ザンクト・ガレン大学の ビジネスモデル・ナビゲーターTM (著者) Oliver Gassmann Karolin Frankenberger Michaela Csik ワーキングペーパー ザンクト・ガレン大学 (翻訳) ビジネスイノベーションハブ株式会社 1. 新しいプロダクトだけでは十分ではない 優れた技術のプロダクトをもつ多くの企業が存在する。 特に欧州においては、多くの企業が自身のプロダクトや プロセスに対して継続的なイノベーションを生み出して いる。しかしながら、多くの企業は自身のプロダクトイ ノベーション能⼒にもかかわらず、⻑期的に生き延びて いない。何年にもわたって⾰新的なプロダクトをもって いることで知られている傑出した企業が、なぜ突然とし て自身のイノベーション能⼒を失うのであろうか︖AEG、 Grundig、Nixdorf Computers、Triumph、Brockhaus、 Agfa、Kodak、Quelle、Otto そして Schlecker のような 照的に、その背後にあるビジネスロジックは滅多に取り 扱われることがない。ビジネスモデルのイノベーション が、純粋なプロダクトまたはプロセスのイノベーション と比較して平均で 6%以上利益性があると発⾒されてい るという事実にも関わらず(BCG 2008)。結果として、 競争優位の実現によってプロダクトまたはサービスのイ ノベーションよりも、ビジネスモデルのイノベーション がより重要であると管理者は考えるようになっている。 そして、IBM(2012)による研究の調査では、90%以上 の CEO が今後 3 年にわたり自社のビジネスモデルの⾰新 を計画している。しかし、計画だけでは十分ではない。 強⼒なプレイヤーが、次から次へとビジネスの眺望から その現象を目に⾒えるようにする際、⼈々は悪戦苦闘 消え去っていく。これらの企業は、以前の⾰新的な強み することになる。自社のビジネスモデルをその場で説明 からのマーケティング能⼒を失ってきている。その答え することができる管理者は、ごく少数である。ビジネス は、シンプルで痛みを伴うものである。これらの企業は、 モデルが⼀体何であるか、実際に定義できる管理者はさ 変化する環境に対して自身のビジネスモデルを適合させ らに少ない。専任のビジネスモデルのイノベーション部 ることに失敗したのである。将来、競争環境は単なるプ 隊とプロセスを確⽴してきた企業の数は、もっと少ない。 ロダクトや技術の間ではなく、ビジネスモデルの間で起 そのテーマの重要性を与えられて、企業慣習としての制 こるようになるだろう。 度化に関するこの欠如は驚くべきものがある。しかしな 新しいビジネスモデルは、時として初期の弱いシグナ ルがベースとなる。新しい流⾏を作る⼈々は、新しい顧 客需要のシグナルを送る。規制は、最終的に認可される がら、そのテーマの複雑性と曖昧性を考えれば、それは 当然のことである。 ビジネスモデルのイノベーション⽅法を議論する前に、 前に幅広く議論される。業界への新規参⼊者は、新しい イノベーションとは何かを理解することが重要である。 アライアンスを⻑々と議論する。破壊的技術の開発は、 歴史的に、ビジネスモデルは大衆紙でバズワードとして 何年にも及ぶ調査の結果である。2012 年におけるコダッ 現れた 1990 年代の最後にルーツをもつ。それ以来、実 クの倒産もまた、⻑い歴史をもつ。デジタルカメラの最 践者と学者の双⽅から絶大な関心が寄せられるようにな 初の特許は、1972 年にテキサス・インスツルメンツから り、今⽇では複数の調査の流れにおいて異なる特徴を形 既に発⾏されていた。コダックは、その新しい技術の潜 成している。⼀般的に、ビジネスモデルは企業のビジネ 在性を理解しており、この新しい領域を征服するために、 スが機能する⽅法を説明するための分析単位として定義 マイクロソフトとデジタルイメージに関するアライアン することができる。より具体的には、ビジネスを構成し、 スを 1990 年代に結んだ。しかし、たびたび観察される 全体としてそれらが組み⽴てられる異なるコンポーネン ように、その破壊的な動きは大胆さを欠くものであった。 トに注目する包括的なコンセプトとして描かれることが 最初のデジタルカメラを 1999 年に市場に送り出した際、 あ る ( Demil and Lecocq 2010; Osterwalder and 10 年後におけるデジタルカメラの市場はたったの 5%で Pigneur, 2010)。言い換えれば、ビジネスモデルとは個々 あり、アナログのカメラは依然として 95%の市場を維持 の構成要素や部分をベースにビジネスのマジックが機能 し続けるであろうと予測した。2009 年、その真実は違っ する⽅法を説明するものである。 た。アナログ市場はたったの 5%になってしまったので ある。この誤った判断は、非常に重大かつ強⼒であった。 したがって、アナログイメージにおける企業の支配ロジ ックを変えるために、コダックがロチェスターに化学 R&D センターを物理的に拡大した頃にはすでに⼿遅れ になっていた。1988 年から 2008 年の間、コダックは 80%以上もの従業員数を減らし、2012 年に会社更生法 の⼿続きをとった。 ビジネスモデルに関する文献は、どのコンポーネント が正確にビジネスモデルを形成するかに関する共通する 意⾒には⾄っていない。我々の研究を通じたビジネスモ デルを説明するために、4 つの中心となる次元から構成 されるコンセプト化を採用することにする。それは、Who (誰)、What(何)、How(⽅法)、Value(価値)であ る。4 つの次元の具体化のため、そのコンセプトは使い 勝⼿が良いと同時に、ビジネスモデルアーキテクチャー 既存のビジネスモデルが、 「これ以上上⼿く機能しない」 と言われることがある。それでもなお、R&D エンジニア により提示される典型的な回答は、新しい技術とより多 くの機能性をベースとした新しいプロダクトである。対 の明白な絵を提供するに十分包括的なものである。 Who(誰)︓あらゆるビジネスモデルは、特定の顧客グ ル ー プ に 仕 え る も の で あ る ( Chesbrough and ビジネスイノベーションハブ株式会社 Rosenbloom 2002; Hamel 2000) 。したがって、それ る。ビジネスモデルの中心となる⻑所は、企業の内部お は「誰が顧客か︖」という質問に回答すべきである よび外部に位置付けられる要素を組み合わせることによ (Magretta 2002) 。 「市場を適切に定義することの失敗 り、ビジネスの包括的な絵を描くことを可能にすること は、ベンチャーの失敗に関連する重要な要因である」と である(Teece 2010; Zott et al. 2011) 。このような理 いうモリス・アレ(2005, p. 730)からの議論を引き出 由で、その焦点となる企業がその生態系に埋め込まれ、 し、新しいビジネスモデルのデザインにおける 1 つの真 交流する⽅法を説明する境界橋渡しとして言及されるこ ん中の次元として、我々はターゲット顧客の定義を明確 とがある(Shafer et al. 2005; Zott and Amit 2008) 。 化することにする。 そのビジネスモデルに帰する最も共通するタスクは、そ What(何) ︓2 つ目の次元は、ターゲット顧客に提供さ れるものを説明する。別な言い⽅をすれば、顧客の価値 は何かである。この考えは⼀般的に、顧客価値提案とし の焦点となる企業がこの生態系の内部にある自社および 多様な利害関係者に対して価値を生成し、獲得する⽅法 を説明するものである。 て言及されている((John-son et al. 2008))。もっとシ ビジネスモデルの傘に下に組み込まれている広大な範 ンプルに言えば、価値提案である(Teece 2010) 。それ 囲を考えると、現実の世界において、企業のビジネスモ は、顧客への価値となる企業のプロダクトとサービスの デルが相互依存と副作用に満ち溢れている複雑なシステ バンドルの包括的な視点として定義することができる ムであることが明らかになる。