周囲の色の変化に対する魚の行動の変化について 所属: 生物農学系 ゼミ 2 年 5 組 34 番 細野 拓也 第1章 はじめに 第1節 動機 壁紙の色によって魚の行動が左右されるかどうかというのが昨年の目的。昨年の実験は 魚の走性に関する実験である。今回は走性がはっきりしている鯰を実験対象に加えた上で、 昨年の鯉の実験の精度をより高めることを目的として今回の実験に至った。 第2節 研究の目的 魚(鯉、鯰)の色に対する嗜好性を調べる。 第3節 研究材料と方法 研究の材料 鯉 2 匹(7cm 程) 鯰 1 匹(約 10cm)45cm 水槽 色紙六色 プラスチックファイル 備概要は下の画像 プラスチックファイルのカバー 1 設 鯉 2 個体 鯰 第2章 研究の展開 第1節 鯉、鯰について 鯉はコイ目コイ科に属する淡水魚で日本中の池や川や湖に棲息している。貝類、節足動 物、水生植物などを捕食する雑食性で、最大体長は 1mほど。毎年春に浅瀬の水草などに 産卵する。寿命は長く、低水温や汚濁した水域にも棲息可能。現在、日本中の池や川に見 られる鯉はほとんどが放流された養殖魚。重要な水産資源でもあり、昔は山間の集落など では冬場の蛋白源不足の解消を目的に飼育された。食用の鯉 としては長野県、観賞用の錦 鯉としては新潟県が有名。錦鯉の人気は根強く、海外でも評価が高く、大正三色など様々 な品種がある。毎年、錦鯉の品評会が開かれ、錦鯉に数千万円の値段がつくこともある。 鯉は外来種とは異なり、在来種に対して無害の様に思われるが、新たに放流された水域で はその長い寿命や体長や低水温への耐性が故に在来種を捕食圧で駆逐することがある。ま た河川の景観を保つ目的で河川に鯉を放流する自治体もある。中には不適切な放流により、 川底の砂漠化を招き、より河川が汚濁することもある。そのようなことから、鯉は 国際自 然保護連合によって世界の侵略的外来種ワースト 100 に指定されている。今回の実験で鯉 を用いた理由は丈夫であり、入手が容易だからである。 鯰はナマズ目ナマズ科の淡水魚で、北海道と沖縄を除く日本の河川や湖沼に生息してい る。横幅の広い口と長い口ヒゲをもち魚類、甲殻類、両生類などを捕食する肉食性。最大 全長は 60cmほど。稚魚の段階では6本の口ヒゲを持つが、成長につれて消失し、成魚で は4本になる。日本では地震と関連づけられ、浮世絵をはじめとする絵画の題材とされて 2 きた。代表的な絵画に「瓢鮎図」がある。日本での鯰の漢字表記は、 「鯰」であるが、中国 では 「鮎 」が鯰を意味する。 第2節 実験に際して 昨年の実験では、色紙を水槽の両側面に貼り付ける方式をとった。この方式では、 色紙 に覆われない隙間ができやすかったので、今回の実験では、実験の精度を高めるためにプ ラスチック製の水槽のカバーを用意し、水槽の底面と天面以外は、色紙に覆われるように した。 第3節 魚の色覚 広島大学生物生産学部助教授の海野徹也先生によると、鯉には人間に匹敵する色覚が 備 わっていることが判明している。一方、鯰の色覚に関する情報は得られなかった。 第4節 実験の結果 実験では様々な色の組み合わせを試した。以下は実験の結果である。鯉は● 鯰は✔で 示す。鯰、鯉ともピンクのマーカーで示された青と黄の組み合わせ のときに水槽内を泳ぎ 回るだけで定位置が定まらないという現象が起こった。また、水槽に色紙を設置しない場 合(結果の表では無)では左側に集まりやすかった。 