 収 率 91.9% )。
座 学 に 対 す る 意 見・感 想 で 最 も 多 か っ た の は 、「介 護 の 知 識・技 術 の 習 得 」226 件( 53.9% )、
次 い で 「介 護 の 振 り 返 り 」106 件 ( 25.3% )、 「感 謝 」38 件 ( 9.0% ) で あ っ た 。 介 護 体 験 談 に
対 し て の 意 見・感 想 で 最 も 多 か っ た の は 「語 り 手 へ の 感 心・共 感 」122 件( 30.0% )で あ り 、
次 い で 「介 護 の 知 識・ 技 術 の 習 得 」103 件( 25.3% )、「介 護 者 と い う 同 じ 境 遇 を 感 じ ら れ た 」
93 件 ( 22.9% ) で あ っ た 。 意 見 交 換 会 に 対 し て の 意 見 ・ 感 想 で 最 も 多 か っ た の は 「仲 間 の
存 在 へ の 気 づ き 」116 件( 34.9% )で あ り 、「介 護 の 知 識・技 術 の 習 得 」110 件( 33.1% )、「介
護 へ の 励 み 」58 件( 17.5% )と 続 い た 。家 族 会 で 取 り 上 げ て 欲 し い 講 演 内 容 は 、「自 宅 で で
き る リ ハ ビ リ 」157 件 ( 12.1% )、 「認 知 症 」144 件 ( 11.1% )、 「オ ム ツ 介 助 」121 件 ( 9.3% )
などであった。
平 成 22 年 3 月 か ら 平 成 26 年 3 月 ま で に 入 所 し た 、 利 用 者 の 実 人 数 は 489 人 で あ っ た 。
こ の う ち 、 家 族 会 参 加 群 の 実 人 数 は 181 人 ( 37.0% )、 在 宅 復 帰 率 は 83.4% 、 リ ピ ー タ ー
率 は 76.2% で あ っ た 。家 族 会 不 参 加 群 の 実 人 数 は 308 人( 63.0% )、在 宅 復 帰 率 は 75.0% 、
リ ピ ー タ ー 率 は 56.5% で あ っ た 。対 象 と し た 家 族 の う ち 新 規 家 族 は 308 人( 63.2% )で あ
り 、 そ の う ち 、 家 族 会 参 加 群 の 実 人 数 は 、 83 人 ( 26.9% ) 、 在 宅 復 帰 率 は 69.9% 、 リ ピ
ー タ ー 率 は 57.8% で あ っ た 。家 族 会 不 参 加 群 の 実 人 数 は 、225 人( 73.1% )、在 宅 復 帰 率 は 、
第 25 回全国介護老人保健施設大会岩手(H26.11.17)
63.6% 、 リ ピ ー タ ー 率 は 41.8% で あ っ た 。
【考察】
ア ン ケ ー ト の 結 果 、 ど の セ ッ シ ョ ン に 対 し て も 「介 護 の 知 識 ・ 技 術 の 習 得 」と い う 回 答 が
多かった。このことは、家族会に参加することにより家族が介護知識を得て、自身の介護
力が向上し、自宅での介護に対する不安の解消に繋がっていると考えられた。介護体験談
では、家族は語り手に対して介護者という同じ境遇を感じ、意見交換会で家族同士の交流
を通じて仲間意識を持つようになっている。介護をする仲間として互いにアドバイスや愚
痴を言える関係をつくり、家族が自ら行っている介護を振り返る機会になっている。今ま
で、自ら行ってきた介護を他者に認めてもらえる安心感や、一家族では気付かなかった介
護 方 法 の 工 夫 も 見 つ け る こ と が で き る 。 ア ン ケ ー ト の 中 に は 、 「自 宅 で で き る リ ハ ビ リ 」に
ついての意見が多く、当施設に対する期待が伺えた。
家族会参加群、不参加群を比較すると、家族会参加群の方が在宅復帰率やリピーター率
が 高 く 、家 族 会 は 在 宅 介 護 を 支 援 す る 上 で 極 め て 有 効 で あ る こ と が 示 唆 さ れ る 。す な わ ち 、
家族会は、家族の在宅復帰への後押しとなり、共通の境遇を持つ仲間づくりの場となる。
また、在宅生活を支援するという老健の役割を果たす上でも重要な機会となっている。
一 方 、家 族 会 へ の 参 加 率 は 37.0% で あ り 、新 規 者 家 族 の 参 加 者 は 26.9% と 少 な い 。在 宅
復帰・在宅生活支援施設としての役割をさらに強化するためには、より多くの利用者家族
に家族会への参加を促すことが、在宅復帰・在宅生活支援に結びつく可能性があると考え
られる。今後は、家族会の早期からの企画や、アナウンス方法が課題である。
【まとめ】
平 成 22 年 6 月 か ら 平 成 26 年 3 月 の 間 に 家 族 会 に 参 加 し た 家 族 に ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施
した。家族会は、家族にとって介護の知識・技術の習得の場となり、介護仲間を得る機会
となる。家族会を開催することは、老健の役割である在宅復帰・在宅生活支援に有用であ
る。
【 100 字 コ メ ン ト 】
当施設では平成 9 年より家族会を開催している。今回家族会に参加した家族にアンケート
調査を実施したところ、家族会は、家族にとって在宅復帰・在宅生活支援の一助となる こ
とが示唆されたため報告する。
【カテゴリー】
第 1 群 : 101 入 所
第 2 群 : 206 デ ー タ の あ る 「 効 果 」 の 提 示
第 3 群 : 在 宅 支 援 と 地 域 連 携 R3385 家 族 と の 関 わ り