医界サロン「何事もいいように解釈を」

 私の趣味は鮎釣りである。毎年、5∼10月末
った川のベスト3に入る位、水質、釣れる鮎の
まで、 毎週のように釣行する。 シーズン初め
コンディションが良い」とベタ褒めした。
は、和歌山県有田川、そして奈良県天川村、東
これを契機に平日、 休日を問わず、 天川村
吉野村、上北山村の川で、シーズン後半は和歌
は、大賑わいである。
山県熊野川や日置川で釣る。まれに兵庫県揖保
しかし、昔からの常連さん達は、のんびりし
川にも出かける。
た釣りを楽しめず、今では釣る場所がないくら
ホームグラウンドは天川村である。
いだ。今年は私も、天川村をあきらめ、東吉野
今年はTV釣りビジョンで、天川村の鮎釣り
村の高見川に釣行することも多くなった。
が放送され、プロ鮎釣り師が、「私が今まで行
ただ、天川村としては、釣り客が増えること
何事もいいように解釈を
広報委員
梅山 雅祥
は、 村が潤うことであり、 良いことなのであ
私は昔から楽観的な考えをよくする。悪いこ
る。そうなると、更に漁協組合は頑張って翌年
とも、いいように解釈して今まで生きてきた。
もたくさん釣れるように放流してくれるのだ。
嫌なことも、くよくよして思いつめてもしょう
その天川村も昔と比べると(私が小学生頃の
がないと思う。
約40年前) かなり様変わりした。砂利道はすべ
現在53歳の私も、51歳の時に大腸がん、膵臓
て舗装され、大きなトンネルもでき、誰でも簡
がんが同時に見つかり、手術を受け、今も治療
単に行ける。川沿いにはオートキャンプ場が20
中である。
個もでき、夏休みは子ども連れで満員になる。
がんが分かった時点では、「自分も患者と同
バシャバシャ泳いだり、石を投げたり、ゴムボ
じ一人の人間なので、がんになってもしょうが
ートで流れてきたりして楽しそうである。昼頃
ない」 と思った。人間いつかは死ぬ。それが少
になるとバーベキューのいい香りがしてきて、
し早いか遅いかの違いだと思う。がんや死に対
お腹も鳴る。
する恐怖は全くない。勤務医時代に多くのがん
普通の釣り人であれば、釣っている横でその
患者を看取ったことも要因だと思う。
ようなことをされれば釣れないと怒って、釣り
これからも生きるだけ生きて、患者さんのた
場を変えてしまうが、私にとっては有難いので
めに治療し、最後が来れば、それで終わりと割
ある。つまり、そのような場所の鮎は、ずっと
り切っている。
保護されるのである。実際、夏休みも終わり、
今年の9月も元気なら、天川村で大鮎を釣っ
静かになった9月には、そういう場所では大鮎
ていると思う。
がたくさん釣れるのである。
大阪府医師会報10月号
(vol.388)