鳥居裁判

公務災害認められる!!
さる2月26日、最高裁は、裁判官全員一致で、地方公務員災害
補償基金(以下、「基金」とします)の上告を棄却し、元豊橋市
中学校教員の鳥居建仁さんの公務災害を認めました。
①学校祭の最中に倒れる
●02年9月、豊橋市立石巻中学校に勤務していた鳥居さんは、学校祭
のユニホックの模範演技中に脳出血で倒れ、半身不随となりました。当
時、鳥居さんは、学級担任のほか、生徒指導主事や安全教育主任などの
校務分掌を担当するとともに、全国大会に2年連続で出場した陸上部顧
問も担当していました。また、学校祭前夜は夜警で泊まり込み、校長室
のソファで灯りをつけたまま仮眠し、その翌日の学校祭の最中に倒れた
のです。
●鳥居さんは、基金に公務災害を申請しましたが、認定されませんでし
た。それに加えて、分限免職(解雇)となりました。そこで、「学校で倒
れたのに、なぜ公務災害にならないのか」と、退職金を受け取らずに、
公務災害認定を求めて提訴したのです。
②時間外勤務も公務
● 裁判で、基金側は、時間外に行った教材研究や学校祭準備、あるいは
前日の泊まり込み警備について、「自主的・自発的・創造的な活動として
行っていた」として、公務ではないと主張しました。
● これに対して、高裁では、
「勤務時間外の教材研究等について・・・その
全体の業務量からして、これらの職務を所定の勤務時間内に終えること
はおよそ困難であり、加えて教材研究についても教育職員が自らの職務
を全うするために必要不可欠なものであって、・・・教育職員の職務に他な
らず・・・」、「勤務時間外に行った学校祭の準備及び夜警は、まさしく教育
職員の職務の遂行としてなされたものと認められ、公務に当たる」とし
て、地裁判決と同じく公務として認めました。
一宮市教組ニュース
2015年
5月
一宮市教職員労働組合
Twitter「一宮市教組公式」
HP「一宮市教組」
鳥居さん 12年半ぶり
元 豊橋市立中学校教員
これを受けて、3月6日、豊橋市教委は、鳥居さんに対して、
公務災害認定書と、免職発令取り消し通知書を交付しました。実
に、12年半ぶりに、鳥居さんの公務災害が認定されました。
③部活指導も公務
●基金側は、
「部活指導については、校長の明示の職務命令があったとは認めら
れない」として、公務ではないと主張しました。また、「被控訴人が部活指導に
より精神的負荷を受けていたとは認められない」と主張しました。
●これに対して、高裁では、
「部活動の指導をすることは、教育職員の職務の範
囲に属し、かつ、同指導についての校長の明示の職務命令があったことは明ら
かである」と、部活指導を公務として認定しました。また、「全国大会への3年
連続出場が期待された・・・陸上部を・・・指導することに関し、・・・相当の肉体的・
精神的負荷を受け、さらに・・・夏の暑い盛りに練習を継続しつつ、・・・多くの大
会へ部員を参加させることに伴う指導者として
の肉体的・精神的負荷には強いものがあったこ
とから、疲労を回復させるどころか、更に疲労
を蓄積させていった」として、基金側の主張を
退けました。
④ 倒れる前6ヶ月間
の疲労蓄積
●高裁では、倒れる前6か月間の「時間外労働
時間」を認定しました (資料①)。その上で、「1
か月間の時間外労働時間が80時間あるいは70
時間を超える月が3ヶ月間続き、部活動の代替
機能を果たしていた地域クラブ(※)での指導
もあって、肉体的にも精神的にも多大な疲労が
蓄積していたと推認され」、「夏休みの時期にお
いても1か月80時間を超える時間外労働をして
いたものであって」、「本件脳出血前6か月間の
労働からのみでも、本件脳出血の発症に関し相
当因果関係を認めるに十分である」として、「地
方公務員災害補償法に基づく公務外認定処分を
取り消す」という判決を下しました。
〈資料1〉
「時間外労働時間の集計」
(高裁判決文より)
①発症前1ヶ月63時間30分
(他に地域クラブ22時間40分)
②発症前2ヶ月85時間00分
(他に地域クラブ12時間10分)
③発症前3ヶ月80時間25分
(他に地域クラブ34時間10分)
④発症前4ヶ月72時間40分
(他に地域クラブ28時間20分)
⑤発症前5ヶ月54時間25分
(他に地域クラブ27時間00分)
