テーマ体の不思議 - 栄光ゼミナール

栄光ゼミナール PRESENTS
テーマ
体の不思議
う
あ
じぶん
生まれたときからずっとつき合っている自分の
からだ
みぢか
こんしゅう
じぶん
体。とても身近なものだけど、今 週はその自分
テキスト版
からだ
そぼく
ぎもん
かんが
きんにく
かず
ち
の体について、素 朴な疑 問を考えてみよう。血
あせ
やくわり
ほね
や汗の役割は? 骨や筋肉の数は?
執筆/柳田理科雄 制作/空想科学研究所 提供/栄光ゼミナール
けつえき
からだ
しゅう
じ か ん
1
◆血
液が体を1周する時間
わたし
どうぶつ
からだ
けつえき
なが
なに
私たち動物の体には、
血液が流れている。
いったい何のためだろうか。
生き物の体は
「細胞」
でできている。細胞は1つの直径が100分の1
い
もの
からだ
さいぼう
おお
さいぼう
たいじゅう
ちょっけい
ふん
ちょう こ
㎜くらいの大きさで、体重1㎏あたり1兆個ほどもあり、その1つ1つが
い
生きている。
さいぼう
い
さ ん そ
ようぶん
ひつよう
からだ
細 胞が生きるには、酸 素と養 分が必 要だ。ところが体のほとんどの
さいぼう
からだ
おく
く う き
た
もの
ふ
じ ぶ ん
細 胞は体 の奥にあり、空 気にも食 べ物にも触 れていないから、自分
では酸 素や養 分を取り入れることができない。そこで、血 液が全身を
流れ、肺から取り入れた酸 素や、腸から吸 収した養 分を、体の隅々の
さ ん そ
なが
ようぶん
はい
さいぼう
と
と
い
い
けつえき
さ ん そ
ちょう
きゅうしゅう
ようぶん
ぜんしん
からだ
すみずみ
はこ
細胞まで運んでいる。
けつえき
おく
だ
やくわり
は
しんぞう
て く び
て
血液を送り出すポンプの役割を果たすのが心臓だ。手首の手のひら
側や、首のななめ横に触ると、血管が
「どくん、どくん」と動いているのが
わかる。これは、血液を送り出す心臓の動きが、血管を伝わってきてい
るのだ。
がわ
くび
よこ
さわ
けつえき
しんぞう
で
けっかん
おく
だ
けつえき
うご
しんぞう
はい
うご
い
けっかん
さ ん そ
う
つた
と
しんぞう
かえ
心臓から出た血液は、まず肺へ行って酸素を受け取り、心臓へ帰っ
じ か ん
うんどう
しんぞう
で
けつえき
はい
さんそ
う
心 臓から出た血 液は、肺 で酸 素を受 け
と
しんぞう
ぜんしん
おく
しんぞう
かえ
だ
取って心臓へ。そして全身に送り出され、
さいぼう
さんそ
くば
細胞に酸素を配って、心臓に帰るのだ
びょう
てくる。これにかかる時間は、とくに運動をしていないときは、
10秒から
12秒だ。
びょう
つぎ
しんぞう
かえ
けつえき
ぜんしん
おく
だ
さいぼう
さ ん そ
次に、心臓に帰ってきた血液は、全身に送り出されて、細胞に酸素を
配って、心臓に帰ってくる。
これには48秒から50秒かかる。
また、腸で
養分をもらい、
2周目で全身の細胞に養分を配る。
つまり、血液は、
およ
くば
しんぞう
かえ
ようぶん
びょう
しゅうめ
ぷん
ぜんしん
ぜんしん
さいぼう
ようぶん
びょう
ちょう
くば
けつえき
しゅう
そ1分で全身を1周しているのだ。
今日の1日1科学
けつえき
ぜんしん
ぷん
しゅう
血液は、全身を1分で1周する
た
もの
えいよう
2
◆食
べ物はどうやって栄養になる?