鯉の結果 左 9/21 午後 1 時 31 分~ 個体数 右 赤 ●● 青 青 ●● 赤 黒 ●● 赤 黒 個体数 晴れ ●● 白 赤 ●● ●● 緑 黄 白 ● 緑 黒 緑 ●● 赤 ● 緑 ●● 黄 白 ●● 黄 黄 ●● 白 黄 青 青 ●● 黄 3 鯉の結果 左 10/11 個体数 黄 晴れ 午後 12 時 14 分~ 個体数 右 ●● 白 白 ●● 黄 白 ●● 赤 赤 ●● 白 緑 ●● 白 白 ●● 緑 青 ●● 緑 緑 ●● 青 白 青 ●● ●● 黒 青 白 ●● 緑 緑 ●● 黄 無 ●● 無 鯰の結果 9/21 晴れ 午後 1 時 43 分~ 左 黒 右 ✔ 白 白 ✔ 黒 黄 ✔ 黒 黒 ✔ 黄 青 黄 黄 赤 ✔ ✔ 青 緑 赤 青 青 ✔ ✔ 赤 赤 ✔ 緑 4 鯰の結果 10/11 午前 11 時 43 分~ 左 黒 右 ✔ 青 青 ✔ 黒 赤 ✔ 黒 黒 ✔ 赤 黒 ✔ 緑 緑 ✔ 黒 黄 ✔ 赤 赤 ✔ 黄 赤 ✔ 白 白 ✔ 白 黄 赤 ✔ ✔ 黄 白 右側に集まった例(赤×青) 5 左側に集まった例(黒×白) 鯰(ヒゲは 4 本) 定位置が定まらない状態の画像 第2章 考察 以下の表は各色の結果数をその色の全試行数で割ったものである。つまり、魚によっ てその色が選ばれる割合を示している。 6 鯉 色 割合 赤 0.57 青 0.63 黄 0.33 緑 0.50 白 0.50 黒 0.50 鯰 色 割合 赤 0.30 青 0.16 黄 0.50 緑 0.75 白 0.33 黒 0.80 表から、まず鯉についての結果は、青が最も選ばれやすい色であり、次いで赤、さらに 緑、白、黒が同値であり、黄が最低であることだ。黄、青を除いた場合、結果に差はあま りない。 鯰については、黒が最も選ばれやすい。次いで緑、さらに黄、以下、白、赤、青の順と なった。黒、緑が選ばれやすかったことは鯰が光に対して、負の走性を示すことに起因す ると考えられる。しかし、青は格段に選ばれにくかった。むしろ青よりも明るい色の、黄、 白、赤が選ばれやすかった。以上より結論は次のようである。 鯉について 青>赤>緑=白=黒>黄 鯰について 黒>緑>黄>白>赤>青 第3章 参考文献 Wikipedia「コイ」「ナマズ」 紀伊国屋書店「魚は痛みを感じるか?」 http://www.geocities.jp/ogata_tokusan/zatugaku/index013.html 第4章 まとめ 今回の実験では、昨年の結果とは大きく違う結果が得られた。鯉に関しては、青、黄 を除いて、好みやすい色にあまり偏りがないことが分かった。この鯉の飼育環境に変化は あったものの、昨年と同じく、鯉の周りに白の物体が多いことには変わりない。 昨年では 7 白は最も選ばれやすく、今年ではそれなりに選ばれやすい。よって、この実験対象の鯉 が 白を好むということは信頼できることと思われる。 今回の実験で割合的に見ると青が選ば れやすいことが判った。 鯰に関しては、暗めの色を好み、青は例外であることが分かった。 走性に従えば、青は 暗めの色であるので、選ばれやすいはずである。青の試行回数は他の色に比べ少ない訳で はない。故に、鯰にとって青は避けたい色なのかもしれない。また、鯰の飼育環境では藻 が繁茂しており、緑が選ばれやすかったのはこれに起因すると考えられる。 第5章 感想そして今後の課題 今回の実験では、周囲の色の変化に対するコイの行動の変化について 昨年よりも詳し く調べることができた。実験結果は昨年と大きく異なった。昨年では下位に位置していた 色が選ばれやすかったことには動揺を隠せず、同時に疑問も生じた。鯰に関しては、ほぼ 走性に従った結果となったが、実験することができてよかった。次に実験をする機会があ るならば、色の走性だけでなく、化学的走性についても実験したい。走性だけでなく、あ る特定の条件下、例えば、水槽の縁を叩いてから給餌し、エサの獲得と音が結びつくまで の期間の長さを実験したい。 8
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