地方創生における地域金融機関の役割 広島大学 村上真理 地方創生が現在のわが国において最重要課題の1つであることは言を俟たない。平成 26 年 6 月に閣議決定された「日本再興戦略」には多数の具体策が盛り込まれ、実現に 向けた政府の期待の大きさを物語っている。中でも注目されるのが、地方における企業 の経営改善や産業活性化のためには、金融機能が適切に発揮され企業や産業を有効に支 援することが重要であると強調されている点である。「まち・ひと・しごと創生本部」 に地方の企業活動を金融面から支援するチームが設けられる等の措置はこれを受けて のもので、ここからも地域金融機関や地域企業支援のための金融スキームに対する期待 の高さがうかがえる。 その一方、すべての地域金融機関を、同じ金融機能を持つ組織として包括的に取り扱 うことには留意が必要である。ひと口に地域金融機関と言っても、そこには株式会社で ある地銀・第二地銀と、協同組織である信金・信組・JA等が混在している。そのよう な組織特性に加え、規模の大小や足元の経営状況、さらには地域性を含めて考えれば、 それらを同列において議論することに難しい面があるのは否めないであろう。 むろん、地方創生に対する地域金融機関としての責任に何ら変わるところはない。し かし、例えば信組やJAの小規模支店しかない過疎地域での生活インフラ確保を主とし た対応と、そうでない地域における地銀・第二地銀による企業支援とでは、自ずから目 的性や方法論が大きく異なる。地方創生における金融機関対応を考える上で、検討軸の 片側に「発揮されるべき金融機能」があるとすれば、もう片側には「組織特性を踏まえ た個別化」が必要であると思われる。 そこで本稿では、地方創生における地域金融機関への期待を概観し、相互扶助に代表 される協同組織金融機関の役割を中心に考察した。その結果、①地方創生への取り組み は成果が実感されるまでに相当の時間を要することから、地域金融機関の対応も長期の 時間軸を前提とする必要があること、②人口動態の芳しくない地域においては、相当の 年数を経ても成果の伴わない事態が考えられるため、共助社会づくりで標榜される住民 主体の対応との連携も検討すること、③信金・信組・JAなどの協同組織金融機関は相 互扶助の理念と自らの組織特性を踏まえ、積極的に独自性を打ち出すべきこと、との知 見を得た。
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