Tele・vision ドラマのトレンドは“ハラハラドキドキ”

Tele・vision
ドラマのトレンドは“ハラハラドキドキ”
「ドラマ」はいつの時代もテレビの人気コンテンツとしてあり、
何かと話題になるのが常です。
近年では、
NHKの朝の連続テレビ小説が好調なことは、
よく知られていると思います。
視聴率では番組が「見られたかどうか」を知ることができますが、
今回は放送量と番組の質的評価という2つの切り口から、
ドラマについてみていきます。
writer
テレビ調査局
テレビ調査部
天本千智
のような2時間ドラマが多い「スリラー・アクショ
■ ドラマの放送が増えた?
ン」が、10 年前より本数が増えているにも関わ
そもそもドラマはどのくらい放送されているの
らず、1本あたりの平均分数が少なくなっていま
でしょうか。
す。おそらく、このことと関係があるように思わ
2014年のプライム帯に放送されたドラマ全
れます。
体の放 送 量をみてみます。関東 地区では975
本、66,227分でした【図表1】。2013年と比
■ ドラマのテイストが変化している?
べ本数・分数ともに増加していますが、10 年前
(2004年)と比べると本数・分数ともに少なく
ドラマの放送量についてはわかりましたが、ド
なっています。ドラマ枠そのものは10 年前の22
ラマを見ている視聴者の気持ちにはどのような
枠から25 枠へと増えているものの、10 年前には
変化があるのでしょうか。
2時間ドラマを毎回放送していた枠で、ドラマの
2014年に放送された番組のうち好感度評価
ほかにバラエティも放送するようになったため、
(Qレイト)をみると、上位10番組のうちドラマが
本数・分数の減少につながったと考えられます。
半数を占めていることから、ドラマは視聴者の好
ドラマジャンル別でいうと、
“ミステリー劇場”
感を得やすいジャンルだといえます【図表2】。
【図表1】プライム帯に放送された「ドラマ」の延べ本数・延べ分数の推移(関東地区)
ドラマ全体
(年)
延べ本数
延べ分数
平均分数
(一本あたり)
一般劇
時代劇
04年
1087
73765
13年
912
60933
14年
975
66227
04年
477
28174
13年
306
18143
14年
345
20818
04年
177
9002
13年
89
4464
67.9
66.8
67.9
59.1
59.3
60.3
50.9
50.2
スリラー・アクション
コメディ
14年
111
5396
04年
403
34879
13年
405
31903
14年
497
38628
04年
30
1710
13年
112
6423
14年
22 (本)
1385 (分)
48.6
86.5
78.8
77.7
57.0
57.3
63.0 (分)
*期間:各年1月1日~12月31日 *対象局:民放5局とNHK総合
20
Video Research Digest 2015. 7-8
しも一昔前と同じだとは限らないのではないで
【図表 2】番組カルテ Qレイト(好感度)
上位10番組
(18~23時台)■:ドラマ(%)
しょうか【図表3】。
放送開始 Qレイト Fレイト
雨上がり決死隊のトーク
テレビ朝日
番組アメトーーク!
2004年と2014年では少し違いが見られま
23:15
91.8
30.0
す。
「親しみがある」はこの10年で大きく下がっ
2 相棒
テレビ朝日
21:00
91.1
26.4
3 歴史秘話ヒストリア
NHK総合
22:00
91.0
16.5
ていますが、逆に「ハラハラ・ドキドキする」は右
番組名
1
局
肩上がりに伸びています。ここから考えられるこ
4
木曜劇場・続・最後から
二番目の恋
フジテレビ
22:00
90.8
16.0
5
木曜ドラマ・ドクターX・
テレビ朝日
外科医・大門未知子
21:00
90.5
29.9
のではないか、ということです。
TBS
18:00
90.1
11.2
日本テレビ
19:00
89.5
46.9
20 04年は、
『プライド』や『ラストクリスマ
TBS
21:00
88.9
14.4
TBS
22:00
88.6
15.2
テレビ朝日
19:58
88.5
23.6
6 THE 世界遺産
7 ザ ! 鉄腕 !DASH!
