ICTを活用することで、「学校だからこそ 出来る教育」を一層強化する

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ICTを活用することで、「学校だからこそ
出来る教育」を一層強化する
私立
桜丘中学・高等学校 中高一貫校
共学
学科:普通科/特待クラス・特進クラス・CL(クリエイティブリーダーズ)クラス (2015年度新設)
規模: 高校1学年約340名(2014年度)
主な進路状況: 国公立大23名、早慶上理27名、GMARCH107名など(2014年度入試)
取り組み
● ICTを活用して、生徒の学習履歴、弱点分野の把握、指導、理解度確認の
サイクルを回す
● 課外活動でもICTを活用することで、生徒の主体性を高める
取り組みの
背景
■ 情報教育に以前から力を入れており、ICTを活用することで教育のさらなる発展を模索
■ ICTを活用することで、学校の授業スタイルを改善できる可能性があると感じ、2013年度に校内無線 LANを整備し、専任教員全員にiPadを導入、2014年度からは新入生全員にiPadを導入
ようということで、決定。「私立なのだから、 教科の特性に合わせてICTを効果
的に活用
まずはチャレンジしてみよう」と、2013年度
に導入する方向で動き、環境を整備してい きました。
ICT環境整備の経緯
──── ICTを学校に導入の背景をお教えください。
先生 女子高時代に情報システム科があり、ICT
の取り組みは行っていました。パソコンも学
内にたくさん設置されており、学校教育の
柱の一つとして情報教育がありましたが、
指導としては停滞している状態でした。
校内無線LANの設置、専任教員全員へのiPad配布
持ち運び用プロジェクター20台を用意
【2014年度】
2010年のiPad発売があり、これを学校の
新中1・高1の新入生へのiPad配布
教育活動に活かすことで、生徒の「創造」す
【2015年度】
る力を広げられそうだと感じていました。
新中1・中2、新高1・高2へiPad活用学年の拡大
2012年度に、今後の社会環境の変化や
求められる人材要件などを踏まえ、「教職 1
【2013年度】 員全員&新入生全員iPad導入」をやってみ 各教室で設置出来るよう、プロジェクター台数を増やす
先生 また数学では、事前に授業で扱う問題を配
──── 具体的な授業での実践例をお教えください。
信し、生徒にはiPad上で確認してもらってい
先生 授業での取り組みですが、全員で統一して
ます。授業では問題および板書に必要なグ
これをやろうというよりは、担当教員が裁量
ラフをプロジェクターでホワイトボードに投影
をもって、それぞれの授業や教科の特性に
し、解説を加えながら板書を書き足していま
合わせて、ICT活用を工夫しています。 す。生徒は自身がやりやすい方法で、タブ
レットに直接タッチペンでメモを書きこんだり、
各教科でのICT活用実践例
紙のノートにメモを取っています。
1)国語 プロジェクターや授業支援アプリを活用した授業
2)英語 デジタル教科書を活用した授業
3)数学 プロジェクターを活用した授業
4)理科 実験動画などの素材を活用した授業
例えば、国語では事前に提示する教材は
すべてデータ化しています。以前は板書す
る時間に15-20分費やしていましたが、現
在はプロジェクターで提示して補足点だけを
記入する方式を取っています。板書に費や
5)社会 Google mapなどの素材を活用した授業
▲ ICTを利用した授業風景③(数学)
していた時間を、生徒たちに課題を与え、ペ
アワークやグループワークをさせ、考え・発信
する時間として活用できています。生徒たち
は知恵を出し合いながら、こちらが想像しな
い解答を出してくることもあり、これまでの授
業では引き出し切れなかった力が出てきてい
ることを感じます。
生徒の声
・授業中に分からない単語など、すぐに調べることがで
きるので、授業の理解がより深まっている印象を持って
います。
・iPadに全ての教科の情報があるので、複数の教科を
勉強しやすくなりました。
・先生から共有されたデータがiPadを開けば、確認する
ことができるので紛失や忘れることもなく、便利だと感じ
ています。 ──── 各先生方の取り組みの工夫など、共有する場
など はありますでしょうか。
先生 月に1回程度、職員会議でiPadを使った教
育活動についての報告会を行っております。
数名に2,3分程度で簡単な事例を紹介して
もらい、教科の話だけでなく、HRや部活など
での取り組みも積極的に発信してもらってい
▲ ICTを利用した授業風景①(国語)
2
▲ ICTを利用した授業風景②(国語)
ます。
▲ 職員会議での報告の様子
生徒の学習履歴、弱点、理解度を
把握し、即座に指導へ還元
──── 授業以外での取り組みがありましたら、お教
えください。
先生 これまで夏期講習に関しては、参加する生
▲ 夏期講習の取り組み流れ
徒のデータを分析したり、授業前後のフィー
ドバックを実施できていませんでした。2014
年度にトライアルになりますが、 「学校だか
らこそ出来る夏期講習」にするため、講習前
にデータを分析して生徒の状況を把握し、講
習の中ではClassiのWebテスト・アンケート機
