全学統一入学試験・学部別入学試験

2015年度入試の
傾向と学習アドバイス
分析:城南予備校
163
英 語
全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<学習アドバイス>
◎ 60 分で 39 問。シンプルな良問が多く、バランス良く解けば余裕をもって取り組める問題量で
ある。
◎ 語彙・文法系の問題は基本レベルのものが多く、読解系の問題も標準的な語彙レベルの読みや
すい良質な英文である。昨年度に比べると間違えやすい問題が多いように思える。
【Ⅰ】類義語選択問題
下線が引かれている単語・熟語に“最も意味が近いもの”を選ぶのがこの問題形式の解き方である。
以下のように考えると良いだろう。
①“同意表現”とされるものがあればそれを選択する
[例]
⑺ in advance ≒ beforehand「あらかじめ」等
② ①が無ければ、
“最も意味が近いもの”を選ぶ
[例]
⑵ contemporaries「同時期の人」→ living at the same time
今年度の「全学統一入学試験」の問題は、大部分が①に該当するものであり、長文読解において
も欠かすことのできない重要な単語・熟語ばかりある。単語・熟語帳のセンター試験レベルまで
を繰り返し、このレベルの問題を確実に正解できるようになろう。
【Ⅱ】文法・語彙問題
今年度の「全学統一入学試験」の問題は全て標準レベルであり、文法知識の定着度をはかるのに
最適な問題である。⒃ は be said to 原形「~だと言われている」という知識だけでなく、時制の
ズレや受身関係を考慮して選ぶという意味ではやや難しい。
【Ⅲ】整序問題
全て標準レベルであるが、ひっかかりやすいポイントを含む問題が多かった。
[例]
If you hadn’t, I would have forgotten to hand(in my paper !)
仮定法過去完了の文であるが、hadn’t の後ろに reminded me が省略されている。
(Tommy was already in the lab)getting the equipment set up(.)
getting 以下が分詞構文だが分かりづらい。set up は、get O C の C の働きをする過
去分詞として使われている。
Ⅰ had my license taken away(for speeding.)
had taken away my license とする受験生が多いが、「私が自分の免許を取り上げた」
という意味になってしまうのでこの語順は不適。
このレベルの問題を確実に解けるようになることを当面の目標として文法学習に励むとよいだろ
う。
164
【Ⅳ】会話問題
大部分は会話の内容を問う問題なので、
“会話文型の内容一致問題”と考えて良い。正解となる選
択肢の根拠は探しやすいが、その他の選択肢が紛らわしく、昨年度に比べるとやや難しい。ただし、
は選択肢を絞りやすいだけに確実に正解したいところ。
【Ⅴ】長文問題
【Ⅳ】同様に、正解となる選択肢の根拠は探しやすいが、その他の点で紛らわしいものが多い。
[例]
as many as … ≒ no less than …「…もの」で答えは出せるが、
as many as 15 percent が fewer(比較級)の前に置かれて比較級の差を示していると
いうことまで含めると難しい。
3 パラグラフの内容を指しているので、② The disadvantages which … accompany
spelling reform. が正解であることは分かる。しかしながら、are alleged to 原形「(聞
くところでは)~すると言われている」が難しい。
以上の点から今後の課題をまとめてみよう。
① 内容一致問題は“本文の該当箇所内容に最も近いもの”を選ぶ問題である。
選択肢の不正解の根拠がはっきりしなくても、正解となる選択肢の根拠が分かったならば、
その選択肢を答案として選ぶ勇気を持つこと。
② 語彙力は決定的に重要。
例えば、2 パラ第 1 文の in favor of、3 パラ第 1 文の against の意味が分かれば、2 パラで
は spelling reform に対する賛成の論、3 パラでは反対の論をそれぞれ述べていると分かる
だろう。このように一つの単語・熟語の意味が文脈の方向性を決定付けることがあるので、
語彙力の増強は英語学習の軸として計画的に進めていこう。
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英 語
学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<文学部・農学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>
<学習アドバイス>
◎ 60 分で 38 問。シンプルな良問が多く、バランス良く解けば余裕をもって取り組める問題量で
ある。
◎ 前半の語彙・文法問題はレベルが高いものが多いが、後半の読解問題(会話・長文問題)は紛
らわしい選択肢が少なく正解しやすい問題が多い。読解問題でどれだけ得点を稼げるかが鍵と
なるテストである。
【Ⅰ】類義語選択問題
概要については「全学統一入学試験【Ⅰ】
(P164)の解説」を参照して欲しい。
昨年度は、“同意表現”を探すというよりも単語の意味を考えて“最も意味が近いもの”を選ぶ難
しめの問題が多かったが、今年度は前者に該当するような問題が多く、易しかった。
①[同意タイプの例]
⑶ due to … ≒ owing to …「…のために・せいで」
⑻ most of the … ≒ almost all …「ほとんど全ての…」
②[最も似た表現タイプの例]
⑴ a revolution「革命・大変革」
→ a major change
⑺ the flood-hit areas「洪水に襲われた地域」
→ the areas which suffer from flood damage
総じて難易度は②>①となるが、今年度の「学部別入学試験」の問題は②であっても確実に正解
したいレベルの語彙ばかりである。
【Ⅱ】文法・語彙問題
知識問題が多く、苦戦した受験生が多かったと予想できる。しかしながら、⑽ fall into …「…に
分類される」
、⑾ as to …「…に関して」
、⒁ settle on…「…に決める」は正解したいところである。
また、⑿ や ⒀ のような文の構造を判断する問題は、英文を読む際にも必要なスキルなので判断で
きるようになりたい。
⑼ as long ago as the 1960s は、the 1960s「1960 年代」が long ago「遠い昔」であると主観的判
断を加える言い方だがかなり難しい。
⒃ は SVC → CVS 型の倒置と so … that 構文を組み合わせた典型問題だがやや難しい。
【Ⅲ】整序問題
並び替え問題は、文法・熟語などの知識を問うタイプ、節・句や語法を意識して並べ替えるタイプ、
またはその両者を組み合わせて考えるタイプのどれかにおおよそ分類できる。⒇ 最上級相当構文、
in honor of …「…に敬意を表して」
、 end up with …「…で結末をつける」等は知識があれ
ば並べ替えることが可能なので正解したいところである。
166
【Ⅳ】会話問題 ・【
Ⅴ】長文問題
内容一致問題では、
正解となる選択肢は“同じ意味の別の表現”にすり替えられていることが多い。
【Ⅳ】 PERROTTET の 2 つ目の発言
They would hire the greatest poets of the day to write poems …」
→ ① They paid famous poets to write poems.
