第1回授業(ガイダンス)のレジュメ

京都産業大学2015年度民法Ⅲ(
永担当)講義資料
01 ガイダンス
1. この講義で身に付けてもらうこと
債権総論・担保物権分野について、基本概念・基本制度を順に取り上げて、知識を整理する。
授業は前半を学生による講義とし、後半に教員がそれをフォローするという形で進める。さらに毎回の授
業には、法学検定レベルに対応した短答式チェックテスト(○ 形式及び多肢選択形式)を付し、知識が積み
重ねられているか随時確認する機会を設ける。
さらに、基本的な制度についてはその要件・効果や典型的な事例を、ごく基本的な法律用語を用いて説明
できるようにする。定期試験では、この能力について問う出題を行う。
2. 成績評価方法
• 平常点50点+定期試験50点の合計で成績評価を行い、60点をもって及第点(単位認定)とする。
• 平常点は次の通り加点し、50点をもって満点とする(単なる出席では加点されないので注意。ただし教室に入
る時に、学生証を読取機にかざすのはお忘れなく)。
種 別
満点
(いずれも満点を超える部分は切り捨て)
説 明
レジュメ点
30点満点
レジュメ提出1回につき10点
報告担当1回につき4点(次点は2点)
確認テスト点
10点満点
各回のチェックテストで満点を取れば1点
質問点
10点満点
各回の授業内で質問票を提出すれば1点
• 定期試験は記述・論述式試験として行う。
3. 受講上の注意
• 円滑な授業運営への協力=他の受講生のために!
‣ 私語の禁止・携帯電話の電源OFF
‣ 途中入退出の原則禁止(やむを得ない場合には静粛を保って入退出すること)
• 積極的な予復習=あなた自身のために!
‣ わからないところを洗い出す予習(講義の内容を事前に全て予測するつもりで予習してほしい。最低限、講
義資料の中でわからない点〔=講義で集中して聞き取るべき点〕に線を引くだけはしておいてほしい)
‣ 「わからない」を「わかった」にかえる受講(「わかった」内容は別途ノートに記録していく)
‣ 「わかった」を整理し、「わかったつもり」を注意深く拾い上げる復習(受講ノートと別に復習ノートに
整理しながら書き写せば完璧)
Info
大学設置基準21条2項によると、45時間(ただしここでの1単位時間は45分と解釈されているので、実時間とし
ては33時間45分)の学習をもって「1単位」に相当すると定めている。この民法Ⅱの授業は2単位科目なので
67時間30分の学習が求められていることとなる。これを週1コマ授業の標準授業回数(15回)で割ると、
1回の授業あたりの学習時間は4時間30分となる。ところが、周知の通り実際に講義が行われるのは1時間
30分にすぎない。残りの3時間は予復習を行うことが予定されているのである。もちろん試験直前の一夜
漬けでまかなえる時間数ではない。
• 六法(2015年度版)の携行。授業中は特に指示がなくても適宜参照すること。
• アポイントなく研究室を訪れることの禁止
• moodleのチェック
‣ 本講義に関する情報は、授業を通じて伝えるほか、オンライン学習システムmoodleを通じても公開す
る。moodle上で告知した情報は受講生に伝わったものとして扱うので注意すること。
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‣ 授業のレジュメは、授業直前の火曜日にmoodleを通じて公開する。レジュメは各自でダウンロード・
印刷の上、予習をして持参することが必要である。
‣ moodleの操作方法は習得済みであることを前提とするが、利用方法がわからなければオフィスアワー
を利用するなどして質問すること。
‣ 上肢・視覚障碍等の事情でパソコンの操作が困難である学生については配慮するので、
ていただきたい。
永まで申し出
4. 講義計画
月日
内容
1
4月10日
ガイダンス
2
4月17日
破産と債権者平等の原則(教員によるモデル報告)
3
4月24日
休講 (ビデオ講義「民法体系の基礎」で補講とする)
4
5月1日
弁済(含・準占有者に対する弁済、代物弁済、供託)
5
5月8日
債務不履行(強制履行・損害賠償)
