心理的報酬と課題の難易度が 内発的動機付けに与える影響

1
心理的報酬と課題の難易度が
内発的動機付けに与える影響
~課題に失敗した場合~
社会工学における戦略的思考
動機付け班
室井 小貫 金 桑原 陶 代工 千葉 津上 田
土居 永利 樋口 森 平山 リロ
指導教員 上市秀雄
2
目次
` イントロダクション
` 方法
` 結果
` 総合考察
` 今後の課題
3
動機付けとは
`
動機付けとは、行動を開始させる機能
`
動機付けをコントロールする方法はないのか?
動機付けによる行動とは?
z外発的動機付けによる行動
何らかの報酬(目的)のために行動する
• 金銭的報酬:お金のために勉強する
• 心理的報酬:褒められたいから勉強する
z内発的動機付けによる行動
その行動自体を報酬(目的)として行動する
• パズルが楽しいからパズルをする
先行研究
4
Deci(1972)の実験
報酬が動機付けに与える影響を、パズル課題により調査
z 金銭的報酬は内発的動機付けを減少させる
金銭を与える→やる気が下がる
z適度な心理的報酬は内発的動機付けを増加させる
適度にほめる→やる気が上がる
先行研究の問題点
課題の成功→報酬
… 課題の失敗→ほめるべき?
… 難易度により違いは?
• 解くことのできない課題
• 課題の難易度(先入観)
本研究の目的
課題を失敗した被験者の内発的動機付けに
心理的報酬が与える影響を明らかにする
5
方法
実験概要
難易度
教示
練習
パズル
練習
パズル
本番
6
質問紙
心理的指標
心理
報酬
本番中
`SOMACUBEとは?
`被験者・・・大学生43名(男32名、女11名)
`実験・・・実験者2人1組で被験者1人を観察
質問紙
心理的指標
行動的指標
本番後
練習
パズル
練習
難易度
教示
パズル練習
パズル
本番
7
質問紙
心理的指標
心理
報酬
本番中
実験手順
質問紙
心理的指標
行動的指標
本番後
• 練習用図形を5分間で解く
• 図形:「タワー」と「立方体」
• SOMACUBEに慣れる
心理的指標
• SOMACUBEの評価の質問紙
• 各項目は7点尺度により測定
• 内発的動機付け・感情を測定
練習質問紙
⑧SOMACUBEを
難しいと感じる
⑨SOMACUBEを
解く気がおきない
等
練習
パズル
練習
難易度
教示
パズル
本番
8
質問紙
心理的指標
心理
報酬
本番中
難易度教示
• 本番課題の前にその難易度を伝える
「難」群・・・ 「非常に難しい問題です」
「易」群・・・ 「非常に簡単な問題です」
「無」群・・・何も言わない
• 被験者に難易度の先入観
実験手順
質問紙
心理的指標
行動的指標
本番後
練習
パズル
練習
難易度
教示
パズル
本番
本番中
パズル本番
• 本番用図形を10分間で解く
• 本番用図形は解くことが不可能
9
質問紙
心理的指標
心理
報酬
実験手順
質問紙
心理的指標
行動的指標
本番後
練習
パズル
練習
難易度
教示
心理的報酬
パズル
本番
本番中
10
質問紙
心理的指標
心理
報酬
実験手順
質問紙
心理的指標
行動的指標
本番後
「あり」群
・・・「非常に惜しいところまでできていたと思います」
「なし」群
・・・何も言わない
練習
パズル
練習
難易度
教示
パズル
本番
本番後の手順
本番中
11
質問紙
心理的指標
心理
報酬
実験手順
質問紙
心理的指標
行動的指標
本番後
• 質問紙回答終了→実験終了と伝える→自由時間(10分)
心理的指標
•SOMACUBEの評価に関する質問
本番後質問紙
⑧SOMACUBEを
•練習の質問紙と同じ内容
難しいと感じる
•練習質問紙と本番後質問紙の計2回 ⑨SOMACUBEを
解く気がおきない
•内発的動機付け・感情の変化
等
練習
パズル
練習
難易度
教示
パズル
本番
本番中
12
質問紙
心理的指標
心理
報酬
実験手順
質問紙
心理的指標
行動的指標
本番後
行動的指標
自由時間中にSOMACUBEに取り組む時間によって測定
• 取り組む時間が長い⇔内発的動機付けが高い
• 取り組む時間が短い⇔内発的動機付けが低い
13
被験者のグループ分け
•心理的報酬の有無・難易度教示により
被験者を2×3の6グループ
•グループごとの内発的動機付けの
あり
なし
難
6名
6名
易
9名
6名
無
6名
10名
差を測定
分析方法
2×2の繰り返しのある分散分析
従属変数
独立変数
課題の難易度
心理的報酬
行動的指標
心理的指標
内発的動機付けに心理的報酬が与える影響の
グループ間の差について明らかにする
結果1
14
心理的指標:
・質問項目⑧「SOMACUBEを難しいと感じる」
ー「易・なし」と「難・なし」: p = 0.131
ー「易・なし」と「無・なし」: p = 0.652, etc…
・質問項目⑬「この問題をできるまでやりたい」
ー「難・あり」と「無・なし」: p = 0.949
ー「易・あり」と「無・なし」: p = 0.391, etc…
グループ間に感情の差は見られなかった
15
結果2
行動的指標:自由時間中にパズルに取り組んだ時間
600
550
500
450
「無・あり」と「無・なし」