would hire が paid にすり替えられている。
PERROTTET の 3 つ目の発言
… the people disliked the content of the poems. So, the angry crowd …
→ ④ They were offended by the words of the poems.
angry が offended に、the content が the words にそれぞれすり替えられている。
また、問題文をよく読み「指示通りの内容」を選ぶことも肝要である。
【Ⅳ】 ① Because the poetry had been written in another language. が正解。
②の the quality of the original poetry was not very high. は、Also で並列されてい
る別の部分の記述で、設問の該当箇所ではないので不正解である。
【Ⅴ】 ① To increase exports. が正解。
②の deal with the low birthrate は、本文中に because of a low birthrate との記述は
あるが、changing the animation の理由ではないので不正解である。
【Ⅳ】と【Ⅴ】は、上記の点に気を付けさえすれば全て正解できる素直な良問である。
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英 語
学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<文学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>
<学習アドバイス>
◎ 60 分で 38 問。問題量に変化は無いが、大問の順序が変わり、他の日程と似たような構成になっ
ている。【Ⅳ】に時間を割きすぎると読解問題にあてる時間がなくなってしまうので注意が必
要である。
◎ 昨年度は難しかったが、今年度は整序問題を含め易化している。
<大問別アドバイス>
【Ⅰ】類義語選択問題
概要については、
「全学統一入学試験【Ⅰ】
(P164)の解説」を参照して欲しい。
⑵ make up … は「埋め合わせる」「化粧する」「整える」など様々な意味があるが、今回は「…
をでっちあげる」という意味なので invent が答えとなる。
⑶ including … は「…を含めて」という意味だが、直後の目的語には主節の具体例にあたる語句
を置くことが多い。結果として such as と意味が似る。
また、今年度は解き方や考え方を工夫することで正解できる問題が多い。
⑷ on the verge of …「 今 に も … し よ う と し て 」 は や や 難 し い が、extinction「 絶 滅 」 か ら
endangered を導くことは可能である。
⑺ myth は「作り話」という意味だが、仮にその意味が分からなくても、下線部が空所になって
いると仮定して問題を解いてみれば untrue だと分かるだろう。
【Ⅱ】文法・語彙問題
⑾ 前文を受ける非制限用法の which、⑿ The 比較級 S V …, the 比較級 S V ~、⒀ help(to)原形、
⒁ as a result of …「…の結果として」は確実に正解したい問題。
⒂ if(they are)left という主語 + be 動詞の省略
⒆ what + 不完全文「…すること・もの」
by につられて which としてはいけない
⒇ allow O to 原形 の分詞構文
これらの問題まで正解できれば上出来である。
【Ⅲ】会話問題・
【Ⅴ】長文問題
他の日程の問題同様、内容一致を中心とする問題である。今回は文が読みづらい場合の対処法を
考えてみよう。
語彙学習や節・句を中心とした英文読解の技術は日常的に訓練すべきものであるが、英文を読ん
でいると、とりわけ会話文などでは“読みづらい”と感じることが多いはずだ。この場合に役立
つのが「文の論理的つながり(文脈)
」である。
例えば、【Ⅲ】の を考えてみよう。I might join you. の意味を問う問題だが、この文を単語通
りに訳してもその真意は見えないだろう。しかしながら、I’m going to have today’s special. →
Taiki recommends it. Oh, right ! I might join you. という文脈に沿って考えれば、「あなた同様に
today’s special を注文しよう」という意味が見えてくる。
168
【Ⅴ】の最終パラグラフも同じように考えると良い。She explains,“Life happens and you can’t
sit by a bedside week after week.”という部分がよく分からなくても、直後の In some cases,
new mothers are recovering from surgery after giving birth, or already have their hands full
with a small child or two at home. という文脈に沿って考えれば、「赤ちゃんが生まれても、ずっ
と面倒を見ることはできない。
」という趣旨の記述だと推測できるだろう。このような推測のプロ
セスを直接問いかける設問もあるので、意識的に訓練していこう。
【Ⅳ】整序問題
空所を埋める形式の整序作文問題で、前後の英文を参照する必要がある手間のかかる問題である。
加えて、選択肢が多いため、単純な語彙や文法表現が分かれば答えられる他の日程の整序作文と
は一線を画す難しさがある。考え方をまとめてみよう。
①“目的語が必要な動詞が選択肢にあったら、直後には名詞(句・節)を疑う”等の「語句のつ
ながり」で考える。
②「語句のつながり」の組み合わせが多すぎる場合は文脈を利用する。
今回は、 ・ の問題共に but の逆接関係が利用できるので、②の考え方を利用すると良い。
technically「厳密には」という言葉が突破口になる。空所Aまでの文脈で、
「トマトはフルーツ
である」という文脈が読み取れるだろう。それを踏まえて“厳密には”と表現しているのだか
ら、最初は「フルーツである」という文脈が、続く but の後ろには「フルーツではない」という
文脈が続くと予想できる。並べ替えた文は、
(So, the answer to the question is that a tomato is
technically)the fruit of the tomato plant but it’s used as a vegetable(in cooking).となる
まず but が not true と what actually happened のあいだの逆接関係を作っていると予想できる。
