全体最適化によるコスト削減の進め方

平成 27 年 1 月 4 日
山西義和
全体最適化によるコスト削減の進め方
1. 「全体最適化」とは
「全体最適化」とは、各工程や作業の最適化、即ち「部分最適化」を図る
だけでなく、工場全体あるいは会社全体で利益を最大化できる最適な人員・
設備の配置と運営を行うことである。
(1) 例題で全体最適化について考えてみよう。
[例1:自動化投資]
A工程は 1000 万円の自動化投資(5 年償却)で自動化でき、1名の担当
者が不要になる。B工程は自動化が難しく、現在 2 名の担当者が作業してい
るが残業が発生し、年間2人で約 200 万円の残業手当を要している。A工程
を自動化し、その要員をB工程に回しB工程を3名体制にすれば残業なしで
対応できる。1人当たり人件費を年間 500 万円として、A工程の自動化投資
を実施すべきかどうか判断せよ。
[例2:効率化投資]
A工場は、配合・ペレット・圧ぺんの3工程で2直体制をとっている。2
直人員は2名で、1名が配合、1名がペレットと圧ぺんを担当している。現
在、配合は定時に終了しているが、ペレットは1時間、圧ぺんは2時間の時
間外稼働が必要である。1名での勤務はリスクが大きいため、配合担当者を
含めた2名が毎日2時間の残業をしており、その時間外手当は合計で約 250
万円/年である。
調査の結果、ペレット工程は、ペレット半製品タンクを増設し配合待ち時
間を無くせば時間外稼働なしで対応できる。圧ぺん工程は、圧ぺんのストッ
クタンクを増設し、製造を大ロット化し銘柄切替回数を減らせば時間外稼働
なしで対応できる。投資額はペレット工程で 1000 万円、圧ぺん工程で 3000
万円必要である。
(いずれも 10 年償却)また、稼働時間の短縮により、水道
燃料費・電力料等のランニングコストがペレット工程で 100 万円/年、圧ぺ
ん工程で 150 万円/年削減できる。
ペレット工程、圧ぺん工程の投資または両方の投資を実施すべきかどうか
判断せよ。
-1-
[例3:外注]
B工場は年間 25 万トンの配合飼料を製造しているが、紙袋製品はその 1%
である。紙袋包装は、数量が少なく小ロット生産であるため手作業が多く、
専任担当者を1名つけている。その労務費は 350 万円/年である。紙袋製品
のみの収支は赤字であるため、紙袋製品製造を外注に出し、人員を1名削減
することを考えている。
同一会社のC工場に打診すると、現行の設備・人員で対応可能ということ
であった。C工場からB工場への輸送コストを 1500 円/トンとした場合、
外注に出すべきかどうか判断せよ。
(2) 例題の解答と解説
[例1:自動化投資]
設備投資を実施した場合の経費増減をみてみよう。
① A工程
・減価償却費の増:1000 万円÷5=200 万円
・人件費の減:-500 万円
・差引経費増減:200 万円-500 万円=-300 万円
② B工程
・人件費の増:500 万円
・残業代の減:-200 万円
・差引経費増減:500 万円-200 万円=300 万円
③ 工場全体(①+②)
・減価償却額の増:200 万円
・残業代の減:-200 万円
・差引経費増減:200 万円-200 万円=0
A工程だけで見ると、300 万円/年の経費減になり自動化投資の効果が表れ
る(部分最適)。しかし、その人員をB工程で活用することとしたため、B工
程では、残業代は0になったが人件費増が大きく逆に 300 万円/年の経費増
になる。工場全体では差引経費増減0である。
このような場合どう判断すれば良いか。
工場全体では人員数は変わらす、残業代(変動費)が減価償却費(固定費)
に置き換わっている。変動費は作業の効率化等により削減可能であるが、固
定費は削減できない。
従って、合理化投資は実施せず、B工程の作業手順の見直し等により作業
の効率化を図り、残業時間を減らす努力をする(全体最適)のが良い。
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このように、投資をしても工場全体の人員削減につながらない場合は、全
体のコスト削減につながらないことが多い。
逆に言えば、1名の人員削減ができるならばそれだけで 300 万円/年の経
費削減ができるので直ちに投資を実施すべきである。
[例2:効率化投資]
① ペレット工程のみ投資した場合
・減価償却費の増:1000 万円÷10=100 万円
