テーマ お金 こ づか つか キミはお小 遣 いをもらうと、すぐに 使 っちゃうほ ちよきん う? それとも、ちゃんと 貯 金 するタイプかな? こんしゆう テキスト版 かね い か かんが 「お 金 」について 考 えてみよう。 執筆/柳田理科雄 1 わたし 今 週 は、 私 たちが生きていくうえで欠かせない に ほん 制作/空想科学研究所 提供/栄光ゼミナール かね 日本にはどのくらいのお金がある? かね せいかつ か よ なか かね お金は、生活に欠かせない。世の中には、どのくらいのお金があ るのだろう。 すこ ふる ねん に ほん つか さつ 少し古いデータだが、2009年に日本で使われていたお札とコ まいすう きんがく つぎ インのおよその枚数と金額は、次のとおりだ。 お札とコインの種類 枚数 金額 1万 円 札 70億 7000万 枚 70兆 7000億 円 5千 円 札 5億 4000万 枚 2兆 7000億 円 2千 円 札 1億 1000万 枚 2200億 円 35億 8000万 枚 3兆 5800億 円 39億 枚 1兆 9500億 円 101億 8000万 枚 1兆 180億 円 50円 玉 43億 4000万 枚 2170億 円 10円 玉 199億 2000万 枚 1992億 円 5円 玉 115億 1000万 枚 575億 5000万 円 1円 玉 398億 4000万 枚 398億 4000万 円 千円札 500円 玉 100円 玉 合計 約 1000億 枚 さつ まい に ほん しゆるい かね 日 本 にはいろいろな 種 類 のお 金 はつこうまいすう があるけど、発 行 枚 数はそれぞれ ちが 違うんだね 約 81兆 円 かぞ とし に ほん お札もコインも「1枚」と数えると、この年、日本では、およそ おくまい かね つか おお 1000億枚のお金が使われていた。そのうちいちばん多いのは、 えんだま まいすう やく おくまい ぜんたい ほか かね くら 1円玉だ。枚数は約400億枚で、全体の40%だ。他のお金と比 えんだま ばい えんだま ばい えんだま やす べると、10円玉の2倍、100円玉の4倍。1円玉は、安いもの か たか か つか まいすう を買うときも、高いものを買うときも使うので、たくさんの枚数が ひつよう 必要なのだ。 さつ おお まんえんさつ おくまい お札のなかでいちばん多いのは、1万円札だ。およそ71億枚で、 せんえんさつ ばい せんえんさつ ばい たか か 千円札の2倍、5千円札の13倍もある。これは、高いものを買う まんえんさつ ひつよう ときは、1万円札がたくさん必要だからだ。 きんがく ごうけい ちようえん たか 金額の合計は、およそ81 兆 円。いちばん高いのは、もちろん1 まんえんさつ ちようえん ぜんたい 万円札で、71 兆 円。これは、全体の88%にあたる。 1 今日の1日1科学 に ほん かね やく おくまい 日本にあるお金は約1000億枚 かね 2 なに お金は何でできている? か えん えん つか ジュースを買うとき、10円や100円などのコインを使うよね。コ なに インは何でできているのだろうか? しゆるい きんぞく コインは5種類の金属でできている。 しやしん だいどころ まず、アルミニウム【写真①】 。台 所 にあるアルミはくも、これ でできている。 つづ どう しやしん しやしん きんぞく めずら あかちやいろ いろ 続いて、銅【写真②】 。金属には 珍 しく、赤茶色の色がついてい でん き とお でんせん 【写 真①】アルミホイル つか る。電気をよく通すので、電線に使われる。 ばん め あ えん しやしん おな ぎんいろ どう 3番目が、亜鉛【写真③】。アルミニウムと同じように、銀色だ。銅 あ えん ま きんぞく しん よ と亜鉛を混ぜた金属は「真ちゅう」と呼ばれ、トランペットなどの きんかんがつ き しん つく しん えい ご 金管楽器は真ちゅうで作られる。真ちゅうは英語で「ブラス」とい きんかんがつ き おんがくたい う。だから、金管楽器の音楽隊をブラスバンドというのだ。 ばん め すず しやしん ぎんいろ ひく おん ど と どう 4番目が、錫【写真④】 。