それゆえ、ビジネスモデ (Osterwalder 2004) 。 ルの変更や⾰新は、非常に挑戦的なものに直ぐになる大 How(方法)︓価値提案の構築と流通販売を⾏っていく きな事業となるのは当然である。 ために、企業はいくつかのプロセスとアクティビティを 管理者の世代の⼈々は、ポーターのファイブフォース 習得しなければならない。これらのプロセスとアクティ による業界分析で訓練を受けている。マイケル・ポータ ビティ、加えてそれに関連するリソース(Hedman and ーは、業界を分析し、より良いポジショニングの結果と Kalling 2003)とケイパビリティ(Morris et al. 2005) 、 して相対的な競争優位を獲得することを私たちに教えた。 さらに焦点を当てる企業内のバリューチェーンの指揮が、 キムとモボルニュ(2005)は、ポーターの枠組みから出 新しいビジネスモデルのデザイン内部の 3 つ目の次元を る⽅法を築いた。 「競合他社を打ち負かすことなく競合他 形成する。 社を打ち負かす」は、企業を自身の業界での競争から離 Why(価値) ︓4 つ目の次元は、ビジネスモデルが財務的 に存続する理由を説明するものであり、それは収益モデ ルに関連する。本質的に、それは例えばコスト構造や適 用される収益メカニズムのような側面を統合する。そし て、どの企業においても初歩的な質問、すなわちビジネ スにおいて⾦銭を稼ぐ⽅法を指し示すものである(図 1)。 れ、自社が繁栄することができる新しい競争のない市場 を創造することを強制する信条である。それは、この 10 年間の間で我々の調査と企業へのコーチで⾒てきたビジ ネスイノベーターに対する呪文である。IKEA は家具ビジ ネスに⾰命を起こし、Apple は業界の境界線を首尾よく 再定義し、Zara は高スピードサイクルで欧州のファッシ ョン産業を再発名した。その他の多くの企業が、非常に 急進的な⽅法で自身の業界に⾰命を起こした。Mobility car sharing 、 Car2go 、 TomTom 、 Wikipedia 、 Microinsurance、Better Place、Verizon、Bombardier Flexjet は、伝統的な業界ロジックから脱出し、それによ って自身が属する各々の業界を再定義した企業のいくつ かのサンプルである。 それでは、なぜもっと多くの企業が新しいビジネスモ デルを⾒つけ、 「ブルーオーシャン」に移動しないのか︖ それは既存の枠組みから離れた思考を⾏うことが難しい からである。心理的な障壁が⾰新的なアイディアに向け 図 1︓ビジネスモデルの次元 – マジック・トライアングル 4 つの関連する質問と(1)ターゲット顧客、 (2)顧客 に向けた価値提案、(3)この価値の生成の背後にあるバ リューチェーン、(4)価値を獲得する収益モデルを明白 に答えることにより、企業のビジネスモデルは目に⾒え るようになり、その再考に対する共通の土台が実現され た道を妨害するのである。管理者は、 「自身の」業界の支 配的なロジックを変えるのに苦労している。それは、自 分のキャリア全体の理解に費やしてきたものだからであ る。最初に、管理者は今までどおり利益が上がっている 間は、快適なゾーンを離れるべき理由が⾒当たらない。 次に、何かから離れようとすることが⾟いほど、それに しがみつこうとすることは共通認識である。外部からア ビジネスイノベーションハブ株式会社 イディアを取り⼊れることは、このケースでもっともら 年間の授業でそのアプローチを使い、それを 50 以上の企 しく聞こえるかもしれない。しなしながら、 「自社開発主 業に対する 1 ⽇のワークショップに適用した。 義症候群」は良く知られ、どのような外部のアイディア も企業内でそれに取り掛かる前にすぐに捨てられてしま うことになるのである。 これらの障害を考慮しても、⾰新的なビジネスモデル のアイディアを導く成功するアプローチは、新規性を実 この経験もまた同様に、その⽅法論に組み込まれてい る。 2. 創造的模倣と再組み合わせの⼒ 現するために業界の外部にある刺激を取り込むと同時に、 「⾞輪を再発明する必要はない」という言い回しは、よ 自分自身の⾰新的なビジネスモデルのアイディアを構築 く⾒ればほんの少しの事象のみが本当に新しいものであ するために業界内でそれらを可能にする綱渡りを習得し るという事実を説明している。イノベーションとは多く なければならないのである。 の場合、他の業界や他の地理的領域のどこかに存在して いるちょっとした何かのバリエーションである。我々は 調査方法論 数百ものビジネスモデルのイノベーターを⾒てきており、 ビジネスイノベーションの調査はまだ始まったばかり の事象であるため、我々はビジネスモデルの基本的なパ ターンを分析するために 2 ステップアプローチを使った。 イノベーションの約 90%がそのような従来から存在す るコンセプトの再組み合わせから繰り出されることを発 ⾒しても驚かなかった。我々は、多くの新しいビジネス モデルの中核を形成する 55 の繰り返されるパターンを フェーズ 1 において、我々は過去 25 年間における異 明確にした(see Gassmann et al. 2012; Gassmann et なる業界に適用されてきた 250 のビジネスモデルを分析 al. 2013) 。ビジネスモデルイノベーションマップ(図 2 した。結果として、新しいビジネスモデルに対するベー を参照)は、新しいビジネスモデルを自社に適用した会 スとして役⽴つものとして、55 のビジネスモデルを明確 社に沿ったラインとして最もポピュラーな 20 のパター にした。ビジネスモデルイノベーション領域における 5 ンを描いたものである(図 2)。 年以上の調査と実践は、企業を構造化し、そのプロセス をナビゲートするのに役⽴つ⽅法論の中で頂点に達して きた。それは、企業が直面する多くの機会を通じてイノ ベーターをガイドするビジネスモデルイノベーションマ ップである(see also Gassmann et al. 2013) 。 例えば、ジレットモデルのパターンは 1904 年のジレ ット社に遡る。それは、ベースとなるプロダクト(剃刀 本体)を低価格で提供し、より高い価格の消耗品(替刃) を通じてお⾦を儲けるというものである。ビジネスモデ ルの価値提案と収益ロジックを定義するそのパターンは、 フェーズ 2 において、我々はその知識を使い、2 つの それ以来多くの業界にわたって普及してきた。サンプル 基本原則をベースとする構築⽅法論を選択された企業と には、インクジェットプリンターとカートリッジ、血糖 共に開発した。最初に、我々の調査グループで発⾒した 値計と試験紙、ネスプレッソのコーヒーマシンとカプセ ものとして、全ての新しいビジネスモデルの 90%は既に ルを含んでいる。ビジネスモデルの世界において、本当 存在するアイディア、コンセプト、技術を再組み合わせ に新しいものは、実際にはそれほど多くないのである。 したものであった。したがって、この事実は新しいビジ しかし、多くの強⼒な改造と適用の背景と業界を⾒つけ ネスモデル構築に活用されるべきものである。次に、我々 ることができる。 はデザイン思考の反復的プロセスを適用した。それは、 スタンフォード大学のデザイン研究所で開発されたもの である。このアクションベースのアプローチは、我々が 新しいビジネスモデルのデザインにおける実践的な活用 に関して多くを学ぶのに役⽴った。 この観察から我々が学習することができるものは何 か︖はっきり言えば、明確にされたビジネスモデルのパ ターンは、ビジネスモデルのイノベーションを考える際 のひらめきとして役⽴てることができる。もし、それら がどこかに採用されているのであれば、自社にそれらを 我々は、その⽅法論を以下の企業のチームに適用した。 適用しない理由は⾒当たらない。