・ランニングコストの減:-100 万円
・時間外手当:2 時間残業が変わらないので変化なし
・差引経費増減:100 万円-100 万円=0
② 圧ぺん工程のみ投資した場合
・減価償却費の増:3000 万円÷10=300 万円
・ランニングコストの減:-150 万円
・時間外手当の減:(-250 万円)÷2=-125 万円
・差引経費増減:300 万円-150 万円-125 万円=25 万円
③ 両方の投資を実施した場合
・減価償却費の増:(3000 万円+1000 万円)÷10=400 万円
・ランニングコストの減:-100 万円-150 万円=-250 万円
・時間外手当の減:-250 万円
・差引経費増減:400 万円-250 万円-250 万円=-100 万円
ペレット工程だけの投資では時間外手当が変わらず、ランニングコスト(変
動費)が減価償却費(固定費)に置き換わっただけである。これは事例 1 と
同様であり、投資すべきではない。
圧ぺん工程だけの投資では、時間外手当が半減するものの、投資額が大き
いため減価償却費の増がランニングコスト及び時間外手当の減を上回ってい
るため経費増となる。従って投資すべきではない。
ペレット工程と圧ぺん工程の両方の投資を行うと時間外手当が 0 となり、
全体で 100 万円/年の経費低減となる。
3案の比較により、唯一メリットのある両方の投資を実施すべきである。
このように、個々の投資では効果がなくてもそれを組み合わせることによ
り効果を発揮する場合がある。このように、全体最適化とはお互いの業務の
関連を考えて最適な人員・設備構成を考えることである。
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[例3:外注]
① B工場
数量は 2500 トン。輸送費はB工場負担とする。紙袋製品の加工料単
価:α円/トン、変動費単価:β円/トンとする。ここで重要なことは、
紙袋製品の加工料や変動費であり、紙袋包装工程の加工料や変動費では
ないということある。つまり、マッシュ製品であれば、マッシュ工程の
加工料や変動費も含む紙袋製品全体で考える必要がある。外注に出して
も固定費負担は変動しない。従って(α-β)が正であれば外注すれば
利益が減少し、負であれば利益が増加することになる。
「利益」
・外注による利益の増:-[(α-β)円/トン×0.25 万トン]万円
「経費」
・輸送コストの増:1500 円/トン×0.25 万トン=375 万円
・労務費の減:-350 万円
・差引経費増減:375 万円-350 万円=25 万円
外注による利益の増加額が差引経費増の 25 万円を越える場合にのみ、
外注する方が有利である。
つまり、B工場の部分最適で考えると、
-[(α-β)円/トン×0.25 万トン]万円>25 万円
の場合は外注し、それ以外の場合は外注しない選択をする。
② C工場
C工場の紙袋製品の加工料単価:γ円/トン、変動費単価:δ円/ト
ンとする。
「現行の設備・人員で対応可能」なので、加工料単価、変動費
単価、固定費は変わらないので、
「利益」
・外注による利益の増:[(γ-δ)円/トン×0.25 万トン]万円
C工場の部分最適で考えると、
(γ-δ)が正であれば利益が増加するので製造を受託する。
③ 会社全体
会社全体で考える場合は、B工場とC工場を合わせれば良い。
「利益」
・利益の増:[(γ-α)-(δ-β)]円/トン×0.25 万トン
「経費」
・輸送コストの増:1500 円/トン×0.25 万トン=375 万円
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・労務費の減:-350 万円
・差引経費増減:375 万円-350=25 万円
会社全体の全体最適で考えると、
[((γ-α)-(δ-β))円/トン×0.25 万トン]万円>25 万円
の場合は外注し、それ以外の場合は外注しない選択をする。
両工場の加工料収入・変動費の額が与えられていないので、ほぼ同じ
だと仮定すれば、経費増になるので外注に出すべきでない。
2.コスト削減の手順
工場全体最適化によるコスト削減は、次の手順で進める。
工場診断の実施
↓
改善策の策定
↓
コスト削減額の試算
↓
改善策の決定
↓
改善の実施
↓
効果の検証
3.工場診断の実施
ここでいう工場診断は、運営管理診断である。
