全国シンポジウム「いま改めて考えよう地層処分」in ~処分地の適性と段階的な選定の進め方~ 開催概要 1.日 時: 2015年10月24日(土)13:00~16:05 2.場 所: 名古屋商工会議所 名古屋市中区栄2-10-19 3.主 催: 経済産業省資源エネルギー庁 名古屋 原子力発電環境整備機構(NUMO) 4.後 援: 文部科学省、日本原子力研究開発機構、日本経済団体連合会、 日本商工会議所、経済同友会、全国商工会連合会、日本原子力学会、 電気事業連合会、中部電力株式会社 5.来 場 者: 268名 6.当日概要(敬称略): (1)開会あいさつ :小林大和(資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課長) (2)パネルディスカッション ■パネリスト ・丸井敦尚(産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門総括研究主幹、 地層処分技術WG委員) ・伊藤洋昭(日本原子力研究開発機構 深地層研究部長) ・小林大和(資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課長) ・梅木博之(原子力発電環境整備機構 理事) ■モデレーター ・伊藤聡子(フリーキャスター) (3)質疑応答 7.内 容(敬称略、説明順) (1)パネルディスカッション(概要) 【自己紹介】 【進め方の説明、事前質問の紹介】 【高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた新たな取組について】 伊藤(聡) 今年の 5 月に国は基本方針をなぜ改定したのか。 小林 2007 年の高知県東洋町応募以降の進展がないこと等の反省から、国としてこれまでの やり方を抜本的に見直した。 【処分地の適性の考え方】 伊藤(聡) なぜ地下深くに処分する事がベストと考えられているのか。 梅木 地下深部は人間の生活環境から隔離され、酸素が少なく、物の動きが非常に遅いとい う特徴があり、放射性廃棄物の隔離・閉じ込めに適している。 1 伊藤(聡) 色々な地層があると思うが、どのような地層でも同じなのか。 伊藤(洋) 日本は堆積岩と結晶質岩がだいたい半々。いずれの岩種でも地下深部には地層処 分に適した環境が備わっている。 伊藤(聡) 日本では火山、地震の不安があるが、地下深部はどこでも大丈夫なのか。 梅木 地層処分に著しい影響を及ぼす可能性のある火山活動、断層活動、隆起・侵食といっ た天然現象が認められれば、これを避ける必要がある。 伊藤(聡) 適した場所は残るのか。 丸井 日本列島の場合、火山の火口から 15km までを避けたとしても、多くの市町村が残る。 他に温泉、地下温度、地下水などのデータベースから適性のある場所のあたりをつけ ていくと、残る部分がまだかなりあり、適地を調査する価値は十分ある。 伊藤(聡) 処分場に適さない場所の説明を受けたが、適した場所の確認方法を教えてほしい。 梅木 3 段階の調査による十分なデータ収集、安全裕度をもたせる施設設計、得られたデー タとコンピュータによる将来の環境影響の予測に基づく安全評価、規制機関の審査に よる。これは世界的にも同じ。 【段階的な処分地選定と科学的有望地の位置づけについて】 伊藤(聡) 科学的有望地とはどんなものなのか。 小林 日本全体を、適性が「高い」 「ある」 「低い」の大きく 3 つに分けて地図として提示す ることを検討中。これにより国民の関心や議論の深まりを期待。処分地選定に至る長 い道のりの最初の一歩。 (2)質疑応答 質問者1 ・瑞浪の地下研に視察に行った際に、地下水について気になった。膨大な量の地下 水、それと塩害による影響である。処分施設を掘っていく過程で、地下水の問題も 解決しなければならないのではないか。 ・処分場を造る時間も長時間を要すると思う。建設作業員の精神的、肉体的な問題 も対処する必要があるのではないか。 丸井 地層処分は、基本的には掘った後は埋めるので、10 万年という長いスパンで見通せ ば、水が湧き出している期間は 100 年位の短さだということ。塩水が出てきて驚か れたということだが、このような事象はよくある。何万年も何十万年の長い間閉じ 込められていたということは地層処分に適している可能性がある。 梅木 作業に関する安全は十分に考慮していく。土木技術や鉱山技術を使えば、危険を十 分に少なくすることは可能であると考える。 質問者2 現在の使用済燃料の量の分は、次世代に対して責任を取るが、それ以上放射性廃棄 物を出さないことが私自身の責任と考える。原発が必要だというが、今年の猛暑で 2 さえも電力には余裕があった。 小林 将来世代との関係でどれだけ安定して低廉で地球温暖化との関係でも好ましいエ ネルギー源を利用していくのかは、私達の責任で考えねばならない。原子力行政に 対する不信には、きちんとした形での対応が求められるが、同時に原子力の優れた 面も多くの方々に支持されている。今夏に停電がなかったとは言っても、多くの化 石燃料を海外から輸入し、皆さまの日々の経済活動で獲得した何兆円に及ぶ国富を それに充てている。将来にどのようなエネルギー構造で繋いでいくのか、地球全体 をどのようにしていくのか。議論は時間もかかり論点も多岐に亘るが、総合的に考 えることが大切。 