00000 教員一人1台タブレット導入から始める 校内のICT化の推進 私立 大阪青凌中学校・高等学校 中高一貫校 共学 学科:普通科 (特進Sコース、特進コース、進学コース) 規模:中学校:1学年23名、2学年28名、3学年26名 高校:1学年260名、2学年250名、3学年345名 (2015年度) 主な進路状況: 大阪大2人、筑波大1人など国公立大32人合格 (2015年度入試) 取り組み ●中学、高校の教員に一人1台、タブレットを配付 ● ICT活用により、職員会議など校務の効率化を実現 ● 段階的に面談や授業でのICT活用を推進 業務効率化と教育のICT化を見据 えクラウドサービスとタブレット端末 を導入 2点目は、今後の教育のICT化を見据えて段 階的に学校の体制を整える必要性を感じた からです。政府からは「2020年までに一人1 台タブレット」という方針も出ています。生徒 ──── 2015年度より、教員に一人1台タブレットを はいざタブレットを活用することになっても、 導入するなど、ICT活用を進められていますが、きっかけ 世代的に戸惑うことはないでしょう。しかし、 をお聞かせください。 教員の方がタブレット端末の扱いに苦手意 奥野先生 きっかけは2点あります。1点目は、校内の 識を持っているケースが多いです。まずは 情報共有の効率化など、業務改善を目指し 慣れる時間を確保する意味でも、2015年度 ていたことです。数年前から業務改善を進 は教員にタブレット端末を配付することにし めようという動きはありました。特に、職員会 ました。本校がある高槻市や隣接する大阪 議などでは膨大な枚数の資料を配布するた 市では、小・中学校で電子黒板機能付きの めに、印刷や準備の時間がかかっていまし プロジェクターやタブレット端末を活用した授 た。また、限られた時間の中で複数の分掌 業が盛んに行われています。「小・中学校で から連絡事項が共有されるため、連絡漏れ はICTを活用した授業を受けてきたのに、高 が起こる危険性もありました。以前から校内 校に入学したらタブレットや電子黒板をまっ サーバーを使った情報や資料の共有は行って たく使わない」というギャップを感じることがな いましたが、もっとリアルタイムに情報共有を いようにしたいと考えました。この2点が、ICT 行うために教育クラウドサービス「Classi」の 導入を決めました。 1 化を進めるに至った背景です。 ──── 貴校のICT環境と、タブレットを活用するまで 準備が整った5月中旬以降に、職員会でのタ の流れについて教えてください。 ブレット端末とClassiのコンテンツボックス活 冨永先生 職員室はWiFi環境を整備しています。普通 用が始まり、これまで2回の職員会議で活用 教室も含めた全教室の整備も検討しました しています。 が、相当な費用がかかることが分かりました。 ──── 実際に活用してからの先生方の反応や感想 その代わりに、工事の必要がなく、スピー を教えてください。 ディーに導入することができる通信機能付き 冨永先生 今までは1回の職員会議に60~70人の先生 のタブレット端末を導入することになりました。 が参加しており、合計1,000枚以上の紙を タブレット端末が納品されたのは3月下旬で 資料として配布していました。それが、一気 したが、すぐにメール設定などに取りかかる に0枚になりましたので、紙や印刷のコスト、 ことができました。 資料を綴じたりするのにかけていた時間、手 間の削減については大きな成果を感じました。 奥野先生 職員向けのタブレット端末活用研修も学校 内で行いました。その際に、操作に慣れてい また、資料の保管に関しても以前はバイン る先生と、そうでない先生に隣同士に座って ダーなどを使っている先生もいましたが、 もらうようにしました。操作が分からなくなっ データで保管できるようになり、楽になったと ても、慣れている先生がすぐに教えられるよ いう声も聞いています。 うにするためです。そのこともあって、基本的 奥野先生 会議の前にコンテンツボックスに「いつまでに なタブレットの使い方はある程度身に付いた 資料をアップロードして下さい」という提出期 状態でスタートを切ることができました。 限のルールを明確に設けたことで、資料を早 めに提出し、期限を守ることにも繋がってい ます。また、先生方が事前に資料をダウン 職員会議のペーパーレス化に成功。 1回につき約1,000枚の紙資料を 削減。 ロードして目を通してから会議に参加するこ とで、会議自体が効率化していることも感じ ています。 ──── 実際の「Classi」やタブレット端末の活用につ いて教えてください 奥野先生 まずは、業務効率化のために職員会議の ペーパーレス化に取り組みました。職員会議 の資料をPDF化し、Classiの「コンテンツボッ クス」を使って共有します。先生方はタブレッ ト端末で「コンテンツボックス」内の資料をあ らかじめダウンロードしておきます。