高耐摩耗鋳鉄の開発 - 栃木県産業技術センター

平成26年度共同研究
材料分野
高耐摩耗鋳鉄の開発
担当部所
共同研究者
: 栃木県産業技術センター
: 有限会社村上鋳造所
材料技術部
背景
・
粉砕機部品のような耐摩耗性が要求される製品には、白鋳鉄に合金成分
としてクロムを大量(15%∼30%)に添加した高クロム鋳鉄が主に使用されて
いる。
・ 低周波溶解炉は高周波溶解炉に比べ、溶解能力が劣る等の理由から、連
続溶解する場合は、炉に前回の溶湯の一部を残して、次の溶解に使用す
る方法が取られている。そのため、成分が大きく異なる白鋳鉄製品と高クロ
ム鋳鉄製品をひとつの炉で連続生産することはできない。
図1 ブルーリング
・ 低周波溶解炉でも製造可能な添加元素の少ない、高Cr鋳鉄に匹敵するよ
うな耐摩耗性を持つ鋳鉄の開発が必要である。
図2 ローラー
図3 粉砕機の模式図
研究目標と結果
研究目標
●鋳放しで高耐摩耗性及び高硬度を有する基地を得るためのCuの最適添加量を見出す。
●鋳放しの高クロム鋳鉄に相当するHB520以上のブリネル硬度を得る。
●摩耗試験での重量減少量が鋳放しの高クロム鋳鉄と同程度を目指す。
実施内容
② 金属組織試験
① 配合
高周波溶解炉では、銅の添加量に関わらず白鋳鉄の金属組織が
得られた。
白鋳鉄の配合に銅を添加し、硬さや耐摩耗性の向上を図る。
表1 配合表 (wt%)
C
Si
Mn
Cr
Cu
高クロム鋳鉄
3.5
0.7
0.3
20.0
0
白鋳鉄
3.5
0.7
0.3
1.8
0
本開発材
3.5
0.7
0.3
1.8
0.5∼3.0
白鋳鉄
白鋳鉄+1.9Cu
図4 金属組織
➂ ブリネル硬さ試験
④ 摩耗試験
高周波溶解炉は銅を添加する
ことにより、ブリネル硬度は向上
した。
高周波溶解炉では、銅を0.9∼
2.5wt%添加することにより高クロ
ム鋳鉄と同等以上の耐摩耗性が
得られた。
高周波溶解炉では、銅を1.3∼
3.0wt%添加することにより目標値
を超える硬さを得た。
図5 銅の添加量と
ブリネル硬度
図6 銅の添加量と摩耗試験
による重量減少量
まとめ
●白鋳鉄の配合にCuを1.3∼2.5wt%添加したものを高周波溶解炉で鋳造したところ、鋳放しの高Cr鋳鉄に
相当するブリネル硬さや耐摩耗性を持つ白鋳鉄を得ることができた。
●白鋳鉄の配合にCuを適量添加したものを低周波溶解炉で鋳造したところ、鋳放しの高Cr鋳鉄に相当す
るブリネル硬さや耐摩耗性を持つ白鋳鉄を得ることができた。
御来場の皆様へ
問い合わせ先:栃木県産業技術センター 材料技術部 TEL 028(670)3397
耐衝撃性の要求が低い安価な耐摩耗性鋳鉄として利用可能です。
低周波溶解炉でも製造可能な低合金耐摩耗性鋳鉄として実用化が期待されます。
Industrial Technology Center of Tochigi Prefecture