微動観測による和歌山平野の地下構造調査(その2)

微動観測による和歌山平野の地下構造調査(その2)
1000
0
0
1500
1000
500
0.5
1
1.5
Frequency (Hz)
2
2.5
0
0
3
(b)
到来方向
Arimoto
Array
Arrival Direction
0.5
1
1.5
Frequency (Hz)
2
2.5
3
到来方向
Shima(b)
Array
Arrival Direction
西
180
90
北
90
北
0
東
0
東
-90
南
-90
南
180
Azimuth (deg.)
和歌山平野の地下構造調査の一環とし て行われた微動 観測の検討結果につ
いて報告する。本報では、和歌山平野の5 カ所で行われた3成分微動アレイ記録
を用いてFK法解析を実施し、得られたRayleigh波及びLove波の位相速度と波動
の伝播方向に基づき、各地点の地下構造と波動伝播性状について考察する。
FK法解析では、Caponの最尤法 1) をUD成分に適用してRayleigh波を検知し、
Caponの方法 1) を水平2成分に拡張し た斎藤の方法 2 ) をTransverse 成分に適用し
てLove波を検知する。FK法による 解析結果の例とし て、 ARMとSMAにおける位
相速度や波動の到来方向を図1、図2にそれぞれ示す。位相速度については、FK
法による観測値とともに、SPAC法より得られた分散曲線に一致するように推定され
た地下構造モデル(その1)に基づく計算値も併せて 示す。図3にはFKスペクトル
の例としてSMAの1.2Hzの結果を示す。まず図1、2 の(a)から、FK法より得られた
Rayleigh波およびLove波の位相速度は、計算値と比較的良く整合していることが
わかる。次に図1、2の(b)から、波動の到来方向には偏りがあり、ARMおよびSMA
のいずれの Rayleigh波、Love波ともに南西~西あるいは北西~西の方角から伝
播する場合が多く見られる。この結果は図3のFKスペクトルからも確認できる。この
到来方向の優位性は、KDR、JMA、IMFにおいても概ね同様であり、和歌山平野
の1Hz前後の微動に共通する伝播特性 と思われる。なお、KDR、JMA、IMFでは、
FK法より得られたLove波の位相速度が計算値よりも顕著に遅い結果 となり、地下
構造モデルには考慮されていない沖積層の影響が現れた可能性がある。
今後、FK法解析の結果を精査した上で、Rayleigh波およびLove波の位相速度
とH/Vスペクトルを同時に満足する地下構造の推定を行う予定である。
Velocity (m/s)
1500
500
M.Ohori(Univ. Fukui), H.Uebayashi, H.Kawabe, K.Ikeda,
K.Kamae(RRI Kyoto Univ.), and K.Miyakoshi(GRI)
Theoretical Rayleigh-Wave
Theoretical Love-Wave
Observed Rayleigh-Wave
Observed Love-Wave
2000
-180
0
0.5
1
1.5
Frequency (Hz)
2
西
3
2.5
Azimuth (deg.)
Estimation of Underground Velocity Structures in the Wakayama
Plain using Microtremors (Part 2) Phase Velocity Estimation of
Love and Rayleigh Waves derived from FK Spectral Method
(a)
位相速度
Shima
Array
Phase Velocity
2500
Theoretical Rayleigh-Wave
Theoretical Love-Wave
Observed Rayleigh-Wave
Observed Love-Wave
2000
Velocity (m/s)
#大堀道広(福井大)・上林宏敏・川辺秀憲・池田晃一・釜江克宏(京大原子炉)
・宮腰研(地盤研)
(a)Array
位相速度
Arimoto
Phase Velocity
2500
-FK法によるLove波およびRayleigh波位相速度の推定-
-180
0
0.5
図 1 ARM の分散曲線
UD成分
120
90
120
約650m/s
Velocity 649.8 (km/s)
Azimuth 168 (deg.)
30
150
東
210
330
南
270
西
60
0.02
約710m/s
Velocity 710.8 (km/s)
Azimuth 158 (deg.)
30
150
0.01
西
240
3
0.03
北
0.01
180
2.5
Transverse成分
60
0.02
2
FK-spectrum of Transverse-comp. for 1.2 (Hz)
0.03
北
1.5
Frequency (Hz)
図 2 SMA の分散曲線
FK-spectrum of Z-comp. for 1.2 (Hz)
90
1
西
300
0
180
西
東
210
0
330
240
南
300
270
図 3 SMA の FK スペクトルの例(1.2Hz)
謝 辞)本成 果は文部 科学省委託 研究業務 「中央構 造線断層帯 (金剛山 地東縁- 和泉山脈南 縁)
における重点的な調査観測」によるものである。
参 考 文 献 ) 1) Capon, J., High-resolution frequency wavenumber spectrum analysis, Proc.
IEEE, 57, 1408-1418, 1969. 2) 斎藤正徳, 2007, 水平2 成分アレーを用いた縦波・横波成分の分
離物理探査, 60, 297-304, 2007.