このアプローチは、外 BASF(化学) 、Bühler(機械) 、Hilti(建築ツール) 、 Holcim 部の刺激の中でもたらされると同時に、自社開発主義症 (セメント)、Landis&Gyr(電気計量器)、MTU(ター 候群を十分に起こらないようにする。何年にもわたり、 ビン)、SAP(ソフトウェア)、Sennheiser(オーディオ 我々は 55 のビジネスモデルパターンを開発してきた。そ 技術)、Siemens(ヘルスケア) 、Swisscom(通信)であ れは、ザンクト・ガレン大学のビジネスモデル・ナビゲ る。全ての企業において、投資はビジネスモデルプロジ ーターTM ⽅法論の中核となるアイディア創造ツールの中 ェクトの結果として⼝⽕を切られた。ある企業では、数 で明確にされたものである。 十億までもの額が投資された。加えて、ザンクト・ガレ ン大学のエグゼクティブ教室における MBA 学生への 3 ザンクト・ガレン大学のビジネスモデル・ナビゲータ ビジネスイノベーションハブ株式会社 ーTM は、その主要なコンセプトを変換する。つまり、再 のパターンを便利なパターンカードのセットに凝縮した。 組み合わせ⼒の活用によるビジネスモデルのアイディア 各々のパターンカード(図 3 を参照)は、そのパターン を、すぐに使える⽅法論の中で生成することである。そ の背後にあるコンセプトを理解するためにひつような重 れは、数えきれないワークショップと他のフォーマット 要な情報を含んでいる。それは、タイトル、⼀般的なロ でその有用性が証明されている。3 つのステップが、新 ジックの説明、そのビジネスモデルのパターンを実践し しいビジネスモデルの道を切り開く。 ている具体的な企業のサンプルである。アイディア出し のステージの間、そのカードの情報レベルは、⾰新的な アイディア創造の引き⾦を引くためのちょっとした権利 ステップ 1︓ 開始(旅路の準備をする) である。 新しいビジネスモデルに向けた旅に乗り出す前に、開 始ポイントとざっくりとした⽅向性を定義することが重 要である。現⾏のビジネスモデル、その価値ロジック、 外部の世界との相互交流を説明することは、ビジネスモ デル思考のロジックに乗り込むための良い演習となる。 それはまた、現⾏のビジネスモデルを徹底的に⾒直す必 要がある理由、将来的に危険にさらされる要因、あるい はビジネスを⾏う現在のやり⽅の結果として開拓されて いない機会に関する共通の理解を構築する。これらの苦 悩や顕著な業界ロジックの詳細な説明は、ざっくりとし た⽅向性を提供する。それは、汎用的なビジネスモデル のパターンがステップ 2 で解釈されることに従うもので ある。 我々がそのカードを適用する⽅法は、皆さん自身の最 初の状況にそのパターンを採用するプロセスを説明する ために、記述されたパターンを対峙させてみることであ る。典型的には 3 ⼈から 5 ⼈のグループに分けられた参 加者は、もし特定の状況に適用させるのであれば、その パターンがどのように自分のビジネスモデルを変えるか を自問してみる。 ⼀⾒すると、そのカードは課題とは関係がないように ⾒えるかもしれないが、その結果は全く驚くべきもので ある。パターンカードのフォーム内で、刺激が⾰新的な アイディアをもたらたす。それは、グループメンバー間 での議論を⿎舞するものである。例えば、機械製造業の ビジネスモデルにサブスクリプションパターンをフィッ トさせるタスクは、プラント運営に求められている訓練 成功要因︓ をし、それらを顧客にリースするアイディアをもたらす • 異なるファンクションからのオープンマインドの 1 つの事例である。そのコンセプトは実践され、現在で チームメンバーを巻き込む。業界外部の関係者は、 は企業の売上に貢献すると同時に、顧客との絆を強める 既存の枠組みにない思考を支援する。 ものであった。サブスクリプションパターンは、新しい • 支配的な業界ロジックを克服する。「これは、常に 我々の業界の中で上⼿く機能してきた」のような文 章は禁ずる。その代りとして、自社のビジネスに対 する追悼演説は過去を克服するのに役⽴つ。なぜそ の会社は死滅したのか︖これは非常に面白い演習 であり、個⼈が心理的な障壁を乗り越えることを必 要とする際に、マッキンゼーが変⾰プロジェクトで 上⼿く活用してきたものである。 ビジネスモデルに関する思考に対するオリジナルの理由 となったのである。 成功要因︓ • 閉じられた 1 つのパターンだけを試すだけではなく、 より多くの異なるパターンを対比させる。ある第⼀ 線の自動⾞部品サプライヤーが、「マクドナルドの ようなビジネスをしたらどうですか︖」という質問 に耳を傾けた際、我々は非常に驚くべき結果をもつ • ⽅法論的なサポートを使う。例えば、カードセット、 ことになった。例えば、マクドナルドのフロントの ビジネスモデルイノベーションのためのソフトウ 従業員は、30 分の⼿引き後に非常に生産性が高い仕 ェア(我々の⽅法論的なアプローチとバックグラウ 事をする。自動⾞部品のサプライヤーは、複雑性の ンド情報に対する www.bmi-lab.ch を参照のこと)。 軽減が新しいビジネスモデル全体を導き、迅速な学 習をも刺激するということを学ばなければならな ステップ 2︓ アイディア出し(新たな方向に動き出す) 既存のコンセプトの再組み合わせは、これまでの枠組 みを破り、新しいビジネスモデルに対するアイディアを 創造するための強⼒なツールである。このプロセスを容 易にするために、我々は上⼿くいくビジネスモデルの 55 かった。 • 試⾏を続けること。最初に、外部の業界から何かを 学ぶことは不可能に思えるかもしれない。特に、既 存の業界における学識の深いバックグラウンドを もつ個⼈は、支配的な業界ロジックの克服に困難を 感じるであろう。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 ステップ 3︓ 統合(絵を完成する) の重要性を認めるだけでなく、企業内部にて効果的なビ ジネスモデルイノベーションのプロセスを実装すること 企業に直接的に実装するに十分明白なアイディアは存 在しない。反対に、将来有望なアイディアは 4 つの全て の側面を説明する本格的なビジネスモデルを徐々に磨い が重要である。ビジネスモデルイノベーションのプロセ スの間、管理者を支援するための様々なツールが開発さ れてきた。 ていく必要がある。そして、利害関係者、新しいパート 新しいビジネスモデルイノベーション⽅法論に対する ナー、市場に対する結果をも考慮する必要がある。価値 圧倒的な需要を受け、ザンクト・ガレン大学のビジネス ネットワーク⽅法論のようなワンセットのチェックリス モデル・ナビゲーターTM の旅路は今後も続くであろう。 トやツールは、将来有望なアイディアの周辺にあるビジ 相対的な競争優位に対する未来のレースは、純粋なプロ ネスモデルを詳細に説明するザンクト・ガレン大学のビ ダクトやサービスからビジネスモデルへとシフトしてき ジネスモデル・ナビゲーター TM で利用可能である。各々 ている。企業は、そのレースに対して準備をする必要が のパターンカード上のサンプル企業リストは、同じパタ ある。機会を明確にするだけでは十分ではなく、イノベ ーンを実践する他の企業からのインスピレーションを引 ーターとアントレプレナーはその機会を獲得し、動き始 き出すことを可能にする。 めなければならない。過去を知ることは、未来を創造す ることに役⽴つ。 成功要因︓ • ⼀貫性をもつこと。内部および外部の世界の間の⼀ 貫性は必要である。内部的なコアコンピタンス、競 合の視点、認識される顧客価値の間においてフィッ トされるべきである。 以下の経営上の示唆は、ビジネスモデルに⾰命を起こ すためにこの新しいアプローチを使うことにより、実践 者に価値のあることを証明すべきである。 1. ジックに挑戦する。明確にされた 55 のビジネスモ • ⼀生懸命試すこと。ビジネスモデルを構築し、自分 デルのパターンは、この挑戦的なタスクを支援する。 自身の会社でそのアイディアを実践することは、多 くの作業を必要とする。 