アウトソーシングパートナーを 最大限に利用する: 治験における戦略的 アウトソーシング 記事 www.almacgroup.com 治験依頼者様が主要プロバイダーとの長期 的な信頼関係を築くことになる戦略的アウ トソーシングは、バイオ医薬品メーカーが 戦略的研究開発目標を達成するために役立 ちます。 最近の調査では、アウト ソーシングを行う理由とし て、品質の改善と市場進出 時間の短縮がより頻繁に挙 げられることが明らかにな っています。 多国籍バイオ医薬品メーカーは、何年も前にすべてのR&D業務を社内で実施す るという慣行を放棄しましたが、このアウトソーシング決定の背後にあった要 因が、今では変化しつつあります。大手製薬会社様がアウトソーシングパート ナーに委託する主な理由が固定コストを削減することの必要性であることに変 わりはありませんが、最近の調査では、品質の改善と市場進出時間の短縮がよ り頻繁に引用された理由であったことが明らかになっています。1 これは、会 社が、被験者様と治験薬供給管理をサポートするサービスなど幅広く密接に関 連し合う新薬開発サービスに秀でたベンダーと戦略的な関係を築く傾向が増し ていることと関連しています。 製薬会社様が戦略的アウトソーシングを実施し、いくつかの少数ベンダーと緊 密に連携する際には、コスト削減がベースライン要件となります。製薬会社様 がそのような長期的関係から期待すべき真の価値は、競争上の優位性につなが るプロセスや技術面の革新です。様々な治験依頼者様での広範な経験と深い専 門性により、最高レベルのサービスプロバイダーは実際に、その特定分野にお いては治験依頼者様よりも優れた専門性を築き上げてきました。これは、品質 の改善と市場進出時間の短縮の強化につながるはずです。 当然ながら、その一方で、このような期待される価値を得ることのできる関係 をどのように築いていくのか、という質問があります。弊社は、治験薬開発中 の被験者様と治験薬の管理に関する現在のアウトソーシング傾向についての眼 識、およびその戦略的アウトソーシングから最適な結果を得るためのアドバイ スを提供します。 1 Nice Insight Pharmaceutical and Biotechnology Survey、2013年。 アジアは現在、全世界の治 験の15%を占めています アジアにおけるアウトソーシング 一般的に、R&Dの戦略的アウトソーシングの増加は治験のグローバルな拡大 と並行して増加を遂げています。新興市場において新薬市場が著しい発展を遂 げ、過去十年にわたり被験者募集の難度が増していることにより、治験依頼者 様は当然のことながら治験対象地域の拡大に努めています。これは、アジア地 域では特に顕著です。アジアの主要7か国におけるR&D市場は全体では2011年 には合計53億米ドルを記録し、2018年末までには173億米ドルに達すると予測 されています。2 アジアは現在、全世界の治験数の15%を占めています(2011 年の11.6%からさらに上昇)。3 新薬開発のための世界的な存在感を築き維持するために必要な人的および物理 的インフラに多大な投資をする代わりに、製薬会社様は主要新薬開発センター にリソースを補充し、新興国での専門性高い治験市場において現地に合った能 力を提供できるグローバルパートナーと契約を締結することが一般的になって きています。アジアでは、医薬品開発受託機関(CRO)によって提供されるサー ビス(治験実施施設の選択、被験者の募集、治験実施施設のモニター、データ 管理など)の利用は非常に普及しています。最近までは、大手バイオ医薬品 メーカーはこの地域に自社の治験薬物流・供給組織置く傾向がありましたが、 この点は変化しつつあります。 アウトソーシングのオプション 製薬会社様がR&Dのアウトソーシン グ戦略を考案する際に考慮しなけれ ばならない基本的な質問の一つは、 「一カ所で全ての用が足りるワン ストップ・ショッピング」を提供す るベンダーにサービスを集結させる か、それとも専門サービスを提供す る幾つかのベンダーを選択して直接 提携するかでは、どちらが最善の選 択であるか、という問いです。(個 々の新薬の開発について多数の優先 プロバイダーと提携する場合はコス トがかかりすぎ現実的ではないこと が、すでに実証されています。) 