6
5月15日
7
教科書*該当頁
レジュメ締切
前週金曜23:59
Ⅱ203-205頁
Ⅲ209-234頁
4月24日
Ⅲ30-69頁
5月1日
債権譲渡
Ⅲ157-192頁
5月8日
5月22日
相殺・その他の債務消滅原因
Ⅲ234-250頁
5月15日
8
5月29日
債権者代位権・詐害行為取消権
Ⅲ72-106頁
5月22日
9
6月5日
保証・連帯保証
Ⅲ133-156頁
5月29日
10
6月12日
Ⅱ209-242頁
6月5日
11
6月19日
被担保債権の範囲、抵当権の目的物・物上代位
Ⅱ242-259頁
6月12日
12
6月26日
抵当権の実行(含・法定地上権)
Ⅱ259-264頁
Ⅱ271-281頁
6月19日
13
7月3日
(含・抵当権者の同意に基づく賃借権の対抗力)
Ⅱ285-288頁
Ⅱ268-271頁
6月26日
14
7月10日
譲渡担保
Ⅱ325-344頁
7月3日
15
7月17日
まとめ
担保物権総論
(留置権、先取特権、質権、抵当権〔含・根抵当〕)
抵当権に基づく妨害排除請求権・返還請求権
*凡例 Ⅱ:淡路剛久ほか『民法Ⅱ物権(有斐閣Sシリーズ・第3版補訂)』(2010年・有斐閣)
Ⅲ:野村豊弘ほか『民法Ⅲ債権総論(有斐閣Sシリーズ・第3版補訂)』(2012年・有斐閣)
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5. 受講の流れと注意
(1) 概要
• この授業の受講の流れを大まかに示すと次のようになる
レジュメの提出(授業1週間前まで)→レジュメの選考・公開(授業直前の火曜日)
→授業における報告と質疑応答→授業後のチェックテスト(授業翌週の木曜日まで)
(2) レジュメの提出
a) レジュメ作成
• 受講者は、個人で、又は2名若しくは3名のグループを組んで、レジュメを作成し、提出することができ
る。レジュメの提出は義務ではないが、第4回授業から第14回授業の11回のうち2∼3回程度はレジュメ
を提出することを想定して配点している。
• グループのメンバーは、提出の度に入れ替えて構わない。
b) レジュメの形式と内容
• レジュメはPowerPointで作成する。スライドの枚数に制限は設けないが報告時間(10分程度、最長15分)
にあわせて調整すること。
• 1枚目のスライドは表題と報告日、さらに報告者全員の学生証番号とフルネームを掲載すること。
• 最終スライドは参照した参考文献の一覧を掲載すること。この要件が満たされないレジュメは適宜減点
(0点とすることも含めて)する。
• レジュメの内容は、制度の定義、趣旨、関連条文、要件、効果、典型的な具体例などといった基本事項を
箇条書きに整理してまとめること。細かな学説の対立や判例にまで立ち入る必要はない。
c) 参考資料
• 大まかに報告範囲を示すために、教科書の該当頁を示してある。
• さらにこれ以外に、後掲の参考文献一覧に掲げた文献(ただし法律学小辞典は数に含めない)から2冊以上を
選び、参考にすること。その上で、その他の参考文献(ただしいわゆる予備校本やノウハウ本は禁止する)を
参照することももちろん歓迎される。 この要件が満たされないレジュメは適宜減点(0点とすることも含め
て)する。
• もっとも教科書その他の参考文献の内容のすべてを紹介する必要はなく、上述の通り「基本事項」に絞っ
て報告すること。
d) moodleを通じたレジュメの提出
• 作成したレジュメは、提出者(グループで作成した場合はグループの代表者)の学生証番号をファイル名とし
て(半角数字で入力のこと)保存すること。
• レジュメはmoodleを通じて提出する。グループで作成した場合は代表者のみが提出すればよい。moodle
を通じたファイルの提出は送信ミスが多いのでマニュアルを参照しながら最後まで確実に操作すること。
• 締め切りは報告の1週間前の金曜日の23:59(土曜日に変わる直前)とする。
(3) レジュメの印刷と予習
a) 報告グループの当選発表
• 締め切りまでに提出されたレジュメの中から、授業当日の報告担当者(グループ)を2組選考する。
