人脈 で経営に差を付ける

個性的な経営を目指す社長のための経営情報レポート 月刊創レポート≪2009 年 8 月号≫
日々直面する経営課題に対して「知恵」を与えてくれる
人脈
☆☆☆
で経営に差を付ける
経営者として人脈づくりの本質を考える
経営者の皆様と
個性的な経営
☆☆☆
を考えるために!
あと一歩先の経営を考えるシリーズ⑩
人脈
で経営に差をつける
【1】「経営三大資源」の先細り
【2】人が集まるところイコール人脈か
【3】名刺交換を後悔させる出来事
【4】打算が過ぎると人脈は築けない
【5】「縁」を生かすのが「人脈」
【今月のハイライト】
「ヒト・モノ・カネ」を「経営の三大資源」というのはよく知ら
れていることです。ところが不景気になると、どの資源に対しても
投資ができなくなり、結果として、経営そのものが先細りになって
しまいます。そこで今月は、それほどの投資を必要としないで手に
入れることができる「人脈」を経営資源として捉え、その本質を読
み解いていきたいと思います。
【公認会計士・税理士
【本
伊藤会計事務所
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会計事務所がお届けする∼経営トレジャー∼
本レポートは経営者の皆さんと経営についてご一緒に考える目的で作成されています!
【1】「経営三大資源」の先細り
1》人脈を経営資源と考える
「ヒト(社員)」「モノ(設備・商品)」「カネ(投資)」を「経
営の三大資源」というのはよく知られていることです。
ところが、不景気になると、どの資源に対しても投資ができな
くなり、結果として、経営そのものが先細りになってしまいます。
しかし、それほどの投資を必要としないで手に入れることがで
きる経営資源があります。それが「人脈」です。
人脈は、日々直面する経営課題に対して「知恵」を与えてくれ
るばかりか、「力」を貸してくれることもあるのです。
用意できる「経営の三大資源」が限られてきた今こそ、
「人脈」
の本質について読み解いてみたいと思います。
2》不況のあおりを受けて
やり手の印刷営業マンとして知られたSさんが独立し、S印刷
所を立ち上げたのは、今から 10 年ほど前のことです。
会社設立当初は、持ち前の営業手腕で次々と大口の顧客を開拓
し、業績を伸ばしてきたのですが、2 年ほど前からぴたりと売上
が伸びなくなり、業績が次第に悪化していったといいます。更に
折からの不況もあいまって、
仕事そのものが激減、更に受注単価がどんどん下がっていった
のです。様々な打開策に知恵を絞ってみたものの、結論は「なん
とかして顧客を開拓するしかない」というところに帰結せざるを
得なかったといいます。
3》自分の周りに誰もいない
とは言っても、このご時世、新規の顧客を開拓することがいか
に至難のことかは、十分に分かっていましたから、S社長は、全
く「手詰まり」の状態になってしまったのです。ここへきて初め
て、「もう他人の力や知恵を借りるしかない」と思い至ったそう
です。しかし、一匹狼としてここまでやってきたS社長には、人
脈というものがほとんどありません。
景気がよかった時代は誰にも相談せず、誰の力も借りずに経営
をやっていけたのですが、いざとなった時に自分の周りには
ブレーンとなる人脈や頼りになる人脈が全くないこと
に気づいたのです。
あと一歩先の経営を考えるシリーズ:1 ㌻
【2】人が集まるところイコール人脈か
1》同業者の集まりから情報を得ようとしたが
そこでS社長は、人脈をつくるために何をすべきかを考えた末、
まずは以前から誘いをもらっていた同業者の集まりに初めて参
加することにしました。目的は
自社の現状を打開するために、同業者から情報を収集すること
です。
行ってみると会の雰囲気はアットホームで、新人のS社長もす
ぐに受け入れられたといいます。S社長は、「みんな、長年、印
刷業界で修羅場をくぐってきた人ばかりだ。自分のことを分かっ
てもらえれば、何か情報が得られるだろう」と、大いに期待をし
ていました。
2》新しい情報を得ることが困難?