8
木曜ドラマ劇場・
MOZUSeason2・幻の翼
9 金曜ドラマ・Nのために
10
大改造!劇的ビフォー
アフター SEASON2
とは、放送されるドラマのテイストに変化がある
ス』
『オレンジデイズ』のような、学生や社会人の
恋愛がストーリーの軸となっているドラマが多く
挙がります。視聴者の誰もが通ってきた、あるい
はこれから通る道が舞台として描かれていて、視
*「番組カルテ」2014年5月、
11月の 2 回調査の総合結果
聴者は親しみを覚えやすいと考えられます。
対 して 2 0 1 4 年 にヒットしたド ラ マ は 、
視聴したときの気持ちを、視聴感のドラマ平
『HERO』
『相棒』などの警察・検察もの、
『ドク
均推移からみてみると、2014年は「ハラハラ・ド
ターX』のような医療ものといった、職業ものド
キドキさせられ」たり、
「見応えがある」
「楽しい
ラマが挙げられます。また、
『花咲舞が黙ってな
気分になる」ようなドラマがトレンドだったよう
い』
『ルーズヴェルト・ゲーム』など、池井戸潤さ
です。しかし、ドラマに対して抱く気持ちは、必ず
んが原作のドラマも話題になりました。この2作
【図表3】番組カルテ「視聴感」のドラマ平均推移
(%)
35
親しみがある
ハラハラ・ドキドキする
32.5
30
25
24.5
20
18.5
15
13.8
10
5
0
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(年)
* ドラマ平均:各年 5 月、11 月の調査で、F レイト(視聴経験)3% 以上、
18 ~ 23 時台に放送のドラマ平均
21
品もある意味職業ものに近いとも言えますが、こ
のようなドラマには共通する要素が何かあるの
でしょうか。
ここまで「ハラハラさせられる」ドラマを取りあ
『相棒』のような警察ものを例に考えます。
げてきましたが、このようなドラマにはもう一つ
警察もので典型的なストーリーというと、冒頭で
ある傾向がみられます。それは、1話完結型が多
事件が起こり、登場人物たちが犯人逮捕を目指
いということです。1話で話が完結するならば、
して奔走し、最後には解決、という勧善懲悪の
途中の回を見逃しても見続けることができます
ような流れが予測できますが、犯人を追い詰め
し、逆に途中の1話のみでも見ることができま
るまでの過程で様々な困難にぶつかる登場人物
す。つまりそれは、毎週話を追い続けることなく
たちに、視聴者はハラハラさせられます。もちろ
楽しめるので、視聴者の入り口が広いとも言える
ん、警察もの以外にもそういったストーリーのド
のではないでしょうか。また、もし1時間のドラマ
ラマはあります。
『花咲舞』でいうと、会社の裏
枠でこのような1話完結型のドラマが増えたとす
で巻き起こる様々なできごとに主人公たちが苦
ると、もともと2時間枠に多かったミステリー要素
戦させられる姿にハラハラさせられます。そし
の強い1話完結型ドラマの放送が減り、その結果
て、最後にはスカッと解決する痛快さも、視聴
先に触れたように1本あたりの放送分数の減少
者にウケている要因でもあるかもしれません。
につながっているのかもしれません。
また「ハラハラさせられる」要素としては、視聴
私個人としては、登場人物の個性が豊かであ
者の期待を良い意味で裏切るストーリー展開も
ることはもちろん、物語の過程がスリリングでハ
あげられるかと思います。例えば2014年に放送
ラハラ・ドキドキさせられること、最後に納得で
された、
『MOZU』や『Nのために』などが代表
きる形で物語が収まることが、
「面白い!」とより
的です。
『Nのために』のような最終回で意外な
感じやすい要素だと思っています。それは、1話
犯人が明かされる展開や、
『MOZU』のような
完結型でも1クールでも、どちらでも持ちうるも
予想外の結末を迎えるものなど、物語の着地点
のではないでしょうか。
が予想できないと、見ている側は「この先どうな
るのだろう?」とドキドキさせられます。やはりこ
ちらのパターンでも、物語の過程にハラハラさせ
られるという点では同じだといえます。
「ハラハラさせられる」の要素をいくつか列記
しましたが、いずれにせよスリリングなストーリ
ー展開であることが大切だといえそうです。
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■ 今後のドラマは?
Video Research Digest 2015. 7-8
今回は2014 年のドラマを中心に見てきました
が、2015 年になってからも、個性的かつスリリン
グなドラマはいくつも登場しています。例えば、4
月クールには正体不明のストーカーの恐怖に立
ち向かう家族を描いた「ようこそ、わが家へ」が
放送され、クール平均12.5%と堅調な視聴率を
獲得しました。7月からは、探偵業に焦点をあて
たサスペンスドラマ「探偵の探偵」や、殺人鬼・
キラと天才探偵・Lの手に汗握る頭脳戦を描く
【テレビ番組カルテ 調査概要】
調査地域 :東京30km圏
調査対象者 :調査時に満13~69才の
男女個人
目標有効標本数:約800人
調査月 :毎年5月、11月の年 2 回
調査対象番組 :放送分数25分以上の
レギュラー番組
※ 平日は18~23時台の番組、および18時以前の帯番組
「デスノート」が、ハラハラさせられるドラマとし
て注目です。
秋以降も、どのようなスリリングなドラマが生
まれるのか楽しみです。
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