あとは、どちらをどちらに配置するかを考えれば良い。As in all such legends「そのような全て
の伝説でも同様に」を考慮すると、前半部分が not true であり、後半が what actually happened
と 分 か る。 並 べ 替 え た 文 は、
(As in all such legends, this is almost certainly)not true in its
details but the story contains elements of what actually happened(.)となる。
169
国 語
全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
< 2015 年度入試の傾向>
《出題形式》
昨年度と同じく、試験時間 60 分で大問 2 題(いずれも現代文)の構成である。漢字の読み書
きの問題のみ記述式で、あとは全てマーク式の問題であった。
《出題内容》
例年同様、大問二問とも現代文の評論が出題されていたが、昨年度に比べて第一問で 2 題、
第二問で 1 題問題が減っていた。第一問は柄谷行人『帝国の構造』からの出題で、中国の周辺
国における漢字の代替物である表音文字が創られた事情や背景をたどりながら、日本にのみ起
きた漢字の内面化について論じたものであった。第二問は、渡辺裕『サウンドとメディアの文
化資源学』からの出題で、昨今人文学研究で定着しつつある「構築主義」「社会構成主義」の考
え方を説明した上で、それを「音楽」へのアプローチとして取り入れることが可能であること
を論じた文章であった。どちらもかなりの長文な上に、内容的にもやや抽象度が高い。
個別の設問は、漢字の書き取りや読みに始まり、傍線部解釈・傍線部理由説明・趣旨判定な
どヴァリエーションに富んでいるが、概ね標準的な問題になっている。
《出題レベル》
文章の内容の抽象度は昨年度と比べやや高くなったが、設問は標準レベルである。しかし例
年通り一つ一つの選択肢の正誤を全て判断させる問題が多く、これに加えて課題文もかなりの
長文なので、時間配分に気をつけて取り組む必要がある。選択肢自体は素直なものが多いので、
正確に速く読み進める力が求められる。
<学習アドバイス>
◎漢字力の強化
毎年、難度の高い漢字の読み書き問題が 10 問前後出題されるので、これはなかなか侮れない。
しっかりとした対策が必要であろう。
◎長文対策と語彙力アップ
上述したように、毎年かなりの長文が出題されている。そのうえ、選択肢全ての正誤を判断
させる問題が多い。このタイプの問題は、傍線部の前後だけを読むといった部分読解では対応
出来ないことが多い。したがって、日頃から長い文章を正確に速く読む訓練が必要であろう。
また、今年度の評論のように抽象度の高い文章が出題されることもあるので、漢字対策の意味
も含めて普段から用語集などで語彙力を強化しておくことが求められる。
◎教養力強化
新書や文庫などを中心に比較的近年に出版された教養書からの出題が多い。図書館の「話題
の本」などに目を配って、人文科学・社会科学、芸術など様々なジャンルの本を読み、幅広い
教養力をつけておくことが望ましい。
170
国 語
学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<文学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>
< 2015 年度入試の傾向>
《出題形式》
昨年度と同じく、試験時間 60 分で大問 2 題(いずれも現代文)の構成である。設問のほとん
どがマーク式であるが、今年度は記述式の説明問題が出題されていたことが大きな変更点であ
る。
《出題内容》
大問 2 題とも現代文の評論である。第一問は網野善彦『東と西の語る日本の歴史』からの出
題で、日本の東西の文化の差についての諸学者の見解を参照しながら、日本列島に住む人間集
団をはじめから一つと考えることの問題点を指摘している内容であった。第二問は、武田千香
『ずらしの美学』からの出題で、
ブラジル独特の「規範や常識からのズレを好む文化」をサッカー
での所作やサンバのリズムなど多くの具体例を挙げつつ論じた文章であった。個別の設問は、
漢字の読みと書き取りに始まり、傍線部解釈・傍線部理由説明・空欄補充・趣旨判定・抜きだ
し問題などヴァリエーションに富んでいる。そして前述したように、三十五字以内で説明する
記述式の問題も今年度は出題されていた。
《出題レベル》
第一問は文章の内容自体はとりやすいが、何人もの論者の意見の違いを捉えさせる問題はな
かなか面倒であったと思われる。第二問も文章自体は読みやすいものであったが、前年に出題
されていなかった記述式の説明問題でとまどう受験生もいたかもしれない。しかし、その一方
で素直な問題もあり、全体的には昨年度と変わらず標準レベルの難度であると言えるだろう。
<学習アドバイス>
◎漢字力の強化
毎年、難度の高い漢字の読み書き問題が 10 問前後出題されるので、これはなかなか侮れない。
しっかりとした対策が必要であろう。
◎スピードアップ
出題された文章はそれほど難解なものではなかったが、やはり比較的長い文章であった。そ
して、おそらく受験生が苦労すると思われる記述問題が増えていた。この記述問題にも十分な
時間を確保するためには、やはり速く正確に読む力が求められる。早めにセンター試験レベル
問題などを使ってトレーニングしておくことが望ましい。
◎教養力強化
新書や文庫などを中心に比較的近年に出版された教養書からの出題が多い。図書館の「話題
の本」などに目を配って、人文科学・社会科学、芸術など様々なジャンルの本を読み、幅広い
教養力をつけておくことが求められる。
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国 語
学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<文学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>
< 2015 年度入試の傾向>
《出題形式》
昨年度と同じく、試験時間 60 分で大問 2 題(いずれも現代文)の構成である。漢字の読み書
きの問題のみ記述式で、あとは全てマーク式の問題であった。
《出題内容》
大問 2 題とも現代文の評論であったが、第一問で昨年度より一題問題が減っていた。第一問
は原研哉『白』からの出題で、白い紙に字を書くことの不可逆性と現代のインターネットの無
限に更新を続ける知を比較しながら、
「白」が持つ文化的意味を論じた内容であった。第二問は
矢田部英正『たたずまいの美学-日本人の身体技法』からの出題で、日本人の身体や所作に数
百年数千年の生活の歴史が刻まれていることを論じたものであった。
