熱量と水分量から参照できる 「中心静脈栄養の処方提案一覧表」 ∼医療法人 医仁会 武田総合病院 薬局における取組み∼ 武田総合病院の薬局は、長年病棟活動に注力し、日頃から医師と処方 設計などについて活発な意見交換を行っています。特に輸液処方の考 え方や設計・内容に関しては、医薬品適正使用の観点から繰り返し医師 に相談し、必要な熱量と水分量から輸液処方を検索できる『中心静脈 栄養の処方提案一覧表』を作成、運用されています。作成の経緯や目 的、特徴、活用法などについて、薬局長の馬瀬久宜先生に伺いました。 武田総合病院薬局 薬剤師の皆さん (2015年4月撮影) 第三者にもわかるよう「数値化」して 結果を提示することが大切 はじめに、薬局の方針と注力され ている取組みをお教えください。 馬瀬 「結果を出す」 「間違えない」 「努力する」 という想いに基づき、① 環 形で示すことが大切です。病棟業務 の 実施率 や調剤におけるインシデン ト・アクシデントの 減少率 などを数値 で提示しています。 熱量と水分量から輸液処方を 参照できる一覧表を提案 シンプルな処方となるよう 薬剤の組合せを熟慮 輸液メニュー表の特徴や、作成 上のポイントをお教えください。 馬瀬 「通常版」 と、水分制限が必要 な腎不全患者さん用の「腎不全版」の 境改善 ② 病棟業務の推進 ③ 安全 『中心静脈栄養の処方提案一覧 2種類を作成しました。両バージョンとも 対策 ④ 購入管理 ⑤ 教育、 の5本柱を 表 』は、 どのような経緯で作成された に熱量(kcal) を縦軸、水分量(mL) を 据えて業務の充実を図っています。 のでしょうか。 横軸にとり、 それぞれの数値を概ね200 特に注力しているのは病棟業務で、 馬瀬 『中心静脈栄養の処方提案一 ごとに区分したマトリックス図としました 「全患者さんに関わりたい」 という薬局 覧表』 ( 以下、輸液メニュー表) も数値 (図表) 。 また、 医師の処方の制約となら スタッフの熱意もあり、 薬剤管理指導業 化・視覚化の一環として、医師と意見 ないように、表のタイトルは「処方提案」 務の実施率100%を目指して取り組ん を交換しながら作成し、2015年3月に と記載しています。 でいます。 完成しました。 作成にあたり、主に次の点を工夫し 業務における結果判定は、数値化 輸液メニュー表作成にあたり、武田 ました。 や視覚化など、第三者が見てわかる 病院グループ栄養科で使用している 「院内食事箋規約」がヒントとなりまし た。 「院内食事箋規約」は食種(一般 食と治療食) から熱量などの栄養量を 一覧できるようになっており、中心静脈 栄養も同様の一覧表にできないかと以 前から考えていました。 研修医との会話を契機に試行錯誤 を重ねて、 患者さんの病態に応じて必要 な 熱量 と 水分量 から輸液メニュー まぜ 薬局長 馬瀬 久宜 先生 (処方) を参照できる一覧表の形にまと め上げ、 院内での配布に至っています。 Ⅰ 調製をスムーズかつ正確に行 えるよう、処方の薬剤アイテム数 を絞る。 Ⅱ 汎用性の高い糖液をベースに、 可能な限りシンプルでバランス のよい処方を目指す。 Ⅲ 調製時に輸液を容器から 抜く 作業が発生しない処方設計と する。 Ⅳ 熱量及び水分量の目盛りと、実 数値との誤差を最小限(通常 図表 中心静脈栄養の処方提案一覧表 (輸液メニュー表) 腎不全版 通常版 処方を表記 Na及びKの濃度、 NPC/N、 ブドウ糖の 含有量を表記 水分量を増量する際、単純にアイテム数を 増やすのではなく、できるだけ少ないアイ テム数となるよう、薬剤の組合せを工夫 縦軸に熱量、 横軸に水分量を表示 「通常版」 は熱量400∼1600kcal、水分量1000∼2000mLの組合せで作成。 「腎不全版」 は水分制限が必要なため、水分量を600∼1600mLとしている。 版は±50以内) になるよう配慮 する。 Ⅴ 各処方欄にはNa、K、NPC/N の他、医師からの要望に応え ブドウ糖の量も掲載する。 提供:武田総合病院 薬局 にも組み込み、 熱量と水分量の組合せ 研修医からは「末梢静脈栄養版もあ から輸液処方を容易に参照できるよう ると有り難い」 との要望もあります。 にしました。 院内での活用状況に応じた 継続的な改訂が今後の課題 輸液メニュー表に対する院内の Ⅲの「輸液を容器から 抜く 作業」 を 今後の構想や抱負をお聞かせく ださい。 馬瀬 現状は、 脂肪乳剤の投与量・方 法については 参考 として輸液メニュー 表の欄外に記載していますが、医師か 排除したことは、効率的な調製のみな 評価はいかがですか。 らの問合せもあるので、 エネルギー源と らず、 コアリング防止など安全面におい 馬瀬 輸液メニュー表は研修医を含 しての脂肪乳剤をいかに輸液処方に ても有用といえます。 む医 師にも活 用してもらっています。 加えるかが、今後の検討課題です。 活用してもらう上で、 どのような 「輸液処方の設計方法を理解するのに また、熱量や水分量の区分もこれが 点を工夫されましたか。 好適」 「NPC/Nもよく考慮されている」 最適とは限りません。実際の活用状況 馬瀬 使用する状況を考慮し、三つ などの評価をいただいています。また と適正使用を勘案し、 より使いやすく 折りのポケット版と、A4サイズ版の2種 類を用意しました。 写真 改訂していきたいと思います。 医師など病院スタッフの要望を聞き ポケット版は医師や薬剤師、管理栄 つつ、必要とされるツールの積極的な 養士などに携帯してもらうもので、畳ん 提案や、医薬品の適正使用の推進を だときに文字が折りの部分に重ならな していきたいと考えています。 いようにレイアウトを工夫し、 また、白衣 医療法人 医仁会 武田総合病院 のポケットに入れたときに破損しにくい 京都府京都市伏見区石田森南町28‐1 ようジャストサイズとしました (写真) 。 開 設:1976年 病院長:森田陸司 病床数:500床 診療科目:21科 薬剤師数:22名 A4サイズ版は、パウチ加工して各 病棟に掲示してもらい、 スタッフがいつ でも閲覧できるようにしています。 更に、輸液メニュー表は電子カルテ ポケットサイズ版は、 白衣の胸ポケットからはみ出て 破損しないよう、 サイズに留意した。 〈2015年4月現在〉
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