2.政党 - 比較政治Ⅰ・Ⅱ

2015年度第1学期「比較政治Ⅰ――リベラル・デモクラシーの比較政治――」
2.政党
2015.4.20
1.合意デモクラシー
レイプハルトの合意デモクラシー論
多数決デモクラシー
合意デモクラシー
多数決原理
少数派の保護、比例の原則
小選挙区制
比例代表制
2党制
多党制
単独政権
大連合政権
イギリス
スイス
多数決デモクラシー
(majoritarian democracy)
多数決原理を採用し、多数派に権力を集中
社会
議会
政権
政権のつくり方
多数派が過半数の議席を占め単独で政権を形成
→政府は多数派の目的を達成するための機関・手段
英の自由主義:その範囲内で少数派の権利を守って、不利益が生じないように
選挙
多数決原理→各選挙区の多数派が代表に
議会の多数派が単独で政権を運営
選挙はどの政党が支配するのかを決定するための競争の場---政権選択
合意デモクラシー (consensus democracy)
多様な勢力の間の合意を重視し、権力を制限・共有
多極共存デモクラシーはその一種
-1-
政権のつくり方
可能な限り多くの政党を政府に参加させる---全政党参加の大連合政権も
→政府は集団間の協議の場
選挙
各集団が勢力の大きさに比例した数の代表を議会に送る
政権を握るのは主要政党の連合
選挙は各集団の勢力比を確認する場---政権構成は選挙後の交渉次第
レイプハルトの新しい類型
「柱」や柱状化の要素を薄めて、大陸ヨーロッパに広く適用できるようにした
2.政党システム
政党 party の行動には一定のパターン
政策追求:政権獲得や得票増大よりも政策実現を優先
得票追求:政権獲得や政策実現よりも得票増大を優先
政権追求:政策実現や得票増大よりも政権獲得を優先
政党システム(政党制) party system
政党が選挙において競争し、政権担当において協力する相互作用の構造全体のこと
分類の基準:政党の数、政党同士の競争の激しさ
デュヴェルジェの分類
1党制:単一の政党だけが存在
他の政党は禁止されており政権交代が起きない
複数政党制:複数の政党が自由に競争
2党制(2大政党制):主な政党が2つ、両党が政権をめぐって競争
例)イギリス・アメリカ
多党制:主な政党が3つ以上
単独で過半数を獲得できる政党が存在せず、連立政権が形成される
例)ヨーロッパ大陸諸国
問題点:多党制が2党制に比べて不安定と考えられている
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サルトーリの分類
非競合システム:自由な競争が認められていない≒独裁
1党制:政党が1つしか存在しない
ヘゲモニー政党制:政党は複数存在するが、支配政党への挑戦は認められない
競合システム:自由な競争が認められている≒リベラル・デモクラシー
分類の基準
・有意な政党の数---政権を作るときに何らかの形で影響を与えられる政党
・政党のイデオロギー距離
---イデオロギー距離が大きいと妥協が困難
イデオロギー:体系的な思想・世界観
有意な政党の数
分類
2
2党制
作動の特性に着目した分類
2党制
(分極化した2党制)
3~5
5または6以上
限定的多党制
穏健な多党制
極端な多党制
分極的多党制
1党優位制
原子化した政党制
3.