個別の設問は、漢字の読みや書き取りに始まり、傍線部解釈・傍線部理由説明・空欄補充・
趣旨判定などヴァリエーションに富んでいるが、概ね標準的な問題になっている。
《出題レベル》
課題文は全体としてやや長めで、第一問がやや抽象度が高いものであったが、第二問は比較
的読みやすいものであったので、全体としては標準レベルの文章と言えるであろう。 ただし設
問は、一つ一つの選択肢の正誤を全て判断させる問題が多く、空欄補充なども文章全体を読ま
ないと判断しづらいものが散見されるので、時間配分に気をつけて取り組む必要がある。
<学習アドバイス>
◎漢字・語彙力の強化
毎年、難度の高い漢字の読み書き問題が 10 問前後出題されるので、これはなかなか侮れない。
しっかりとした対策が必要であろう。また、故事成語や四文字熟語、慣用句なども意外な形で
出題されるので注意しておきたい。
◎長文対策とスピードアップ
上述したように、空欄や傍線部の前後だけを読むといった部分読解では対応出来ない問題が
少なくない。したがって、長い文章を正確に速く読む訓練が必要であろう。また、出題される
評論には抽象度の高いものも時折見られるので、漢字対策の意味も含めて普段から用語集など
で語彙力を強化しておくことが求められる。
◎教養力強化
新書や文庫などを中心に比較的近年に出版された教養書からの出題が多い。図書館の「話題
の本」などに目を配って、人文科学・社会科学、芸術など様々なジャンルの本を読み、幅広い
教養力をつけておくことが望ましい。
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数 学
全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
< 2015 年度入試の傾向>
【1】
【2】がマークシート、
【3】が記述式という出題形式や、出題指定の範囲全体からバランス
よく出題されている点は変化していません。
【1】は基本事項が問われていますから、確実に得点したいところです。ただし、⑷ の「3 次方
程式の解と係数の関係」や ⑹ の「相加平均と相乗平均の関係」
(または「無理数の平方完成」
)を
苦手としている受験生も少なくないため、差がついたかもしれません。
【2】は【1】よりもやや程度の高い事項に関する問題となっています。⑴ における「k ¢ k !=
(k+1)! ¡ k !」という変形、⑵ の不等式の問題は誘導があるとはいえ、難しく感じた受験生も多かっ
たと思われますので、出来・不出来の差がついたでしょう。すべては埋められなくても、解ける
部分は穴埋めするようにしましょう。⑶ は基本的な問題のため落とせません。
【3】は数列の漸化式に関する問題で、⑴ の結果を ⑵ で利用するところが難しく、差がついたで
しょう。
全体として昨年度と同程度の難易度・量の出題となっています。
<学習アドバイス>
どの分野もバランスよく出題しようという意図がはっきりと読み取れるセットが続いています。
まず、教科書で定義や公式を確認することから始めましょう。次に、教科書の例題や練習問題
を繰り返し解いて、全分野の理解を確実なものにすることが必要です。加えて、教科書傍用問題
集の標準レベルの問題がスラスラ解けるように練習しておけば試験本番でも高得点が望めるで
しょう。ただし、時間に対して問題量がやや多いので、スピードは磨いておく必要があります。
特に、「三角関数の計算」
「指数・対数の計算」
「場合の数・確率の計算」
「微分法・積分法の計算」
は頻出で、確実に得点すべき問題であることが多いです。素早く・正確に計算できるよう練習し
ておくとよいでしょう。また、今年度は「方程式の解と係数の関係」、「不等式の証明」、「数列の
和・漸化式」でやや高度な問題が出題されています。入試向けの標準的な問題集や過去問で十分
に練習しておきましょう。
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数 学
学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<農学部・工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>
< 2015 年度入試の傾向>
【1】
【2】がマークシート、
【3】が記述式という出題形式や、出題指定の範囲全体からバランス
よく出題されている点は変化していません。
【1】【2】は小問集合ですが、計算力・深い理解を要する問題も少なくありません。特に【1】 ⑸、
【2】
⑵ ⑶ ⑷ は苦戦した受験生が多いと思われます。
【3】は農学部、工学部とも解き切るには計算力、洞察力が必要な問題で、例年通りといえます。
また、ここ数年、
【3】は農学部、工学部ともやや難易度が高く、解き切るには計算力、洞察力が
必要な問題となっています。
全体として、高得点を取るには確かな実力が必要で、充実した内容となっています。
<学習アドバイス>
出題傾向などは全学統一入学試験とほぼ同様です。教科書の章末問題や標準的な問題集で十分
に練習しておきましょう。また、過去問は良問が多く、良質の問題集といえます。別日程の問題
も含め、本冊子をよく活用するとよいでしょう。
数 学
学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<工学部・経営学部・教育学部・芸術学部・リベラルアーツ学部・観光学部>
< 2015 年度入試の傾向>
【1】
【2】がマークシート、
【3】が記述式という出題形式や、出題指定の範囲全体からバランス
よく出題されている点は変化していません。
【1】
【2】は小問集合ですが、深い理解を要する問題も少なくありません。特に【2】
⑴ ⑶ ⑷ は苦
戦した受験生が多いと思われます。また、ここ数年、
【3】は農学部、工学部ともやや難易度が高く、
解き切るには計算力、洞察力が必要な問題となっています。
全体として、高得点を取るには確かな実力が必要で、充実した内容となっています。
<学習アドバイス>
出題傾向などは全学統一入学試験とほぼ同様です。教科書の章末問題や標準的な問題集で十分
に練習しておきましょう。また、過去問は良問が多く、良質の問題集といえます。別日程の問題
も含め、本冊子をよく活用するとよいでしょう。
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化 学
全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
< 2015 年度入試の傾向>
出題は大問 3 題で、解答形式はすべて選択式である。
【Ⅰ】は理論化学、無機化学を中心とする知識問題が多く出題される。2015 年度の出題内容は
以下のようであった。
1.同位体に関する知識および原子量の計算問題
2.結晶に関する知識問題
3.
