地域パートナーHOT 情報 〔山口県〕 「花燃ゆ」伊之助と 世界遺産富岡製糸場 稲原宏昭(産学官連携・産業クラスター担当参事官) [email protected] TEL 082-224-5760 NHK大河ドラマ「花燃ゆ」もいよいよ松下村塾で吉田松陰先生に触れ化学反応を起こ した若者達が幕末・明治という激動の舞台へ駆け上がって行く様が描かれるようになり、 個人的にはわくわく感が増しています。 そのような中、大沢たかおさんが演じる小田村伊之助について「こ れまでよく知らなかった」という声を以前にも増して聞くようになり ました。伊之助を一言で言えば、萩藩の重鎮に登り詰める一方で、一 貫して松陰先生の良き理解者であり、陰で支えた大功労者ということ になりますが、それは大河ドラマの中で語られると思いますので、今 回は産業振興の視点から小田村伊之助の活躍を紹介したいと思いま す。 写真:男爵楫取素彦肖像画(群馬県立歴史博物館蔵) 時は明治初期。小田村伊之助改め楫取素彦(かとりもとひこ)は新政府の参与を皮切り に国政や県政に関わり、明治 9 年(1876 年)48 歳のとき、初代群馬県令に就任します。 群馬県は当時から養蚕が盛んで、県令に就任 する 4 年前の明治 5 年(1872 年)にはこの地で 「官営富岡製糸場」が産声を上げています。 しかし、この富岡製糸場は無理な経営がたた り、明治 13 年(1880 年)、明治政府は民間払い 下げ、もし引取先が見つからない場合は富岡製 糸場自体の閉鎖の意向を固めます。 富岡製糸場(群馬県ホームページより その際に、とにかく閉鎖だけは避け、民間払い下げの目処がつくまでは官営としての存 続を明治政府に強く訴え続けたのが時の県令であった楫取素彦です。 旬レポ中国地域 2015 年 5 月号 1 もちろん富岡製糸場の存続には楫取素彦だけの力ではなく多くの人物が尽力したこと は記録からも明らかですし、またその間に技術改良が進み「稼げる事業」としての基盤も 確立していったという面は多分にありますが、結果として明治 26 年(1893 年)に三井家 (後のいわゆる三井財閥)への払い下げが成立するまでの間、なんとか官営として事業を 継続させる大きな力となったことは間違いありません。 その富岡製糸場を含む絹産業遺産群が、平成 26 年(2014 年)、日本の産業遺産では「石 見銀山遺跡とその文化的景観」以来2例目、日本の近代産業遺産としては初の世界遺産登 録されたことは記憶に新しく、また感慨深いものがあります。 故郷山口から離れた群馬においても活躍した楫取素彦。 こういった面からも「花燃ゆ」の小田村伊之助(楫取素彦)を眺めていくと楫取素彦と いう人物の深みを感じながら観ることができるかもしれません。 なお、経済産業省では、近代産業遺産を地域資源のひとつと捉え、これらの歴史的価値 をより顕在化させ、地域活性化の有益な「種」として、地域の活性化に役立てることを目 的として、これらを「近代化産業遺産」として大臣認定し、平成19年度及び20年度に おいて、地域史・産業史の観点から、それぞれ33のストーリーとして取りまとめた「近 代化産業遺産群33」「近代化産業遺産群 続33」を公表しています。もちろん富岡製 糸場も取り上げています。ご関心のある方はご覧ください。 http://www.meti.go.jp/policy/local_economy/nipponsaikoh/nipponsaikohsangyouisan .html また、ご当地萩市では以下の二つの展示会を開催中です。 ●特別展 「長州男児、愛の手紙 ~吉田松陰から盟友小田村伊之助へ 久坂玄瑞から妻文へ~ 」 【萩博物館(萩市堀内)、4 月 17 日(金)~6 月 21 日(日)】 https://www.city.hagi.lg.jp/hagihaku/index.htm ●2015 年 NHK 大河ドラマ特別展「花燃ゆ」 【山口県立萩美術館・浦上記念館、4 月 18 日(土)~5 月 24 日(日)】 http://www.hum.pref.yamaguchi.lg.jp/exhibition/special.html 甘酸っぱい夏みかんの花の香りに包まれている絶好のこの季節にも おいでませ、萩へ。 (上)萩博物館公式サイトより (下)山口県立萩博物館公式サイトより 旬レポ中国地域 2015 年 5 月号 2 (参考) ●大河ドラマ「花燃ゆ」(NHK ホームページ) http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/ ●「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県庁ホームページ) http://worldheritage.pref.gunma.jp/ja/ ●ググッとぐんま(ググッとぐんま公式サイト) http://gunma-dc.net/tomioka-kinuisan 旬レポ中国地域 2015 年 5 月号 3
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