人間関係づくりプログラム ∼効果測定ソフトでスキルアップ∼ 「人間関係づくりプログラム」の実施方法 「人間関係づくりプログラム」は、 ①学級活動授業案集とその授業で使用するワークシート集、 ② 質問紙、 ③効果測定ソフトの3つから構成され、年に3回質問紙調査(28 項目の質問)を行います。 効果測定ソフトに入力することで学級の状況や、個々の児童生徒の状況を把握でき、今後の学級 経営の参考となります。 4月最初の 実態把握 質問紙調査① 効果測定ソフト 学級活動で 授業案集の プログラムを 4時間実施 7月上旬の 効果検証 質問紙調査② 効果測定ソフト 2学期、日常 生活での効果定着 を図る取組や行事 等での応用 11 月中旬の 効果検証 質問紙調査③ 効果測定ソフト 協力校 小学校3年生の調査結果より 平均偏差 56 54 52 50 48 46 44 4月 7月 11 月 スキル総合 信頼感総合 スキル総合 自分の考えや気持ちを相手に伝え人間関係を つくり上げていくことにかかわる因子。 信頼感総合 学級活動授業案集・ワークシート集 自己肯定感や友人や他者に対する信頼感にか かわる因子。 ※以下、グラフの数値は、50 が県の「標準値」 質問紙 1「人間関係づくりプログラム」協力校の実践報告より 平成 21 年度に「人間関係づくりプログラム」協 力校として、県の指定を受けた小中学校が、「効果 測定ソフト」を活用した研究に取り組んでいます。 実践報告から、プログラム実施前の4月と実施後の 7 月 を 比 較 す る と、 特に小学校3年生の 「信 頼 感 総 合」と、中 学 校 2 年 生 の「ス キ ル 総 合」に 大 き な 成 果が見られました。 小学校3年生 中学校2年生 平均偏差 53 52 51 4月 50 7月 49 48 47 信頼感総合 スキル総合 協力校調査結果より 4月最初の実態調査で、小学校3年生や中学校2年生の平均偏差が、県の標準値 (50) よりも低い数値を示しましたが、1学期の「人間関係づくりプログラム」 の実践で、友達 と接する際に必要なスキルを、楽しく理解しながら習得することができたため、お互い の信頼関係が高まり、自尊感情や自己効力感が高まったものと考えられます。 1 2 効果測定ソフトによる学級分析を通して <協力校A小学校 6年B組 実践の概要> 4月最初の実態把握 Sさん、 Tさんのように、 Dのカテゴリーに 属する子どもは、人間関係づくりが苦手で、 学級に対しての不安傾向が強いと考えられ ます。そのため、学級や学年で特別な手だて を講じる必要があると思われます。 スキルと信頼感のバランス(4月) 90 80 B A 70 信頼感総合 ● S さんは、小学校4年生の時から欠席が徐々に 増え、学級でも居場所がない様子でした。 ● T さんは、友達と話をすることが苦手で、自分 から仲間に入っていくような姿は、あまり見ら れませんでした。 60 50 40 30 20 10 10 T D C S 20 30 40 50 60 70 80 90 スキル総合 実態に基づいた支援と対策 ■ SさんやTさんに役割を持たせたり、よいところをほめたりすることで、自分のよさに 気付き、自己存在感を感じられるように支援する。 ■ グループ内で、互いを認め合う活動(エクササイズ)を繰り返すことにより、スキルの 定着を図る。 ■ ケース会議等で、SさんやTさんについて、担任も含めた複数の目で多面的に見ながらア プローチしていく中で、手だてを考えていく。 個別の支援が学級集団を向上させます 11 月中旬の効果検証 80 B A 70 信頼感総合 ● S さんは、6月頃から友達のよさを認める発 言が少しずつみられるようになってきました。 ● Tさんは、学級内に居場所ができ、友達とコ ミュニケーションをとる場面が増えたため、精 神的にも安定してきたと思われます。 スキルと信頼感のバランス(11 月) 90 60 50 40 S 30 6年B組 担任の感想 20 10 10 D 20 30 40 T C 50 60 70 80 90 スキル総合 「活動(エクササイズ)が楽しい」などの反応が多く見られたので、2学期もプログラ ムの要素を取り入れました。 また、SさんやTさんの変化とともに、他の子どもたちも、周囲に気を配ったかかわ りが持てるようになり、学級の全体に温かな雰囲気が感じられるようになりました。 3 人間関係づくりプログラム協力校 小学校の実践より 小学3・4年生 ★ 質問紙「信頼他者」の結果を見て、友達関係で悩んで いる子、困っている子を見つけ、意識して声をかけるよ うにしました。 ★ 質問紙「信頼自己」が低い子には、よいところをほめ たり、自分のよさに気付けるよう声かけをしたりして、 自己存在感を感じられるような配慮をしました。 ★ 休み時間に、プログラムにある「くまとあなぐら遊び」 を計画し、仲よく楽しく活動しながら学級の人間関係づ くりのために役立てました。 3年生「くまとあなぐら遊び」 小学5・6年生 出席番号 解決スキル 言語的スキル 気 遣 い 信頼他者 信頼自己 感情統制 ★ 保護者から子どものことで相談を受けたとき、あらた めて「スキルと信頼感のバランス」のカテゴリーを確認 したところ、意外な位置に属していたため、その後のか かわりに大変役立てることができました。 