それからS社長はその会に欠かさず出席をして情報を得よう
としました。しかし何回か参加してみても、情報を得るどころか、
聞こえてくるのは、「この大不況は当分続くだろうし、受注単価
は下がる一方だ」「どんどん技術は向上して、新しく参入してく
る企業も増えているし、今後どうすればいいんだ」という自嘲め
いた言葉ばかりです。
その言葉を聞きながら、S社長は、「もしかして、同じ境遇に
ある同じ業界の人たちは、同じ情報しか持ち合わせていないのか
も知れない。ここで何か知恵を得ようとしても、無理なことなの
か…」と、がっかりしたそうです。
3》異業種交流会に活路を求める
それならば、業界の違う人たちと人脈をつくろう、とS社長が
思ったのは当然といえば当然です。次にS社長が顔を出したのは、
ある公的団体が主宰する「異業種交流会」でした。
目的はただ一つ、
売上を伸ばすための「販路開拓」
です。
そのためには自分を相手に売り込むことが何よりも大切だと
考えたS社長は、名刺に自分の似顔絵を刷り込みました。
自分のことさえ知ってもらえば、飛び込みセールスよりも効率
的な営業ができるはずだとS社長は考えていたのです。
あと一歩先の経営を考えるシリーズ:2 ㌻
【3】名刺交換を後悔させる出来事
1》名刺イコール人脈ではない
異業種交流会では、約 30 人の経営者と名刺交換をすることが
できました。そしてその相手には、「近々訪問させていただきた
い」と書き添えた礼状とともに営業案内をお送りしたそうです。
更に、その書類が届いたころを見計らって、一人一人に電話を
掛けて、積極的にアポ取りをしてみたといいます。
ところがどの相手も、「ああ、あの似顔絵の名刺のS社長さん
ですね」と愛想よく対応してはくれるものの、「今、時間がとれ
なくて」とか、「うちには古くから付き合いのある印刷屋さんが
いて…」と、実際に会おうとはしてくれませんでした。
せっかく異業種交流会に参加したのに、あの名刺交換はいったい
何だったのか
と、S社長はがっかりしたといいます。
2》思わぬ相手からの電話
そんな時、異業種交流会で名刺交換をした金属加工業のGさん
から「一度、御社に伺わせてほしい」という電話がかかってきま
した。S社長としては、G社はセールスの対象にはならないと考
えていたため、異業種交流会後、電話での連絡はしていなかった
会社です。
S社長は、
「金属加工は自分の印刷業界とは全く無関係だから、
お越しいただいてもお役に立てることはない」と断ったそうです
が、「一度だけでも、ぜひ」というわけで、S社長は渋々Gさん
と会うことになりました。
Gさんは、いかにもやり手らしい人で、自社の金属加工技術が
いかに優れているかをとうとうと述べた挙句、
営業案内に記載されていた取引先のZ社をぜひ紹介してほしい
と頼み込んできた
そうです。S社長は、もちろん断りましたが、Gさんは、「それ
なら一緒にZ社に連れて行ってくれるだけでいい」と、かなり強
引で、なかなか引き下がりません。仕方なく、「今度、自分がZ
社に行った時に打診してみる」と言って、取りあえずその場は帰
ってもらいました。このことからS社長は、
Gさんと名刺交換をしてしまったことを後悔した
といいます。
あと一歩先の経営を考えるシリーズ:3 ㌻
【4】打算が過ぎると人脈は築けない
1》人の利益のことなど考えられない?
更にS社長は、「私が何でGさんのために動かなくてはならな
いのだ」と不快にさえ感じたといいます。人は自分の利益ばかり
を考えて相手のことなど考えない相手に、反発こそ覚え、助けて
やろうなどとは思えないのかも知れません。
S社長は、
Gさんの強引さに、利用されているような感覚を覚えた
といいます。しかし、同時にS社長はハッとしました。「自分も
同じことをしていたのではないか……?」
2》自分の利益ばかりを考えていないか?
S社長は、名刺交換をする時、「この人と付き合えば何かいい
ことがあるかも知れないと、いつも下心をもっていた。これでは、
こちらの都合を一方的に相手に押し付けていただけに過ぎず、相
手が引いてしまうのも当然ではないか」、という考えに辿り着い
たそうです。
そしてS社長は、この一連の出来事を通して、
「人脈とは何か」
という本質が見えてきたといいます。このことを機に、S社長の
「人脈づくり」に対する姿勢はガラリと変わったのです。それは、
名刺交換をする時、自分は、どうすればこの人の役に立つことが
できるかを真剣に考える、というものでした。
社長いわく、
「人脈をつくる」のではなく、
「自分が人脈になる」という考え方
だそうです。
3》『金持ち』よりも『人持ち』
その後、S社長はわずか数か月でびっくりするほどの「人持ち」
になっていきました。
「こうして名刺交換をしていくと『あの人を紹介したらいいつ
ながりができるのではないか』と思い当たり、それでまた人脈が
できていく」のだそうです。
人脈を広げていくことで、「世話になったから」と思いがけず
取引先の紹介をしてもらえることもあるそうですが、それに加え
S社長に任せたら安心だ、という信用も得られるようになり
販路も大きく広がったそうです。
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【5】「縁」を生かすのが「人脈」
1》人脈で経営に差がつく
S社長は、同業者の集まりにも積極的に参加し、「この会に対
して自分ができることは何か」を考えるようになったといいます。
そこでは、自分が築いた人脈の中から何人かを講師として招き、
勉強会を開催することを提案しました。幸いこの企画は大成功で、
同業者のS社長を見る目が大きく変わってきたといいます。
その結果、S社長の周りには
貴重な意見交換ができる同業者が一人、二人と増えて
いきました。自分が会の役に立つことで、強固な人脈をつくるこ
とができたのです。
そして今では、同業者から得られる情報やアドバイスも貴重で
あるということを実感しているといいます。
2》「縁」を見直してみる
「縁」という言葉があります。人は「オギャア」と生まれて家
族という「血縁」をもち、子供になって外で遊ぶことから「地縁」
を得、やがて学校に入り「学縁」を得、長じて職業人生を送るよ
うになって「職縁」を結ぶと言われています。このように人は「縁」
から一生離れられないのです。
また「小才は縁に会うて縁に気づかず。中才は縁に会うて縁を
生かせず。大才は袖振り会うた縁をも生かす」という言葉もあり
ます。「縁」をどう生かすかで、その人の人生が決まってくるの
だと思います。この「縁」を生かすとは、つまり「人脈」を築く
ことに他ならないのではないでしょうか。
3》人と出会う情熱を持ち続けることの大切さ
そして、そのためには、「人と出会うことに情熱を持ち続ける
こと」が大切で、ここから「人脈」が築かれます。更に、S社長
がそうであったように、
「人脈をつくる」のではなく、
「自分が人
脈になる」という考え方を持つことができれば、お互いに高めあ
うことのできる有益な人脈を築くことができるのではないでし
ょうか。
私どもも経営者の皆さまとは「縁」で結ばれており、ぜひ「人
脈」として活用していただきたいと考えております。どうぞなん
なりとご相談ください。
以上
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