やはり銀色だが、低い温度で溶ける。銅 すず ま しやしん どうばん 【写 真②】銅 板 どうぞう と錫を混ぜたものは、ブロンズという。銅像は、これでできている ぞう ので、ブロンズ像ともいう。 さい ご ぎんいろ きんぞく つよ た きんぞく うす 最後が、ニッケル。銀色の金属で、さびに強いので、他の金属に薄 かぶ つか じゆうでん かんでん ち きよく く被せる「メッキ」 に使われる。 また、充 電できる乾電池のプラス 極 つか にも使われる。 えんだま じゆんすい しんぴん 1円玉は、純 粋なアルミニウムでできている。だから、新品の1 えんだま おな ぎんいろ しやしん あ えんばん 【写 真③】亜鉛 板 円玉は、アルミニウムと同じ銀色をしている。 えんだま どう あ えん ぎんいろ あ えん ま しん どう あかちやいろ 5円玉は、銅と亜鉛を混ぜた真ちゅうでできている。銅は赤茶色 ちゆうかん うす ちやいろ で、亜鉛は銀色なので、 中 間の薄い茶色になっている。 えんだま どう ごうけい あ えん すず 10円玉は、95%の銅と、合計5%の亜鉛と錫でできている。 あ えん すず りよう すく えんだま どう いろ あかちやいろ 亜鉛と錫は 量 が少ないので、 10円玉は銅の色そのままの赤茶色を している。 えんだま えんだま どう 50円玉と100円玉は、75%の銅と、25%のニッケルでで りよう すく ま しやしん すず よう き 【写 真④】錫でできた容器 ぎんいろ きている。ニッケルは 量 が少ないが、2つが混ざると、銀色になる。 えんだま どう あ えん 500円玉は、銅72%、亜鉛20%、ニッケル8%でできてい えんだま えんだま くら ちやいろ いろ る。50円玉や100円玉に比べると、茶色がかった色をしている。 ふ つう きんぞくせいひん つく かね かね つく 普通の金属製品を作るのに、お金がかかるように、お金を作るに かね えんだま つく ひ よう まい えん もお金がかかる。1円玉を作るのにかかる費用は、1枚あたり3円 といわれる。 2 今日の1日1科学 えん つく えん 1円を作るには3円かかる かね へん か お金は変化する? 3 かね おな つか かね か ち お金は、 ずっと同じものが使われているわけではない。 お金の価値 じ だい た ひく つく は時代が経つと低くなるし、ニセモノを作られないために、ときど か ひつよう き変える必要があるからだ。 ぼく こ みぎらん しやしん さつ たとえば、僕が子どものころには、右欄の【写真①】のようなお札 いろ せんえんさつ に み ご ひやくえん か があった。色は千円札に似ているが、よく見ると「五 百 円」と書い むかし えん さつ えが てある。そう、昔 は500円のお札があったのだ。描かれているの めい じ い しん かつやく いわくらとも み えんさつ は、明治維新で活躍した岩倉具視だ。また、100円札もあった。 じ ゆうみんけんうんどう かつやく いたがきたいすけ しやしん むかし えんさつ 【写 真①】 昔 の500円 札。い せんえんさつ に まの千 円 札に似ているね えが こちらには、自由民権運動で活躍した板垣退助が描かれていた。 いま さつ むかし せんえんさつ じんぶつ えが ひと ちが いま 今あるお札も、昔 は描かれている人が違っていた。たとえば、今 さいきんがくしや の ぐちひで よ まえ しようせつ か の千円札の人物は、細菌学者の野口英世だが、その前は 小 説家の なつ め そうせき まえ しよだいそう り だいじん い とうひろぶみ まえ しようとくたい し 夏目漱石、その前は初代総理大臣の伊藤博文、その前は 聖 徳太子だ った。 か えんだま えんだま しやしん みぎ コインで変わったのは、100円玉と、50円玉だ。 【写真②】の右 ま なか ふる えんだま えんだま ひ かく ひだり いま と真ん中が、古い100円玉と50円玉だ。比較のために、左 に今 えんだま えんだま なら の100円玉と50円玉も並べてある。 いま えんだま しやしん どう むかし 今の100円玉は、銅とニッケルでできているが、 昔 の100 えんだま ぎん どう あ えん こう か ぎん つか 円玉は、銀と銅と亜鉛でできていた。