5401 19.5 38.5 60.8 49.8 41.4 44.9 5402 60.2 45.9 55.6 57.1 57.0 70.1 ★ 生徒指導上問題がなくても「解決スキル」や「感情統制」 5403 50.7 52.9 49.3 52.1 49.9 32.1 の得点が低い子を見つけ、日常の生活の中で意識して見 守るように心がけました。 <表1> <表1> 「解決スキル」と「感情統制」 ★ 中学校区内にある2つの小学校で、交流会を行った際 に、プログラムにある「似 た と こ ろ 探 し ゲ ー ム」を 取 り 入 れ ま し た。場 の 雰 囲気が大変和やかになり、 楽しく交流することがで きました。 6年生「似たところ探しゲーム」 人間関係づくりプログラム Q & A Q プログラムが、その時の学級の実態にあっていないと判断したときにはどうした らいいですか? A 学級の実態に合わせることが何よりも大切です。実施日を変更したり、構成の仕 方を工夫したりしながら、アレンジしていくことで、より効果的に実施できます。 Q 学年全体で取り入れる際に、効果的な方法はありますか? A「人間関係づくりプログラム」の目的や内容を、学年全体のオリエンテーション で説明するのも効果的です。また、学年全体で簡単な活動(エクササイズ)を取 り入れることで、子どもたちも興味・関心を持って取り組みます。 4 人間関係づくりプログラム協力校 中学校の実践より 中学 1・2 年生 ★ 「人間関係づくりプログラム」を学校体制で実施したた め、教師がお互いに「どのようにやるのか」「どんなこと に気を付ければよいのか」という話し合いや、準備を合 同で行うことができ、計画的に進めることができました。 ★ プログラムの要素を学校全体で取り入れたことで、対 処療法的な生徒指導から積極的な生徒指導への変換を図 ることができました。 ★ 気になる生徒について、定期的なケース会議以外にも、 学年部で検討したり、必要に応じて関係者同士で話した りすることで、タイムリーな支援につながりました。 ★ 9月以降にも、月に1回のペースで「構成的グループ エンカウンター」や「思春期のライフスキルプログラム」 の中から、発達段階に応じた有効なプログラムを選定し て、実施することにしました。 <表2参照> 中 2「さわやかさんタイプで 話してみよう」 立ったままの話し合いの様子 A 中学校 学級活動年間計画への位置付け 4月 ① 5月 ② 6月 ③ 7月 ④ 9月 ⑤ 10 月 ⑥ 11 月 ⑦ 1年生 12 月 ⑧ 効 効 果 果 測 測 測 定 定 定 ① ② ③ 2年生 果 3年生 学級の基本 聴いて伝え ストレスと 出会い うまく付き (人間プロ)ルールづく て り (聴き方) 合える② (ライフスキル)(人間プロ)(人間プロ) 人間プロ(人間関係づくりプログラム) 本当の自信 さわやかさ 3年生の秋 をつける方 んタイプ に 法 (人間プロ)(SGE) おもしろ村 (ライフスキル) (SGE) SGE(構成的グループエンカウンター) 1月 ⑨ 2月 ⑩ 3月 ⑪ 気になる自 いろいろな 友人関係を 月世界 画像 感情をあげ 見つめる (SGE) (SGE) てみよう (ライフスキル) (ライフスキル) 効 本当の自信 私たちの合 責任感を持 出会い 聴いて伝えて ストレスと ストレスと をつける方 唱コンクー ちつつ成長 (人間プロ)(人間プロ)うまく付き うまく付き ル H O W する 学級の基本 合える① 合える② 法 ルールづくり(人間プロ)(人間プロ) (ライフスキル) マッチ (ライフスキル) (SGE) (ライフスキル) 学級の基本 待ち合わせ さわやかさ 私たちの体 私たちの得 感じ方の個 出会い 育祭 HOW た宝物 人差 (人間プロ)ルールづく(聴きかた)んタイプ り (SGE) (ライフスキル) (人間プロ)(人間プロ) マッチ (ライフスキル) (SGE) <表2> 問題解決ス 目標設定の 目標設定の 私の四面鏡 キル ための4つ ための計画(SGE) (ライフスキル) のステップ (ライフスキル) (ライフスキル) 4段階話法 オープンザ 25 歳の私から 別れの花束 の手紙 (人間プロ)悩み (SGE) (SGE) (SGE) 20 年後を夢見て (ライフスキル) ライフスキル(思春期のライフスキルプログラム) 静岡の子どもたちを、静岡の教育を、よりよくできるのは静岡の教職員しかいない。 それは、静岡を愛し、静岡を知る教職員にしかなしえない。チェンジからアクションへ。 人間関係づくりプログラムは、平成 23 年4月から施行される学習指導要領が目標とする 「望ましい集団活動」や「よりよい人間関係」を育む具体的な手だてでもあります。教育活 動の基礎を育むこのプログラムは、先行実施している学校が示すように、子どもたちが自分 を大好きになる活動です。 今こそチェンジからアクションへ。 「人間関係づくりプログラム」作成委員会委員長 東京聖栄大学教授 岡田 弘 ※「人間関係づくりプログラム」「人間関係プログラムの操作マニュアル」を御覧になりたい方は、 「学校教育課 WEB アンケートシステム」(http://www.gimukyo-anq.pref.shizuoka.jp)よりダウンロードすることが できます。 〒420-8601 静岡市葵区追手町9番6号 静岡県教育委員会学校教育課 ℡ 054-221-3141 FaX 054-221-3558 この印刷物は、9,200部作成し、1部あたりの印刷経費は8.0円です。 紙へリサイクル可
© Copyright 2024 ExpyDoc