理論上、当然ながら一社のベンダー と提携する利点は多くありますが、 2 “Drug Discovery and Development Market in Asia—Partnerships Between MNCs and Asian Academic Institutions in Healthcare Research Organizations are Driving R&D Innovation,” GBI Research 3 “Clinical Studies in Asia-Pacific: A Regional Perspective,” Journal for Clinical Studies, Vol. 5, Issue 3. その主要な利点は便宜性です。しか しながら、このアプローチをとる治 験依頼者様は、製薬会社様ご自身が アウトソーシング開始前にR&Dのあ らゆる側面で優れた成果を上げるこ とができなかったのと同様に、複雑 に入り組んだ業界では一社のサプラ イヤーが「すべてをうまくこなす」 ことを期待するのは現実的ではな い、という事実をきちんと踏まえて おく必要があります。同様に、全て の分野での達人になろうと努めるプ ロバイダーが一社だけで、各分野で の管理面を重視することや、一貫性 を持って優れた成果を上げるだけの 投資能力を提供する能力があるとは 言えません。 幣社のお客様は、アジア 地域に関連するニーズを 満たすための特定の能力を 提供することを求め続けて います。 これを避ける方法の一つは、主要 ベンダー(CROなど)が、効果 的に提携できサービスを統合でき る専門プロバイダー(被験者様や サプライチェーン管理を提供する 専門会社など)と下請契約を結ぶ ことです。これは実現可能なモデ ルではありますが、治験規模が大 きい治験依頼者様に対して継続 的な改善や価値形成の最大機会 を与えるものではありません。 もう一つのオプションは「最善の組 み合わせ」モデルを採用し、治験依 頼者様が直接、各分野でのリーダー であり効果的に連携して治験依頼 者様の目標を達成できる小規模な専 門プロバイダー網と契約を結ぶこと です。これは、治験の立ち上げと実 施の分野ごとに別々のベンダーを採 用する必要があることを意味するの ではありません。市場リーダーは専 門分野内でそれぞれのサービスを統 合するため、必要な企業数は限定さ れます。この「最善の組み合わせ」 アプローチが適切に展開された場合 には、各貢献企業の的を絞った主要 なコアコンピテンスと敏捷性を活用 しつつ、統合されたソリューション が得られることになります。当然な がら、このアプローチの難題は、す べての当事者会社との関係を効果的 かつ効率的に統括することです。 成功への鍵 治験依頼者様とR&Dベンダー間の戦略的なパートナーシップに関する最近の評 価では、その成功率はさまざまです。Avoca Groupによる2012年の調査による と、製薬会社様の1/5(22%)が、成果不良という理由でアウトソーシングパー トナーとの戦略的契約を打ち切り、40%が期待通りの運用効率が得られる度合 いが限られていることを認めています4。 この調査結果の理由としては、すべてのベンダーが全地域での全業務にわたり 同程度の有能性を示すわけではないこと、および生産能力の素早い調整が必要 となるため一部のベンダーでは品質関連の問題が生じていることが推定されま す。では、このような結果をどのようにすれば改善できるでしょうか? 4 “The New Reality: Strategic Partnerships Under Scrutiny,” 2012 Industry Survey Research, the Avoca Group. 図 1: アウトソーシングにおける重要な成功要因(CSF) 目に見える利点は、治験プロセスにおいて複数部門間でのサービス統合に十分なほどのグローバルな規模と知識の幅 広さを持つアウトソーシングパートナーと提携するときに得られます。 重要成功要因: ベンダーの選定 以下から得られる効率: · サービスの統合 · 治験の計画 · サプライチェーン管理 戦略の焦点 関係のガバナンス これらの関係には通常かな りの量の仕事量が必要とな るため、専門特化型企業で は手に負えなくなることが あります。 ベンダーの選定 当然のことながら、適切なパートナーを選定することは重要です。統合された サービスを提供するアウトソーシングパートナーとして認められるためには、 ベンダーは、経験や専門知識を有しており、さらに、求められている速度で、 高品質の成果を一貫して達成できる規模を持つことを示す必要があります。誤 りだけでなくその場で新しいことを学んでいくことさえも許されないため、ベ ンダーには、その分野における深い専門知識、地域標準に対する眼識、および 適用法規制および安全上の問題についての完全な理解が必要です。 