自己肯定感の高い子どもを育てる大人の関わり - ogori

PTA 新聞 2014.7
自己肯定感の高い子どもを育てる大人の関わり
校長 松枝昭生
6月3日、内閣府は、毎年実施している「子ども・若者白書」の平成26
年度版で、日本を含めた七か国(韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フラ
ンス、スウェーデン)の若者を対象とした意識調査の結果を公表しました。
これによると、
「自分自身に満足しているか」という質問に対し、
「そう思う」
「どちらかといえばそう思う」と答えた若者は、日本以外はいずれも 70 %を
超えたのに対し、日本は最も低く、45.8 %でした。また、「自分には長所があ
る」と回答した割合も「アメリカ」が最も高く、「日本」が最も低い結果とな
りました。このことは、日本は諸外国と比べて自己を肯定的に捉えている若
者の割合が低く、自分自身に満足していない状況を示していると言えます。
その結果として、「自分の将来に希望を持っている」と答えた若者が、日本以
外はいずれも 80 %を超えていたのに対し、日本は 61.6 %にとどまっている
のだと考えられます。
これらの調査結果に、昨年度の本校の子どもたちの意識調査を重ねたもの
がこのグラフです。
2014 世界の若者意識調査〔13~29歳の男女青年層(7か国)〕
45.8
日本
61.6
58.5
53.3
大原中
68.9
68.9
71.5
75.0
韓国
86.4
86.0
アメリカ
93.1
91.1
83.1
イギリス
80.9
ドイツ
82.4
82.7
フランス
83.3
74.4
73.5
スウェーデン
0
10
20
30
40
50
60
70
80
89.6
89.8
自分には長所がある
92.3
将来に明るい希望がある
91.4
90.8
90
自分自身に満足している
資料:内閣府
「子ども・若者白書」から
作成者:松枝 昭生
100 %
「自分自身への満足度」「将来への希望」が全国平均より若干高いものの、
本校の子どもたちも例に漏れず、自己をあまり肯定的に捉えていないことが
分かります。
これらの結果は、「家庭や学校、地域が一体となり、若者の成長を支える環
境づくりを進める中で、子どもたちに、自らを肯定的に捉えられる感情を育
む取り組みが必要」であることを示唆していますし、特に毎日子どもたちと
接する親や教師が、もっと子どもに自信を持たせる言葉かけをしていくこと
の大切さを示していると言えます。
では、自己肯定感の高い子どもを育てる大人の関わりとは一体どのようなも
のなのでしょうか。私は次の三つに集約されると思っています。一つは「無条
..
件の受容」・・・ 間違った行動は叱ってもいいのですが、存在は無条件に肯定す
ること。二つには「否定的評価を厳に慎むこと」・・・ 子どもがチャレンジして
いることに対して「どうせ無理よ」ではなく、「やってみれば」と励ましてあ
げること。三つには「その子が持っているよさを見つけられる目を持つこと」
・・・ 欠点よりもたくさんのよさを見つけ、褒めて自信を持たせること。これ
らに尽きるのではないでしょうか。
なかには、他者からの叱責が発奮材料となり、向上心を持って自己を伸ば
していこうとする人間もいるかも知れませんが、私の勝手な感覚では、これ
はむしろ少数派で、子どもでも大人でも人間は、他者からのプラスの評価、
つまり、よさを認め褒められることで、自信を深め更なるモチベーションを
高めて事にあたっていくというのが、多数派ではないかと思うのです。まさ
ゆえん
に「褒め手のいない成功者はいない」と言われる所以もここにあります。欠
点というのは、ただ大ざっぱに見ていても目につくものです。しかし、その
子にしかない「よさ」は、親や教師、地域の大人が注意深く見ようとしなけ
れば見えてはきません。その子のがんばりやよさを認め励ましていく中で、
きっと子どもは自分自身に、誇りや満足をしみじみ感じて成長していくに違
いありません。まさに、「優劣のかなた」の問題なのだと思います。親も教師
も、そんな大人になりたいものです。