児童養護施設による家庭復帰事例への アフターケアの

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原著
児童養護施設による家庭復帰事例への
アフターケアの実態に関する調査研究
石
田
賀奈子 )・伊
藤
嘉余子 )・永
野
咲
)
)神戸学院大学 総合リハビリテーション学部
社会リハビリテーション学科
)大阪府立大学 准教授
)東洋大学大学院 博士後期課程
[要約]児童虐待の増加、家族機能の低下が指摘されている。新しい家族支援の枠組みの中で、児童福
祉施設の機能と役割は、これまでになかった新しい役割へとシフトしつつある。
本研究では、児童養護施設から家庭復帰したケースのアフターケアについて、その現状と課題を明ら
かにすることを目的として、児童養護施設に勤務する家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワー
カー)へのインタビュー調査を実施した。
分析の結果、以下の実態及び必要な改善点が明らかとなった。
(
携があまりとれていない現状、
(
(
)市町村と子どもの出身施設の連
)入所時からの家庭復帰に向けてのアセスメントが重要であること、
)退所前から地域の資源に家族や子どもをつなぐ支援が必要であること。
キーワード:児童養護施設
家族再統合
家庭支援専門相談員
Ⅰ.本研究の背景および目的
多機関連携
はじまり、さらに
児童虐待
(平成
)年には児童福祉
施設最低基準の改正に伴い配置が義務化された専
門職である。家庭支援専門相談員の業務には、虐
A.本研究の背景
児童養護施設は、戦災孤児や浮浪児対策として
待等の家庭環境等の理由により入所している児童
保護者のない児童の
「衣食住を提供するための場」
の早期家庭復帰のための支援のほか、保護者等へ
として児童福祉法に規定され、戦後の歴史を始め
の家庭復帰後における相談援助や退所後の児童に
た児童福祉施設である。しかし、厚生労働省によ
対する継続的な相談も規定されている。
ると、現在では保護者(両親又はひとり親)がい
ながら入所に至る児童は .%に上る。その入所
の背景には児童虐待の増加があり、児童養護施設
に入所する児童のうち、被虐待経験を持つ児童が
.%を占める現状にある[
]
。
また、児童福祉法においても児童養護施設を退
所した者のアフターケアについては、
(平成
)年の改正によって児童養護施設の業務として
位置づけられている。
しかし、限られた人員配置の中、入所児童やそ
児童養護施設の家庭支援専門相談員(ファミ
の家族の抱える複雑な課題への対応に追われる現
リーソーシャルワーカー)は、このような状況を
状においては、児童養護施設がその役割を単独で
受け、
担うのは難しい。伊藤(
(平成 )年に乳児院を起点に配置が
)によると、これま