戦略的アウトソーシング契約の成功に貢献するためには、プロバイダーには長 期的関係を結ぶ覚悟も必要であり、治験依頼者様の事業に全力を傾け、治験依 頼者様の見地からその事業を理解することが必要です。プロバイダーはまた、 グローバルな治験をサポートするための十分な規模と知識の幅広さ、そして変 化する要件に適用できる柔軟性を持つことも必要です。これらの関係には通常 かなりの量の仕事量が必要となるため、専門特化型企業では手に負えなくなる ことがあります。このモデルでのアウトソーシングパートナーはまた、他のベ ンダーとの協力体制を受け入れるオープンさが必要です。 特に被験者様と治験薬供給管理では、ベンダーは治験プロセス全体を通して ワークフローとデータを理解し、システムがリアルタイムに互いに供給し合 い、治験依頼者様に主要業績指標に対する最大限の管理と透明性を与える必要 があります。 アジアは広大な成長市場で あり、この地域にまだ進出 していない製薬会社様であ っても長期展望を持つ場合 には間もなく進出してくる と思われます。 戦略の焦点 戦略的アウトソーシング関係の主要 な目的の一つに、コストダウンに向 けた協業があります。アウトソース 対象サービスのすべての面を単価押 下げのための試みとして扱うことと この点を混同しないでください。そ のように混同すると、「戦略的アウ トソーシングを、プロセスと技術面 の改善により競争上の優先性を獲得 するための手段と見なす」という大 前提を弱体化させることになりま す。 ビジネスバリューを生み出すブレー クスルーを見つけるには、治験依頼 者様がそのサポートサービスの管 理に時間を費やし、調整し続けるこ とを必要とします。戦略的目標間の 調整、関係者両者からの積極的な関 与、プロセスの進化に対するオープ ンさ、および制御された実験がうま く実現されている場合にのみ、戦略 的アウトソーシング関係の全ての潜 在能力が引き出されます。 関係のガバナンス 治験依頼者とそのアウトソーシングパートナー間の関係をどのように統括する かは、この関係が方策面の実施という枠を超えてより戦略的な目標を達成する ために重要な要素です。製薬会社様は、以下を伴う統制されたプロセスに従う 必要があります。 • • • • • 理想的な将来像の展望と関係の戦略的目標の明確化 各当事者の権限の確立、サービスレベル契約(SLA)の交渉、および品質を評 価するための指標の確立 関係当事者両者の戦略面での年間目標の策定。これらの目標は、一般的に 運営面を主とするSLA目標を超えてワークフロー内で最も独立性の高い主 要分野を対象とする必要があります 意思決定方法、情報の伝達方法、両組織の技術およびプロセスの統合方 法、および知的財産の保護方法 方針を設定し、問題の発生に伴い対処する管理機関を介した運営レベル、 管理レベル、および実行レベルでのパートナー関係の監督 長期にわたり好調なパートナー関係を保つためには、全当事者がその関係に 投資し必要なリソースを投じる必要があることは明らかです。目的は、互いに とって有利な関係を維持し、低コストでのより高品質な治験薬の迅速な開発を 実現することです。 先を見据えることができる 会社は、そのサービスを論 理的な方法で統合できるよ うに施設、スタッフ、技術 に投資しています。 被験者様と治験薬供給管理のアウトソーシングから得られる効率性 被験者様と治験薬サプライチェーンを管理するためのサービスプロバイダー は、治験依頼者様の戦略的アウトソーサーとして行動する際、サービス統合、 綿密な治験計画、包括的なサプライチェーン管理という3つの基本的な方法で 効率性を提供できます。 サービスの統合 先を見据えることができる会社は、そのサービスを論理的な方法で統合しお 客様にシームレスに提供できるように、施設、スタッフ、技術に投資していま す。われわれは一つの会社において統合された配送モデルを持ち盲検用治験薬 製造、梱包とラベル貼付、分析テスト、保管とデポ・保管サービス、世界中 への配送と物流、および被験者登録、無作為化、治験薬割当に使用する自動化 技術を提供できます。 治験における供給管理サービスと、治験薬を治験実施施設様および被験者様と をつなぐために使用される自動応答技術(IVR/IWR)の間には、重要な相関性が あります。この点は、治験薬供給の予測、盲検治験用ラベル貼付、製品保管、 再供給モデルの選定、および治験薬回収管理のワークフローの定義といった業 務を持つプロセスの立ち上げ時に最も顕著に現れます。