対比的なテクニックを使うことにより、支配的なロ 2. 多くのループをもつ反復的なアプローチを活用す る。 3. 結論 3. ドや他のデバイスを活用する。 ザンクト・ガレン大学のビジネスモデル・ナビゲータ ーTM を使った新しい⽅法論は、企業のビジネスモデルの イノベーションプロセスを構造化し、既成概念にとらわ 4. かの経験を必要とする。 成功するビジネスモデルに対して欠くことができないも 回にもわたって実践的に設定できる適用性を証明してい 拡散と収束の思考の間で変更する際には注意深く 判断し、創造性と規律性の間の管理バランスは何ら れない思考を促進するために開発されてきた。それは、 のである。十分な根拠のある理論をもつため、それは何 創造思考プロセスを刺激するために、触覚的なカー 5. 開かれた文化を作る︓部屋の中には新鮮な驚きはな い。 る。 企業内部における成功するビジネスモデルイノベーシ ョンを実現するために、ビジネスモデルイノベーション ビジネスイノベーションハブ株式会社 図 2︓ビジネスモデルイノベーションマップ 4. 55 のビジネスモデルパターン No パターン名 次元 模範企業 パターンの説明 1 アドオン What Why Ryanair (1985) SAP (1992) Sega (1998) 中核のオファーは競争的なプライスであるが、最終 的にプライスをつり上げる多くのエキストラがあ る。最終的に、顧客は最初に想定していたものより 多くを支払う。顧客は多様なオファーからベネフィ ットを受け、それは顧客の固有ニーズに適合させる ことができる。 2 アフィリ エーション How Why Amazon Store (1995) Cybererotica (1994) CDnow (1994) Pinterest (2010) その焦点は、成功裏にプロダクトを販売し、取引か ら直接ベネフィットを得るために他⼈を支援するこ とにある。アフィリエーターは通常、販売毎や表示 報酬毎といった種類から利益を得る。⼀⽅、その企 業は能動的な販売やマーケティング努⼒をすること なく、より多様な潜在顧客ベースのアクセスを得る ことができる。 3 合気道 Who What Why Six Flags (1961) The Body Shop (1976) Swatch (1983) Cirque du Soleil (1984) Nintendo (2006) 合気道は、⽇本の武術である。ビジネスモデルとし て、合気道は、競合他社のイメージやマインドセッ トと対抗して、ドラマチックなものを提供すること を可能にする。この新しい価値提案は、主流の対抗 するアイディアやコンセプトを好む顧客を魅了す る。 4 オークション What Why eBay (1995) Winebid (1996) Priceline (1997) Google (1998) Elance (2006) Zopa (2005) MyHammer (2005) オークションは、最も高い⼊札者にプロダクトやサ ービスを販売する。最終プライスは、オークション の特定の時間が達したり、さらに高いオファーを受 けることがなかったりする時に実現する。これは、 顧客が受け⼊れ可能な最も高いプライスで販売する ことを可能にする。顧客は、プロダクトのプライス に影響を与える機会からベネフィットを得る。 5 バーター What Why Procter & Gamble (1970) Pepsi (1972) Lufthansa (1993) Magnolia Hotels (2007) Pay with a Tweet (2010) バーターは、実際のお⾦の取引なくして、商品が顧 客に引き渡される交換⽅法である。⾒返りに、彼ら はスポンサーである組織に価値のあるものを提供す る。その交換は、何らかの直接的なコネクションを 示すためにもつものではなく、各々の団体ごとに異 なる価値をもつものである。 6 キャッシュ マシン How Why American Express (1891) Dell (1984) Amazon Store (1995) PayPal (1998) Blacksocks (1999) MyFab (2008) Groupon (2008) 顧客は販売された製品を前⾦で支払う。この結果、 流動性が向上し、負債の償還や、他の領域への投資 が可能となる。 7 クロスセル How What Why Shell (1930) IKEA(1956) Tchibo (1973) Aldi (1986) SANIFAIR (2003) これまで除外されていた事業からの商品やサービス が提供され、既存の主要技術や資源がテコ⼊れされ る。特に小売業では、これまで焦点を当てていた主 要事業に直結しない付加的な商品や価値を簡単に提 供することができる。したがって、多くの潜在顧客 のニーズがマッチすれば、既存のインフラや資産を ほとんど変更せずに追加の収益を得ることができ る。 8 クラウド ファンディング How Why Marillion(1997) Cassava Films (1998) Diaspora (2010) Brainpool (2011) Pebble Technology (2012) 製品、プロジェクトまたはスタートアップ自体が、 ⼀般にインターネットを通じてその根底にあるアイ ディアを支持したい沢山の投資家によって融資され る。⼀定の投資額を達成すると、そのアイディアは 実現される。そして、投資家は通常彼らが提供した ⾦額に比例した特別な便益を受領する。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 No パターン名 次元 模範企業 パターンの説明 9 クラウド ソーシング How Why Threadless (2000) Procter & Gamble (2001) InnoCentive (2001) Cisco (2007) MyFab (2008) ある仕事や問題のソリューションが⼀般的にインタ ーネットを通じた匿名の⼈たちによって提案され る。ソシューションの貢献者はもし自分のソリュー ションが生産や販売のために選ばれると、小さな報 酬を受領するか賞を獲得する機会を得る。企業は顧 客を巻き込むことでポジティブな関係を促進でき、 結果として売上や収益が向上する。 10 顧客 ロイヤルティ What Why Sperry & Hutchinson (1897) American Airlines (1981) Safeway Club Card (1995) Payback (2000) 実際の製品やサービス自体を越えて価値を提供する こと、すなわちインセンティブベースの取り組みに より、顧客が維持され、ロイヤルティが保証される。 目的は、感情的な接続を確⽴するか、特別な提案で 報いることによって、ロイヤルティを向上させるこ とである。顧客は自発的に会社に縛られ、将来の収 益を守る。 11 デジタル化 What How Spiegel Online (1994) WXYC (1994), Hotmail (1996) Jones Internation-al University (1996) CEWE Color (1997), urveyMonkey (1998), apster (1999) Wikipe-dia (2001) Facebook (2004) Dropbox (2007) Netflix (2008) Next Issue Media (2011) このパターンの成否は、既存の製品やサービスのデ ジタル化が可能かどうか、そして有形物より速く簡 単に顧客に届けられるという、デジタルの優位性を 提供できるかどうかに依存している。デジタル化に よって製品やサービスの提供する価値が低下しない こと、言い換えれば、デジタル化により効率的にな ったり複製しやすくなったりしても、顧客価値が犠 牲にならないことが理想である。 