「殺菌剤として利用されるヨウ素に関する知識問題」
、
「重要な金属材料である鉄に関する
知識問題」
、
「光ファイバーに利用される二酸化ケイ素に関する知識問題」
新課程の教科書では、
「化学と人間生活」と呼ばれる項目が設けられ、日常生活で使用される製
品の製法や化学的な性質が解説されている。3.はこの分野からの出題である。
教科書の「化学と人間生活」で取り上げられている物質の性質に関する知識問題は、今後も多
く出題されると考えられる。
【Ⅱ】は理論化学および無機化学の分野から、計算問題を中心に出題される。2015 年度の出題
内容は以下のようであった。
1.固体の溶解度(無水物)に関する計算問題
2.四フッ化キセノン XeF4 を題材とした気体反応に関する計算問題
3.フッ素の性質に関する知識問題
4.ダニエル電池、鉛蓄電池に関する計算問題
「中和反応」、「酸化還元反応」
、
「電気化学」
、
「熱化学」、「気体の法則」に関する計算問題は出題
率が高いので、基本~標準レベルの計算問題を速く正確に解ける実力を身に付けておく必要がある。
【Ⅲ】は有機化学からの出題である。2015 年度の出題内容は以下のようであった。
1.化合物の性質から構造を選択する問題
2.油脂の性質と計算問題
脂肪族化合物および芳香族化合物の典型的な化合物を題材にした問題がよく出題される。2015
年度は、2014 年度に続いて油脂に関する問題が出題された。油脂に関する問題は出題率が高く、
今後も重要視すべき分野である。また糖類やアミノ酸、タンパク質に関する問題も出題される可
能性が高い。
<学習アドバイス>
2015 年度から、
新学習指導要領の下における入試が始まった。新学習指導要領における化学では、
選択分野が削除されたものの、学習内容はほとんど変化していない。このため出題分野に関して
大きな変化はないと考えられる。
大学入試の化学の問題を解くにあたって最も重要なことは、思考力の土台となるしっかりとし
た基礎知識を確実に身に付けることである。具体的に重要な項目として、以下示す内容に重点を
おいた受験対策をするとよいであろう。
《理論化学分野》
① 原子やイオンの電子配置、同位体、周期表と元素の性質に関する知識(イオン化エネルギー、
同素体、電子親和力、電気陰性度)
。
2015 年度は塩素の同位体の相対質量から、塩素の原子量を計算する問題が出題された。
175
② 最
外殻電子価電子、原子価、化学結合の種類に関する知識。新課程の教科書では、化学結合
に関する記述が増加した。十分に注意したい。
③ 基本的な分子の形と極性に関する知識。
④ 化学の基本法則に関する知識。特に「定比例の法則と倍数比例の法則」、「気体反応の法則」、
「アボガドロの法則」
。
⑤ 反応式を利用した反応量の計算。
反応式は示されていない場合が多いので、基本的な反応式は書けるようにしておくこと。
⑥ 溶液の濃度計算
モル濃度から質量パーセント濃度に変換する問題。特に密度を利用した濃度の計算は間違え
やすいので、十分な演習が必要である。
⑦ 逆滴定、二段滴定に関する計算問題。
⑧ 電気化学に関する問題。
「金属のイオン化傾向」と、身のまわりの金属材料の性質の関係を整理しておくとよい。電
池に関する問題として、鉛蓄電池に関する計算問題(2015 年度)
、水素-酸素型燃料電池の
しくみと計算問題は十分に練習しておく必要がある。また、水溶液の電気分解に関する問題
も頻出である。
⑨ ヘスの法則を利用した熱化学方程式に関する問題
2015 年度は出題されなかったが、熱化学の問題は出題率が高い。十分な演習が必要な分野で
ある。また、比熱を用いて中和反応の実験から中和熱を求める問題は頻出であり、注意したい。
⑩ 溶液の性質に関する問題。
2015 年度は固体(無水物)の溶解度に関する計算問題が出題された。ヘンリーの法則を利
用した気体の溶解度に関する問題も十分に練習しておきたい。沸点上昇、凝固点降下に関す
る問題は頻出である。
⑪ 質量作用の法則を利用した化学平衡の関する計算問題。
新課程の教科書では、電離平衡に関する内容が重視されている。このことを考えると、酢酸
やアンモニアの水溶液中での電離平衡に関する問題を、十分に練習しておくが必要がある。
《無機化学分野》
出題頻度の高い元素は次の通りである。
非金属元素…ハロゲン元素、窒素、硫黄、ケイ素
金属元素…アルミニウム、銅、鉄、カルシウム
また、「ソルベー法」
、
「ハーバー・ボッシュ法」、「オストワルト法」、「接触法」、「アルミニウム
の製錬」、「鉄の製錬」
、
「鉄の製錬」など無機化学工業に関する出題も頻度が高く、しっかり学習
しておきたい。
《有機化学分野》
化合物の構造決定問題は出題率が低いが、基本的な有機化合物の合成法と性質はしっかり押さ
えておく必要がある。次に示す内容をしっかり対策しておくこと。
① エチレン(エテン)やアセチレン(エチン)、プロペンを出発原料とした有機化合物の合成法。
② フェノールやサリチル酸、ニトロベンゼンを出発原料とする化合物の合成法と性質。
、
「C4H10O の分子式をもつ化合物」、「C5H12O の分子式をもつ
③「C
4H8 の分子式をもつ化合物」
化合物」
、
「C7H8O の分子式をもつ芳香族化合物」などの出題率が高い化合物の構造と性質。
④ 油脂
⑤ 合成高分子とタンパク質
