水熱処理による重金属フリー無機顔料の合成

材料分野
平成26年度重点研究
水熱処理による重金属フリー無機顔料の合成
担当部所
:
栃木県産業技術センター
材料技術部
背景
ゼオライトA(LTA型構造)
重金属を含まない青色顔料であるウルトラマリンは、工
業的には焼結法で製造されているものの硫黄系のガスの
排出、投入エネルギー量が大きいことが課題となっている。
ウルトラマリンはソーダライト構造をしており、βケージ
(ソーダライトケージ)に入った硫化物が発色団となってい
る。カオリナイト、ゼオライトA、ゼオライトXを水熱処理する
とソーダライトが容易に生成することを利用して、温和な
条件での硫黄含有アルミノケイ酸塩系顔料の作製を検討
した。
水熱処理による
硫黄(発色団)の導入
+ 硫黄
水熱処理
(骨格構造図は
International Zeolite Association ウェブサイトより引用)
S3-
S3-
S3-
S3-
ウルトラマリン
(ソーダライト構造)
研究目標と結果
研究目標
●硫黄含有アルミノケイ酸塩顔料を県産資源である関白カオリン、ソーダライトケージを持つゼオライトA,X
を原料として用い、温和な水熱処理によって環境負荷の小さい作製方法を実現する。
実施内容
① 硫黄含有アルミノケイ酸塩系顔料合成
・Na型ゼオライトA
・関白カオリン
・Na型低シリカゼオライトX
出発原料
・硫化ナトリウム水溶液:Na2S aq.
水熱処理
合成温度:120℃,時間:∼48h
ウルトラマリン
前駆体
② 各出発原料から得られた顔料
それぞれの出発原料を水熱処理することでソーダラ
イト構造が生成することをXRD測定により確認した。さ
らに水熱処理条件、得られた前駆体の加熱温度を検
討し、発色の良い条件の探索を行った。
出発原料によって粒形・粒径の異なる試料が得られ
た。またゼオライトを原料としたものは粒径が揃ってい
るため分散性が良い可能性がある。
硫黄系ガス(H2S,SOx),
二酸化炭素の発生なし。
投入エネルギー大幅減少
1μm
500nm
1μm
加熱
生成物
・XRD測定:構造
・SEM観察:形態観察
・分光測色:色の観察
ゼオライトA
関白カオリン
ゼオライトX
各出発原料から得られた青色顔料とそのSEM写真
まとめ
●ゼオライトA、関白カオリン、ゼオライトXを原料として比較的温和な水熱処理条件で反応させ、焼成する
ことで青色顔料を得ることができた。
●特にゼオライトAからは市販のウルトラマリンの約85%のb*の値を持つものが得られた。
御来場の皆様へ
問い合わせ先:栃木県産業技術センター 材料技術部 TEL 028(670)3397
排出ガスのない水熱処理を用いて、無機顔料の作製が可能です。
ゼオライトを利用した新技術・新製品開発を御検討の際には、お気軽に御相談ください。
Industrial Technology Center of Tochigi Prefecture