わたし
どうぶつ
た
もの
た
い
た
もの
私たち動物は、食べ物を食べて生きている。食べ物は、
どのようにして
からだ
と
い
体に取り入れられるのだろうか。
食 べ物には、エネルギー源になる
「デンプン」
と
「脂 肪」
、体を作る
た
もの
げん
ざいりょう
しつ
ふく
ぜんしん
し ぼ う
からだ
ちょうし
からだ
つく
ととの
材料になる
「タンパク質」と
「ミネラル」、体の調子を整える
「ビタミン」
が
含まれる。これらが、全身の細胞に届くには、血管に入る必要がある。
さいぼう
とど
けっかん
はい
ひつよう
1
し ぼ う
けっかん
けっかん
に
はたら
かん
はい
また、脂 肪だけは血 管ではなく、血 管に似た働きをするリンパ管に入
る。
た
もの
おお
けっかん
ところが、食べ物は大きなかたまりなので、そのままでは血管にもリ
かん
はい
くち
い
じゅうにしちょう
しょうちょう
はこ
ンパ管にも入らない。そこで、口→胃→十二指腸→小腸と運ばれるうち
こま
しょうか
しょうちょう
に、細かくバラバラにされていく。これを
「消化」
という。そして小腸から、
けっかん
かん
と
い
きゅうしゅう
血管とリンパ管のなかに取り入れられる。これを
「吸収」
という。
しょうか
きゅうしゅう
お
だいちょう
はこ
すいぶん
消化と吸収が終わり、いらなくなったものは、大腸に運ばれて、水分
きゅうしゅう
が吸収される。こうして、ほかほかウンチのできあがり!
じ か ん
ちょうし
ひと
じ か ん
これにかかる時 間は、おなかの調 子がいい人 で24時 間から36
じ か ん
た
はや
にち
からだ
時間。つまり、食べたものは、いちばん早くて1日でウンチになって体の
外に出てくるということだ。
そと
で
今日の1日1科学
た
くち
はや
にち
そと
で
しょうちょう
食べたものは、早ければ1日で外に出てくる
にんげん
あせ
はい
た
もの
い
じゅうにしちょう
口から入った食べ物は、胃→十二指腸→
だいちょう
はこ
にち
小 腸 →大腸へと運ばれ、ほぼ1日でウ
ンチになる
り ゆ う
3
◆人
間が汗をかく理由
あつ
あせ
にんげん
あせ
暑いときや、
スポーツをしたときは、汗をかく。人間は、
なぜ汗をかくの
だろうか。
い
もの
からだ
こ う そ
ぶっしつ
こきゅう
しょうか
い
生き物の体のなかでは、「酵 素」
という物 質が、呼 吸や消 化など生
きるのに必要な活動を推し進めている。酵素は、体温に近い36℃から
ひつよう
かつどう
かっぱつ
お
すす
こ う そ
はたら
のう
たいおん
たいおん
ちか
お ん ど
はたら
ぎゃく
37℃ぐらいで活発に働く。また、脳も体温ぐらいの温度でよく働く。逆
たいおん
あ
さ
こ う そ
のう
に、体温が上がりすぎたり、下がりすぎたりすると、酵素や脳がうまく
はたら
いのち
あぶ
にんげん
からだ
たいおん
いってい
働かなくなって、命が危なくなる。このため、人間の体には体温を一定
に保つ仕組みが備わっている。そのうち、体温が上がりすぎるのを防ぐ
のが「汗をかく」
という現象だ。
たも
し
く
そな
たいおん
あせ
あ
ふせ
げんしょう
あせ
すいぶん
あせ
からだ
ひょうめん
みず
じょうはつ
汗はほとんどが水分なので、汗をかくと、体の表面で水が蒸発するこ
とになる。水を蒸発させるには熱が必要だが、逆に水が蒸発すると、ま
わりから熱を奪う。体重40㎏の人が60mL、コップ3分の1ぐらいの汗
みず
ねつ
じょうはつ
うば
ねつ
たいじゅう
たいおん
ひつよう
ぎゃく
みず
ひと
じょうはつ
ぶん
さ
あせ
たいおん
あ
をかくと、体温を1℃下げることができる。こうして、体温が上がるのを
防いで、酵素や脳がうまく働くようにしているのだ。
ふせ
こ う そ
いぬ
ねこ
のう
はたら
あせ
し
く
そな
いぬ
あつ
あ
ふせ
にんげん
あせ
たいおん
ちょうせつ
人 間は、汗をかくことで体 温を調 節して
あせ
やくわり
じゅうよう
いる。汗の役割はとても重要なのだ
犬や猫は、汗をかく仕組みが備わっていない。だから犬などは、熱い
ときは舌を出してハアハア息をしている。これも、体温が上がるのを防ぐ
した
だ
いき
たいおん
ためだ。
今日の1日1科学
あせ
たいおん
あ
ふせ
汗をかくのは体温が上がるのを防ぐため
で
4
◆なぜアカが出
るの?