12 直接販売 What How Why Vorwerk (1930) Tupper-ware (1946) Amway (1959) The Body Shop (1976) Dell (1984) Nestle Nespresso (1986) First Direct (1989) Nestlé Special.T (2010) Dollar Shave Club (2012) Nestlé BabyNes (2012) 直接販売では、製品が中間流通経路を通らず、製造 業者やサービス提供者から直接に顧客へ販売され る。このようにして企業は、流通業者のマージンや その他の追加的な費用を避けることができる。費用 の節約は顧客に還元され、販売形態も標準化される とともに、顧客との距離が近くなることで顧客との 関係性も強まる。 13 E コマース What How Why Dell (1984) Asos (2000) Zappos (1999) Amazon Store (1995) Flyeralarm (2002) Blacksocks (1999) Dollar Shave Club (2012) Winebid (1996) Zopa (2005) 通常の製品やサービスを、オンラインのチャネルの みを通じて提供することにより、物理的な支店・支 社の施設維持費用を節減する。顧客は⼊⼿可能性や 利便性が高まることによる便益を受け、企業も販売 や配送を他の内部活動と統合できるメリットを得 る。 14 経験の販売 What Who Why Harley Davidson (1903) IKEA (1956) Trader Joe's (1958), tarbucks (1971) Swatch (1983) Nestlé Nespresso (1986) ed Bull (1987) Barnes & Noble (1993) Nestlé Special.T (2010) 製品やサービスの価値は、ともに提供される顧客経 験により倍加され、顧客の需要や顧客の支払う対価 を⼀層高める。そのためには、プロモーション内容 や店舗と、顧客経験とをうまく適合させる必要があ る。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 No パターン名 次元 模範企業 パターンの説明 15 フラットレート What Why SBB (1898) Buckaroo Buffet (1946) Sandals Resorts (1981) Netflix (1999) Next Issue Media (2011) このモデルでは、製品やサービスの実際使用量や利 用時間制限などに係わらず、顧客には⼀定の固定料 ⾦が課せられる。顧客はシンプルで分かりやすい費 用の仕組みで便益を受け、企業も安定した収⼊を得 ることができる。 16 シェア What How Why Hapimag (1963) Netjets (1964) Mobility Carshar-ing (1997) écurie25 (2005) HomeBuy (2009) 部分的な所有とは、ある特定の財産を複数の所有者 で分けることを意味する。⼀般的に、財産は集中的 資本であるが、必要されるのは時々である。顧客が 所有者としての権利から利益を得るが、全資本は単 独で提供される必要はない。 17 フランチャイ ジング What How Why Singer Sewing Machine (1860) McDonald's (1948) Marriott Interna-tional (1967) Starbucks (1971) Subway (1974) Fressnapf (1992) Naturhouse (1992) McFit (1997) BackWerk (2001) フランチャイザーはブランド、製品、及びコーポレ ート・アイデンティティを所有する。そして、これ らはオペレーションリスクを取る独⽴のフランチャ イジーにライセンスされる。フランチャイザーはフ ランチャイジーの収益の⼀部から利益を得る。フラ ンチャイジーは、有名ブランド、ノウハウ及びサポ ートを活用して利益を得る。 18 フリーミアム What Why Hotmail (1996) Survey-Monkey(1998) LinkedIn (2003) Skype (2003) Spotify (2006) Dropbox (2007) オファーの基本バージョンは無料で提供し、顧客が 高級バージョンに料⾦を支払うのを期待する。無料 のオファーは、可能な限りのたくさんの顧客を会社 に惹きつけることができる。⼀般にプレミアム顧客 は少ないが、彼らの支払いが収益を生み出し、無料 のオファーの費用負担となる。 19 プッシュから プルへ What How Toyota (1975) Zara (1975) Dell (1984) Geberit (2000) このパターンは、分散化し、より顧客が集中するた めに、会社のプロセスに柔軟性を追加するための企 業の戦略を説明します。新しい顧客のニーズに素早 く柔軟に対応するために、生産だけでなく研究開発 を含めたバリューチェーンのいかなる部分も影響を 受ける。 20 可用性の保証 What How Why NetJets (1964) PHH Corporation (1986) IBM (1995) Hilti (2000) MachineryLink (2000) ABB Turbo Systems (2010) このモデルでは、製品またはサービスの可用性が保 証され、ダウンタイムはほぼゼロである。顧客は、 このようなオファーを必要に応じて利用し、ダウン タイムによる損失を最小限に抑える。会社は、より 低い運用コストに専門知識と規模の経済を使用し、 これらの可用性レベルを実現する。 21 隠された収⼊ What How Why JCDecaux (1964) Sat.1 (1984) Metro Newspaper (1995) Google (1998) Facebook (2004) Spotify (2006) Zattoo (2007) ユーザーがビジネスの収益を賄うのではない。代わ りに、主な収⼊源は、顧客を惹きつける無料または 低価格のオファーにクロス融資する第三者である。 このモデルの非常に⼀般的なケースは、広告を介し て融資することである。惹きつけられた顧客は融資 する広告主にとって価値がある。 22 成分 ブランディング What How Why DuPont Teflon (1964) W.L. Gore & Associates (1976) Intel (1991) Carl Zeiss (1995) Shimano (1995) Bosch(2000) 成分ブランディングは、他の製品に含まれる特定の 供給元に由来する成分、コンポーネント及びブラン ドの特定の選択に関するものである。この製品は、 付加的にブランド化され、成分の製品とともに宣伝 され、顧客に対してまとめて価値を提供する。製品 にポジティブなブランド連携や性質が生じ、最終製 品の魅⼒を高まる。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 No パターン名 次元 模範企業 パターンの説明 23 インテグ レーター What How Why Carnegie Steel (1870) Ford (1908) Zara (1975) Exxon Mobil (1999) BYD Auto (1995) インテグレーターは、価値追加プロセスにおける大 半のステップを管理する。会社の責任により、価値 創造に関するすべての資源と能⼒を制御する。効率 増加、範囲の経済、及び供給元の依存の低下により、 コストが減少し、価値創造の安定性を増やすことが できる。 