①熱帯林業講座① , " 山 川1 川 熱帯の有用材 ( 2 ) 緒方 健 オクメ ( Okoume) 学名 AucoumeaklaineanaP i e r r e(カンラン科) オクメはアフリカ 材の中で最もよく知られた樹種のひ とつであるが,その分布域は 熱帯西アフリカのせまい地域に限られている。すなわち赤道直下のガボンとその周辺 地域(赤道ギニア , カメノレ ー ン南端部, コンゴの沿岸地域)だけに天然にみられる。 しかし,この地域にはきわめて多く生育し,木材の産出量からいってガボンの最重要 樹木であるばかりでなく,全アフリカ材の中でも輸出量が第 1伎を占めてきた。 8 8 5年にベノレギー のアントワープで オクメがは じめてヨーロッパに知られたのは 1 開かれた博覧会からである。このとき材の見本が 出品 されたがカンラン科の樹木らし 1 8 9 4), 分類学者の いというぐらいで, まだ学名も定ま って い な か っ た 。 そ の 後 ( P i e r r eがくわしく調べ,こ の樹木のために新属 Aucoumeaを設立し,標本採集者の Klain巴神父に因んで学名を Aucoum e ak l a i n e ana とした。 木材の輸出は 1 9 0 2年にヨーロッパへ 5,0 0 0トン出荷されたのが最初で,以後第 1 次および第 2次大戦中の中断はあ ったが増加をつづけ, 1 9 6 5年には約 84万トン(約 1 40万 m8) に達している(輸出量第 2位はアオギリ科の Obecheで, 1 9 6 5年には 1 0万 m8 となっている)。木材の取引名としては現地名に由来する Okoum 品が 約 1 最も一般的であるが, このほか Gaboon,Gabun,GaboonMahogany なども用 L、 られる(ただ しオグメはセンダン科のマ ホガニ ーとは何の関係もなし、か ら, この最後 h i l i p p i n e の名称はまぎらわしく ,好ましいとはいえない。ラワンをアメリカ市場で P Mahoganyとし、うのと同様である)。現地名としては Okoume,Angouma,Bengouma,Moukoumi,Koumi,N'koumi,Zonga,Okaka などがある。 樹木の形状 :樹高は通常 3 0 40m であるが, 条件の良いところでは 60m に達 ", することがある。直径は 1 ", 1- 8mにな る。板根はあまり著しくなく ,せまく,うす い板根が 3m 程の高さにまで発達することもあるが,低く , 樹幹基部のみに限られる 5m に達する。 こともある。樹幹は通直,円筒形で, 校下高は 20 m からときに 3 樹皮は赤褐色, 平滑でうすい。築は互生し,奇数羽状複葉で 9 1 3枚の小業をも ", 0 20cm の円錐花序に咲き,褐色の毛につつ っ。花は径約 5mmの小花で, 長さ 1 ", まれる。果実は長さ 4 r v 5cm,径 2 r v 3cmの 5角形の新果で, 成熟すると 5裂閲し, 翼をもった長さ 3cm,幅 6mmの 5個の種子を 出す。 OGATA,Ken: UsefulTimbersi ntheTropics ( 2)Okoume 決林水産省林業試験場木材部 5 2 熱帯林業 No_2 ( 1 9 8 5) 川 川 山 川 川 川 1 ll l l l l l l l ll JI川 ガボンでは東部を除き降雨林から沿岸 部のサヴァナ林にまで広く見られ,ふつ うは ha 当り 1~ 数 本程度であるが ,と きには 40~50 本の高木を含む純林とな る。生長の早い陽樹で二次林を形成しや すい。今日の原生林のオクメも,かつて の人為の影響をうけた二次林起源、のもの であるという推定もなされている。しか しこのような樹木がなぜその分布域をほ とんどガボンに限っているのか,他のこ の地域の樹種とくらべてやや不思議でも 5,000ha,カメ ノレーンで 3,000ha あり , 年平均生長量 ある。人工造林はガボンで 2 は良いところでは 24m3jha に達している。 木材の特徴:心材は新鮮時には鮮桃色で,のち淡褐色 桃灰色 桃褐色となり,飽削 面には金色の光沢がある。辺材は幅 2~8cm あり,灰白色~淡寅灰白色で,淡赤色を 帯びることがある。肌目はやや粗,木理は交錯し,しばしばリボン杢を現わす。気乾比 . 4 3 (0.32~0.59) 。この他の識別上の特徴としては,孤立管孔の最大径(接線方 重 0 向)は 200~250μm , 放射組織の最大幅は 2~3 列, せんいには隔壁がある。柔組 織は乏しし、。放射組織にシリカを含む。水平樹脂道は存在しない。 材の加工性に関しては,乾燥は天乾,人乾とも問題なく,反りや割れは少なし、。ま た乾燥後の寸法変化は小さい。生材から乾燥材までの収縮率としては半径方向 3 .8 )%,接線方向 5 .7 ( 4 .0~7. 9 )%の値が出されている。軽軟材としては鋸 ( 2 .5~5. 5 の磨耗が早いが,これはシリカを含むためで、あろう。また飽削の場合毛羽立ちゃすい ので鋭利な刃を用いる必要がある。菌に対する抵抗性は低 L、。強度は比重の低い割に 高く ,建築造作材などの使用に耐える。 オクメは丸太の形質や材質の良さからひじように広い用途をもつが,中でもまとま って得られること ,接着性が良いことによって,主に ヨーロッパで合板の最適用材とし て用いられる o この点ラワン,メランティ(その中の最も比重が小さいもの)に似る。 熱帯西アフリカにはオクメのほかに次のようなカンラン科の樹木があり,その一部 の木材は最近わが国にも輸入されだしている o これらは¥,、ずれも東南アジアのカ γラ ン科の木材と異なり,単一の樹種であることが特徴である。 アイエレ ( A i e l e : Canariums c h w e i n f u r t h i i EngJ.)熱帯西アフリカからウガン ダ,タンザニアにいたる広い地域に分布。心材は灰白色 淡灰褐色 淡寅褐色。気乾 比重 O .40~0. 6 00 O z i g o : Dac ηo d e sb u e t t n e r i (EngJ . )H . ] .Lam) ガボン, カメノレーン, オジゴ ( ナイジエリアに分布。心材は淡黄褐色 淡灰褐色でときに暗緑色の縞をもっ。気乾比 重 O .50~0. 7 50 熱帯林業 No.2 ( 1 9 8 5) 5 3
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