野鳥からのメッセージを描く 府中野鳥クラブ前会長 日本ワールドライフ

野 鳥・Tokyo
野鳥からのメッセージを描く
府中野鳥クラブ前会長 日本ワイルドライフアート協会役員
大室 清
1990 年 5 月、スケッチ旅行でひとり妙高高原
から戸隠高原に行った時、まだ残雪深い戸隠神社
密着して生かされているのは幸
いなことです。
奥社に至る参道で朝日を浴びて目の前を飛ぶ「青
ま た、 私 は 2005 年 か ら 日 本
い鳥」に出会った。それは文字通り「幸せの青い
ワイルドライフアート協会に所
鳥」を見たような高揚した気分でした。それから
属して野鳥画を描くようになり
野鳥への興味がより強くなったような気がしま
ました。当協会は、日本バード
す。以後、庭に来たジョウビタキ、御岳から日の
フェスティバル我孫子展や新宿御苑、市ヶ谷、関
出山行の帰途に沢筋で見たヤマセミなど、多くの
西地区などで展覧会を毎年開催しています。さら
野鳥を観察しては自分なりの観察記録を書くよう
に個展やグループ展などを開催した時には、多く
になりました。
の皆さんから応援を頂きますので大きな励みにな
1992 年からは府中野鳥クラブに入って活動す
り、心から感謝しています。
るようになりました。私のフィールドは主として
さて先日 6 月 30 日にNHKが放映した「ワイ
地元の多磨霊園・浅間山でしたが、目的意識を持
ルドライフ」よみがえれ!クロツラヘラサギ(絶
って野鳥を見るようになると、いままで見えなか
滅危惧種IB類)を見てあらためて考えさせられ
った野鳥の動向が見えてきました。やがて「多磨
ました。
霊園・浅間山の鳥類について」を編纂し、これを
クロツラヘラサギは朝鮮戦争で生息地に多くの
契機にして 1996 年からラインセンサス法による
砲弾が撃ち込まれました。その後、営巣地は開発
定量的な調査の他、ツバメの集団ねぐら調査等も
によって奪われ、その羽数はさらに激減し、いま
実施してきました。そして 2012 年まで蓄積した
や砲撃用に造られた小さな人工島でも必死の生存
データを生かして府中野鳥クラブの「府中市域の
競争が行われているという現状です。
野鳥たち」Ⅰ~Ⅲを発刊し、本誌「ユリカモメ」
でも紹介して頂きました。
このクロツラヘラサギは一例にすぎません。人
間の諸活動によって絶滅が危惧されている野生生
一方、私は各地の探鳥に出かけることも多く、
物は実に多く、日本の鳥類だけでも 150 種を超え
絵を描くことを忘れたような忙しい日々でした。
る始末です。既に絶滅してしまったカンムリツク
それでも振り返ると 1993 年から府中野鳥クラブ
シガモやキタタキなどのように、取り返しのつか
の会報「やちょう」に表紙画を 250 種余り描いて
ない事態をくりかえす愚行は避けたいものです。
きました。
表紙画を描く際には、観察会で確認できた野鳥、
私の所属している日本ワイルドライフアート協
会は、幸い日本の野生生物を描く美術団体であり、
自分が観察した野鳥、いままでに描いてない野鳥
人間と野生生物との共存が必然的なテーマとなり
などを念頭に、その季節に応じた野鳥種を描いて
ます。絵画は作家の意図によらず、観賞する人の
きました。読者から「表紙画を楽しみにしていま
感性によっても色々な感じ方を生じる面白さがあ
す」と言ってくれる方や「表紙画を描いている方
ります。こうした絵画の持ち味を生かして、私も
ですね」と親しげに接してくれる初顔の方などが
野鳥をはじめとする野生生物からのメッセージを
時々います。ともあれ拙い私の絵が日頃の活動に
つよく表現した絵画を描きたいと思っています。
ユリカモメ No.708 2014.10
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