24 レイヤー プレイヤー What Who Why Dennemeyer (1962) Wipro Technologies (1980) TRUSTe (1997) PayPal (1998) Amazon Web Services (2002) レイヤープレーヤーとは、様々なバリューチェーン に対する 1 つの価値追加ステップの提供に特化した 専門会社である。このステップは、典型的には、様々 な独⽴した市場や産業で提供される。会社は規模の 経済から利益を得て、概ね効率性がよい。さらに、 確⽴した特別な専門知識により、より高品質なプロ セスになる。 25 顧客データの 活用 What How Amazon Store (1995), Google (1998) Payback (2000) Facebook (2004) PatientsLikeMe (2004) 23andMe (2006) Twitter (2006) Verizon Commu-nications (2011) 顧客データを集めて、内部の使用または利害関係の ある第三者のために有益な⽅法でデータを準備する ことによって、新しい価値はつくられる。他⼈にこ のデータを直接販売するか、自⼰の目的のために(例 えば、広告の効果を高めるために)てこ⼊れするこ とによって収益は発生する。 26 ライセンス How Why BUSCH (1870) IBM (1920) DIC 2 (1973) ARM (1989) Duales System Deutschland (1991) Max Havelaar (1992) 他のメーカーに使用を許諾する知的財産の創出に集 中する。このモデルは、したがって、製品を製造す るための知識の実現と利用に頼らず、これらの無形 の知識をお⾦に変えようとする。会社は研究開発に 集中する。埋もれたままの知識、潜在的に第三者に 価値がある知識の提供が可能になる。 27 ロックイン What How Why Gillette(1904) Lego (1949) Microsoft (1975) Hewlett-Packard(1984) Nestlé Nespresso (1986) Nestlé BabyNes (2012) Nestlé Special.T (2010) 顧客はベンダーの製品・サービスの世界に閉じ込め られる。他のベンダーを利用することは、相当なス イッチングコストのため不可能であり、このため、 会社は顧客を失わずにすむ。このロックインは、製 品やサービスの技術的メカニズムまたは相当な相互 依存によって生じる。 28 ロングテール How Why Amazon Store (1995) eBay (1995) Netflix (1999) Apple iPod/iTunes (2003) YouTube (2005), ブロックバスターに特化するのではなく、主な大半 の収益は、ニッチ製品の「ロングテール」を通して 生じる。個々の商品に対して、大量に売れることや 高額のマージンが得られることは要求されていな い。莫大な種類の商品群を十分に提供することがで きれば、個々の商品からの小さな売上の積み重ねで、 多くの利益を得ることができるのである。 29 より多く Who What How Why Porsche (1931) Festo Didactic (1970) BASF (1998) Amazon Web Services (2002) Senn-heiser Sound Academy (2009) 会社にあるノウハウや他に活用できる資産が、自社 の製品を作るためだけでなく他社の製品づくりにも 活用される。従って、会社のコア価値提案から直接 生成されたものに加えて、余剰資源は追加の収⼊を 生成するために使用することができる。 30 マスカスタマイ ゼーション What Why Dell (1984), Levi's (1990) Miadidas (2000) PersonalNOVEL (2003) Factory121 (2006), mymuesli (2007) My Unique Bag (2010) かつて大量生産を通して製品をカスタマイズするこ とは、不可能な努⼒に思えた。モジュラー製品とプ ロダクション・システムにより、製品の効率的な個 別化が可能になっている。結果として、個々の顧客 ニーズは、大量生産状況の範囲内で、そして、競争 価格で満たされることができる。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 No パターン名 次元 模範企業 パターンの説明 31 ノーフリル How What Why Ford (1908) Aldi (1913) McDonald's (1948) Southwest Airlines (1971) Aravind Eye care System (1976) Accor (1985) McFit (1997) Dow Corning (2002) 製品・サービスの中核価値を提供するのに必要なこ と、典型的にはできるだけ基本的なこと、に価値創 造が集中する。コスト削減の効果は顧客と享受され、 通常より低い購買⼒や購買意欲で顧客基盤が形成さ れる。 32 オープン ビジネスモデル What Who Why Valve Corporation (1998) Abril (2008) オープンビジネスモデルでは、エコシステムのパー トナーとのコラボレーションが、価値創造の中心源 となる。オープンビジネスモデルを追求する会社は、 彼らのビジネスをオープン化し拡張するために、サ プライヤー、顧客または協⼒企業と⼀緒に活動する 新しい⽅法を活発に探す。 33 オープンソース Who What How Why IBM (1955) Mozilla (1992) Red Hat (1993) mondoBIOTECH (2000) Wikipedia (2001) Local Motors (2008) ソフトウェア・エンジニアリングにおいて、ソフト ウェア製品のソースコードを専有せず、誰でも自由 に使用できるようにする。⼀般に、これは、任意の 製品の任意の技術内容に適用することができます。 他の⼈は製品に関与することができるが、それをた った⼀⼈のユーザーとして無料に使うことができ る。お⾦は、典型的には、コンサルティングやサポ ートなどの製品に対する無料なサービスで獲得され ている。 34 オーケスト レーター How Why Procter & Gamble (1970) Li & Fung (1971) Nike (1978) Bharti Airtel (1995) このモデルでは、会社はバリューチェーンのコアコ ンピタンスに焦点を絞る。他のバリューチェーンの セグメントは外注され積極的に調整される。これに より、会社はコストが削減され、規模の経済の恩恵 を受けることができます。さらに、コアコンピタン スに集中することで、パフォーマンスが向上しうる。 35 ペイパーユース What How Why Hot Choice (1988) Google (1998) Ally Financial (2004) Better Place (2007) Car2Go (2008) このモデルでは、サービスや製品の実際の使用量が 測定される。顧客は実質的に消費したものに基づい て料⾦を支払う。会社は、値段が高くなってもさら なる柔軟性に価値を⾒出す顧客を引き付けることが できる。 36 払いたい分を 払う How Value One World Everbody Eats (2003) NoiseTrade (2006) Radiohead (2007) Humble Bundle (2010) Panera Bread Bakery (2010) 買い⼿は、ある商品に対して希望する額(時にはゼ ロ)で支払う。場合によっては、最小価格を設定し てもよい。買い⼿のための指針として推奨価格が示 されてもよい。顧客は支払う価格を変えてもよいが、 顧客には支払い意欲があるので、売り⼿は沢山の引 き寄せられた顧客から利益を得ることができる。社 会規範や道徳の存在を前提としており、めったに悪 用はされない。