能を使い、生徒の理解度をタイムリーに把握
することで講習内容のより一層の充実をはか
りました。
【PLAN】スタディーサポートと定期考査から、講習受講者
の弱点分野を分析し、注意が必要な項目や生徒を洗い
出す ↓ 【DO】講習初回に確認テストをClassiを利用して実施。生
徒の理解度を確認。毎回の講習後に理解度アンケート
▲Classi「Webテスト」画面
を行い、生徒の状況を把握し、次回授業を設計 ↓ 【SEE】講習最終日に再び、確認テストを実施。生徒の学
習内容の定着度を検証 スタディーサポートの分野
別成績を分析し、夏期講
習選択者の弱点を把握
▲ スタディサポートから見える分析結果
▲Classi「Webテスト」画面
3
HRや行事にも活かすことで、生徒
が創造し、活躍する学校へ
──── 生徒の自主性を信頼し、比較的自由にiPad
を活用させていると伺いました。どのような指導を生徒に
されていらっしゃいますか。
先生 セキュリティに関しては、MDM(モバイルデ
──── HRや行事など、様々な場面でICTの利用が進
んだと伺っています。どのように活用されていらっしゃいま
すか。
先生 HRや行事での活用に関しては、我々教員
が想像する以上の活用を生徒が提示してく
れます。
例えば、9月に文化祭が行われますが、ク
ラスの展示や模擬店を出せる権利があり、コ
ンペ形式で決定していきます。 お化け屋敷 はその中でも人気のある出しものなのです が、権利を勝ち取ったクラスが作った「お化 け屋敷予告編Movie」は非常によく出来てい バイスマネジメント)を導入し、管理していま
す。MDMの管理下から外れた場合は、厳し
い罰則を設けています。それ以外は比較的
自由度を高く、利用できる状態を作っていま
す。タブレットを渡す際に、「今、タブレットを 持って学習しているキミたちは、多くの学校 から注目されている。キミたちの活用次第で、 自分だけでなく、多くの生徒たちの活用に影 響するよ」と話しています。また、iPadの使用
上の規則を伝えるだけでなく、「行動指針」冊
子を作り、活用してもらうことで生徒の参画
意識を高める工夫をしています。 ました。当日もお化け屋敷に入る前に、予告 編Movieを流し、入っていただくようにしまし た。恐怖心が増した状態になりますので、例 年以上の盛り上がりを見せていました。 行事一つとっても、こちらが指示しなくても
生徒たちはiPadを活用し、自ら模索、創造し ていきます。
──── HR運営で先生方が工夫してご活用されてい
る場面はございますか。
先生 ホームルームの時間はプロジェクターで映
して指導したり、クラスでの決めごとなどもク
ラスのWeb上のグループを使って、意見を出
▲ iPad開封の儀の様子
し合ったり、アンケート機能を使って係が集
約したりする機会が増えました。
クラス通信もPDF化して送っているので、印
刷する手間が省け、月に1回くらいの更新頻
度だったものが2回くらいに増えています。 ホームルーム単位での活動にiPadは欠か
せなくなりました。クラスの団結も高まってい
るように感じています。
▲ 行動指針
4
入試業務、学校説明会でのICT活
用
──── 入試業務や学校説明会の場でもiPad活用が
進んでいると伺いました。
先生 ファイルメーカーで自作した入試システムをタ
ブレットに導入しました。入試当日、以前は本 部のホワイトボードに一括管理していましたが、 システムを導入することで、教員の入室管理、 生徒の出席確認、各部屋の申し送り事項をタ イムリーに共有できるようになりました。 ▲ 学校作成の入試システム
本校では合格発表日には得点開示を行って
います。以前は、紙の束を持って口頭で伝え
ていましたが、タブレットを導入したことですぐ
に保護者、受験生に見せることができるように
なりました。また、紙の紛失のリスクも減りまし
た。入試は学校・教員全体で行うものであるた め、全ての教員がタブレットを使う絶好の機会
となりました。
5
▲ 合格発表当日の様子
先生、生徒それぞれの「創造」する力が高まっている
成
果
■ これまでの教育環境では引き出せなかった生徒の力が引き出せるようになりました。特に自ら「創造」していく
力、共に「試行錯誤」する力を引き出せているように感じています。
■ 先生方の授業準備や進め方、ホームルームの運営の方法も大きく変わってきています。これまでのやってきた
ことを見直し、新たな方法を模索する先生が増えてきています。
今
後
■ 生徒が主体的に色々な活動に関わっていける
向
ます。生徒に「何をやりたい?」とか、「こう使い
ように、教師も意識して高めていきたいと思い
たいと思っているけれど、他にはない?」など意
識的に生徒へ問いかけを続けていくことで、生
徒がゲストからホストへと変わり、学校が活性化
すると考えています。
お話を伺った 品田健先生
6
■ 「学びの意義」は不変のものです。学びの効果
をさらに上げていくために、タブレットを使用(手
段として)しています。我々の使命の一つは、生
徒が持っている能力を最大限発揮できる環境を
構築していくことです。チャレンジ精神を忘れず、
教員・生徒一体となって、さらに前進していきま
す。
お話を伺った 本田和義先生(左) 内田和也先生(右)