ICTを活用して、 「一斉」「協働」「個別」の学びを提供

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ICTを活用して、
「一斉」「協働」「個別」の学びを提供
私立
羽衣学園中学・高等学校 中高一貫校
共学
学科: 普通科 特進Ⅰ類、特進Ⅱ類、進学コース
規模: 1学年267名、2学年446名、3学年363名(2015年度)
主な進路状況: 国公立大3人、私立大156人、うち関関同立17人(2014年度入試)
取り組み
● 授業でのICT活用で、生徒の意欲向上と個に応じた指導を実践
● ICTの持つ「低コスト」「即時性」のメリットを活かし、国内・国外との 交流学習を実践
中の人々とつながることができます。さらに、
授業でのICT活用で、生徒の意欲
向上と個に応じた指導を実践
ICTはそうしたプロセスを容易に記録、保存
できる点も利便性が高いと考えています。
──── 授業でICTを活用するようになった背景につ
いてお聞かせください。
米田先生 一つは「良い授業」ができると考えたからで
す。ICTを用いることで、例えば、一斉に生
徒に英作文を書かせて、その結果を即座に
全員で共有することができます。こうした手
法は、一人ずつ生徒を指名して答えさせる
授業よりも多くの生徒の参加意欲を高める
──── 御校の現在のICT環境についてお聞かせくだ
さい。
米田先生 本校では、昨年から一部施設の普通教室に
電子黒板、短焦点プロジェクター、ノートPC、
スピーカーを設置しました。また生徒用にタ
ブレット(アンドロイド)を160台貸し出し用とし
て導入しました。生徒の自己負担としては、
全員に電子辞書を持たせています。
ことができます。また自分の意見や考えを言
葉には出せなくても、手紙やメールでなら言
える生徒も多くいますので、より多くの生徒
が授業に参加しやすくなります。そして、指
導者としても、個々の生徒の状況に目を配
る指導がしやすくなると考えています。
もう一つは、本物に触れさせることで生徒に
刺激を与えたいと考えたからです。例えばイ
ンターネットを活用することで、時間的・地理
的・経済的な制約を気にすることなく、世界
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▲ 貸し出し用タブレット
──── 具体的な授業での実践例についてお聞かせ
ください。
米田先生 下記が各教科での実践例です。
各教科でのICT活用実践例
▲ プロジェクター接続環境
1)英語、国語 デジタル教科書、e-learningを活用した授業
2)数学 電子黒板や学習ソフトを活用した授業
3)理科 動画やデジタル教材を活用した授業
4)情報 ビデオ会議や協働作業、SNSを国内国外と活用
した授業
5)クラブ・課外活動 運動部・交流学習など
▲ 短焦点プロジェクター
ICTを用いることで「一斉」「協働」「個別」の
3つの学習スタイルを実現しています。例え
──── 環境整備を進める上でのポイントは何でしょう
ば、英語でいうと、「一斉学習」では、デジタ
か?
ル教科書や電子辞書をプロジェクターに接
米田先生 第1に、安全・安心・安定、且つ現場での導
続して白板に投影することで、自分の手元
入・運用がしやすいシステムの整備を進め
にあるものを大きく見せます。「協働学習」で
ることだと思います。そこで、タブレットはレ
は、Flash Card機能やスラッシュリーディング
ンタルにして不正利用や不適切なインター
機能を使ったペアワーク(音読練習、新語確
ネット接続などを防止することが可能なMD
認等)を行います。「個別学習」では、週1コ
M(モバイルデバイス管理)を入れました。ま
マを使い、パソコン教室で専用ソフトを用い
たレンタルタブレットは、無線LAN環境など
たe-learningを行います。
の設備投資が必要ない形にし、具体的には
また、進研模試の受験後は、個別学習とし
4G回線を使用して校内Wi‐fiとは別で使っ
て「進研模試デジタルサービス」のWEB解
ています。
説を使った復習を実施しました。流れとして
第2に、家庭との連携を考え、OSに左右さ
は、①文法で、全体的に間違いが多かった
れないソフトやサイト、教材を活用することだ
箇所について解説、②リスニングの復習を
と思います。コンピューター教室やCALL教
WEB解説で行う、③個々に応じて提示され
室を立派に作っても、生徒はその空間にい
る「復習おすすめ問題」に取り組む、④間違
るときしか使えません。教室の外でも生徒が
えた問題を個別の「暗記カード」にストックす
自分のスマホで見られるような環境にしまし
る、というものです。特に英語リスニングは、
た。
WEBで音声を確認しながら解くプロセスを
学ぶことができたので有効でした。
▲進研模試デジタルサービス WEB解説動画(英語リスニング)
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──── ICTを効果的に活用するためのポイントにつ
情報を一元管理できることで、面談の準備
いて、どのようにお考えですか?