このビジネスモデルは、新しい顧客 を引き寄せるのに適している。 37 ピアーツー ピアー What Why eBay (1995) Craigslist (1996) Napster (1999) Couchsurfing (2003) LinkedIn (2003) Skype (2003),Zopa (2005) SlideShare (2006) Twit-ter (2006) Dropbox (2007) Airbnb (2008) TaskRabbit (2008) Re-layRides (2010) Gidsy (2011) このモデルは、各個⼈間の仲介を専門とする協業に 基づいている。こはしばしば P2P と略される。会社 は、各個⼈をつなぐオンラインデータベースと通信 サービスなどのミーティングポイントを提供する。 これらは、貸与のために個⼈の物を提供すること、 ある製品やサービスを提供することまたは情報や経 験をシェアすることなどを含む。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 No パターン名 次元 模範企業 パターンの説明 38 パフォーマンス ベースの契約 What Why Rolls-Royce (1980) Smartville (1997) BASF (1998) Xerox (2002) 製品の価格が、物理的な価値に基づかず、パフォー マンスや価値ある結果に依存する。パフォーマンス ベースの契約者は、彼らの顧客の価値創造プロセス に、しばしば強く関わるようになる。特別な専門知 識と規模の経済があれば、顧客に届けられる製品の 制作費や維持費は安くなる。このモデルの極端なバ リエーションは、様々なオペレーション⽅式によっ て表現される。 39 ジレットモデル What How Who Standard Oil Company (1880) Gillette (1904) Hewlett-Packard (1984) Nestlé Nespresso (1986) Apple iPod/iTunes (2003) Amazon Kindle (2007) Better Place (2007) Nestlé Special.T (2010) Nestlé BabyNes (2012) 基本製品は安価または無料で提供される。⼀⽅、そ れを使うか、動かすために必要である消耗品は、高 価で、高いマージンで販売される。最初の基本製品 の値段は安いので、顧客の購⼊障壁は低くなるが、 以後の継続的な売上が利益に寄与する。通常、これ らの基本製品と消耗品は、技術的に不可分な関係に あり、互いが効果を高めあっている。 40 購買ではなく レンタル What How Why Saunders System (1916) Xerox (1959) Block-buster (1985) Rent a Bike (1987) Mobility Carsharing (1997) MachineryL-ink (2000) CWS-boco (2001) Luxusbabe (2006) Flexpetz (2007) Car2Go(2008) 顧客は製品を購⼊するのではなく、それをレンタル する。典型的には、製品を使用するために必要な資 本が少なくてすむ。各々の製品(実際にはレンタル 期間の⻑さに対する代⾦として払われる)でのより 高い利益から、会社自体は利益を得る。非使用(そ れは資本を必要以上に結びつけます)の時間が各々 の製品で減らされて、両当事者は製品利用において より高い効率から利益を得る。 41 収益のシェア What How Why CDnow (1994), HubPag-es(2006) Apple iPhone/AppStore(2008) Groupon (2008) 収益分配は、補完あるいはライバルとしての利害関 係者との収⼊を共有する企業⾏動を指します。この ビジネスモデルの有利な特性として、追加の利益は、 拡張価値創造に参加するパートナーと共有されてい る共生の効果を作成するために併合される。⼀⽅の 当事者は、顧客基盤にちなんだ追加的な価値からの 利益を別の収⼊の割り当てから獲得することができ る。 42 リバース エンジニア リング What Why Bayer (1897) Pelikan (1994) Brilliance China Auto (2003) Denner (2010) 競争者の製品を得て、それを分解して、類似したか 互換性を持つ製品を生産するためにこの情報を活用 する。研究または開発には莫大な投資が必要でない ため、これらの製品は、元の製品よりも低価格で市 場に提供することができる。 43 リバース イノベーション What Why Logitech (1981) Haier (1999) Nokia (2003) Renault (2004) General Electric (2007) 新興市場を中心とするために開発されたシンプルで 安価な製品は、工業国で販売されています。新製品 は工業国で開発されるのが典型的です。その後で適 当な新興成⻑市場ニーズに適合させるプロセスをリ バースという。 44 ロビンフッド How What Aravind Eye Care System (1976) One Laptop per Child (2005) TOMS Shoes (2006) Warby Parker (2008) 同じ製品やサービスを「貧困層」よりもはるかに高 い価格で「富裕層」に提供します。したがって、利 益の主な大部分は裕福な顧客ベースから生まれま す。「貧しい⼈々'に提供することは、それ自体は利 益を生むものではありませんが、他の供給者では達 成できない規模の経済を得ます。さらに、それは会 社のイメージ向上の効果があります。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 No パターン名 次元 模範企業 パターンの説明 45 セルフサービス What How McDonald's (1948) IKEA (1956) Accor (1985) Mobility Carshar-ing (1997) BackWerk (2001) Car2Go (2008) 製品サービスの価格が安くなるかわりに、顧客が価 値創造の⼀部を担う。顧客にほとんど価値を付加し ないが高いコストがかかるようなプロセスに適して いる。顧客は自分たちの努⼒は必要であるが、効率 性と時間短縮の利益を得る。これはさらなる効率性 につながる。顧客がより迅速に、会社よりも目標指 向の⽅法で付加価値のステップを実⾏することがで きる場合がある。 46 ショップイン ショップ What Why Tim Hortons (1964) Tchibo (1987) Deutsche Post (1995) Bosch (2000) MinuteClinic (2000) 企業が新しい支店を開く代わりに、他社店内の小さ い売り場のように、企業の提供価値から利益を得る ことができるパートナーを探す。ホスティング店は、 より引きつけられた顧客から利益を得ることができ て、使用料の形で被ホスティング店から恒常的な収 益を得ることができる。被ホスティング企業の利益 は、空間、場所または労働⼒などの安価なリソース へのアクセスである。 47 ソリューション プロバイダー What How Lantal Textiles (1954) Heidelberger Druckmaschinen (1980) Tetra Pak (1993) Geek Squad (1994), CWS-boco (2001) Apple iPod/iTunes (2003) 3M Services (2010) フルサービスプロバイダーは、⼀つの接点を通して 強化された特定の領域における製品・サービスの全 範囲を提供します。効率とパフォーマンスを増やす ために、特別なノウハウが顧客に伝えられる。