植物分類学雑記(サンプル)

北方山草(32):37-45. March 2015
植物分類学雑記
石狩市 佐 藤 広 行
はじめに
分類学者の育成と北海道の植物分類学者に
∼「絶滅危惧種」と言われて∼
ついて
2014 年 9 月、北海道大学にて日本花粉学
本川(2000)の「大学博物館は分類学者
会の大会が開催された。 その懇親会で「植
を育成できるか?」という記事に興味深い
物分類学をやっています」と言うと、
「初
記述がある。本川によると『分類学者の減
めて分類学者に出会った」
、
「絶滅危惧種に
少は分類学者が後継者を育成してこなかっ
会った」と言われた。花粉学会に植物分類
たことがその主要な要因であり、専門教育
学者が参加するのは稀かもしれない。しか
機関でない一般の博物館にはその責任がな
し、東京や京都からの参加者であれば、東
いだけでなく今後もその役割を求められる
京大学や京都大学などを拠点とした植物分
べきではない』とある。確かな統計は無い
類学者と出会っていてもおかしくない。今
が、分類学者は世界的に減少していると言
では本当に分類学者は絶滅危惧種となって
われている。出典を失念したが、分類学者
しまったのかもしれない。
の減少の要因として以下のことが述べられ
現在、分子系統学が盛んで、関係論文の
ることが多い。
「分類学は研究結果が出る
数から分子系統学関係の研究者が増えてい
まで他の分野より時間がかかり、成果(論
ると感じる。その一方で、新種などの新分
文数)を問われる研究の世界での生存競争
類群を記載する伝統的な植物分類学を研究
に不利であること」
、
「分類学を教える研究
する若者はとても少ない。佐藤の心証でも
室が減少したこと」
、
「各地方に設置される
植物分類学者は「絶滅危惧種」なのである。
博物館・博物館相当施設には分類学者がい
それ故、新参の植物分類学者でありながら、
たが、分類学研究者の養成体制が弱体化し
植物分類学を志す若者の少なさに危機感を
ていることから生態学を専攻した者にとっ
感じている。北海道には再検討されるべき
て代わりつつあること」である。これらの
分類群がたくさんあるかと思うと、生物の
ことで、分類学そのものが斜陽の憂き目に
多様性を明らかにしようとする人材があま
あったことも、小さくない要因である。
りにも少ない。さらに、植物分類学を修め
本川の言うとおり、過去に分類学者達は
ようとすると、幾つもの慣習のようなもの
後継者育成を怠ったことがあるのかもしれ
にぶち当たる。素人感覚が色濃く残る今だ
ないが、少なくとも 2000 年以降、分類学
からこそ、これから植物分類学を学ぼうと
者は決して後継者の育成を怠ってきた訳で
する人達にとって、知っておくべきことが
はない。旧帝国大学をはじめ、各大学には
何であるか判っている気がするので、
「植
大学博物館を設置する動きが進み、北海道
物分類学雑記」として書き残したい。
大学にも 1999 年に北海道大学総合博物館
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