子どもが「自分ごと」として学び、充実感の持てる授業をめざして

『丘珠の教育』研究テーマ
子どもが「自分ごと」として学び、充実感の持てる授業をめざして
Ⅰ
研究テーマについて
主 体的に 学 ん
現代は変化の激しい時代といわれ、価値観が多様化し、固定的な見方、考え
で いく子 ど も
に
方だけでは通用しづらくなってきている。しかし、そうした状況の中でも、子ど
もたちは自己を見失うことなく、自分が真に求める生き方に向かって成長を重ね、
やがて社会の一員となっていかなくてはならない。
本校児童は素直で明るく、他人に対する誠実さ、学習に対する意欲なども十分
にもっている。しかし、教師の指示に頼り、自らの判断で進んで学習に取り組む
ことや粘り強く取り組むことを苦手とする子どももいる。
そこで、子どものよさを大切にしながら、本校の学校教育目標「健康な心身を
持ち、創造性豊かに学ぶ子ども」を育てるために、個を伸ばし、一人一人のよさ
を認め、広げ、自分の問題に向かって主体的な学びができるように支えていかな
ければならないと考える。
これから子どもたちが生きていく社会が、より一層変化が激しくなると予想さ
れる中で、主体的に判断し行動する力や社会の一員として共に生きぬく力を養う
ことは大事である。子ども一人一人の学びを大切に、毎日の授業をより良いもの
にしていくことをめざして研究テーマを設定する。
「 自分ご と 」
としての学び
学習の主体者は常に子どもである。学級という集団の中で学習しながら、学級
の子ども一人一人の「自分の学び」を実現させなければならない。子どもが学習
を「自分ごと」としてとらえ意欲的に取り組んでいくことを大切にしていかなけ
ればならないと考える。一人一人の思いや願いを見取り、個に応じた教材化や指
導・支援を行なうことが重要である。すなわち、子どもの内発的な学習意欲を伸
ばす工夫が教師側に求められているのである。
子ども一人一人が学習意欲を喚起し、自らの課題解決で主体的に学ん
でいくこと
「 学び の充 実
「学びの充実感」とは自らの学びを通して、
「わかった」
「できるようになった」
感」がある授業
「認められた」などの自己が高まっていくのを感じる喜びである。この「充実感」
は、子ども自らが目的意識を持った具体的な活動を通して得られるものである。
また、友達との関わりの中で、自分の見方や考え方を広げられ、それぞれのよさ
に認め合いや高まり合いの中から自己の存在感を見出し、自信も持つこともでき
ると考える。教師の役割としては、子どもの主体性を大事にしながらも示唆や言
葉かけを通して活動に深まりを持たせるなど、場に応じた適切な関わりを大切に
していかなければならない。
主体的な学びや友達との関わりを通して、自己の高まりや存在感を見
出していく授業
-1-
子どもたちは、「学びへの意欲」
「自分らしい学び」
「思考の広がり・深まり」
め ざす子 ど も
の学びの姿
「高まり合い・認め合い」といった学習を展開していくことで、
「学びの充実感」
を体得していくと考える。具体的な姿として、次のような学びの姿をめざしてい
きたいと考える。
「学びへの意欲」
興味関心を高めながら問題を自分ごととしてとらえ、問題解決への
意欲を持つ。
「自分らしい学び」
見通しを持った自分なりの解決方法で意欲的に学びを進め、自分の
思いを確かなものにしていく。
「思考の広がり・深まり」
自分の思いを表現し、友達との交流を通して、新たな気づきや思い
を深めていく。
「高まり合い・認め合い」
学習を通して自己の高まりを実感し、友達の良さも認めていく。ま
た、次の学習への意欲をもつ。
試行錯誤を繰り返しながらも粘り強く取り組むことが可能な、柔軟性のある
学習計画も大切にしていきたい。「自分の学び」を発揮しながらじっくりと活動
に取り組むことで、子どもは「学びの充実感」を得ていくものと考えるからであ
る。
楽しかった!
「自分ごと」としての学び
またやってみたい!
もっとがんばってみたい!
び
へ
の
意
欲
思考の広がり・深まり
なぜ?どうして?
やってみたい!
こうやってみたよ
おもしろそう!
そんな考え方もあるんだ
調べてみよう!
なるほど、参考になる
次の学習への意欲
学
違う方法も試してみよう
こうしてみよう!
自
わかった!
うまくいっているぞ
できるようになった!
まとまってきたよ
認められた!
伝えていかないと
友達もすごい
?…友達に聞いてみよう
みんなでがんばったね!