実態把握を行い、問題点および課題を明確にするのが目的である。
実施内容は次のとおり。
なお、特定の課題に絞って実施する場合もある。
(1)事業計画分析
① 工場の事業計画が会社の経営目標に合致しているか。
② 全体計画だけでなく、部門別・工程別目標や個人別目標が設定されて
いるか。それらは全体目標との整合性がとれているか。
③ 進捗管理はどのようにやっているか。PDCAサイクルが機能してい
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るか。
(2)財務分析
① 収益構造を分析し、問題点・課題を明らかにする。
② 過去2年間(実績)および今年度(計画)の貸借対照表、損益計算書、製
造原価計算書から経時変化を分析する。
③ 業界平均や他工場との比較により、自工場の特徴(強み・弱み)を分
析する。
④ 特に、以下の点を重視する。
・現在の財務の状況と目標とする財務の状況(特に利益)とのギャッ
プを明確にし、財務改善の目標を定める。
・「設備に関する費用」「人に関する費用」「エネルギーに関する費用」
に分類し、その比率から今後のコスト削減の戦略(方向性)を明確
にする。
・
「固定費」と「変動費」に分解し、安全性や収益性の観点から今後の
「固変比率」の在り方を検討する。
(3)レイアウト分析
① 関連性の高い設備が近くに配置され、効率的な配置になっているか。
② ヒトやモノの通路が確保され、安全性が確保されているか。
③ メンテナンスや清掃がしやすい構造になっているか。
④ 計器類は見やすい場所に設置されているか。
⑤ 微量原料等高濃度原料を残留しやすい搬送機で搬送していないか。
⑥ ペレット、圧ぺん等の乾燥前製品をコンベア搬送していないか。
(4)流れ分析
① 車、人、空気、モノ(原料・製品等)、情報の流れを調査する。
② 効率的な流れになっているか、流れの停滞はないか。
(5)バランス分析
① 各工程の能力バランスはとれているか。
② 原料や製品の銘柄数・数量と、置場面積やタンク本数・容量とのバラ
ンスはとれているか。
③ 作業量と人員配置のバランスはとれているか。
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(6)設備効率分析
設備が主体の工程については、設備効率分析を行う。
能力の定義
設計能力:連続製造(銘柄切替なし)した場合の設備設計能力
理論能力:連続製造(銘柄切替なし)した場合の実際の設備能力
実能力:銘柄切替時間、内段取時間、停止ロス時間等を含む実能力
効率・稼働率・設備総合能力の定義
効率 =理論能力÷設計能力×100(%)
稼働率=実能力÷理論能力×100(%)
良品率=良品出来高÷全出来高×100(%)
設備総合効率=効率×稼働率×良品率
① 各工程の効率・稼働率・設備総合効率を求める。
② 効率の悪い工程は、理論能力を下げている原因を調査する。
③ 稼働率の悪い工程は、稼働率を下げているロス要因を調査し、要因別
にその大きさを測定する。
④ 良品率の悪い工程は、その原因を調査する。
(7)作業効率分析
人の作業が主体の工程については、作業効率分析を行う。
① 人標準能力や標準時間が設定されているか。
② 作業日報・月報等により各作業の実能力(トン/人・H)および実作
業時間を求める。
③ 作業効率を下げているロス要因を調査し、要因別にその大きさを測定
する。
(8)生産性分析
作業別・工程別に生産性を求める。
① 人員生産性
1人当たり生産量(トン/人)=生産量÷人員数
1人当たり付加価値(千円/人)=付加価値額÷人員数
② 設備生産性
置場回転数(回)=置場通過数量÷置場容量
タンク回転数(回)=タンク通過数量÷タンク容量
設備投資効率(%)=付加価値額÷有形固定資産×100
-7-
(9)原単位分析
① 電力については、工程別および主要機器別に求める。
トン当たり電力使用量(kWH/トン)=電力使用量÷製造数量
② 蒸気使用量については、使用機器ごとに求める。
トン当たり蒸気使用量(㎏/トン)=蒸気使用量÷製造数量
4.改善策の策定
工場診断結果に基づき、改善策を策定する。
(1)全体最適化とは、最適な設備・人員構成を達成することなので、改善策
は、現状の設備・人員を最大限活用することを基本に改善策を検討する。
① 作業改善(段取改善、作業手順の見直し等)や設備のメーターリレ
