全国シンポジウム「いま改めて考えよう地層処分」in ~処分地の適性と段階的な選定の進め方~ 開催概要 1.日 時: 2015 年 10 月 8 日(金)18:30~20:40 2.場 所: 金沢都ホテル(セミナーホール) 金沢 金沢市此花町 6-10 3.主 催: 経済産業省資源エネルギー庁 原子力発電環境整備機構(NUMO) 4.後 援: 文部科学省、日本原子力研究開発機構、日本経済団体連合会、 日本商工会議所、経済同友会、全国商工会連合会、日本原子力学会、 電気事業連合会、北陸電力株式会社 5.参加者: 117 名 6.当日概要(敬称略) (1)開会あいさつ:小林大和(資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課長) (2)パネルディスカッション ■パネリスト ・丸井敦尚(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門総括研究主幹、 地層処分技術WG委員)※地下水専門 ・石川博久(日本原子力研究開発機構 元地層処分研究開発部門長) ・小林大和(資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課長) ・近藤駿介(原子力発電環境整備機構 理事長) ■モデレーター ・松本真由美(東京大学 教養学部 客員准教授) (3)質疑応答 7.内 容(敬称略、説明順) (1)パネルディスカッション(概要) 【自己紹介】 【進め方の説明、事前質問の紹介】 【高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた新たな取組について】 松本 今年の 5 月に国は基本方針をなぜ改定したのか。 小林 2007 年の高知県東洋町応募以降の進展がないこと等の反省から、国としてこれまでの やり方を抜本的に見直した。 【処分地の適性の考え方】 松本 なぜ地下深くに処分する事がベストと考えられているのか。 近藤 地下深部は人間の生活環境から隔離され、酸素が少なく、物の動きが非常に遅いとい 1 う特徴があり、放射性廃棄物の隔離・閉じ込めに適している。 松本 色々な地層があると思うが、どのような地層でも同じなのか。 石川 日本は堆積岩と結晶質岩がだいたい半々。いずれの岩種でも地下深部には地層処分に 適した環境が備わっている。 松本 日本では火山、地震の不安があるが、地下深部はどこでも大丈夫なのか。 近藤 地層処分に著しい影響を及ぼす火山活動、断層活動、隆起・侵食といった天然現象は 避ける必要がある。 松本 適した場所は残るのか。 丸井 わが国の天然現象については、これまでの学術的な調査から、200 万年にわたる経緯 は、かなり学術的にはっきり分かっている。このため。まず大まかに文献によって回 避し、その後の綿密な調査によって、その地域をより的確に把握することが可能。 松本 処分場に適さない場所の説明を受けたが、適した場所の確認方法を教えてほしい。 近藤 3 段階の調査による十分なデータ収集、得られたデータとコンピュータによる将来の 環境影響の予測、規制機関の審査による。これは世界的にも同じ。 【段階的な処分地選定と科学的有望地の位置づけについて】 松本 科学的有望地とはどんなものなのか。 小林 日本全体を、適性が「高い」 「ある」 「低い」の大きく 3 つに分けて地図として提示す ることを検討中。これにより国民の関心や議論の深まりを期待。処分地選定に至る長 い道のりの最初の一歩。 (2)質疑応答 質問者1 再処理をすることを前提として進められているが、再処理せずに低レベル廃棄物と しての保存を考えないのか。 小林 (資料4P)仮に再処理をしないとしても使用済燃料そのものが既に高レベル。再 処理するから高レベルになるわけではない。再処理にはエネルギー安定供給に加え て廃棄物対策としても 2 つの目的あり。1つは有害度を抑えること。もう1つは量 を少なくできる。 近藤 低レベルにするということは薄めることであり、そうするとその分体積が大きくな る。放射性物質は原子力だけでなく医療・病院でも使われており、廃棄物が出る。 放射能が高い物質がきちっと遮蔽して管理されてきている。だから、高レベルだか らという理由で否定するのは適切ではない。なお、分離・転換という技術、原子炉 の中で燃料として燃やしてしまう方法などいろいろ技術検討をしているが、いまあ る使用済燃料はいまの技術で再処理して廃液をガラス固化体して処分するのが合 理的。勿論、あたらしい提案については絶えず検討し、議論していきたい。 2 質問者2 将来世代による選択を残すとは、具体的にはどういうことを考えているのか。将来 別の方法が出てきたときに変更ができるのか。 小林 現時点で地層処分に変わる処分方法がない。現時点では世界的にも地層処分が最適 という認識で一致している。ただし政府として、何らか技術革新があるかもしれな いという前提で、地層処分以外のオプションの技術開発はしっかりやっていく。地 下に一度持って行っても取り出せるようにするということも新たに決めており、 NUMO でもその検討をするように求めている。 質問者3 適性がある場所、候補地が出てきたときに自治体に働きかけるというが、一つの自 治体を越えて周囲に影響を与えることがある。原子力発電でも周辺の自治体には何 も力を与えられてなく拒むことができない。 小林 法律では、まずは市町村に調査を受け入れていただいて、次の段階では都道府県の 意見を聴くという形になっている。隣接市町村の扱いについては地域毎の違いも考 えられる。