分
ら
し
い
学
び
高まり合い・認め合い
学びの充実感
-2-
Ⅱ
授業を通して、子どもたちに「確かな力」を
本研究の目的は、子どもたち一人一人の学びを確かなものにしていくこと、そして、そのための授業
を構築していくことである。しかし、学びを確かなものにするためには、その土台(ベース)である子
どもたちが自ら学ぶための「基礎・基本」も築いてあげる必要がある。
そこで本校における「基礎・基本」のとらえを「確かな力」として以下のようにおさえていきたい。
日々の授業の中で、この「確かな力」を子どもたちが身につけていくこともしっかり考えて授業を構築し
ていきたいと考える。子ども本位になりすぎて、「確かな力」を見失うのではなく、今現在、そして、今
後必要とされる自ら学ぶ術、その力をしっかり養っていくことも大事にしていきたい。
本校での『基礎・基本』のとらえと『確かな力』
確
か
な
力
取り組む力
意欲
関心
態度
考える力
学んだ力
思考力
表現力
読解力
知識
理解
(既習)
基礎・基本の力とは
・
『取り組む力』…意欲・関心を持って学習に立ち向かう力
・
『学んだ力』
…読み、書き、計算、記憶などの知識・理解
・
『考える力』
…筋道を立てて考えたり、それを表現したりする力
確かな力とは
学習に対しての興味・関心、学ぶ意欲がなければ、知識理解は身に付かないし、読み取ることも表現
することもできない。また、基本的な知識理解がなければ、表現力や読解力・思考力も身に付かない。
さらに、考える力がなければ、学習教材に関心を持てず、意欲的に取り組むことはできないであろう。
これらの力はそれぞれに独立したものではなく相互に絡み合っているのである。
これら「取り組む力」
「学んだ力」
「考える力」の3つの力が、相互にバランスよく機能している姿を、
『確かな力』ととらえていきたい。
-3-
Ⅲ
研究の視点
視点1
最適学習材の開発と教材化
∼子どもが「自分ごと」として学んでいくための学習材∼
最適学習材
毎日の授業の中で、子どもと教師は学習材を使って子どもと学習していく。し
かし、学習材の持つ価値・学習のねらい・教師の思いと、子どもの実態・思いな
子どもの学習意
どにずれが生じていては、子どもの学習に効果的なものであるとはいえない。研
欲を喚起し、学
究テーマにもある「自分ごと」として学んでいくためには、まず、より良い学習
習のねらいにせ
材を吟味していかなければならないと考える。そこで、以下のような観点を含む
まる学習材
学習材を本校では『最適学習材』とし、学習の中で子ども自らが進んで学ぶため
の学習材を考えてきた。
・学級の実態やレジネスをふまえている
・学習目標・ねらいをおさえられている
・子どもが身につける力を獲得できる
・子どもの興味関心を引き出し、学習意欲を喚起させる
・子どもが課題・問題意識を持って取り組める
単元構成
より良い「最適学習材」を開発しても、単元の中で単発的に扱うなどの子ども
の「思いの流れ」にそぐわなければその効果は表れないと考える。最適学習材を
最適学習材を生
有効かつ効果的に用いるためには、「意欲を喚起するような導入の工夫」や「単
かし、教材化し
元を通した目的意識」
、自力解決ができるような学習時間の配分や学習形態など、
た単元構成
子どもの「思い」がとぎれないように単元を構成していく必要があると考える。
自分ごととして学んでいくために…
身につけさせたい力
知的好奇心
最適学習材
関心意欲の喚起
教 材 化
学習目標・ねらい
子どもの実態
・学習意欲の喚起・持続
・思い、思考の連続
・見通しを持って
解決できる
問題・課題意識
・柔軟性がある
単元構成
-4-
視点2
「自分ごと」の学びが発揮される授業構成
∼「自分の学び」を発揮し、互いに認め合える学習∼
授業構成
「最適学習材」を教材化し、子どもの思いの流れを大切にした単元構成をもと
に1時間ごとの授業をどのように構成していくか、ということを考えていかなけ
主体的に自分の
ればならない。子どもが主体的に自分の学びを発揮させる学習活動と、学習目標
学びを発揮さ
や本校における「確かな力」といった教師側の意図をいかに相互に関連させてい
せ、
「確かな力」
くかである。本来、子どもは好奇心のかたまりであり、教師は子ども一人一人の
を身に付けてい
思いや願いを見取り、目的意識を持って学習活動ができるように授業を構成して
く授業
いくことが重要になってくる。
本来持っている子どもたちの学びへの思い
・新しい事象・学習に対して興味(思い)を持って意欲的に取り組んでいく
・進んで追求したことを認められたいという欲求(思い)を持っている
・自分の学びでわかったことや気づいたことをみんなの前で表現したいという意欲(思い)を持っている
・学習目標に基づきながら子どもの思いに沿った学習問題・課題
・目的意識を持ち、主体的に追求していける体験的な活動や操作活動
・個の追求を生かし、見方考え方を広げる表現・交流
子どもの思いを生かし、学習目標、「確かな力」にせまる授業構成
また、問題意識を高める、学習の方向性を示唆するなどの有効な働きかけで側
面から支えていく教師のかかわりも大事になると考える。
「自分の学び」が発揮される授業
授業構成において…
最適学習材との出会い
学
学習問題・課題
・子どもの思いを生かす
・解決の見通しが持てる
学
習
活
動
表
現・交
流
・一人一人の追求が生かされる
・豊かに表現していける
・ともに学ぶ、ともに認め合う
・見方・考え方が広げられる
自分の学びの振り返り
習 目 標・ね ら い
「自分ごと」の学び
「自分の学び」を
身につけさせ
たい力は
学んでもらい
たいことは
見方・考え方
を深め広げる
かかわりを
子どもの学び
生かす交流
への共感
充実感!次の学習への意欲
-5-
認め合いのある授業