旧課程では選択分野となっていたこの分野は、新課程では必修となっている。今、この分野
の出題率が高まると予想される。糖類の分野も含めて、基礎知識を充実させておくことが必
要である。
176
化 学
学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<農学部・工学部>
< 2015 年度入試の傾向>
出題形式は大問 3 題で、すべて選択式である。
【Ⅰ】では物質の分類、元素と周期表、原子の構造などに関連する基本知識を問う問題が多く出
題される。2015 年度は、
「金属の結晶(面心立方格子)
」に関する問題が出題された。面心立方格
子の充塡率を求める式を解答する問題も出題された。新課程の教科書では「化学結合」
、
「分子の
極性」、「結晶格子」に関する内容が重視されているため、次年度以降もこの分野は出題率が高い
と予想される。
【Ⅱ】は「理論化学」や「無機化学」の単元から、計算問題が多く出題される。2013 年度までは「熱
化学」、「中和滴定」
、
「酸化還元反応」
、
「電気分解」に関する計算問題が多く出題されたが 2014 年
度以降、「反応速度と化学平衡」、「溶液の性質」の分野からの出題が増加している。2014 年度
は「実在気体と理想気体」
、
「弱酸の電離平衡」
、
「塩化銀の溶解度積」が出題され、2015 年度は「反
応速度」、「浸透圧」
、
「飽和蒸気圧」が出題された。今後も、「気体の化学平衡」、「水溶液中の化学
平衡」
、
「希薄溶液の性質」の分野からの出題が増加すると考えられる。
無機化学からは、
「無機化合物と人間生活」の分野から出題された。新学習指導要領の下におけ
る教科書で、「化学と人間生活」と呼ばれる内容が新設された。この単元は、旧課程の選択分野で
あった「生活と化学」に記載されていた内容を、無機化合物と有機化合物に分けて取り込んだも
のである。2015 年度は、「酸化チタン(Ⅳ)の光触媒」、「光ファイバーとして利用される二酸
化ケイ素」、「ガラス」が取り上げられた。教科書の「化学と人間生活」に記載されている物質に
関する知識を整理しておく必要があるだろう。
【Ⅲ】は有機化学分野からの出題である。脂肪族および芳香族の典型的な化合物の性質や基本反
応を問う問題がよく出題されてきたが、2015 年度は C6H12O2 の酢酸エステルを題材とした問題が
出題された。分子式が C5H10O2 の脂肪族エステルや C6H12O2 の脂肪族エステルの構造決定問題、分
子式が C8H8O2 の芳香族エステルの構造決定問題は頻出であり、十分に練習しておく必要がある。
また、2015 年度はトルエン、フェノール、安息香酸、サリチル酸、アニリンの混合物の、抽出
による分離法に関する問題が出題された。
<学習アドバイス>
新学習指導要領を踏まえて、重要単元をまとめると次のようになる。
《理論化学》
① 同素体。硫黄、炭素、酸素、リンの同素体に関する知識。
② 原子やイオンの電子配置、同位体に関する知識。
③ 周期表と元素の性質(イオン化エネルギー、電気陰性度、元素の陽性と陰性、電子親和力)
に関する知識。
④ 溶液の濃度計算問題。
特に溶液の密度を利用した濃度計算は、受験生が苦手とするものであり、十分に練習してお
く必要がある。
177
⑤ 化学結合の分類、分子の形と極性に関する知識。
新課程の教科書では、この単元の記述が充実している。今後、この単元の出題率は増加する
と考えられるためしっかりと学習しておくこと。
⑥ 反応式を利用した反応量の計算問題。
基本的な反応式は与えられていないため、注意が必要である。また中和滴定や酸化還元滴定
の典型問題もよく出題される。
⑦ 気体の法則(理想気体の状態方程式、ボイル・シャルルの法則)に関する計算問題。
⑧ 飽和蒸気圧に関係する計算問題。実在気体に関する知識。
⑨ 熱化学に関する計算問題。
比熱を用いて、中和反応の実験から中和熱を求める問題は頻出である。
⑩ 電池に関する問題。
特に、鉛蓄電池に関する計算問題、水素-酸素型燃料電池の知識問題と計算問題は十分に練
習しておく必要がある。
⑪ 水溶液の電気分解に関する計算問題。
2014 年度の問題のように、陽極と陰極の入れ替えなどの工夫された問題が出題されると予
想されるため、十分に練習しておきたい。
⑫ 気体の溶解度(ヘンリーの法則)に関する計算問題。
⑬ 溶液の性質(浸透圧、凝固点降下)に関する計算問題。
⑭ 反応速度と化学平衡に関する計算問題。
特に弱酸の弱塩基の電離平衡、緩衝溶液、溶解度積は出題率が増加すると考えられる。
どの単元においても、時間をかけて難問を解決するという勉強ではなく、標準的な問題を短時
間で解く力を身に付けるための勉強が必要である。
《無機化学分野》
2015 年度は「無機化合物と人間生活」からの出題が特徴的であった。この教科書のこの単元に
取り上げられている物質について、知識を整理しておく必要がある。また次のような元素に関す
る知識も出題頻度が高い。
非金属元素…ハロゲン元素、窒素、硫黄、ケイ素
金属元素…アルミニウム、銅、鉄、カルシウム
「ソルベー法」
、
「ハーバー・ボッシュ法」
、
「オストワルト法」、
「接触法」、
「アルミニウムの製錬」、
「鉄の製錬」
「鉄の製錬」など無機化学工業に関する出題も頻度が高く、しっかり学習しておきたい。
