平 成 22 年 度 校内研修 研究主題 主体的に学び,確かな学力を身に付けるための算数科学習指導のあり方 大洗町立祝町小学校 1 主題設定の理由 学 習 指 導 要 領 が 改 訂 さ れ , 平 成 23 年 度 か ら は 全 面 実 施 と な る 。 改 訂 に お い て は , 発達段階に応じ,算数的な活動を一層充実させ,基礎的・基本的な知識・技能を身 に付け,数学的な思考力・表現力を育て,学ぶ意欲を高めるようにすることをねら いとしている。その知識・技能の確実な定着のため,発達や学年の段階に応じたス パイラルによる教育課程を編成すること,根拠を明らかにし,筋道を立てて体系的 に考えることや,言葉や数,式,図,表,グラフなどの相互の関連を理解し,それ らを適切に用いて問題を解決したり,自分の考えをわかりやすく説明したり,互い に自分の考えを表現し伝え合ったりするなどの指導を充実すること,学ぶことの意 義や有用性を実感したり,数量や図形の意味を実感的に理解したり理解の広がりや 深まりなどの学習の進歩が感じられるようにしたりすることがあげられている。 本校における児童の実態を見ると,学力診断のためのテスト結果の正答率の分布 が下位に偏り,単発的に出てくる学習内容についての知識・理解,表現・技能の定 着が不十分な児童が多い傾向にある。また,基礎的な問題に比べて応用力を見るよ うな問題の正答率が低く,思考力や表現力が十分に育っていない。 そこで,算数科の学習指導に力を入れて,ねらいにあった算数的活動を通して児 童一人一人が基礎的・基本的な知識・技能を確実に身に付け,数学的な思考力・表 現力を高め,算数を学ぶことの楽しさや意義を実感することができるようにしたい と考え,本研究主題を設定した。 2 研究のねらい 児童に確かな学力を身に付けることを目指して,一人一人が学習の必要感や課題 意識をもって解決のしかたを考え,算数的活動を通して実感的に理解したりお互い の考えを伝え合ったりすることによって,数学的な表現力を高めるとともに,算数 的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付くことができる算数科指導の在り方に ついて研究する。 3 研究仮説 <仮説1> 児童が学習の必要感や解決の結果や方法の見通しがもてるような問題や提示の しかたを工夫したり,数量や図形についての感覚を豊かにする算数的活動を取り 入れたりすれば,進んで学習に取り組む児童が育つであろう。 <仮説2> 言葉や数,式,図,表,グラフなどを用いて,自分や友達が考えたことを理論 的に説明する活動を積極的に授業に取り入れていけば,児童の数学的な思考力や 表現力を高めることができるであろう。 4 研究内容 ○ 「一授業一工夫」の実践を積み重ねていく授業の改善 ・学習の見通しをもたせるための学習課題とその提示の工夫 ・自力解決の場と比較・検討の場の充実につながる学習形態を工夫した学び合い 学習(ペア学習やグループ学習)と他者説明による発表の推進 ・自分の考えを多様な方法で表現したり,わかったことを自分の言葉でノートに まとめたりする活動の充実 ・TTによる効果的な指導を行うために,児童の実態に応じた支援方法や役割分 担,準備物などについての打合せの充実(週時程表への位置づけ) ・一人一授業研究を行う。その際,学習の必要感や解決の結果や方法の見通しが もてるような学習課題や提示を工夫しているか,数量や図形についての感覚を 豊かにするねらいに合った算数的活動を取り入れた展開になっているか,指導 案の共同立案や検討会(ブロック・全職員)を実施しての練り上げ ○ 学習に適した環境作り ・児童に学習内容に関係のあるまとめや発展的な問題などを掲示し,知的刺激を 与える算数コーナーの工夫 ・学習のしかたを理解して,主体的な学習の成立を支援するための「算数ノート のきまり」や「家庭学習の手引き」の作成と活用 ○ 基礎的・基本的な知識・技能の定着 ・ 現 在 学 習 し て い る 内 容 を 中 心 と し た 月 例 テ ス ト の 実 施 (全 学 年 ) ・各学年で身に付けさせたい計算領域の基礎的内容をもとに,学年枠を外して作 成 し た 検 定 テ ス ト の 実 施 (全 学 年 ) 5 研究組織 研 究 推 進 委 員 会( 校 長・教 頭・教 務・研 究 主 任 ) 授業研究部 (高学年ブロック) (低 学 年 ブ ロ ッ ク ) ○授業研究 ○学習環境作り ○研究実践と結果分析 6 (1) 校内研究計画 年間計画 月 校内研究内容 備考 4 ○校内研修 ・学力診断のためのテスト ・重点目標,研究テーマの確認・決定 ・全国学力・学習状況調査 ・算数ノートの使い方の確認 ○研究推進委員会 各学年 ・校内研究計画案の提案 5 ○校内研修 ・学力診断のためのテスト集計 ・授業改善提案(一授業一工夫) ・学 力 診 断 の た め の テ ス ト 分 析 ・校内環境整備 ・管理訪問指導案略案作成 6 ○校内研修 ・ 管 理 訪 問 6/8 ・所課長訪問指導案略案作成 ・ 所 課 長 訪 問 6/29 ・学力向上推進チ-ムによる訪問指導の指導案 検討会①(低,高学年ブロック) ・学力向上推進チ-ムによる訪問指導の指導案 検討会②(低,高学年ブロック) ・校内環境整備 7 ○校内研修 ・授業参観 ・通知表の記入について ・学 力 向 上 推 進 チ - ム に よ る 訪 ・学校改善プラン提案 8 問 指 導 7/5( 相 互 参 観 ) ・学力診断のためのテスト分析・考察 ・個別面談 ○校内研修 ・学びの広場 ・学校改善プラン作成 ・学習相談 ・学力診断のためのテスト分析・考察 ・ 要 請 訪 問 8/18 今後授業に生かす ・全国学力・学習状況調査集計・分析・考察 ・要請訪問(増田指導主事)※「算数の授業で 目指す方向について」 ・家庭学習の手引き作成 ・1学期の成果と課題分析 9 ○校内研修 ・個人研修 10 ○校内研修 「新学習指導要領の完全実施に向けて」 ・個人研修 ・指導案作成のための事例研修 11 ○校内研修 ・学力向上推進チ-ムによる訪問指導の指導案 検討会①(低,高学年ブロック) ・学 力 向 上 推 進 チ - ム に よ る 訪 問 指 導 11/16( 相 互 参 観 ) ・ 計 画 訪 問 11/29( 相 互 参 観 ) ・学力向上推進チ-ムによる訪問指導の指導案 検討会②(低,高学年ブロック) ・計画訪問指導案検討会①(低学年ブロック) ・計画訪問指導案検討会②(低学年ブロック) ・計画訪問指導案略案作成 ・校内環境整備 12 ○校内研修 ・授業参観 ・個人研修 ・家 庭 学 習 に お け る ア ン ケ ー ト ・2学期の成果と課題分析 ・ 指 導 室 訪 問 12/28 ・東茨城郡算数・数学研究部授業公開の指導案 検討会①(高学年) ・保護者・児童・教師のアンケート分析 1 ○校内研修 ・ 指 導 室 訪 問 1/14 ・個人研修 ・東 茨 城 郡 算 数・数 学 研 究 部 授 ・東茨城郡算数・数学研究部授業公開の指導案 業 公 開 ・ 指 導 室 訪 問 1/26 検討会②(高学年,全体) ・東茨城郡算数・数学研究部授業公開の指導案 作成 ・町教育研究会研究紀要作成 ・次年度に向けた校内研修計画案検討 ・校内環境整備 2 ○校内研修 ・ 町 教 育 委 員 訪 問 2/9 ・町教育研究会研究紀要作成 ・1年間の研究の成果と課題分析 ・校内研究のまとめ ・学校改善プランの検証作成 3 ○校内研修 ・授業参観 ・23年度校内研修計画案確認 7 (1 ) 研究の実践 授業の改善 ① 学習課題とその提示の工夫 本時の学習課題を自分の課題 としてとらえることができれ ば,学習の必要性を感じて,意 欲的に取り組むのではないか と考え,導入の場面を大切にし た。児童の日常生活と関わりのあるものや場面を取り上げたり,問題文を読ん で既習の学習との関係について気付くことを話し合ったりすることによって, 問題と学習課題とを区別して扱い,板書するようにした。 ② 学び合い学習や他者説明の推進 相手に分かってもらおうという思いから,自分 の考えを練り直したり表現のしかた工夫したりす るようになり,筋道を立てて考える力もつくので はないかと考え,ペア学習やグループ学習を取り 入れて友達に説明する場を設けるようにした。ま た,比較検討場面では,発表を聞くよりも相手の 考え方を解き明かそうと真剣に考える方が効果的 で あ る と 考 え ,他 者 説 明 を 取 り 入 れ る よ う に し た 。 ③ ノートにまとめる活動の充実 全学年でマス目ノートを使い,低・中・高学年そ れぞれの「ノートのきまり」に沿って算数ノートを 活用した。自力解決や適応練習の場面では,問題解 決の過程を見取り,認め励ますことが実践意欲を高 め る こ と に つ な が る で あ ろ う と 考 え ,4 つ の 観 点( 考 え方,立式,計算,答えの書き方)での○付けと言 葉かけを実践した。また,既習の学習を振り返る際にノートまとめたことが役 立つという経験を積み重ねていけば,自分の気付きをノートに書き加えたりす るようになり,主体的な学びや表現力の育成につながるであろうと考え,その 時間に自分は何を学んだかを自分の言葉で表現することを習慣付けた。その 際,学年の発達段階や実態に応じて,教師と対話をしながら一緒に考えたり, 穴埋め式にしたりキーワードを与えたりしながら,徐々に自分の言葉でまとめ るようにしていき,書くことに対する苦手意識を軽減するように配慮した。 ④ 授業実践 ア 3学年の「あまりのあるわり算」 本時の研究課題 児 童 が 興 味・関 心 を も っ て ,余 り の あ る 除 法 計 算 を 既 習 の 計 算 方 法 と 関 連 づけて理解するための算数的活動や話し合いの場の工夫 <成果と課題> ・導入に「集合ゲーム」を取り入れたことで学習への 意欲が高まり,余りが出たという意識付けもでき, 課題意識をもって取り組むことができた。 ・自力解決できた児童は,同じ解決方法の児童同士で 意見を交換し合い,画用紙に考えをまとめたり,発 表のしかたを話し合ったりしたことによって,自分 たちの考えを確認し,他の児童にもわかるような説 明のしかたを考えることができた。 ・比較検討場面では,代表の児童が自信をもって発表し,同じグループ児童が 補足説明をすることもできた。その後,それぞれの考えのよさや共通点を話 し合うことができた。 ・見通しを立てたときに,発表させることで自由な発想が妨げられることにな らないように配慮したい。 ・T1とT2の役割分担を明確にし,児童のつぶやきや気付きをうまく取り上 げるようにするとともに,児童の考えを予想して支援の準備をしていくよう にしたい。 イ 5学年の「正多角形と円」 本時の研究課題 正 六 角 形 辺 や 角 に 着 目 し て 考 察 す る 活 動 を 通 し て ,正 多 角 形 の 特 徴 に つ い ての理解を深めるための支援の在り方 <成果と課題> ・導入で身の回りにある正多角形をしたものの写真や 実 物 を 提 示 し た こ と で ,学 習 へ の 興 味・関 心 を 高 め , 気付いたことを話し合うことを通して,正六角形の イメージをつかむことができた。 ・自力解決の場面で正六角形をつくる際には,折り紙 やトレーシングペーパー,円形の紙などいろいろな 種類の紙を用意しておいたので,円形の紙を選んだ児童が円の内側にぴった り入るという正多角形は円に内接するという性質を発見することにつながっ た。 ・導入での話し合いに時間をかけすぎたことで,児童の思考を作図へと固定化 する方向に作用し,自力解決からまとめの時間が十分に確保できずに,準備 しておいたものを効果的に活用して,児童の発見したことのよさをその場で 感じ取らせてあげることができなかった。 学習する環境作り (2 ) ① 算数コーナー 学習内容の定着に役立ったり,いろいろな問題に挑戦しようとする意欲を喚 起したりするために,全学級で教室の背面に設け,授業で発見した考えや学習 したことをもとにして解ける発展問題,学習内容のまとめなどを掲示した。 ② 学習のしかたがわかる手引きの作成 学習に対するやる気が出ても,何をしたらいいかわからなかったり,努力の 成果が感じ取れなかったりしては,意欲がしぼんでしまうと考え,本年度は, 「 家 庭 学 習 の 手 引 き 」を 作 成 し ,児 童 と 保 護 者 の 両 面 か ら 支 援 す る こ と に し た 。 (3) 基礎的・基本的な知識・技能の定着 確かな学力を身に付けるためには,児童の挑戦意欲を刺激しながら,月例テス トだけでは補いきれない学び直しの機会を増やすことが大切であると考え,学年 枠を外した6年間の計算領域の基礎 的な内容もとにした検定テストを実 施した。 8 研究の成果と課題 (1) 成果 ○ 導入を大切にして問題や学習課題の提示のしかたを工夫にしたことにより, 本時のめあてをしっかりととらえ,意欲的に学習に取り組もうとする児童が増 えてきた。 ○ ペア学習やグループ学習を多く取り入れたり,比較検討の場で他者説明を取 り入れたりしたことによって,児童同士が思考を練り上げる学び合いの場面が 増え,数学的な思考力や表現力の高まりが見られるようになった。 ○ 指導主事を招いて指導・助言を受けたり,共同での指導案検討会を何度も行 ったりしたことで,ねらいに沿った算数的活動を取り入れ,工夫ある授業を展 開するようになった。 ○ 効果的なTT指導を行うために,打合せの時間を確保して,役割分担や準備 をして授業に臨むようにした結果,個に応じたきめ細やかな指導を行うことが できるようになった。 (2) ○ 課題 児童の実態や変容についての調査を行い,一人一人の学力に応じた支援のし かたを具体的に考え,より効果的な支援を工夫していくように努める。 ○ 算数科における言語活動について全職員でしっかりととらえ,本校の特色で ある尐人数指導の長所を生かしながら,表現力を伸ばす言語活動を積極的に進 める。 ○ 言葉や式,図やグラフなど多様な方法で考える授業を工夫することにより, 数理的な処理の仕方のよさに気づいたり,数学的な表現力を高めたりすること ができるようにする。
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