化学療法学

化 学 療 法 学
Chemotherapeutics(2単位)
薬 学 科3年次前期
必修
薬科学科3年次前期
選択
【担当教員】
准教授 高屋 明子
教授
山口 直人
非常勤講師
亀井 克彦
【授業概要及び目標】
概要:感染症や悪性腫瘍に対する化学療法剤による直接療法は、現代医療を支える重要な治療法であ
る。前半では既習の「微生物学」の知識を基にして、感染症の化学療法の基本理念である選択毒性の
概念から出発し、化学療法剤の作用機作、適応範囲、副作用及び薬剤耐性菌の耐性機構について講義
する。後半ではガンの化学療法について講述する。
目標:化学療法剤を特徴ごとに分類し、その代表的な化学療法剤を列挙できる。各化学療法剤の作用
機序、副作用、耐性機構等を説明できる。
【授業計画及び授業内容】
項
目
<講義方法>
授
業
内
容
三年次前期
回 月日
担当者
1 4.14
高 屋
2 4.21
〃
抗菌薬(1)細胞壁合成 β-ラクタム剤は優れた選択毒性を有することから、最も
阻害剤
多く改良されてきた抗菌薬である。β-ラクタム剤の分類
<講義>
と抗菌範囲、作用機作、抗菌決定因子、さらに耐性菌の
耐性メカニズムについて述べる。又β-ラクタム剤以外の
各種細胞壁合成阻害剤について、それらの作用機作、副
作用、耐性菌による耐性のメカニズムについて講義する。
3 4.28
〃
抗菌薬(2)タンパク合 化学構造に基づくタンパク合成阻害剤の分類を行った
成阻害剤
後、各薬剤の抗菌範囲と抗菌力、細菌タンパク合成経路
<講義>
における作用点と作用機作について述べる。又、種々の
耐性機構(薬剤の修飾・不活性化・排出、リボソームの
変化)について、さらに副作用について講義する。
4 5.12
〃
抗菌薬(3)核酸合成阻
害剤、生物学的製剤
<講義>
5 5.19
〃
抗 菌 薬 (4) 代 謝 拮 抗 代謝拮抗剤は、正常の代謝物質と競い合って代謝障害を
剤・抗結核剤
引き起こす物質である。本講義では葉酸拮抗阻害剤と補
<講義>
酵素アナログの作用について述べる。又、結核の化学療
法の特徴と近年急増している多剤耐性結核菌の問題につ
いて概説する。
化学療法総論
<講義>
感染症の化学療法について歴史を概説し、基本理念につ
いて講義する。又、化学療法剤の抗菌域、抗菌力、相互
作用などの化学療法の実際、さらに薬剤耐性菌の出現、
菌交代現象、副作用など、化学療法の限界について概説
する。
DNA および RNA 合成阻害剤の化学構造と分類、作用機作・
耐性機構・副作用について講義する。特に近年臨床で多
く使用される DNA 阻害剤のニューキノロン薬については、
開発・改良の歴史を概説する。さらにワクチン、トキソ
イド、抗体医薬等、生物学的製剤について講義する。
88
6 5.26
7
6. 2
高 屋
薬 剤 耐 性 の 疫 学 と 遺 薬剤耐性菌特に多剤耐性菌の出現と蔓延の現況を概説す
伝生化学
る。さらに耐性の機構について遺伝生化学的観点から講
<講義>
義する。
〃
薬 剤 耐 性 の 分 子 生 物 薬剤耐性菌の出現と蔓延の原因となるプラスミド・トラ
学
ンスポゾン・インテグロンを取り上げ、遺伝学・分子生
<講義>
物学の面から講義する。又、耐性菌の増加防止対策につ
いて述べる。
亀 井
真菌学
<講義>
1)真菌とは何か、2)どのような真菌がヒトに感染するの
か、3)感染はどのように起こるのか(生体防御機構と病
原因子)、などについて概説する。
9 6.16
〃
抗真菌薬
<講義>
4)真菌感染にはどう対処するのか(診断法・治療法)
、5)
代表的な真菌症にはどのようなものがあるのか、6)感染
症以外の真菌に由来する疾患にはどのようなものがある
か、などについて紹介する。
10 6.23
高 屋
小括・試験
<講義・演習>
感染症治療薬(1~9回)について、まとめ及び質疑応
答を含めた知識の確認を行う。
11 6.30
山 口
がんの化学療法 (1)
DNA 反応性薬剤
<講義>
DNA 複製と細胞周期チェックポイントの分子機構を概観
して、シクロホスファマイドなどのアルキル化剤、メト
トレキセート・メルカプトプリン・5-FU・Ara-C などの代
謝拮抗剤やシスプラチンなどの白金製剤の作用機構と副
作用を講義する。また、薬剤耐性の出現の分子機構につ
いても述べる。
12 7. 7
〃
がんの化学療法(2)
DNA 反応性薬剤
<講義>
DNA 超らせん構造や DNA 複製/DNA 鎖切断と修復および細
胞周期チェックポイントの分子機構を概観して、エトポ
シド・イリノテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、ア
ドリアマイシン・マイトマイシンC・ブレオマイシンな
どの抗生物質抗癌剤作用機構と副作用を講義する。
13 7.14
〃
がんの化学療法 (3)
細胞骨格反応性薬剤
<講義>
細胞分裂における紡錘糸の動態と細胞周期チェックポイ
ントの分子機構を概観して、ビンクリスチン・タキソー
ルなどのアルカロイド系薬剤の作用機構と副作用を講義
する。
14 7.21
〃
がんの化学療法 (4)
分子標的薬剤
<講義>
細胞増殖のシグナル伝達を概観し、ハーセプチン・グリ
ベック・イレッサ・ベルケイド・ゾリンザなどの分子標
的薬の作用機構と副作用を講義する。また、抗体製剤と
低分子阻害剤との違いについても述べる。
15 7.28
〃
総括・試験
<講義・演習>
がんの化学療法(11~14 回)についてのまとめ及び質疑
応答を含めた知識の確認を行う。
【授業外学習】各授業後に復習し、授業内容を各自で整理し直すこと。また、適宜レポート提出を課
す場合がある。
【教科書・参考書】教科書:「図解 微生物学・感染症・化学療法」藤井暢広、山本友子編(南山堂)
参考書:「薬科微生物学」加藤文男ほか著(丸善) また、プリントなどを適宜配
付する。
【評価方式・基準】原則として授業時間の3分の2以上出席が必要。授業態度(20%)、小括・試験お
よび総括・試験(70%)、課題(10%)で総合的に評価する。
履修開始時に配布する評価基準に基づき各評価を実施する。
89
三年次前期
8 6. 9