、
《有機化学》
この分野では基本的な化合物を出発原料とした典型反応の生成物の名称や性質を理解しておく
必要がある。次のような反応経路が重要である。
① エチレン ⇒ エタノール ⇒ アセトアルデヒド ⇒ 酢酸 ⇒ 酢酸カルシウム ⇒ アセトン
② エチレン ⇒ 1、2-ジクロロエタン ⇒ 塩化ビニル ⇒ ポリ塩化ビニル
③ エチレン ⇒ アセトアルデヒド(ヘキスト・ワッカー法)
④ アセチレン ⇒ 酢酸ビニル ⇒ ポリ酢酸ビニル ⇒ ポリビニルアルコール ⇒ ビニロン
⑤ ア セチレン ⇒ ベンゼン ⇒ ニトロベンゼン ⇒ アニリン ⇒ 塩化ベンゼンジアゾニウム ⇒
カップリング反応 ⇒ アゾ化合物
⑥ プロペン ⇒ クメン ⇒ フェノール、アセトン
⑦ フェノール ⇒ ナトリウムフェノキシド ⇒ サリチル酸 ⇒ アセチルサリチル酸、サリチル酸
メチル
⑧ プロペン ⇒ アセトン(ヘキスト・ワッカー法)
178
また、以下の分子式をもつ化合物の構造決定問題は入試頻出であり、十分に練習しておく必要
がある。
① C4H10O および C5H12O のアルコール、エーテルの構造異性体
② C4H8O2、C5H10O2 である脂肪族エステル
③ 分子式が C7H8O である芳香族化合物
④ C8H8O2 である芳香族エステル。
新学習指導要領では、合成高分子化合物や医薬品、アミノ酸、タンパク質が必修分野になって
いる。この分野の基本知識もしっかりと身に付けておく必要がある。
179
生 物
全学統一入学試験
学部別入学試験 <農学部・工学部> 入試の傾向と学習アドバイス
< 2015 年度入試の学習アドバイス>
《出題形式》
全学統一入学試験、学部別入学試験ともにマークセンス方式。2014 年度から一部に記述式の問
題が登場し、2015 年度も出題された。記述問題の解答方式はマークシートの裏面に解答欄が用意
されており、そこに記入する方式。試験時間は 60 分で、大問数は 4 問であった。
《出題内容》
出題範囲は「生物基礎・生物」
。出題範囲全体から幅広く出題されており、特定の分野がよく出
題されるといった傾向は見られない。
《出題レベル》
問題のレベルは高等学校教科書の章末問題レベルとほぼ同等であり、コツコツと真面目に勉強
してきた生徒が高得点を取れる試験と言えるだろう。ただし、基本的な知識を問う問題であっても、
正しく理解できているかどうかが問われる問題が多く、表面的に丸暗記しているだけでは答えら
れない問題も多い。また、毎年出題されている計算問題には、一部に複雑な計算が含まれている
場合があり、あらかじめ計算する訓練を積んでおかないと、本番の試験において処理に時間がか
かってしまうことになるだろう。中には、一部の教科書には記載が無いような、やや細かい知識
を問う問題が出題されることもあるが、これらに関する出題数は少なく、合否に影響を与えるこ
とは無いだろう。「確実に得点しなければならない問題」を当たり前のように解答できれば、十分
に合格ラインまで届くであろう。
<学習アドバイス>
まずは、高等学校教科書に記載されている重要語句を理解することが大切である。また、教科
書傍用問題集などで問題を解く訓練を積んでおくことも大切である。複雑な計算問題も、問題集
を利用して、解く訓練を繰り返しておけば本番でも手早く処理できるだろう。さらには、教科書
の「参考」
・
「研究」
・
「探究活動」などとしてまとめられている部分にも目を通しておくとより良い。
最終的には傍用問題集や過去問題集などで 9 割程度の得点が取れるようになることを目指すと良
いだろう。
180
物 理
全学統一入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
< 2015 年度入試の傾向>
《出題形式》
大問 3 題である。例年、全学統一入学試験(前期)では、マークセンス方式が採用されている。
《出題内容》
力学・電磁気学・波動・熱力学からの出題である。幅広く学習した受験生を入学させたいとい
う意図が見える。
【Ⅰ】力学的エネルギー保存則・非等速円運動
【Ⅱ】抵抗回路
【Ⅲ】縦波の性質・熱量計算
① 力学
( 1 )は非常に易しい。
( 2 ) ~ ( 4 )は「力学的エネルギー保存則を正しく立式できるか」と
いった基本的な内容であり確実に得点をしたい。ただし、( 2 )は立式せず直感的に解答できる
ことが望ましい。
( 5 ) ~ ( 7 )は「非等速円運動」がテーマとなっている。この分野における
解法の定石
(=円運動の方程式と力学的エネルギー保存則の連立)通りに解いていけば良い。
(7)
は「面から離れる⇒垂直抗力= 0」の知識を使って解く。
② 電磁気学
抵抗回路に関する出題である。オームの法則、合成抵抗の公式、消費電力の公式といった基
本的な知識を組み合わせて解いていけば良い。しかし基本だからと言って油断をしないように。
( 3 )を間違えると、以下の設問を芋づる式に失点してしまうからである。抵抗回路に関する出
題は頻出なので、今回は出題されていない、ホイートストンブリッジ回路、消費電力の最大条
件などと合わせて、特に練習を積んでおくこと。
③ 波動
縦波の性質についての基本的な知識が問われている。「疎」や「密」の見つけ方は、多くの参
