刑事裁判演習

授業科目
刑事裁判演習
単 位 数
2
配当年次
3年-3
2年-2
担 当 者
安西 敦
西森やよい
開講学期
前期
曜日・校時
水Ⅱ
1.講義等の内容
司法修習期間の短縮により司法研修所における前期集合研修が廃止され,新司法試験合格者に対
しては,直ちに実務修習が行われる見込みである。この事を考慮すると実務教育の導入部分となる
べき教育あるいは実務との架橋を意識した教育が重要となる。そこで,記録教材をもとに,基本的
な法文書の作成や模擬裁判などを通じて,刑事訴訟手続における各主体の立場からの,刑事裁判に
関連する実務の基本的な流れや取り組み方などを理解させる。
併せて,具体的な証拠,資料に基づく事実関係の認定及びその見極めを含んだ法的判断能力の養
成も行う。
2.授業の目標
新司法試験合格後行われる実務修習が十分な教育効果を上げうるよう,刑事事件実務に関する基
本的な知識,能力の習得並びに具体的な証拠,資料に基づき事実認定をする能力及び事実の見極め
を含む法的判断能力の養成を目標とする。
3.授業計画
第1回 刑事手続鳥瞰
捜査手続,公判手続という刑事裁判手続の流れの概要,各手続における法曹三者の役割について
考察させる。
第2回 身柄拘束
刑事手続における被疑者・被告人の身柄拘束に関する手続について考察させる。具体的な事件記
録(第2回~第7回までは同一の事件記録教材を使用)を素材として,逮捕,勾留の要件の有無な
どについて,検討を行わせる。
第3回 模擬弁解録取・補充捜査
受講生を検察官役,立会事務官役,被疑者役とする模擬弁解録取手続を体験させ,告知すべき内
容や聴取すべき事項について考察させる。さらに,検察官として行うべき補充捜査事項等について
検討をさせる。
第4回 模擬接見
受講生を被告人(被疑者)役,弁護士役とする模擬接見等を通じて接見を体験させ,弁護人と被
告人(被疑者)との公判開始前の接見,打合せについて考察させる。弁護人として行うべき事件内
容の確認,被告人(被疑者)の権利の告知,裁判手続の流れの説明,証拠についての打合せ等につ
いて検討させる。
第5回 事件処理時の事実認定
勾留後の捜査結果も踏まえて,事件記録をもとに検察官が行うべき事実認定について検討させる。
構成要件,証拠と事実認定全般についての理解を深めさせる。
第6回 事件処理
検察官の行う事件処理,訴追裁量についての理解を深めさせる。起訴状や不起訴裁定書に記載す
べき内容等について検討させる。
第7回 判決
通常の事件と公判前整理手続が行われる事件について,それぞれの公判手続の流れと両者の違い
について理解を深めさせる。さらに,事件記録をもとに,判決時の事実認定及び判決で記載すべき
内容等について検討させる。
第8回 検察官の公判準備
起訴後の検察官の行うべき公判準備についての理解を深める。公判演習教材(第8回~第16回
までは同一の公判記録教材を使用)をもとに,検察官の立場から,立証方針,請求証拠について検
討させた上,証明予定事実記載書面,証拠調請求書に記載すべき内容を検討させる。
第8回以降は,模擬公判前整理手続及び模擬裁判の準備も並行して行う。
第9回 弁護人の公判準備
起訴後の弁護人の行うべき公判準備についての理解を深める。弁護人の立場から,公判演習教材
をもとに,公判前整理手続における証拠開示,検察官請求証拠に対する意見,保釈請求その他弁護
方針につき検討させる。
第 10 回 裁判上の証拠
刑事裁判手続における証拠法則,立証の方法等について理解を深める。請求証拠が不同意になっ
た場合の代替の立証方法について検討させる。
第 11 回 公判前整理手続
公判演習教材をもとに,模擬公判前整理手続を実施する。公判前整理手続の進行方法,裁判官の
立場からの証拠調請求に対する判断,争点整理,審理計画の策定等について検討させる。
第 12 回 事実認定・法的判断
公判演習教材をもとに事実認定及び法的判断について検討させる。構成要件の認定に必要な事実
は何かについて考察させる。
第 13 回 証人尋問
公判演習教材をもとに,証人尋問調書に沿って模擬証人尋問を行い,受講生に,尋問に対する異
議や異議に対する裁判所の決定等の体験をさせ,証人尋問の際の尋問ルールについての理解を深め
させる。
第 14 回 被告人質問
公判演習教材を素材として,事前に被告人質問事項を起案させた上,模擬裁判の形式で被告人質
問を行い,質問すべき事項は何か検討すると共に,尋問のルール等について考察させる。
第 15 回 情状及び量刑
刑事裁判において量刑に影響を与える重要な情状について考察する。情状弁護活動や求刑につい
ての理解を深める。
後半では,模擬裁判の冒頭手続から書証の取調べまでを行う。
第 16 回 ~期末テスト~
模擬裁判を証人尋問から実施する。模擬裁判の弁論終結後,理解度を試すための期末テストとし
て判決起案を実施する。
4.授業の方法・受講上の注意
(1) 事前の準備
受講生に予め教材を配付し,事案を把握させておく。受講生は各回のテーマについて事前に予習
をしておくほか,事前に指示された法文書等を事前に作成した上,問題点について検討しておく。
(2) 各回の授業
各回のテーマについて、教員による講義を行う。その中で、受講生による発表や討論も行う。
模擬裁判や模擬接見などを受講生に行わせて、刑事裁判手続の進め方を実体験させるとともに事
件について主体的に検討させ、教員はこれらを指導・講評する。
5.教科書・参考書等
事件記録教材,公判演習教材を使用する。
「刑事判決書起案の手引」(平成 19 年版、法曹会)を補助教材として使用する。
6.成績評価基準
主観的評価とならないようにすると共に、多元的な評価を行う。評価の基準となる要素として、 法
文書等の内容、模擬裁判等も含めた講義中の発言内容等、期末テストを考慮する。期末テストの 比
率は 30%程度とし、他の要素(法文書等の内容、講義中の発言内容等)の比率を 70%程度とする。
オフィスアワー
安西 火曜日10時30分~12時 メールでの予約が望ましい。
西森 木曜日11時30分~13時