例えば大変広い自治体の中なのか、また小さな自治体が複雑に密集して いるのか。どのように議論をしていくのが良いかということはこれからの議論。1 つご理解いただきたいのは、処分場の規模は数キロ四方に収まるもの、いわば小さ なものであることと、避難が必要な性質の施設ではないということ。地下水は万年 単位をかけて数十メートルしか動かない程度というもの。原子力発電所のように 10km、30km というような範囲での避難を想定しないといけないものではない。 質問者4 適性地とは日本国土のどこからどこまでで考えるのか。北方領土は対象か。 小林 我が国の領土が対象。 質問者5 私は処分場は必要と考える。必要な広さ、処分場が動き出すまでの期間、1 箇所だ けでよいのかどうかをお尋ねする。 近藤 (資料 40p)今はガラス固化体を 4 万本以上処分できる規模の処分場を考えている。 理由は規模のメリットを生かした経済的な処分場とするため。地上施設は金属容器 に収納する設備や土捨て場などが主なもので1~2km2 になる。地下施設は岩体のど こにもひび割れがなければ 2~5km2 でよいと計算できるが、実際には大体 6~10km2 になると思っている。これは 3km 四方にあたり、それを念頭に調査をしようと考え ている。事業期間については、調査関係をすべて終えるのに 20 年、国の審査に 3 年、建設に 5 年、その後 4 万本を年間 1000 本ずつ順調に処分していくのに 40 年、 これらをトータルして 100 年の事業と考えている。4 万本を越えても対応できるこ ともありえるので、今は一箇所の処分場の実現を目指すことが大切と考えている。 3 質問者6 科学的にというが、科学だけで世の中が回っているわけでなく、道徳的な観点も大 切。過疎地へもっていくということになりがちだが、都会が廃棄物を出すというこ とを都会で何度もシンポジウムをするべき。地方はいつも損をする。地方は食料を 作っている。 小林 都市も含めて国民全体で考えていただきたい。金沢も十分大きな都市で、もっと小 さな町でこうしたイベントをすべきという意見もある。なお、これは負担というよ りも地方にプラスの経済効果があると思っている。いずれにしても全国のみなさん のお力をいただきたいという趣旨で開催しており、個別に受け入れをお願いしてい るものではない。東京、大阪などでシンポジウムを繰り返し行っていることもご理 解いただきたい。 質問者7 原子力発電については多重防護により安全という神話を作ってそれが崩れたのに、 今回また多重バリアであるから大丈夫と言われても素直に信じられない。そこをど うするのかを考えてほしい。 近藤 私は長く原子力安全研究を行ってきた。津波については、事故前からいくつも指摘 があったのに、念のために備えるという用心深さが足りなかったことは深く反省し ている。自然現象対策を網羅的に合理的に考えることはリスク管理議論の入り口だ。 なお、原子力発電の場合は、何か起きれば動的機器、すなわちポンプなどを動かし て対処するので、そのしかけをお伝えすることになるが地層処分の安全対策はわれ われが何も動かす必要がない、ものに備わっている性質を利用するということをお 伝えした。これは私の工夫ではないことをご理解していただけるかどうか。本日は そういうことを説明させていただいたが、現場で確認していただけると大変ありが たい。 質問者8 核のゴミを増やさないことが第一であり、その上で処分場をどうすべきではないか。 それなら国民的議論になると思うが、推進してきた人たちの反省がどうなのかがわ からない。 小林 廃棄物は、もちろん、段階的によく調べたうえでできることであるが、処分ができ ないものではない。また、今の日本の状況、世界のエネルギー、地球環境から原子 力発電は必要。この 2 つの認識の差で話が変わってくるが、処分は可能、原子力は 必要ということに皆様のご理解をいただければ、原子力発電も続けて、廃棄物も処 分する、ということになる。そうしたことについてみなさんとの対話を重ねていく。 近藤 先ほど廃棄物の中のネプツニウムが大変長い半減期であって危険だというご意見 が出されたが、半減期の長さでいえば自然界のウランも長い。だから、半減期の長 さは安全上の区別を行なう理由にはならない。また、いつも趣旨を理解していただ 4 けず反論いただくのだが、半減期を他の有害物質にあてはめれば、水銀などの毒性 は、年月によって変わるものではないので、いわば半減期は無限大である。それで も人類はその廃棄物をきちんとコントロールしてきているという説明をさせてい ただくこともある。 質問者9 六ヶ所村ではガラス固化体がまだできていないと聞いている。もんじゅも稼働して おらず、核燃料サイクルが完全にストップしている状態。地層処分の前の段階から 最初から間違っているのではないか。 近藤 ガラス固化体を作る設備はすごく苦労をしたが、今はようやく安定的にできるよう になっている。現在まだ稼働できていないのは、安全審査のための基準地震動の見 直しに時間がかかっていることによる。 小林 もんじゅも含めて原子力に対する信頼性低下は真摯に受け止めなければならない。 使用済燃料が存在するのはその恩恵を享受してきたことの反対側の副産物。仮に再 稼動しない、再処理しないということであっても、目の前にある使用済み燃料は地 層処分しないといけない。国が最大限努力することはもちろんだが、皆さんのご理 解を得て、次世代にツケは残さないということが私たちの責任と考える。その気持 ちを共有してほしい。 以 5 上
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