各分野で強みのある 1つのベンダーを通してこれらのサービスを統合する場合には、以下の多数の 利点が提供されます。 • • • • 治験依頼者様やCROのスタッフが、治験立ち上げフェーズ中に 個々のベン ダー間の戦術的コミュニケーションや計画上の詳細を監視する仲介役を務 める必要がなくなる サプライチェーン全体にわたり最新の被験者登録データと治験薬の在庫状 況を単一システム内から確認できる場合、治験前および治験中に治験薬需 要をより迅速かつ容易に予測できる。この結果、出荷数を減らすことがで き、コストの低減につながる 被験者登録の傾向が仮定とは著しく異なる場合や治験実施計画書の改訂な どにより地域的またはグローバルな供給不足が生じた場合などにも、治験 薬供給量を容易に調整できる 特定のラベルタイプや特定地域のリサプライ の管理、倉庫設置戦略の国単位からリージョナル単位への調整、または治 験薬保管や有効期限管理をサポートするためのジャストインタイムなラベ ル貼付がはるかに容易になる 統合システムは、治験薬の梱包から回収・廃棄に至るまで全プロセスにお ける治験薬のエンドツーエンドの監査証跡を生成する 注意深い管理により、コス トを節約できるだけでな く、治験実施施設で過剰な 治験薬や診断キットを保管 する必要がなくなります。 治験の計画 治験依頼者様は、多くの場合は治験実施計画書の開発時点から、治験計画プロ セスにサプライヤーを関与させる傾向を高めています。アウトソーシングパー トナーは、治験デザイン、無作為化、盲検に対するアドバイスの提供に加え、 治験中に治験薬が実際に必要となる時期の予測を支援できます。 大規模な第三相の治験では特に、治験薬の需要の予測は重要です。前もった 予測により、治験依頼者様は梱包、ラベル貼付、出荷を被験者登録の進行状況 および治療ステージに合わせて出荷できます。これにより、製造過程の管理、 調剤単位およびキットサイズの決定、治験薬が必要なときに利用可能であるこ との保証、および過剰生産による無駄の削減が実現できます。被験者管理アプ リケーションも提供するサプライヤーは、被験者状態に関する現在の情報を 予測ソフトウェアで同期することで、需要の予測に合わせてリアルタイムの 調整ができます。 サプライチェーン管理 サプライチェーン会社はまた、治験依頼者様による治験薬在庫管理を大きく支 援でき、治験ライフサイクルにおける輸送コストを最小化できます。被験者管 理システムがサプライチェーンシステムと統合されている場合にのみ利用可能 なリアルタイムな需要と治験薬供給データを備えた経験豊かな専門家は、先を 読んで、デポの設置場所、輸送経路、リサプライの戦略に関する提案を行うこ とができます。注意深い管理により、コストを節約できるだけでなく、治験実 施施設様で過剰な治験薬や診断キットを保管する必要がなくなります。 サプライチェーン・アウトソーシングパートナーはまた、効果的に治験薬保管 戦略を導入して、製造する必要のある盲検用治験薬の供給量を削減し、治験薬 の流通を速めることができます。治験薬保管倉庫で共通在庫管理が行われる 際、IVR/IWR技術と二次ラベル貼付の専門家が一体となって取り組み、治験薬 が確実に治験実施計画書用に沿ってラベリングされ、正しく治験実施施設様に 配送され、正しく被験者様に渡されるようにすることが必要です。 成功への鍵の一つは、グロー バルに操業するために十分な 規模を備えたアウトソー シングパートナーを選択する ことです。 パートナーとの提携によってより優れた成果を上げる 治験依頼者様が主要プロバイダーと長期的な信頼関係を築くことによる戦略的 アウトソーシングは、バイオ医薬品メーカーが戦略的な研究開発目標を達成す るために(新興市場では特に)役立ちます。成功への鍵の一つは、グローバル な運営のために十分な規模と、治験プロセスにおいて複数部門間にわたりサー ビスを統合するのに十分な専門知識の幅広さを備えたアウトソーシングパート ナーに委託することです。理想的なサプライヤーは、治験依頼者様および他の プロバイダーの得意分野を補完することになるような専門知識をもたらしま す。正式なガバナンス構造は、コラボレーションを導く上で役立ち、その関係 が治験依頼者様に利益をもたらす革新を提供し続けることを保証します。 Jim MurphyはAlmac Clinical Technologiesのプレジデント兼マネージング・ ディレクターであると同時に、アルマック社アジア太平洋事業も主導しています。 連絡先:[email protected]
© Copyright 2024 ExpyDoc