ガーナにおける補装具を利用する成人障害者の就労状況

義足購入に至るニーズと作成後の
利用状況
平成25年度1次隊
理学療法士 磯貝仁美
もくじ
1.前回の報告
2.今回の調査ー義足の有効活用に向けてー
3.ガーナの義足ユーザー
4.切断者のニーズと義足購入に至る経緯
5.まとめ
前回調査のきっかけ
途上国で障害を持っ
た人は、物乞いで生
活する以外に方法が
ないの?
配属先に来る人は良く
ケアされている・・
お金があるから?
生活をより良くするために、ガーナでは補装具がどの
程度普及しているのか調べてみたい
前回報告より
ガーナに福祉制度はあるのか
障害者登録
• 各障害種別ごとの協会に自主的に登録
所得保障
• 個別の補助はない
医療費
• 公的な健康保険のみ
補装具
• 給付制度なし
前回報告より
ガーナの補装具
前回報告より
配属先における問題点
材料と人手は不足
大量のドネーション
一時的な治療用に使ったり
パーツを再利用したり
低価格で販売したり
前回報告より
補装具供給・利用の問題点
補装具の利点について知られていない
製作所が少ない
お金がかかる(製作・修理・交通費)
前回報告まとめ
• 障害を持つ人たちへの社会保障制度が不十分
• 補装具の供給は不足している
• 利用者が限られている(情報格差、貧富の差が影響)
• 海外からの援助に頼りがち
今回の調査
~義足の有効活用に向けて~
足を切断
歩けない身体に!
学校に行けない、仕事ができない
限りある材料、人材で義足作成
再び歩ける身体に!
ひきこもり、貧困への道
ニーズを満たす物をより多くの人に提供するには・・?
運動機能に障害を持つ人たち
下肢切断者
4500~5000人以上(推計)
ガーナ全人口
約2千5百万人
足を切断した人は
人口5000人に1人以上?
障害を持つ人
運動機能に障害を持つ人
約2万4千人(協会登録者数)
義足の構成
ソケット
石膏で足の型をとり、
その人の足と全く同じ形
の受けを作る
膝継手
足継手
足部
大腿義足
下腿義足
義足の製作・購入・利用の流れ
病院や知人から製作所に紹介
専門職が切断した足の状態をチェック
足の状態安定、義足代金の支払い
採型、ソケットと中古品のパーツを組む
歩行練習、適宜修正
壊れたら製作所で修理→材料費が必要
義足の価格
大腿義足(膝上の切断)
900ガーナセディ(およそ300ドル)
2-3か月分の入所費用、理学療法等含めて
1300ガーナセディ
子どもの義足は安く設定
13歳~17歳・・700ガーナセディ
12歳以下・・・・500ガーナセディ
義足ユーザー
2013年1月~12月に配属先を訪れた下肢切断者
継続ケース
(すでに義足を利用している人)
1420人/年
新規ケース
(義足作成希望者)
212人/年
初診から1年後
68%が作成済
切断者のニーズと義足購入に至る経緯
2013年に配属先を訪れた人のうち、2014年に入所
して義足を作成した人(18歳~59歳)に聞き取り
→29人中14人が回答
Q1 なぜ義足を作りたいと思ったのですか?(複数回答)
歩いて自由に移動したい
仕事や学校に戻りたい
14人全員
10人
切断者のニーズと義足購入に至る経緯
Q2 現在仕事をしていますか?または学校に行っていますか?
就学
復職
復職準備
早期退職
2人
7人
4人
1人
切断者のニーズと義足購入に至る経緯
Q3 どのようにして義足製作所(配属先)を知ったのですか?
(複数回答)
手術をした病院の医師
理学療法士
患者仲間
家族・知人
ラジオでの広報
7人
2人
2人
1人
1人
切断者のニーズと義足購入に至る経緯
Q4 義足の費用をどのようにして工面しましたか?
自分自身
自分と家族
家族・親戚
知人・友人
会社
2人
1人
9人
1人
1人
切断者のニーズと義足購入に至る経緯
Q5 自分自身で支払った人に・・
義足購入のために何か月働きましたか?
22歳 教員
53歳 自営業
2年以上
約1年
→この2名は復職
学校に行けるようになったTくん
現在12歳、小学5年生
生まれつきの両足の変形、四つ這いで生活
6歳の時に両足の手術、右足は立てる状態
になったが、左足は足首から先を切断
ナイジェリア人女性の支援で義足を作成、
7歳で小学校入学
英語と数学が得意で、好きなスポーツは
サッカーとバレーボール
「将来はドクターになりたい」
復職したJさん
20歳 電気技師(個人事業主)
両親と共に暮らしている
2012年業務中の事故で膝下を切断
手術から2年後に入所して義足を作成し、9ヶ月
前に自宅復帰
今回は、義足の部品が壊れたので修理のため
製作所(配属先)に来た
現在は元の仕事をしている
調査結果
義足に対するニーズは“歩きたいから”
歩けるようになれば行動範囲が広がる、学校に行ける、
復職して家族を養える、普通の人と同じように周りから
見てもらえる
義足作成後は、就学・復学につながるケースが多い
教員や個人事業主は復職できる可能性が高いが、
職につけない人も・・
義足の費用は家族に援助してもらうケースが多い
まとめ
“歩く”というニーズは満たされ、生活レベル
の低下を防ぐことができる
子どもに対する復学支援に有効
復職に有用な義足の機能について、作成時
に十分検討する必要がある
ご清聴ありがとうございました