考書、問題集で紹介されている内容であり、正答率は高かったと思われる。
④ 熱力学
比熱を用いた熱量計算である。言葉を選ぶ設問は、公式丸暗記をしてきた受験生ではなく、
正しく(=現象を理解しながら)物理を学習してきた受験生を入学させたいという意図が見える。
出題されているものの多くは、基礎~標準レベルの問題である。ただし、思考力を要する問題
が用意されている場合もある。それらの問題を、いかに時間をかけずに処理できるかが Point で
ある。
<学習アドバイス>
教科書の例題や章末問題のレベルを繰り返し演習するとともに、教科書の物理法則を理解し、
公式の暗記だけではなく、公式を導く過程も勉強しておくこと。グラフを読み取る問題やグラフ
を描かせる問題が出題される場合もあるので注意をすること。日頃から答えを導くだけではなく、
基本的な物理現象を図やグラフにまとめる練習もしておこう。また、【Ⅲ】に出題された「言葉選
び」のような知識問題についての対応も必要である。教科書で太字となっている単語については、
その意味を理解しながら覚えておこう。数値問題は電卓などを使用せず、自分の手を動かして計
算をしないと、計算力・計算スピードは上がらないので注意すること。
181
物 理
学部別入学試験 入試の傾向と学習アドバイス
<工学部>
< 2015 年度入試の傾向>
《出題形式》
大問 3 題である。例年、学部別入試では、記述方式が採用されている。
《出題内容》
力学・電磁気学・熱力学からの出題である。
【Ⅰ】力学の総合問題(運動方程式・力学的エネルギー・水平投射)
【Ⅱ】磁場中における荷電粒子の運動
【Ⅲ】気体の状態方程式を中心とした総合問題
① 力学
( 1 )はフックの法則を答えるだけであり、非常に易しい。( 2 )、
( 3 )は「力学的エネルギー
保存則を正しく立式できるか」といった基本的な内容であり確実に得点をしたい。
(4)
~ (6)
は、運動方程式を立式し加速度を求め、等加速度直線運動の公式を用いれば良い。等加速度直
線運動の公式は毎年必ず出題される内容なので、特に練習を積んでおくこと。
( 7 )は「水平面AC上の運動」と「CからFへの水平投射」を 1 問の中で処理する必要があり、
やや難易度が高くなっている。まず、点Cを飛び出すときの物体の速さを自分で設定し求める。
この速さは( 5 )で求めた加速度を利用して求めても良いし、エネルギーに着目して求めても
良い。次に、水平投射の処理を行う。この 2 段階の処理が必要な本問の正答率は低かったと思
われる。
( 8 )で問われている「失われた物体の運動エネルギー」とは、「BC間における動摩
擦力の仕事の大きさ」のことである。
② 電磁気学
磁場中における荷電粒子の運動がテーマとなっている。( 1 )のローレンツ力の作図や、点B
mυ
2πm
r=
T=
での速さを問う( 2 )は、公式集によく掲載されている、半径: 、周期: を
qB
qB
丸暗記していただけでは難しく感じられたことであろう。このような本質的な理解を求められ
る設問が毎年 1 ~ 2 問必ず出題されている。正しく(=現象を理解しながら)物理を学習して
きた受験生を入学させたいという意図が見える。( 3 )
~ ( 6 )は「ローレンツ力を向心力とした、
円運動の方程式」を立式すれば良い。
( 7 )は、磁束密度の違いにより回転しながら右へ運動し
ていく、繰り返し運動の 1 周期分の移動距離を求めさせる問題である。難易度は高く、正答率
は低かったと思われる。
③ 熱力学
気体の状態方程式(ボイル・シャルルの法則)を中心とした標準レベルの問題である。与え
られた数値が煩雑に見え一瞬戸惑うかもしれないが、気体定数:R=8.3 [J/(mol・K)]と上手に
2
2
約分できるように工夫されており、受験生への配慮を感じる。一方、
[cm ]と[m ]の単位変
換に戸惑った受験生は、
点数が伸びなかったと予想できる。「数値計算」や「単位の変換」といっ
た内容も本学では頻出であるから、普段の学習に取り入れていく必要があろう。設問自体は、
状態方程式(ボイル・シャルルの法則)を立式をするだけで良く、難易度は高くない。
182
出題されているものの多くは、基礎~標準レベルの問題である。ただし、各大問の最後には、
思考力を要する問題が用意されている場合がある。それらの問題を、いかに時間をかけずに処理
できるかが Point である。
<学習アドバイス>
教科書の例題や章末問題のレベルを繰り返し演習するとともに、教科書の物理法則を理解し、
公式の暗記だけではなく、公式を導く過程も勉強しておくこと。【Ⅱ】で出題されたような描図の
問題は、本質的な理解を問うもので、公式丸暗記の学習では歯がたたない。物理現象が起こる理
由について、きちんと理解しておこう。また出題はされなかったが、物理現象を論述させる問題
やグラフを読み取る問題が出題される場合もある。日頃から答えを導くだけではなく、基本的な
物理現象を図やグラフにまとめる練習もしておこう。また、煩雑な数値計算を要求される場合も
ある。数値問題は電卓などを使用せず、自分の手を動かして計算をしないと、計算力・計算スピー
ドは上がらないので注意すること。
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