ーの見直し等狭義の運営改善を再優先する。
② 人員削減計画に合わせた設備改善計画や人材育成計画を策定する。
中長期の要員計画を策定する場合には、逆にどのような改善を行え
ばどれだけ人員が削減できるかを検討する。
③ 更新投資の場合も単に更新するだけでなく、効率化や省力化、品質
改善、見える化等コスト削減や安全性の向上に繋がる内容とする。
(2)改善策は改善の4原則に基づき策定する。
改善の4原則:ECRSの順番に検討する。
E(Eliminate)=排除:なくせないか
C(Combine) =結合:一緒にできないか
R(Rearrange)=交換:順序変更はできないか
S(Simplify) =簡素化:簡素化・単純化できないか
(3)その改善をすれば、何がどれだけ改善できるかを明確にする。
「何が」にあたる部分がKPI(Key Performance Indicator:重要業
績指標)であり、改善を実施した結果、成果があがっているかどうかを
判断する指標である。日常の進捗管理は、このKPIを用いて行う。
したがって、改善策を策定する場合には必ずKPIを設定し、その目
標値を定める。
(4)改善策は、工程ごと・作業ごとにそれぞれ複数案を作成する。
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5.コスト削減額の試算
(1)設備投資等は見積もりをとり、改善策を実施するために必要な投資額や
費用を求める。
(2)必要な投資や運営の改善をし、KPIの目標を達成した場合のコスト削
減額を計算する。
① 改善を実施する工程や部署だけでなく、他の工程や部署に与える影響
についても考慮する。
② KPIの変動とコストの変動との関係について整理する。
・工程別の付加価値やコストの把握が必要である。
・もし、それが明確でなければまずそれを把握する方法を検討する。
③ KPIの変動とコストの変動との関係についてロジックツリーを作
成し、進捗管理に活用する。
例えば、KPIが「残業時間」であれば、残業時間の減少が残業代
の減少に繋がるので比較的簡単である。しかし、KPIが「稼働率」
であれば、稼働率の向上がどれだけ電力料等のランニングコストやそ
の他のコスト削減に繋がるかを明確にするのは難しい。
このような場合には一定の仮説に基づきロジックツリーを作成し
ておき、毎月の検討会でそれを検証していく方法をとる。
④ 改善策とそのコスト削減効果を見るためには、CVP(損益分岐点)
分析を活用した感度分析(参考資料1.)によりシミュレーションす
る方法が有効である。
6.改善策の決定
(1)各工程・各作業について、それぞれ全体最適化の観点で最も効果(コス
ト削減額)の大きい改善策を採用する。
(2)費用対効果を考慮し、優先順位を決め、ロードマップ(スケジュール)
を作成する。
誰が、何を、どのように、いつまでに実施するかを明確にする。
(3)進捗管理の方法についても決める。
7.改善の実施
(1)スケジュールに基づき、改善を行う。
(2)進捗管理
① 改善の進捗状況を把握するため、毎月、経営検討会(生産会議等)
を開催し、進捗管理を行う。
② 経営検討会は、過去1か月の進捗状況を確認し、最終目標達成を確
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実にするために、次の1か月にやることやスケジュールの修正・確
認を行う。この経営検討会を基軸にPDCAサイクルを回す。
③ 従って、月が替わればできるだけ早く(5営業日以内)実施するこ
とが望ましい。このため、財務諸表が出揃っていない場合でもKP
Iを用いて検討する。
8.効果の検証
目標はコスト削減である。従って、改善の実施がどれだけのコスト削減に
繋がったか、きちんと検証する必要がある。
(1)効果検証の手順
① 計画通りの活動ができたか。
② KPIの目標は達成でたか。
③ KPIの改善がロジックどおりコストの削減にむすびついたか。
(2)効果検証の手段
利益増減分析(参考資料2.)が有効である。
以上
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[参考資料]
1.感度分析
短期利益計画の設定に際し期待利益が目標利益に達しない場合には、さま
ざまな利益改善策を探求し、期待利益をできる限り目標利益に近づけなけれ