質問者3 科学的有望地について、総合エネルギー調査会で検討を実施中とあるが、経済産業 省ではなく第三者がやるべきである。 小林 この政策に責任を持っているのは経済産業省であり、経済産業省の組織として審議 会を開催、議論している。与えられた問題を一つ一つ着実に誠実に透明性を持って 議論していく。その一つ一つの成果を持って、信頼というものを回復していくとい うことに尽きると思う。その途上だからといって国が責任を放棄するわけにはいか ない。第三者というお話だが、それをどこまでやっても行政として信頼されない限 りダメだと思う。 質問者4 地層処分の問題は不信と懸念の問題だと思う。安倍首相はアンダーコントロールだ と言ったが、今、福島でそうなっているのか。幸い海は広いから汚染されていない が、汚染水を流し放題。これも解決できずに次のステップに移れるのか。 丸井 福島の対応について政府の対応が遅れているのは事実。この週末に完成する海側斜 水壁は2年前に、事故から1年くらいかけて約800mの海側斜水壁を作っていくこと を検討したが、その遅れは漁民の方々の合意を得ることに歳月を費やしており、そ の丁寧な進め方について外国からかえって評価されたこともあった。遅ればせなが らちゃんとプランどおりに進んでいるということをご理解いただきたい。 質問者5 高速増殖炉もんじゅがなかなか動かない現状と、MOX 燃料の運用についても色々な 意見がある状況で、アメリカのように再処理をしないで直接処分することも考えて いくべきではないか。処分場の規模は現状の約 4 万本分より、もっと大きな施設を 作ったほうが将来のためにいいのではないか。 ・避けるべきところを避けていくと、自ずと地層処分ができる場所は限られてくる のではないか。きちんとした情報を世論を恐れずに話してほしい。 梅木 1平面の中に4万本のガラス固化体を適当な間隔を置いて埋設すると、岩盤の性質 3 で面積は変動するものの、地下面積にして約6平方kmから10平方kmくらいの広 さになる。これは、ゴルフ場1つほどの面積に相当し、そこに4万本分が入る。今 は一段の平面にパネルという構造を展開しているが、これを多層にするなどの設計 の工夫が可能であり、仮に本数が変動したような場合にも柔軟に対応できると考え ている。今、国の方針に従って少なくとも4万本という形で標準的な面積を出して いる。 小林 日本の中で科学的にどこでないといけないということにはならないことをご理解 頂きたい。地質的・科学的に一定の条件をクリアしたうえで、その地域が受け入れ てくれれば、そこが処分地の候補になる。その地域の方々がどのよう受け止めるか が非常に重要なプロセスであって、科学的有望地を提示して、ただちに特定の地域 から決まっていくものではない。直接処分については、現在の政府方針ではないが、 仮にそれを選択したとしても、地層処分が必要という現実は変わらない。 質問者6 キャニスターによる乾燥保存で原発敷地内に置けば、地層処分は不要ではないか。 原発で出したごみだから自分のところでやって、国税を使わないで。 梅木 使用済燃料のままでも、再処理したガラス固化体でも、その放射能レベルから非常 に長い時間の安全確保が必要な特別の問題。そういう長期にわたって人間がずっと 確認・監視しつづけることができるかどうか。発電所に中間的に長い間保管するこ とのリスクも考える必要がある。地層処分は人間が容易に近寄れず、天災のリスク も低い。 質問者7 ・これまでの 1 万7千トンの核廃棄物は使ってきた国民の合意の元に進められてい たはずだという話が大阪の万博も含めてあった。ただし、私たちの合意は政府から 与えられてきた情報に基づいて黙認したものである。もし情報がもっと提供されて いれば違ったものになった可能性がある。 ・人には許容できるリスクと出来ないリスクがある。国民の生命財産がゼロになる 可能性、土地を失う可能性、そういうリスクは人間として許容できないもの。許容 できないリスクがあるからこそ、原発政策に関して非常に大きな懸念がる、あるい は拒否反応を示していると思う。そういうリスクの分類・限界についてどのように お考えなのか。 小林 その時代時代において、法治国家・民主主義国家として議論され決定されてきてい る。個々人の向き合い方として濃淡があったことや、いろんな考えがあることは当 然にあろうかと思うが、社会としてそれを選択してきたしてきたことは事実。この ことをどのように私達が再検証し、将来世代と対話をしていくのかということが大 きなテーマ。 安全に関するリスクは、エネルギーのみならず、認知しているか否は別として、生 4 活のいろいろな所で向き合っている。許容できるものとできないものがあることに ついてはその通り。従って、原子力のリスクを最小化する努力、これを不断にして いく。しかし、ゼロリスクではないということで、何重にも備えて進めていくとい うことが必要である。そのリスクがどのようなものなのか、きちんとお伝えをし、 判断していただくための議論を積み重さなければならない。今日のような機会も含 めて、一日でどうなるということではないが、着実に積み重ねて、国民的な議論・ 合意というものを作っていきたい。 以 5 上
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