ふ
ろ
はい
で
お風呂に入ると、
アカが出る。
これはなぜだろう。
ひ
ふ
ひょうめん
お
アカは、タオルなどでこすることによって、皮膚の表面がはがれ落ち
たものだ。つまり、私たちは、お風呂で皮膚をごしごしこすって表面をは
わたし
ふ
ろ
ひ
ふ
ひょうめん
2
おと
だいじょうぶ
ぎ落していることになるが、そんなことをして大丈夫なのだろうか。
人間は、体をいつも新しく作り変えながら生きている。体を作る物質
にんげん
からだ
あたら
つく
げつ
か
い
い
か
からだ
いま
つく
ぶっしつ
げつ ま え
ちが
は、およそ3ヵ月ですべて入れ替わる。今のあなたは、3ヵ月前とは違
ぶっしつ
おな
しょうがっこう
ねんまえ
せ い と
う物質でできているのだ。これは、同じ小学校でも、6年前とは生徒が
すっかり入れ替わるのに似ている。このように、体を新しくし続けることを
い
か
に
からだ
あたら
つづ
しんちんたいしゃ
「新陳代謝」
という。
アカが出るのも、新 陳代謝の1つだ。皮 膚は、体の表 面の深さ0.
1
で
しんちんたいしゃ
ば し ょ
ひ
つく
あたら
ひ
ふ
からだ
ふ
ひょうめん
つぎつぎ
ふか
つく
まえ
㎜~0.
2㎜の場所で作られる。新しい皮膚は、次々に作られるので、前
つく
ひ
ふ
うえ
お
あ
あたら
で
かくしつそう
つく
に作られた皮膚は、どんどん上に押し上げられる。こうして、新しく作ら
れた皮膚は、およそ1ヵ月半で表面に出てくる。それは
「角質層」
と呼ば
ひ
ふ
げつ は ん
ほ
ひょうめん
し ぜ ん
よ
お
れ、放っておいても自然にはがれ落ちる。
で
ひ
ふ
ふる
にんげん
あたら
ひ
ふ
つく
新しい皮 膚が作られるからこそ、アカが
で
ふ ろ
じぶん
くろう
出る。お風呂では、自分のアカに
「ご苦労
もしアカが出なかったら、皮 膚はいつも古いままになり、そのうち
全体がボロボロになってしまうだろう。人間の皮膚は、アカが出るおか
ぜんたい
あたら
ひ
ふ
で
い
さん」
と言ってあげよう
たも
げで、いつも新しく保たれているのだ。
今日の1日1科学
で
ひ
ふ
あたら
たも
アカが出るのは、皮膚を新しく保つため
しんちょう
の
5
◆身
長はいつ伸びるのか?
こ
しんちょう
の
お と な
しんちょう
子どものうちは、
どんどん身長が伸びるよね。
でも、大人になると身長
の
は伸びなくなる。
いったいなぜだろうか。
動物は、体が小さいと、他 の動物に食べられやすくなる。だが、体が
どうぶつ
からだ
おお
ちい
ほか
どうぶつ
た
からだ
い
ひつよう
大きすぎると、生きるのにたくさんのエネルギーが必 要になる。このた
どうぶつ
い
つ ご う
おお
からだ
も
め、それぞれの動 物は、生きるのに都 合のいい大きさの体を持ってい
る。また、生まれたときから大人と同じ大きさだと、卵や子どもを産むの
う
お と な
たいへん
どうぶつ
おな
おお
ちい
たまご
からだ
こ
う
う
おお
が大変になる。だから、動物は小さな体で生まれて、ちょうどいい大き
さになると、それ以上成長しなくなる。
身長が伸びるのは、骨が伸びるからだ。でも、骨は全体がどこも同じ
い じ ょ う せいちょう
しんちょう
の
ほね
の
の
ほね
こ
ほね
りょうはし
ぜんたい
やわ
おな
なんこつ
ように伸びるのではない。子どもの骨の両端は柔らかい軟骨になってい
て、軟骨は伸びる能力を持っている。だから、骨の両端だけが伸びるの
なんこつ
の
お と な
ほね
のうりょく
りょうはし
も
ほね
なんこつ
かた
りょうはし
ほね
の
の
だ。大人の骨の両端は軟骨ではなく硬い骨になっているので、伸びるこ
