巻頭言 - 全国老人保健施設協会

巻 頭 言
シルバーエイジの介護力
全老健常務理事、社会医療法人慈薫会介護老人保健施設大阪緑ヶ丘理事長
河﨑茂子
6 月26 日、東京プリンスホテル(東京・港区)
において、
「公益社団法人全国老人保健施設協会 るためには課題もある。人材確保である。今回の
総会でも和歌山県の会員から問題提起があった。
第 4 回定時社員総会」が開催された。議事は、い
つものごとく淡々と進められた。しかし、私が疑
問に思ったのは、全国から会員が集まる社員総会
発言の内容は、外国からの雇用問題や老健連盟の
強化あるいは組織力のアップ等、至極もっともな
内容であった。人材不足は、介護・医療現場に
において、平成27 年 5 月時点で62%(791 施設、
n=1,271 施設/全老健調査による)を占める従
来型の老健施設の立場からの声が皆無だったこと
である。
今回の介護報酬改定では、国はすべての介護
サービスの基本報酬を引き下げた。大規模施設や
その他の介護保険事業者が大きな打撃を受けたの
は事実である。入所定員100 名の従来型の老健施
設の年間収入を試算すると、1,000 万円を超える
減収になるという。このことを全国の老健施設は
どう受けとめているのか。ただ、あきらめている
のか。現在、在宅復帰支援に向けて努力をしてい
るところなのか。ぜひ声を聴きたいところである。
全国的にみて、在宅復帰が難しいケースには、
さまざまな理由がある。地域的な構造的事情があ
るのか、あるいは、老健施設自身の事情を抱えて
いるのか。その辺のところをもっと深く掘り下げ
て考えてみることが必要であろう。
とっては、避けて通れない問題となっている。
私見ではあるが、国はなぜ、定年後の男性の力
に目を向けないのか疑問に思う。ともすると「女
性の登用」や「女性力の活用」ばかりが目にとま
り、耳に入る。リタイアしてもまだまだ働き盛り
にある「男性力」をもっともっと活用していただ
きたいと、常々考えている。豊富な経験を持ちな
がら、知力・体力・能力も十分な「男性力」の活
用は、介護の領域にとっても大きな戦力になるこ
とが期待できる。人生90 年の時代にあって、
「定
年を迎えたら、すぐに現役を退いて穏やかに暮ら
したい」と思う人ばかりではないはずだ。
こうした方々にもっと介護の領域に目を向けて
いただき、
「定年後の何年かは高齢者介護に携わ
る制度」を、国を挙げて考えてはどうだろう。例
えば、現在、定年退職予定者を対象に行われてい
る「年金」や退職後の「医療保険」等の説明会に、
「介護領域での就労」の内容を加えることも一法
東憲太郎会長の時代になって老健施設の多様化
が進んだ。制度創設時には、
「病院から自宅に帰
る間の中間施設」という考え方であった。しかし、
いまは「病院から老健施設へ」という一方通行だ
である。日々の高齢者介護を支える業務は多岐に
わたる。その業務をもう一度見直し、安全とサー
ビスの質の担保に配慮しつつ、定年後の「男性
力」を導入する。
けでなく、
「在宅から老健施設へ」という双方向
性の流れができている。さらには、ショートステ
そうすることで、老若男女すべてが自らの老後
に目を背けることなく、真に高齢者に優しく、暮
イやデイケア、訪問リハビリを活用した在宅支援
にも大いに力を発揮している。
老健施設は時代の求めに上手く適合し、自らが
努力することによって、その姿を国民が期待する
らしやすい社会を築けるのではないだろうか。シ
ルバーエイジの介護力活用計画ともいうべき取り
組みを、積極的に展開するべきときがまさに到来
している。
形に変化させてきている。すばらしいことである。
しかし、こうした老健施設が力を十分に発揮す
私たち老健施設は、国と協力して、国民に真に
求められる老健施設をめざして進んでいきたい。
老健 2015.9 ● 5
005巻頭言(三)0805.indd
5
2015/08/05
12:46:50