⑥発症前6ヶ月67時間35分
(他に地域クラブ4時間30分)
※「地域クラブ」…豊橋市では、
2002年度から、日曜日の部活動が禁止
され、それに代わる「地域クラブ」が
設立された。石巻中学校では「石巻長
距離クラブ」が設立され、石巻中学校
陸上部(部活動)と同じ練習を行って
いて、指導者も同じであった。
①時間外勤務の
割り振りの改善を
●最高裁で、基金側の控訴を棄却したということで、高裁判決が確定しました。
このことは、単に鳥居さんの公務災害を認定しただけにとどまらない意義を持っ
ています。
●現行学習指導要領で授業時間数が増やされたことから、現職教育や各種会議を
行う時間確保が難しくなりました。それに伴って、本来ならば勤務時間中に行う
べき教材研究や学級事務、あるいは校務分掌上の仕事が、勤務時間終了後へと押
しやられていて、これが、時間外勤務の増加となっています。
●鳥居裁判で、時間外に行わざるを得ない教材研究なども公務とされました。公
務であれば、その分の割り振りがなされるべきです。県教委も、「校長が命じた
業務であれば、割り振り変更の対象となる」として、時間外に行われたさまざま
な仕事が割り振りの対象となると明言しています。どこの学校でも、勤務時間中
に終わらせることの出来なかった仕事すべてについて、個人別の「割り振り変更
簿」などの客観的な方法で、確実に割り振りがなされるようにすることが求めら
れています。
③時間内に
仕事を終えられるように
●本来、教育職員は、「原則として時間外勤務を命じないものとする」(「公立の
義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準
を定める政令」)となっていて、仕事は時間内に限られるのが原則です。それが、
現状では、膨大な時間外勤務をせざるを得ない状況となっています。時間外勤務
の削減のために、校内で業務を精選したり、教育委員会からの文書を簡素化した
りすることも必要ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。
●県内で、ここ数年の間、毎年のように、教職員の突然死が続いていることから
分かるように、教育諸条件整備は待ったなしの状況にあります。すべての学年で
の少人数学級の実現、専科教員をはじめとする教職員の大幅な増員などを進める
ことで、教職員が勤務時間内に仕事が終えられるような学校にしていくことが求
められています。
教職員の時間外勤務=公務
国会審議でも明らかに!
全国的に広がる教職員の長時間勤務について、3月31
日参議院文教科学委員会において、質疑が行われました。
②部活動指導の改善を
●また、教員の疲労が蓄積する原因の一つに、休みのない部活動指導があります。
部活動の過熱は、生徒の自由になる時間を奪ってしまい、生徒にとってもよくあ
りません。さしあたって、例えば活動を行わない日を設定したり(定期試験とそ
の前だけでなく、年度始め、ゴールデンウィーク等々)、一部でまだ行われてい
る朝の部活動をやめたりするなどして部活動を改善することが求められていま
す。
●土・日を含めた長時間の勤務時間外の部活動指導の問題を解決するためには、
長年課題となっている社会体育への移行について本格的に検討し、移行措置を講
ずることです。中学校教員が本来の中学校教育の職務(学級経営・教科指導)に
専念できる体制をつくっていくためには、そういった改善はもう待ったなしの状
況といえます。部活動は教育課程以外のものであるにもかかわらず、いつまでも
教職員の犠牲の上で運営すべきではないと思います。
田村智子議員(共産)が「命令のない時間外勤務も公務(労働
時間)にあたるのではないか」と政府の認識を質したところ、文
科省小松初等中等教育局長が答弁に立ち、黙示的な命令であって
も職務命令だと認められると述べ、政府として鳥居裁判判決と同
様の見解を示しました。また「しっかりと受け止めて周知される
ようにしていきたい」とも答えています。
司法の判断は行政に対して、このように明確に反
映されるべきものであることが示されています。
一宮市教組ニュース
2015年
5月
一宮市教職員労働組合
Twitter「一宮市教組公式」
HP「一宮市教組」