とはない。
軟骨が伸びるには、骨の材料になるカルシウムと、
カルシウムの吸収
なんこつ
の
ほね
ざいりょう
たす
のう
きゅうしゅう
だ
せいちょう
ひつよう
を助けるビタミンD、そして脳 から出される成 長ホルモンが必 要だ。
成長ホルモンが出るのは、
寝ているあいだだ。
身長を伸ばしたい人は、
よ
せいちょう
で
ね
しんちょう
ね
ふく
の
ひと
ぼ
く寝よう。
また、
ビタミンDがたくさん含まれる、
しらす干し・サケ・イワシ・
サンマには、
カルシウムもたくさん含まれるから、大きくなりたい人には
最強の食べ物だ。
ふく
さいきょう
た
もの
おお
ひと
おお
ね
大きくなるためには、たくさん寝よう。そ
ぼ
や
さけ
せっきょくてき
して、しらす干しや焼き鮭 なども積 極的
た
に食べよう
今日の1日1科学
しんちょう
ね
の
身長は、寝ているあいだに伸びる
3
にんげん
ほね
なんぼん
6
◆人
間の骨は何本?
にんげん
うご
ほね
きんにく
かた
ほね
きんにく
人 間が動けるのは、骨と筋肉があるからだ。硬い骨についた筋肉が
ちぢ
て あ し
うご
せ ぼ ね
ま
にんげん
からだ
縮むことで、手 足を動かしたり、背 骨を曲げたりしている。人 間の体に
は、
骨や、
それを動かす筋肉が何本あるのだろう?
ほね
うご
うで
きんにく
かた
なんぼん
ひじ
ぽん
ほね
ひじ
て く び
へいこう
たとえば腕は、肩から肘までが1本の骨で、肘から手首までが平行
に並んだ2本の骨でできている。背骨は、
臼のような形をした短い骨が、
なら
ほん
ほね
せ ぼ ね
ほん
あたま
うす
こ
かたち
みじか
ほね
ほね
32~34本つながっている。頭は23個の骨でできている。
かぞ
にんげん
からだ
ほん
ほね
このように数えていくと、人間の体にはおよそ200本の骨がある。こ
れに400本の筋肉がついて、体を動かしているのだ。筋肉は、ロボット
ほん
きんにく
からだ
うご
きんにく
にんげん
うご
でいえばモーターのようなもの。人間にそっくりな動きをするロボット・
さいしんがた
こ
にんげん
ほん
アシモの最新型さえ、ついているモーターは57個だ。人間は200本の
骨と、それを動かす400本の筋肉を持っているから、ロボットよりはる
ほね
うご
ほん
ふくざつ
きんにく
も
うご
かになめらかで複雑な動きができる。
わたし
今日の1日1科学
にんげん
ほん
からだ
ほん
ほね
私たちの体には200本もの骨がある。そ
うご
んなにたくさんあるから、いろんな動きが
ほね
人間には200本の骨がある
やなぎた り
できるのだ
か
お
へんしゅう こ う き
柳田理科雄の編集後記
い
もの
からだ
ほんとう
ふ
し
ぎ
さいぼう
ようぶん
さんそ
はこ
けっかん
た
生き物の体は、本当に不思議です。細胞に養分と酸素を運ぶために血管があり、食べ
もの
しょうか
い
ちょう
たいおん
あ
ふせ
あせ
物を消化するために胃や腸があり、
体温が上がりすぎせるのを防ぐために汗をかきます。
だれ
せっけい
かがくてき
かんが
まるで、誰かが設計したかのように、
うまくできていますよね。でも、科学的に考えれば、
こ
しんか
けっか
い
もの
う
べんり
し
く
も
もの
れは進化の結果。いろんな生き物が生まれ、
そのなかで便利な仕組みを持つ者たちが
い
のこ
ちきゅう
い
もの
う
おくねん わたし
からだ
生き残ってきたわけです。地球に生き物が生まれてから35億年。私たちの体のなかに
れきし
きざ
やなぎた
は、
その歴史が刻まれているといえるでしょう。
(柳田)
4