第8章 文書情報マネジメントに必要な応用知識

第8章
文書情報マネジメントに必要な応用知識
【第 1 部:文書を規定する法令】
1.文書情報マネジメントで取り扱う各種文書の法的
位置付け
現在 JIIMA が対象とする文書関連のシステムは、
「電子文書情報管理シス
テム」
、
「電子帳票システム」、「COM システム 」、
「マイクロフィルムシステム」
の4つのシステムとなっている。この4つのシステムで記録した情報は、
「マ
イクロフィルムシステム」ではマイクロフィルム文書、「COM システム 」 で
は COM 文書、
「電子帳票システム」では電子文書、
「電子文書管理システム」
では電子情報及び電子化文書として保管・活用することになる。ここでは、
上記の各タイプの文書と、紙に情報を記録した紙文書(書面)の現時点での
法的な位置付けを下表に示す。
表 8 −1 文書種類別の法的な位置付け
文書種類
許容性 証拠性
(*1)
(*2)
電子化文書
(*3)
(イメージデータ)
◎
○
電子文書 (*4)
(コードデータ)
◎
◎
紙文書
◎
◎
COM 文書
(*5)
◎
◎
撮影タイプ マ
イクロフィル
ム文書 (*6)
◎
◎
備 考
e- 文書法により、法令等によって紙文書での
保存や提出を義務付けられていた文書が、一
部の例外を除いて電子化文書として保存する
ことが許容された。
平成 10 年に成立した電子帳簿保存法が基本
となり、当初からコンピュータで作成した
コードデータについては広く認められつつ
あったが、e- 文書法施行によってほとんどの
電子文書が許容された。
公文書、私文書を問わず 許容性、 証拠性を
持つ。
当初からコンピュータにより作成された電子
データをマイクロフィルムに直接出力した文
書であり、紙文書の法的位置付けにもっとも
近い文書である。平成 10 年成立の電子帳簿
保存法により、保存媒体として明記された。
法務省見解や大蔵省告示帳簿などの書類を、
一定の要件の下にマイクロフィルムのみで保
存することが許容された。
自治体などの行政機関は、情報公開法施行令
第 9 条によりマイクロフィルムを用いて公開
が可能である。
(詳細は、4節「 マイクロフィルムの 法的 証
拠能力」参照)
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文書情報マネジメントに必要な応用知識
第8章
◎ 広く認められている。
○ 一定の範囲について認められている。
(*1) 許容性:官庁・自治体等が、民間企業の各種記録に対して、保存するべ
き記録と保存期間を定めている場合で、紙文書以外の記録方法で作成し
た記録(電子データ、COM、マイクロフィルム等)での保存や提出を
認めることをいう。
(*2) 証拠性:裁判で証拠となり得ることをいう。
(*3) 電子化文書:紙文書又はマイクロフィルム文書を電子画像(ビットマッ
プ)化した文書
(*4) 電子文書:メインフレーム、ワークステーション、パソコン上のソフト
などで作成されたコードデータで構成された文書。
(*5) COM 文書:当初からコンピュータで作成された電子データを忠実にマ
イクロフィルムに出力した文書。改ざんされる可能性がもっとも低い。
(*6) 撮影タイプマイクロフィルム文書:紙文書をマイクロフィルムに撮影す
ることにより作成された文書。マイクロフィルムの証拠性を確保する手
段として、当初は公証人による認証方式が主であったが、今日では撮影
証明書による証明方式が広く普及している。
これらの分類に従った文書の作成・保存等に関する各種要件を詳しく見て
みよう。
2.電磁的保存の要件
第
電磁的保存については、『「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」報告
書』のほか、その対象とする文書によって、求められている要件は異なる。
章
8
(1) 電子化に必要な要件
電子化に必要な要件は、その対象とする文書によって以下のように設定さ
れている。
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