2党制
有意な政党が2つ存在し、政権交代を伴う政党システム
多数決デモクラシーの発想が出発点
政権交代の可能性
選挙で過半数の議席を得た政党が単独政権を形成
ダウンズ・モデル
2党制では2大政党の政策は似通ってくる
前提)政党は得票増大を目指して行動する
B党が右に寄りすぎる
→A党に中道の支持者を奪われる
B党は中道に寄っても票を失う心配はない
A
→
←
B
→A党もB党も中道へ
-3-
例外) 分極化した2党制---中道の有権者が少ない場合
両党ともに中道に寄ると支持者を失うおそれ
A
B
←
→
→A党もB党も中道から遠ざかる
→
イギリス
保守党:もとは貴族・地主が中心→今は資本家・中産階級が中心
労働党:労働組合と結びつき、労働者を代表する政党として発足
政権選択:選挙はどちらの党に首相・政府を任せるかを決める場
マニフェスト:政党は自らの党の政策をかなり具体的に提示
勝った方の政党が首相を出して単独で政府を形成する→与党
負けた方の政党(野党)は党首を中心に影の内閣を形成
政府を監督・批判、政権交代に備える
第2次大戦前は少数派政権や連立政権、現在も連立政権
アメリカ
共和党と民主党、周期的な政権交代、単独政権
地域政党の連合体
メンバー:幹部政党
組織:全国レベルの党組織がほとんど存在しない
政策・主張:各党は選挙のたびに政策を決めるが一貫性はない
党議拘束が弱い
個々の議員が独自の判断で投票---自分の信念や選挙区の利益
党を超えた連携が盛ん
但し、最近は2大政党の対決色が強まっている
4.多党制と1党優位制
分極的多党制
polarized pluralism, polarized multi-party system
イデオロギー距離が大きい5~6以上の政党が選挙で競争し、
中道政党が単独または連立で政権を担当する政党システム
典型例:1990年代初めまでのイタリア、20年代のドイツ(ワイマール共和国)
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①中道の政党が連合して政府を形成
②この連合から排除される主要政党が左右に1つずつある
ワイマール:ナチス(右)と共産党(左)を排除
戦後イタリア:イタリア社会運動(右)と共産党(左)を排除
冷戦
Cold War
世界各国がアメリカを中心とする西側陣営とソ連を中心とする東側陣
営に分かれて対立していた状況
国内冷戦
国内の政治勢力が西側支持と東側支持に分かれて対立していた状況
米は西側諸国でソ連支持の勢力が強力になるのを恐れる
③左右両極の政党が「無責任野党」に
実現困難・無責任な公約を掲げて存在感を示した方が得策
④中道が弱体化し、左右両極の勢力が強くなる可能性
左右両極の「無責任野党」が中道を攻撃→中道の弱体化
政党間のイデオロギー距離が拡大(分極化)
ワイマール共和国
ナチス・共産党の勢力拡大、中道の弱体化で崩壊
イタリア:分極的多党制が40年にわたって安定・存続
①連合の選択肢が限られていた---共産党とイタリア社会運動を排除
②実際には左右両極の政党が中道各党と妥協
穏健な多党制
イデオロギー距離が小さい3~5の政党が選挙で競争し、
単独-連立、または連立-連立の形で政権交代が起きる政党システム
合意デモクラシーの発想が出発点
政権から排除され続ける主要政党が存在しない→すべての主要政党に政権参加の機会
限定的多党制(政党数が3~5)は穏健な多党制になりやすい
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典型例:ドイツ(西ドイツ)
キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)
自営業・農民などが基盤、西側路線・自由主義経済、治安政策などでは保守的
社会民主党(SPD):労働者が基盤、社会民主主義
自由民主党(FDP):自営業・農民が基盤、市場重視、外交・治安でも自由重視
3党の政策の距離は近い
経済:ケインズ主義的福祉国家(福祉を通じた経済介入→景気回復・経済成長)
外交:西側支持
主要3党が全て政権を担当、主要3党の組み合わせが全て存在
大連合:キリスト教民主同盟・社会民主党
現在のドイツには緑の党、左翼党もあるが連合のパターンなどの特徴に変化はない
1党優位制
predominant-party sytem, dominant-party system, one party dominant system
複数政党間で競争が行われているにもかかわらず、
1政党が継続して投票者の多数派に支持されている政党システム
・競争が行われている--独裁とは違う
・有意な政党はいくつあってもよい
・単なる長期政権ではない---過半数の議席、単独政権
イタリア:キリスト教民主党の長期支配だが1党優位ではなかった
スウェーデン:社会民主労働党が単独政権を40年以上維持
典型例:90年代初めまでの日本・インド
自民党の長期政権:得票率、議席数、政策決定への影響力で圧倒的優位
社会党は政権獲得を断念し抵抗政党に
今の日本は2党制と穏健な多党制の両方の特徴
<参考文献>
レイプハルト『民主主義対民主主義
川人貞史他『現代の政党と選挙
原著第2版』(勁草書房、2014 年)
新版』(有斐閣、2011 年)
岡沢憲芙『政党』(東京大学出版会、1988 年)
デュベルジェ『政党社会学』(潮出版社、1970 年)
サルトーリ『現代政党学』(早稲田大学出版部、2009 年)
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