Harpagon JAP

CONCOURS LYCÉEN DE SKETCHS
DE L’OUEST DU JAPON
2015年度 TEXTE 3 Harpagon
Frosine
: 旦那様、顔色がよろしいですね、お元気そのものですね。
Harpagon : 誰がだ? このわしがか?
Frosine
ざいます。
: はい、旦那様、正直申し上げて、このような元気はつらつとしたお顔の色は初めてでご
Harpagon : 本当か?
Frosine
: はい、全く。このような若々しいお姿もはじめてでございます
Harpagon : だが、わしは60歳を越えておる、もう若くはないぞ。
Frosine
: 旦那様、結婚には年齢がございません。60歳といえば、まさに人生の春でございますよ
Harpagon : お前の言う通りかもしれん。でも、あと20歳は若返りたいものだ。
Frosine
: お気持ちはわかります。でもその必要はありません。100歳まで生きられますよ。
Harpagon : 大袈裟なことを言っちゃいかんよ。.
Frosine
: 手のひらを見せてくださいまし。いいですか、この生命線をごらんください。
Harpagon : どういうことかね ?
Frosine
: 先程100歳までと申しましたが、そうですね、120歳まで大丈夫かもしれませんね。
Harpagon : ともかくありがとうよ!ところで、例の件はどうなってるかね?
Frosine
: まあまあ落ち着いてください!旦那様が一目惚れされたマリアーヌ様には、じっくりお
話してございます。私にお任せくださいまし。説き伏せられない女性は一人もおりません。旦那様がマリ
アーヌを愛し、結婚を望んでいる旨、彼女の母親にも伝えてあります。
Harpagon : それで母親の反応は ?
Frosine
ります。
: とっても満足のご様子でした。マリアーヌとの結婚には承諾してくださると確信してお
Harpagon : 大いに結構!よくやった、フロージーン!ところで、娘の結婚に際して、お金をどれくら
い与えてくれるかも尋ねてみたかい。普通、結婚には親が娘に何がしかの、その∼、持参金として、たん
まりお金をあげるものだろう。
Frosine
: 当然でございます。
1 - Concours lycéen de sketchs de l’Ouest du Japon - Harpagon
Harpagon : 実はな、もう一つ気になることがあるんだよ。あの娘との歳の差じゃよ。あまりにもかけ
離れているだろう。わしのような年寄りを気に入ってくれるかどうかなあ?
Frosine
: 旦那様は、あの娘のことはちっともご存じないですね、あの娘は、こう言ってはなんで
すが、ちょっと変わり者でして、愛する相手は年寄りに限ると、そのような女性なんでございます。
Harpagon : 本当かい?
Frosine :
勿論ですとも。あの娘は旦那様のようなハンサムで60歳の年寄りが好きなんでございます
よ。喜んで結婚すると思います。
Harpagon : お前の口からそのような言葉が聞けるとは、嬉しいね!
Frosine
: ところで、旦那様、ちょっとお願いごとがございます。つまりその今、係争中の件なん
ですが、お金不足で敗訴になりそうなんです。私にはとても大事な訴訟でして。そのためにお力を貸して
いただけないものかと。
Harpagon : それはそちらの問題で、わしとは関係ない。今はあの娘との結婚話しか興味がないわい。
Frosine
: 旦那様、あの娘は今すぐにでも結婚する気でいるんですよ。
Harpagon : 喜ばせてくれるじゃないか、ありがとうよ、フロージーヌ。
Frosine
: 旦那様、どうかお助けください! Harpagon : あーもううんざりだよ! わしには関係ないことだね。
Frosine
: 旦那様、どうかお願いいたします。
Harpagon : いいかんげにしてくれ! わしは行くぞ!.
Frosine
: なんて金の亡者なんだ、この人は!
Adaptation de l Avare (モリエール原作:守銭奴)より
par Yoshinori TACHIBANAKI
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