• 当選者(グループ)はmoodleにレジュメを公開することによって発表する。
b) レジュメの印刷
• moodle上で公開されたレジュメは、受講者が各自で印刷し、予習の上授業に持参すること。
(4) 報告と質疑応答
a) 授業における報告
• 報告担当者(グループ)は、授業当日報告を行う。
• 報告担当者が授業開始時に教室にいなかった場合(グループの場合はメンバーの誰も教室にいなかった場合)、
当選は取り消し、報告担当点も与えない。
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• 報告はPowerPointを用いておこなう。コンピュータやプロジェクタの準備は教員が行う。
• 報告時間は10分前後、長くても15分以内とする。
b) 質疑
• すべての報告担当者(グループ)の報告が終わった後、質疑応答を行う。
• 受講生は、レジュメとともに印刷した質問用紙に質問内容を書き付けて提出する。
• 提出された質問から教員がいくつかを取り出して読み上げ、報告者がこれに応答する。
(5) チェックテスト
• 受講生(報告担当者を含む)は、授業終了後、moodle上で小テストを受験する。
• 小テストの締め切りは、授業翌週の木曜日の23:59(金曜日に変わる直前)とする。
• 小テストは何度でも受け直すことができる。
1.オフィスアワー
• 毎週木曜日12:30∼14:00をオフィスアワーとし、履修相談室(4号館1階)に教員が待機する。
• 質問等がある学生、法学検定などのため自主的な勉強会をする学生はもちろん、ただ世間話をしにくる
(留学生であれば(日本人学生も?)日本語の練習に来る)というだけでも歓迎するので、大いに利用してほし
い。
2. 参考文献リスト
*ここにあげた文献をレジュメの中で引用するときには、出典として太字・下線部分のみを示せばよい。
例: SシリーズⅡ・120頁、松井担保物権・100頁、法学講義3・80頁、我妻Ⅲ・240頁
* 民法は2003年に担保・執行法改正が、2004年には現代語化改正が行われた。参考文献の選択にあたってはその
点に注意が必要である。
‣ 法律用語辞典:『法律学小辞典(第4版補訂版)』(有斐閣・2008年)
‣ スタンダードな内容のもの
• 淡路剛久他『民法Ⅱ物権(有斐閣Sシリーズ・第3版補訂)』(有斐閣・2010年)
• 野村豊弘他『民法Ⅲ債権総論(有斐閣Sシリーズ・第3版補訂)』(有斐閣・2012年)
• 松井宏興『担保物権法(補訂第2版)』(成文堂・2011年)
• 松井宏興『債権総論』(成文堂・2013年)
• 奥田昌道=鎌田薫編『法学講義民法3担保物権』(悠々社・2007年)
• 奥田昌道他編『法学講義民法4債権総論』(悠々社・2007年)
• 平野裕之他『民法3担保物権(有斐閣アルマ・第2版)』(有斐閣・2005年)
• 中田裕康他『民法4債権総論(有斐閣アルマ)』(有斐閣・2004年)
• 内田貴『民法Ⅲ債権総論(第3版)』(東京大学出版会・2005年)
• 石田剛他『民法Ⅱ物権(有斐閣Legal Quest)』(有斐閣・2010年)
• 安永正昭『講義物権・担保物権法(第2版)』(有斐閣・2014年)
‣ 古典的名著(ただし2003年・2004年民法改正には対応していない)
• 我妻榮『新訂擔保物權法(民法講義Ⅲ)』(岩波書店・1968年)
• 我妻榮『債権債權總論(民法講義Ⅳ)』(岩波書店・1964年)
• 奥田昌道『債権総論(増補版)』(悠々社・1992年)
‣ 通説・判例では飽き足りず、発展的な学習をしたいなら
• 高橋眞『担保物権法(第2版)』(成文堂・2010年)
• 道垣内弘人『担保物権法(第3版)』(有斐閣・2008年)
• 中田裕康『債権総論(第3版)』(岩波書店・2013年)
• 角紀代恵『基本講義債権総論』(新世社・2008年)
• 潮見佳男『プラクティス民法 債権総論(第4版)』(信山社・2012年)
• 内田貴=大村敦志『民法の争点(新・法律学の争点シリーズ1)』(有斐閣・2007年)
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Info