職員会 議中も、紙に打ち出した資料は配られませ ん。タブレット端末にダウンロードされた資料 を見ながら会議は行われます。ただし、いき なり職員会議をペーパーレスにするのではな く、まずは運営委員会のような小規模の会議 で活用できるか試してみました。また、「コン テンツボックス」内に資料を保存する際の ルールの策定などを進めていきました。 2 ▲Classi「コンテンツボックス」機能 先生間または先生・生徒間で資料や画像、動画などを共有することがで きる ▲学校で作成したタブレット導入スケジュール。学校行事予定の右側に、 タブレット配布から、研修、職員会議での活用にいたる流れが明示され ている。 3 ──── その他の活用場面について教えてください 冨永先生 今後は多くの先生方に、授業内でタブレット 奥野先生 タブレット端末を活用した生徒面談を行って 端末を使った取り組みを広げて欲しいと考 います。5月の面談期間で、タブレット端末を えています。本校ではほとんどの普通教室 使って大学情報や入試情報を検索して、生 に、短焦点型プロジェクターと、ワイヤレスで 徒に見せながら面談を行ったり、成績データ タブレット端末の画像をプロジェクターと共有 を参照したり、利便性を感じているようです。 できる「ミラ-キャスト」を設置しています。5月 また、今後にはClassiの「生徒カルテ」を活 にあった保護者との学級懇談会では、ほぼ 用していくことを予定しています。数年前か 全てのクラスでタブレットとプロジェクターを ら、教育企画推進室が中心となって、面談 接続し、資料を投影しながら進めました。保 の履歴を紙ベースで記録してファイルすると 護者の方もこういった形で授業が行われて いう取り組みを始めていました。ファイルは いくのかという期待感を持っていただけたよ 各教員が自由に閲覧できるようにしておき、 うです。また、先生方も「タブレットを使った 担任の引き継ぎの際にも利用していました。 授業展開は意外と簡単にできる」ということ しかし、紙よりもデジタルの方が保管や共有 に気がつき、積極的に活用しようという雰囲 を行うのに優れていますので、今後は、 気が出てきています。 Classiの「生徒カルテ」に面談の履歴を残し、 奥野先生 教科書の本文を黒板に投影し、そこにチョー 生徒の指導に活用していこうと考えています。 クで書き込みながら授業を進めている先生 もいます。まずは板書の効率化のような用 途でタブレット端末を活用しています。いずれ、 授業でのICT活用で、新しい授業の 展開にチャレンジする 全生徒が端末を持った際はアクティブラーニ ングでの活用を考えていきたいと思っていま す。それまでに、先生方が工夫をしながら、 授業にICTを取り入れていってもらえればと ──── 今後の活用予定について教えてください 奥野先生 今後は授業でのICT活用を進めていきたい と思っています。すでに、タブレット端末をプ ロジェクターに接続して動画を投影するなど、 個々の先生が実践し、共有している段階で す。 ▲Classi「生徒カルテ」機能 生徒の成績などの情報を一元管理できる。面談など指導履歴も記入し 保存することができ、他の先生に共有することもできる。 4 考えています。 ▲ほとんどの教室に短焦点型プロジェクターとミラキャスト(ワイヤレスで タブレットの画像をプロジェクターに共有できる機器)を設置している 業務効率化をきっかけにICT活用に対する意識が高まる 成 果 ■ 職員会議のペーパーレス化は1回につき1,000枚以上の紙資料削減など、業務効率化の成果を実 感しています。 タブレット端末やClassiを教員全員で段階的に活用することで、学校全体でICT化を 進め、大学改革や高校教育改革の流れを踏まえた指導を進めていく共通認識を持つことができて います。無理をせずに足並みをそろえて活用スタートできたことが、最初の成果と言えると思います。 ■ 今は先生だけがタブレット端末を持っている段階です が、今後は生徒もタブレット端末を持った際に何が出 来るかを考えて行きたいです。Classiでは「WEBテスト」 など活用し、効率的に生徒の理解度を把握できたら 今 後 良いと考えています。また、教員同士の指導ノウハウ 向 先生) の共有にコンテンツボックスを活用したいです。(冨永 ■ 本校は今年、ICT化を推進し始めたばかりです。従来 アナログで行ってきた事を、デジタルに置き換えている 段階です。次のステップはデジタルでしか出来ないこと にチャレンジしたいです。全ての指導を一気に変える のではなく、たとえば「10回に1回はタブレットを活用し、 アクティブラーニングの要素を取りいれる」といったレベ ルから授業改善を進めていきたいです。 5 (奥野先生) お話を伺った 冨永恭三先生 (右) 奥野憲司先生 (左)
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