ばならない。そこで、各種利益改善策の採用による利益への影響を明らかに
することが必要になる。
感度分析とは、当初の予測データが変化したら結果はどうなるかを分
析することである。
[例題]
A社の次年度の直接原価計算による予想損益計算書は次のとおりであ
る。このテータに基づき、次の場合の営業利益を計算せよ。
① 加工料単価が5%下がったとき
② 販売数量が 10%増えたとき
③ トン当たり変動費を 100 円下げたとき
④ 固定費が 20,000 千円増えたとき
収入
変動費
限界利益
固定費
営業利益
予想損益計算書
3,000円/トン×200,000トン
1,000円/トン×200,000トン
600,000千円
200,000千円
400,000千円
350,000千円
50,000千円
[解答]
営業利益は次式で計算する。
営業利益=(加工料単価-変動費単価)×販売数量-固定費
① 加工料単価が5%下がったときの営業利益
(@3,000×(1-0.05)-@1,000)×200,000 トン-350,000 千円
=20,000 千円
② 販売数量が 10%増えたときの営業利益
(@3,000-@1,000)×200,000×(1+0.1)トン-350,000 千円
=90,000 千円
③ トン当たり変動費を 100 円下げたときの営業利益
(@3,000-@900)×200,000 トン-350,000 千円=70,000 千円
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④ 固定費が 20,000 千円増えたときの営業利益
(@3,000-@1,000)×200,000 トン-370,000 千円=30,000 千円
上記例題で分かるように感度分析は、事業計画策定時に目標利益を達成す
るためにさまざまな利益改善策を検討し、その利益改善策の効果をシミュレ
ーションするときに用いるのが基本である。
工程別および製品形態別の加工料や変動費を把握しておけば、各種改善を
実施した場合に、工程別や製品形態別の感度分析を行い、コスト削減額の試
算をすることができる。
2.利益増減分析
利益増減分析とは、利益が増減している要因を明らかにすること。
収入の増減
付加価値の変化
付加価値差異
数量差異
費用の増減
販売数量の変化
販売数量の変化
単位コストの変化
利益の増減
コスト差異
(1) 収入差異
収入差異は、付加価値差異と数量差異に分解される。
今期収入
今期トン当たり付加価値
付加価値差異
前期トン当たり付加価値
単
価
前期収入
数量
数量差異
前期数量 今期数量
収入差異=今期収入-前期収入=付加価値差異+数量差異
付加価値差異=(今期トン当たり付加価値-前期トン当たり付加価値)
×今期数量
数量差異=前期トン当たり付加価値×(今期数量-前期数量)
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(2) 費用差異
費用差異は、トン当たりコスト差異と数量差異に分解される。
今期費用
今期トン当たりコスト
トン当たりコスト差異
前期トン当たりコスト
単
価
前期費用
数量
数量差異
前期数量 今期数量
費用差異=今期費用-前期費用=トン当たりコスト差異+数量差異
トン当たりコスト差異=(今期トン当たりコスト-前期トン当たりコスト)
×今期数量
数量差異=前期トン当たりコスト×(今期数量-前期数量)
利益増減分析は通常、計画と実績の差異分析に用いる。毎月の経営検討会
等で課題を抽出し、次の一手(取り組み課題)を決めるために使う。全体の
利益増減分析で全体的な傾向を掴み、さらに具体的に工程別・製品別に分析
する。
例えば、省エネに取り組みエネルギー原単位を改善した場合、
① まず、エネルギー費の費用差異分析を行い、数量差異(増減)の影響を
取り除いたトン当たりコスト差異(増減)を算出する。
② 次に、トン当たりコスト差異を、原単位の増減による部分とエネルギー
単価の変動による部分に分けることにより、省エネの取り組みによる増
減額(効果)を算出する。
このように、利益増減分析を活用することにより、収入や費用を取り組みに
よる効果の部分とそれ以外の要因による部分に分けることができ、改善の効果
金額を算定することができる。
以上
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