フル サービスプロバイダーになることによって、会社は、 彼らのサービスを延⻑して、それを製品に加えるこ とによる収益ロスを防止することができる。その上、 顧客との近い接触は、製品・サービスを改善するの に用いられる顧客の習慣やニーズに対する大きな洞 察を得ることができる。 48 サブスクリプ ション How Why Blacksocks (1999) Net-flix (1999) Salesforce (1999) Jamba (2004) Spotify (2006) Next Issue Media (2011) Dollar Shave Club (2012) 製品やサービスを得るために、顧客は、⼀般的に毎 ⽉であるか⼀年毎に、料⾦を払う。顧客は主に低い 使用コストと⼀般的なサービス有用性から利益を得 え、会社はより安定した収⼊の流れを生み出す。 49 スーパー マーケット What Why King Kullen Grocery Company (1930) Merrill Lynch (1930) Toys“R”Us (1948) The Home Depot (1978) Best Buy (1983) Fressnapf (1985) Staples (1986) 高級な顧客をターゲットにするのではなく、むしろ ピラミッドの底辺にいる顧客をターゲットにする。 購買⼒の低い顧客は、⼿頃な製品から利益を得る。 各々の製品を利益は小さいが、企業は顧客規模を反 映したたくさんの販売により利益を得る。 50 貧窮層への ターゲット化 What How Why Grameen Bank (1983) Arvind Mills (1995) Bharti Airtel (1995) Hindustan Unilever (2000) Tata Nano (2009) Walmart (2012) 高級な顧客をターゲットにするのではなく、むしろ ピラミッドの底辺にいる顧客をターゲットにする。 購買⼒の低い顧客は、⼿頃な製品から利益を得る。 各々の製品を利益は小さいが、企業は顧客規模を反 映したたくさんの販売により利益を得る。 51 ゴミから キャッシュへ Who What How Why Duales System Deutsch-land (1991), Freitag lab.ag (1993), Greenwire (2001), Emeco (2010), H&M (2012) 集められた中古品は、世界の他の地域で売られるか、 新しい製品へ変換される。利益計画は、安い購⼊価 格に基本的に基づく。会社の資源経費はほとんど省 かれる⼀⽅、サプライヤーの廃棄物処理も提供され、 関連するコストは下げられる。これも、顧客の潜在 的環境意識に基づく。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 No パターン名 次元 模範企業 パターンの説明 52 ツーサイド マーケット What How Why Diners Club (1950) JCDecaux (1964) Sat.1 (1984) Amazon Store (1995) eBay (1995) Metro Newspaper (1995) Priceline (1997) Google (1998) Facebook (2004) MyHammer(2005) Elance (2006) Zattoo (2007) Groupon (2008) ツーサイドマーケットは、相互依存している顧客グ ループ間の相互作用を促進します。より多くのグル ープまたは、各々のグループのより個々のメンバー がそれを使うと、プラットホームの価値はより増加 する。 「ツーサイド」は、通常異種のグループ(例え ば、企業と個⼈的な利益団体)からくる。 53 究極の贅沢 What Why Lamborghini (1962) Jumeirah Group (1994) MirCorp (2000) The World (2002) Abbot Downing (2011) このパターンは、社会のピラミッドの上層をターゲ ットにする会社の戦略である。会社がはっきりとそ の製品やサービスを他と区別しています。高い品質 基準または独占的な特権は、ピラミッド上層の顧客 を引きつける主な⼿段である。比較的高い価格によ る投資が必要になり、それが通常非常に高いマージ ンとなる。 54 ユーザーによる デザイン What How Why Spreadshirt (2001) Lulu (2002) Lego Factory (2005) Amazon Kindle (2007) Ponoko (2007) Apple iPhone/AppStore (2008) Createmytattoo (2009) Quirky (2009) ユーザー製造において、顧客はメーカーと消費者に なりえます。例えば、オンライン・プラットホーム は、製品(製品を売る製品設計ソフトウェア、製造 サービスまたはオンライン店)を設計して、取引す るために、顧客に必要なサポートを提供する。この ように、同社は彼らの仕事で顧客をサポートし、彼 らの創造⼒から利益を得る。顧客は、必要な基盤を 構築することなく、事業家的なアイディアを実現す る可能性から利益を得る。それから、収益は実際の 売上高の⼀部として発生する。 55 ホワイトラベル What How Foxconn (1974) Riche-lieu Foods (1994) Print-ing-In-A-Box (2005) ホワイトラベル製作者は、他の会社のブランドでそ の商品を流通させるのを許す。そのため、まるでそ の製品が彼らによって作られるように⾒える。同じ 製品やサービスが、複数のマーケターによって、そ して、異なるブランドでしばしば売られる。このよ うに、さまざまな顧客セグメントが、同じ製品で満 足させることができる。 ビジネスイノベーションハブ株式会社 本ワーキングペーパー翻訳版について 本ワーキングペーパー翻訳版(ビジネスモデル・ナビゲーターTM)は、ザンクト・ガレン大学(スイス)の「ビジネ スモデルイノベーション・ラボ(http://www.bmi-lab.ch/)」の協⼒の下、⽇本の業界におけるビジネスモデルイノベ ーションの促進を目的にビジネスイノベーションハブ株式会社が翻訳したものです。なお、ビジネスモデル・ナビゲー ターTM に関する権利は、ザンクト・ガレン大学のビジネスモデルイノベーション・ラボに帰属します。 (原著者のプロフィール) Oliver Gassmann ザンクト・ガレン大学のシニア・プロフェッサー。技術研究所のマネージング・ディレクター。 e-mail: [email protected] Karolin Frankenberger 同大学のアシスタント・プロフェッサー。ビジネスモデルイノベーション・ラボのヘッド。 e-mail: [email protected] Michaela Csik ホルシム・テクノロジー社(スイス)のイノベーション・マネージャー。 e-mail: [email protected] (出版物) The Business Model Navigator ビジネスモデル・ナビゲーターTM の詳細について記述された書籍。 FT Publishing/Pearson から 2014 年 11 ⽉に発刊。 http://www.amazon.co.jp/The-Business-Model-Navigator-Revolutionise-ebook/dp/B00PFZ9I8A (ビジネスイノベーションハブ株式会社について) ビジネスイノベーションハブは、新しいビジネスモデルの構築を支援するセミナー/ワークショップ、コンサルティ ング、出版、情報発信を目的として 2014 年 11 ⽉に設⽴された企業です。 (お問合せ)[email protected] ビジネスイノベーションハブ株式会社
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