伝熱問題のモデル化 第2章 伝熱問題のモデル化 伝熱現象を定量的に評価することや,機器の設計を行うためには,伝熱工学の知識 が不可欠である. 実際の伝熱現象は,既存の手法で正確な評価を行うことが難しい場合が多い. 新しい機器の設計や,新しい熱現象の解明には,第一次近似として,大まかな伝熱 の評価が必要になる. 伝熱現象をモデル化によって単純化し,実用上評価可能な精度で伝熱現象を予測 することが必要となる. ここでは,実際の伝熱現象や機器の設計に必要な現象のモデル化とその評価につ いて解説する. シース熱電対の温度測定 シース熱電対の温度測定 課 題 仮定とモデル化 ダクト内を流れている500Kの 空気温度をインコネルで被服さ れたシース熱電対で測りたい. 温度350Kの壁からシース熱電 対を流れに垂直に挿入すると き,5K以内の精度で空気の温 度を計測する。 熱電対をどのくらい流体内に挿 入する必要があるか. シース熱電対の温度測定 シース熱電対の温度測定 フィンの熱伝導 フィンの熱伝導 T∞ 周囲長 n = 0 P 1.0 t/2 t x A W n = 1 x y t/2 L L dQɺ f ɺ Qɺ x Qɺ x +dx x dx y= t/2(x/L ) n= 0 0.8 L フィン効率 η 周囲流体温度 n n= 1 0.6 n= 2 0.4 0.2 n = 2 t/2 0.0 0 1 2 3 mL L (b) (a) 矩形フィンの熱収支 各種形状フィンのフィン効率 4 5 自動車の屋根の表面温度推定 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定 課 題 課 題 T0 = 300 K のとき,qsol = 700 W/m 2 の日 射を吸収する自動車の屋根の温度を推 定する.自動車が静止している時と,走 行している時の屋根の表面温度を計算せ よ. 書き換え可能なDVDレーザーディスクドラ イブでは,ポリカーボネート板中に記録層 を挟みレーザーで加熱することによって, 記録層の光物性を変化させる. (テキスト 例題1.8 参照) 出力 Qɺ = 15 mW のレーザー光を直径 d = 0.9 µ m に集光する.ディスクの初期温度 が Ti = 300 K ,加熱時間が t = 20 ns の とき,記録層の到達温度を推定する. ただし,レーザー光に対する記録層の吸 収率を a = 0.1 とする. 光ディスクドライバー (資料提供 日立製作所(株)) 直射日光が当たっているときの 車の屋根の温度 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定 実 例 DVD ドライブ (日立(株)提供) 仮定とモデル化 DVD λ=650nm 記録情報 対物レンズ NA=0.6 01000001000000001000001001000 記録信号 記録パワーレベル DVDディスク記録加熱のモデ ル化. 記録層 0.6mm LD出力 1.2mm 再生パワーレベル 0レベル 光スポット 光スポット 0.89µm 1.42µm 記録マーク例 書き込み時の信号パターン トラックピッチ0.74µm 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定 半無限固体の1次元解 Ts 半無限固体の1次元解 q T (t , x) T (t , x) x x Ts T (t , x) x T∞ t Ti Ts T∞ , h t x Ti (a)第1種境界条件 x Ti (b)第2種境界条件 半無限固体の境界条件 表面温度一定と熱流束 一定の場合の過渡熱伝 導温度分布 t x (c)第3種境界条件 大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 実 例 課 題 宇宙往還機では,高度 120 km から速度 7.8 km/s で再突入する際に,空力加熱で表 面が 1500 K から 2000 K に加熱される. 外周部はセラミック系の繊維を固めた断熱タ イルで熱遮断を行っている.実験機の断熱材 裏面を Tc = 450 K 以下に保つ必要がある. JAXAホームページより引用 初期温度 Ti = 280 K の断熱タイルが,再突入 時に表面温度 Ts = 1600 K の状態で10分間加 熱されるとき,断熱タイルの必要厚さを推定 する. 宇宙往還機の大気圏再突入 実験(資料提供 宇宙航空研 究開発機構(JAXA)) 大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 実 例 実 例 野村、航技研報告779号(1983) 浅田他、航技研特別資料SP-24(1994) 大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 仮定とモデル化 大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 解 析 第1種境界条件における平板の過渡 温度分布 断熱層内の温度変化 断熱タイルの伝熱様式 各種形状物体の中心部の過渡温度変化 熱電対の温度応答特性の推定 高層ビルの断熱材厚さの推定 課 題 課 題 高層ビルで火災が発生したとき,火災に よるビルの倒壊を防ぐために、建物を支 える構造用鋼材はある一定時間火災の 高温から熱を遮断する必要がある. 素線径の裸熱電対の接点が直径 d = 150 µ m の球となっている.この熱電対を水に挿入 したとき,その無次元温度が θ = 1/ e と なる応答時間を求めよ. 右図に示すように,ビル火災で断熱材 表面が Ts = 1200 K となっているとき,鋼 材表面温度を2時間の間 Tc = 870 K 以 下に保つことを考える. レイノルズ数が非常に小さいとき、球の熱 伝達率を表すヌセルト数は Nu = hd / k f = 2 とする. 火災前の断熱材温度が Ti = 300 K のと き,鋼材を覆っているロックウール断熱 材の最小厚さを求めよ. ビル鋼材の断熱 熱電対の顕微鏡写真 テキスト p.28 演習問題 2.13 熱線流速計の温度応答特性の推定 過渡熱伝導の分類 T Ti = T (0, x) T 熱線流速計の温度応答特性の推定 Ti = T (0, x) t (a) (b) t (c) hL 過渡熱伝導の分類 T t ビオ数 Bi = k の大きさによる 平板内過渡温度分布の違い T∞ T∞ −L L Bi << 1 T ≈ T (t) T∞ T∞ L Bi = 1 −L L Bi >> 1 T = T (t, x) T = T (t, x) −L 熱線流速計の温度応答特性の推定 集中熱容量モデル 1.0 θ=(T-T∞)/(Ti-T∞) 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0 集中熱量系の過渡温度変化 FoBi = hSt (c ρV ) 1 2 FoBi=hAt/(cρV ) 3 各種ビオ数における 過渡温度分布
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