p=0.525
「易・なし」と「無・なし」
p=0.057
「難・あり」と「無・なし」
p=0.089
400
350
300
「
無・なし」
「
無・
あり」
「難・なし」
「難・
あり」
「
易・なし」
「
易・
あり」
パズルに取り組んだ時間
`「無・報酬なし」≒「簡単・報酬あり」<「簡単・報酬なし」
`「無・報酬なし」≒「困難・報酬なし」<「困難・報酬あり」
`「無・報酬なし」≒「無・報酬あり」
総合考察
z「無・報酬なし」≒「簡単・報酬あり」<「簡単・報酬なし」
→簡単な仕事の失敗:
心理的報酬なし→内発的動機付け増加
-「悔しさ・恥ずかしさ」という感情を抱いたため
z「無・報酬なし」≒「困難・報酬なし」<「困難・報酬あり」
→困難な仕事の失敗:
心理的報酬あり→内発的動機付け増加
-努力を認められたため
z「無・報酬なし」≒「無・報酬あり」
→難易度がわからない仕事の失敗:
心理的報酬→内発的動機付けに無関係
-失敗に対して感情を強く抱かないため
16
17
社会的示唆
簡単な仕事を失敗
部下
上司
心理的報酬を与えない
難しい仕事を失敗
上司
部下
心理的報酬を与える
部下のやる気を高める
今後の課題
`パズル練習時間や本番後の自由時間を増やす
→内発的動機付けについてさらに特徴ある結果
`男女差、パーソナリティ、心理的指標についてさらに調査
→被験者数を増やす
`難易度教示を与え、課題に成功するグループで実験
→内発的動機付けについてさらに深い考察
18
参考資料
事前質問紙(全16項目)
1.どんな結果であっても、
後悔してしまう
2.どんな結果であっても、
「失敗した」と思ってしまう
3.失敗の原因を人のせいに
してしまう
4.よい結果が得られなかった時
「これもよい経験だ」と思う
5.悪い結果が出た時「もっとよく
考えれば失敗しなかったのに」
6.悪い結果が出た時「あのとき、
こうすればよかったのに」
7.悪い結果が出た時「情報さえ
十分にあればうまくいったのに」
8.どんな結果であっても、満足できる
19
9.そこそこ満足できる結果を
得られたのなら、それで十分
10.得られた結果が自分の最低限
の基準を満たしていればよい
11.たとえ今現在だけであっても、
納得できる結果であればよい
12.よい結果が得られなかった時、
運が悪かったのだと思う
13.悪い結果になったとしても、
「これは一時的なものだ」と思う
14.どんな結果が出ても、自分なり
の最高の基準と比べてしまう
15.ベストの結果を得られたか
どうか常に気になる
16.相対的ではなく絶対的によい
結果であるかどうかを判断する
練習質問紙・本番後質問紙(全20項目)
20
0.以前SOMACUBE(このパズル)で
10.SOMACUBEを解く時間が
遊んだことがある
長く感じる
(※練習質問紙のみ)
11.時間さえあれば問題を
1.パズル全般がすき
解くことができる
2.SOMACUBEが好きである
12.この問題の答えが知りたい
3.SOMACUBEを解くことが面白い
13.この問題をできるまでやりたい
4.SOMACUBEを解くことに
14.SOMACUBEをまたやりたい
飽きを感じる
15.SOMACUBEが欲しい
5.SOMACUBEを解くことに
16.違う形の問題に挑戦をしてみたい
苛立ちを感じる
17.SOMACUBEを二度とやりたくない
6.SOMACUBEを解くことに
18.SOMACUBEを友達に薦めたい
疲労を感じる
19.SOMACUBEは、子供の創造性を
7.SOMACUBEを解くことを
向上させることが可能だと思う
やめたくなった
20.SOMACUBEは、知的好奇心を
8.SOMACUBEを難しいと感じる
向上することが可能だと思う
9.SOMACUBEを解く気が起きない
21
行動指標(全11項目)
本番中・自由時間中
髪を触る
` 落書き
` ストレッチ
` 寝る
` 腕を組む
`
独り言(ネガティブワード)
` 姿勢(後ろにもたれる)
` 足を組みかえる
` ペン回し
` ため息
` その他
`
22
なぜ悔しさが内発的動機付けに影響
被験者:簡単な仕事を失敗→悔しい(∵被験者の様子)
心理的報酬なし→内発的動機付け増加
心理的報酬なし→被験者に与えられた条件は「悔しい」のみ
悔しい→内発的動機付けへ影響
条件に関する台詞
23
「簡単」群
なおこの問題の大学生の正解率は90%であり
非常に難しい問題です。
`
「困難」群
なおこの問題の大学生の正解率は10%であり
非常に難しい問題です。
`
「報酬あり」群
パズルを解く過程を見させていただいたのですが
非常に惜しいところまでできていたと思います。
作業工程をこれから点数化すると80から90点に
なるだろうと思います。これは非常によい成績だと思います。
`
24
「易・無」の人の本番終了後の様子
`
`
`
`
`
`
`
恥ずかしがった
がんばって他の形にした
本番が終了した時、「やった」と言った
できなかったので恥ずかしそうだった
「やばい。うち大学生じゃない」など言った
悔しがっていた
パズルが面白いと言っていた
心理尺度で測ることはできなかったが
恥ずかしがる・悔しがるなどの様子が観察