が楽になり、生徒・保護者への提示が分か
米田先生 ICTは、それを活用した方が生徒の理解を
りやすくなったことで面談の内容が充実しま
深めたり、興味・関心を高めたりできるシー
した。そして、教師間で生徒カルテ、および
ンで活用します。一方で、大切なポイントの
指導履歴を共有できるため、指導の連携が
板書を生徒に写させることも重要です。デジ
しやすく、校務の効率が上がりました。
タルとアナログを効果的に融合させることが
また、日々の学習指導としては、「デジタル
ポイントだと思います。
学習記録」機能を活用しました。生徒が学習
今年度、普通教室のICT環境を整備したこと
時間を入力すると、自動的にグラフで表示さ
で、授業でICTを活用する先生がぐんと増え
れるため、生徒一人ひとりの学習が「見える
ました。生徒の理解を深めつつ、板書の時
化」できるだけでなく、タイムリーに指導に活
間を短縮することもでき、授業の効率化につ
かすことができました。
ながっているようです。
▲Classi「生徒カルテ画面」
▲ICTを活用した授業風景(化学)
──── 授業以外でのICT活用についてお聞かせくだ
さい。
米田先生 授業以外では、日々の学習指導や、進路指
導の中で、教師のマネジメントツールとしてI
CTを用いています。本校は、昨年度から
「Classi (旧『授業・学校支援サービス』)」を
利用しています。その中の「生徒カルテ」機
能を活用し、進研模試、スタディーサポート
のデータに、定期考査、評定、部活、資格情
報を登録し、一元管理しています。
作成した生徒カルテは、5人の担当教師で
共有し、面談で活用しました。多面的な生徒
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▲Classi「デジタル学習記録画面」
しやすくなります。そして、それらをもとにさら
ICTの持つ「低コスト」「即時性」の
メリットを活かし、国内・国外との
交流学習を実践
に意見交換を深めることも可能です。
プロジェクト学習を通じて、実感をもった本物
の経験、自分の思い通りばかりにはいかな
い経験、そして目の前の相手と真剣に向き
合い課題に取り組む経験を通して、劇的に
──── ICTを用いた交流学習についてお聞かせく
変わった生徒も多数います。これからもICT
ださい。
の特性を活かしながら、プロジェクト学習を
米田先生 本校では、教科「情報」の時間を軸に、ICT
継続して実施していきたいと思います。
を活用したプロジェクト学習を取り入れてい
ます。目的は、生徒たちに、自分と異なる考
えを持つ人たちと調整をつけながら最適解
を見出す力を身につけさせるためです。プロ
ジェクト学習を通じ、コラボレーション(協働)
とコンフリクト(衝突、葛藤)、そしてコンフリク
トを打開する「建設的妥協点」を見出すプロ
セスを体験させています。
具体的な事例としては、英語、理科、総合的
な学習の時間と連携して行った「日米理科
実験」が挙げられます。理科と総合的な学
習の時間を使い、情報科、理科、英語科の
教師が連携し、さらに大阪大学の協力も得
ながら、アメリカの複数の中・高等学校と、
理科の実験データを交換し合う「同時学習」
を行いました。日程や実験内容などは、メー
ル、ビデオ会議などを利用して決定していき
ました。実験当日は、遠隔対話システムを
使って、日米双方が提案した実験を同時に
行うなどしました。それ以後、環境問題、エ
ネルギー問題を中心に産学連携も含めて継
続的に実施しています。
──── 交流学習にICTを取り入れるメリットについて、
どのようにお考えですか?
米田先生 利点は、まず「低コスト」で「即時性」があるこ
とです。交流において直接会うことはとても
大切ですが、時間とお金がかかります。そこ
で、SkypeやFacetimeのような無料の手軽な
ツールを利用しTV会議をすれば、すぐに時
間と空間を超えてつながることができます。
また、ICTを使うことで、動画や写真を含め
て交流学習のプロセスや成果物を簡単に記
録、保存ができるので、「振り返り」の作業も
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生徒の学習意欲、コミュニケーション能力が向上
■ 生徒の授業へのモチベーションが高まりました。また、e-learningや進研模試デジタルサービス、Classiの活
成
果
用によって、個に応じた指導が充実しました。中でもClassiは、小テストやアンケートをWEB配信でき、さらに
回答を蓄積できるので、指導が積み上がっていると感じます。
■ アメリカの生徒との交流学習を通じて、異文化に触れ、理解を深め、生徒の興味・関心を高めることができ
ました。そして英語で自分の考えを伝える表現力や相手の考えを聞き取って理解する英語力を身につけるこ
とができました。その結果、1年間のGTECスコアも上昇しました。
■ 授業におけるICT活用は、高校はコンテンツがまだ
不足しているというのが現状です。既存のサイトや、
Classiの「授業用教材」「問題バンク」機能をうまく活
用しながら、生徒の興味・関心を高める授業をしてい
今
後
向
きたいと思います。ICTを使っても使わなくても教師の
指導力が問われるのは同じです。ICTに依存するので
はなく、教師の弱点を補い、生徒の活動を活発にする
ための補助としてICTを活用していきたいと思います。
■ 一方で、ICTを活用することで生徒たちに身につく力
もあれば、失われる力もあります。例えば、電子辞書と
紙の辞書の違い、それぞれの利点は、デジタルネイティ
ブの生徒たちには分かりません。こうした点は、教師
が補ってあげる必要があると思います。
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お話を伺った 米田 謙三先生 (情報管理室長、国際交流室長、特進Ⅱ類コース主任)