日本近現代の歴史教科書の変遷 -敗戦を転換点に据えて- 神戸学院大学 大学院博士後期課程 張 煜 近現代の日本は、日清戦争(中日甲午戦争,1894-95 年)から、日露戦争(日俄戦争,1904 -05 年,)、第一次世界大戦(1914-18 年) 、満州事変(九・一八事変,1931 年)から太平洋 戦争(1941-45 年) 、ほぼ十年おきに対外戦争を繰り返してきた。 日本の歴史教科書では、この半世紀に及ぶ「戦争の時代」をどのように記述してきたのであ ろうか。戦勝気運に高揚し戦争を正当化していた時代の記述、敗戦後の連合国占領下における 記述、まがりなりにも独立を承認されたサンフランシスコ平和条約締結(1951 年)以降現代に 至るまでの記述の変遷は、歴史教育のなかで「戦争の時代」をどのように位置づけるのかを見 ていく重要なデータとなりうるものである。 私は日本に留学後、日本の教科書研究センター、国立教育研究所・教育研究情報センター、 兵庫県立教育研修所等で、明治以降出版された膨大な歴史教科書資料(総数約 600 点)を調査 してきた。今回の発表では、日本の近現代の歴史教科書が描く対外戦争、大規模な軍事衝突(日 本では「事変」と呼称している)を中心に、どのように対外戦争・対外軍事衝突(事変)を描 いているのか検討していく。本発表では、日本の近現代の歴史教科書記述の変遷を、1945 年の 敗戦とその後の GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による占領時期を分水嶺として、それ以 前の記述と、それ以降現在までの記述と、何が違い、何を継承していくのかを検討していく。 1945年8月日本の敗戦とともに、日本は7年間 GHQの占領下に入る。10月2日に発足した GHQは、戦前日本の軍国主義・超国家主義を一掃し、日本の教育の民主化を推進することを目 的に、日本史教育にもメスが加えられた。日本帝国主義のもとでの、軍国主義・超国家主義によ る「皇国臣民の錬成」のための教育方針を百八十度回転させ、平和と民主主義をめざす教育に切 り変えるように迫った。そのため急遽、教科書修正が行なわれ、戦後歴史教科書の原点といえる べき『日本の歴史』が作成された。 本発表は、日本の歴史教科書の変遷を戦前・占領下・戦後の3期に分けて検討していく。とり わけ、戦争・事変がいかなる理由で開始されたと記述するのか、その部分に着目しながら、現代 の日本の歴史教育の原点に迫ってみたい。 1.戦前の歴史教科書が描く対外戦争の正当性 2.戦後占領下の歴史教科書は、何を変えさせられるのか 3.戦後歴史教科書は、「戦争の時代」をどう描くのか
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