このように、メインとなる説明は学生が行い、教員による授業はそのフォローにとどめるという授業運
営の仕方には、戸惑う学生が毎年いるようですので、少し説明を加えようと思います。
学生の中には、「先生が説明をした方がわかりやすい」などと言ってくれる方もいるのですが、私とし
ては、「教員が教壇でわかりやすく授業をする」というのは、実はよい授業ではないという考えをもって
います。これには3つの観点からの説明があります。
①結局のところ、教わるから知識が身に付くのではなく、学ぶから知識が身に付く
法律を学ぶにあたっては、「契約」「債権」「弁済」「担保」「抵当権」……と非常にたくさんの言葉
を憶え、それらにまつわるルール(要件・効果)を憶え、様々な事例でその知識を応用できるようになるこ
とが必要です。そうしたものを人から聞いても、結局のところ憶えられるものではありません。「抵当権
って何だろう? どんなことをすると、どんな効果が生じるのだろう? どんな場面でそれを使うのだろ
う?」と関心をもって教科書を読んで、自分なりに整理することで、自然と頭の中に入ってくるものです。
そうすると、学生に知識を身につけてもらうために私がするべきことというのは、情報を「声」に載せ
てお届けすることではなく、皆さんに関心をもって教科書を読んでもらい、整理をしてもらう機会を作る
ことということになります、
②全部を教えられないから、学びの「方法」を身につけてもらう必要がある
法律学に関する知識は、無限大といっていいほどの量があります。当然、そのすべてを大学の中で教える
ことはできません。そうなると、私たち大学の教員の責任は、法律学についての知識を教えるだけではな
く、私たちが直接には教えることができない情報に学生が自分自身でアクセスできるようにしてあげるこ
と、つまり「法律の学び方」を教えることも含むことになります。
そして「学び方」を教える最良の方法は、実際に学ばせてみて、うまくいったところを「うまくいった」
と指摘し、うまくいかなかったところを「うまくいかなかった」と指摘することです。
③仕事って、「教わる」ことより「教える」ことの方が多い
大学を卒業すると多くの人が企業に就職したり、公務員として役所に勤めたりします。当然、新人として
数ヶ月は先輩や上司に一方的に教わることばかりでしょうが、すぐにそうした関係は終わりを告げます。
「例のあの件、調べて、整理して、報告してくれ」と言われるようになるはずです。仕事というのは、先輩
や上司から教わる場ではなく、先輩や上司に情報を提供する(つまり教える)場なのです(もちろん最初は、
先輩や上司も答えを知っているような簡単な内容からでしょうが)。
私のみるところ、日本の中等教育(高校までの教育)や大学受験のシステムは、「教わり上手」を大量に
生み出すのに適しており、これは昭和の高度成長期には非常に大きな力を発揮したと思われます。しか
し、四半世紀前のバブル崩壊をいまだに引きずり混迷を深める現代の日本経済においては、既存の知識を
教わることが上手な人材では役に立たず、新たな知識を求めて自ら学ぶことのできる人が求められていま
す。それなのに、その育て方がよくわからずに学校現場は混乱し、その見抜き方がよくわからないために
就職戦線は混乱しています。学生を「教わり上手」から卒業させ、「学び上手」へと変身させることは、
現在の大学教育において喫緊の課題と考えられます。
* 便乗して1つ宣伝させて下さい。こうした学習観・教育観に基づいて執筆したのが、2015年4月刊行の『法学部入
門:はじめて法律を学ぶ人のための道案内』です。興味があれば是非手に取ってみて下さい。
結局、この授業は「勉強しなくても単位が取れる」という意味での楽勝科目ではありませんが、以上の
ようなコンセプトを理解していれば、「勉強すれば単位が取れる」という意味での楽勝科目となるはずで
す(そうでなければ教員の責任です)。学生にとっては面倒かもしれませんが、どうかよろしくお付き合いく
ださい。
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