不連続格子による3次元差分法を 用いた波形合成

972-1043
不連続格子による3次元差分法を
用いた波形合成(その1)
青井 真○・藤原 広行(防災科学技術研究所)
3D Finite Difference Method Using Discontinuous Grids (1)
Shin AOI○ and Hiroyuki Fujiwara
(National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention)
【はじめに】 電子計算機の性能の向上には目を見張るべきものがあり、今やかなり現実
的なモデルを用いて関東平野やロサンジェルスなどの大規模な平野における3次元波動
場のシミュレーションが可能になりつつある。しかしながら、ごく表層部の低速度の層に
関しては波形に大きな影響をおよぼすにも関わらず、導入することができないのが現状で
ある。
均質な大きさの格子を用いる限り格子サイズは計算すべき最低波長により決定される
ため、低速度の層がごく表層にのみ存在する場合でも計算領域全体を小さな格子に分割せ
ざるを得ない。3次元差分法の場合には、計算可能な周波数をN倍にする、あるいは表層
に地震波速度が N 分の 1 の層を導入するため(メッシュサイズを N 分の 1 にするため)
には、メモリーがNの3乗、計算時間がNの4乗の割合で多く必要となる。従って、計算
機能力の向上のみに頼っていては自ずと限界がある。地表に近いほど極端に地震波速度が
遅い構造を取り扱うこと以外に、差分法で波動場を計算する場合、
・不安定になりがちな自由境界条件を地表で課し、かつ地表での波形に興味がある
(場合が多い)、
・食い違い格子を用いる場合、各成分の波形が空間的に半格子ずれた位置でしか求め
られない、
・表面波は地表近くにエネルギーが集中し、かつ、S波速度より位相速度が遅い、
・地表付近の薄い層などの不規則地下構造をモデル化する必要がある、
などの理由から、地表付近ではできるだけ細かい格子を用いることが望ましい。一方で、
地震波速度は深くなるにつれ急激に速くなり、地震波の波長が長くなるため、均質な格子
を用いると計算領域の大部分では必要以上に細かく格子(例えば、1波長に対して 50-100
格子以上)を切っていることになる。
このような問題を回避するためには地震波速度構造に合わせた不均質な格子を用いる
必要がある。不均質な格子には、
・適当な写像なより格子を変形させる方法(連続な格子)、
・格子を間引いたり挿入することにより格子数を変化させる方法(不連続な格子)、
の二つの方法がある。前者は主に深さ方向にのみ格子サイズの最適化を計ることが出来る
のに対し、後者は深さ方向・水平方向ともに格子サイズの最適化を行うことができるため、
我々は不連続格子を用る。
【手法】 細かい格子を用いる領域Iと粗い格子(ここでは3倍の大きさ)を用いる領域
IIを考える。それぞれの領域では食い違い格子(例えば、Graves (1996, BSSA))によ
る標準的な差分法を用いる。空間2次精度の差分を用いる場合、領域I最下行および領域
II最上行の変数が通常の差分では求められないため、これらの2行の格子上の変数に関
しては他方の領域の変数から内挿により計算する。内挿によって求める必要のある変数は
格子配列によって異なる。
【計算例】 本手法(図 a)の精度を検証するために、均質な格子を用いた差分法(図 b)
および離散化波数法(図 c)による結果と比較する。水平成層構造(表1)および点震源
(表2)による各手法の計算結果(図)から分かるように本手法は十分な精度がある。ま
た本例(領域I・IIの厚さはそれぞれ3km・24km。各領域での格子サイズはそれ
ぞれ 100m、300m)の場合、均質な格子を用いる場合と比較して計算時間・記憶容量と
もに約 7.5 分の一程度の大幅な節約になる。
表1: 計算に用いた構造
表2: 計算に用いた震源
Vp[km/s]Vs[km/s] dencity[g/cm3] thickness[km]
1st Layer
3.0
2.0
1.0
2.0
2nd Layer
4.5
3.0
2.0
∞
震源位置 x=-3.0[km] y=0.0[km] z=6.4[km]
時間関数 ricker wavelet ( fc = 0.75[Hz] )
力の向き single force ( x-direction )
図:原点(自由境界上)における速度波形(x 成分)。各トレースは a)不均質な格子を
用いた差分法(今回提案した手法)、b)均質な格子を用いた差分法、c) 離散化波数法による。