高価な銀が使われているとい むかし えん か ち たか むかし えんだま 【写 真②】 昔 の50円 玉、10 えん げんざい えんだま 0円玉と現 在の50円 玉、100 えんだま 円玉 うことは、それだけ 昔 は100円の価値が高かったということだ。 えんだま いま えんだま おお あな あ そして50円玉は、今の50円玉より大きく、穴の空いているも あ じゆんすい のと、空いていないものがあった。どちらも 純 粋なニッケルででき じゆんすい じ しやく いま えんだま ていた。純 粋なニッケルは、 磁 石 にくっつく。 だから、 今の50円玉 じ しやく むかし えんだま じ しやく は磁 石 にくっつかないが、昔 の50円玉は、磁 石 にくっついた。 今日の1日1科学 むかし えんだま じ しやく 昔 の50円玉は磁 石 にくっついた かね 4 じ ゆ みよう お金にも寿命がある? おお ひと つか かね やぶ す へ ふる 多くの人が使ううち、お金も破れたり、磨り減ったりする。古く かね なったお金はどうなるのだろうか? かみ さつ じゆみよう みじか まんえんさつ じゆみよう ねん ねん 紙でできたお札は、 寿 命 が 短 い。 1万円札の寿 命 は3年~4年、 せんえんさつ せんえんさつ ねん ねん い せんえんさつ せんえんさつ じゆ 千円札と5千円札は1年~2年と言われる。千円札や5千円札の寿 3 みよう みじか まんえんさつ つか ふる さつ 命 が 短 いのは、 1万円札よりよく使われるからだ。 古くなったお札 あたら さつ こうかん き きざ は、 新 しいお札と交換されて、バラバラに切り刻まれる。 きんぞく さつ じゆみよう なが きず 金属でできたコインは、お札より寿 命 が長いが、それでも、傷が へ ふる と あたら ついたり、すり減ったりする。古くなったコインは溶かされて、新 ざいりよう しいコインの材 料 になる。 つく せいぞうねん はい コインには、いつ作られたかという「製造年」が入っている。こ み なが つか れを見れば、 そのコインがどのくらい長く使われてきたかがわかる。 ぼく さい ふ はい ふる えんだま 僕の財布のなかに入っていたなかで、いちばん古い100円玉の せいぞうねん しよう わ ねん ねん ねん つか 製造年は 昭 和48年。これは1973年だから、42年も使われて えんだま しよう わ ねん ぼく おな ねんれい えんだま いる。10円玉は 昭 和36年。僕と同じ年齢だ! ねん ねん かね しよう わ 5円玉は 昭 和 はたら つか 29年。もう61年もお金として 働 いてきたわけだ。お疲れさまで ぼく おな なが これが僕と同じくらい長くがんば えんだま たが っている10円 玉です。お互い、 つか お疲れさま! す。 今日の1日1科学 さつ じ ゆみよう なが コインはお札より寿 命 が長い い つ しよう かせ かね 一生に稼ぐお金は、どのくらい? 5 ひと いつしよう かね かせ 人は、一 生 にどのくらいのお金を稼ぐのだろうか。 ひと いつしよう かせ かね へいきん しようがいちんぎん 人が一 生 のあいだに稼ぐお金の平均を「 生 涯賃金」という。2 ねん ちよう さ おく まんえん おくえん 014年の 調 査では、1億9910万円。およそ2億円だ! かね まんえんさつ まんまい これは、どのくらいのお金なのだろうか。1万円札にして2万枚。 まんえんさつ あつ ひと いつしよう かせ かね 1万円札は厚さが0.1㎜だから、人が一 生 に稼ぐお金をすべて1 まんえんさつ つ あ たか ふ つう 万円札にして積み上げると、高さは2000㎜=2mになる。普通 おとな しんちよう たか えんだま では、1円玉にすると、どうなるのだろう? とうぜん おくまい ひと いつしよう えん かせ 人は一 生 に2億円も稼ぐのだ。 の大人の身 長 より高い! えんだま おくえんぶん えんだま 2億円分の1円玉 あつ おくまい すごいね! がんばってるよね! つ とは、当然、2億枚だ。1円玉は厚さが1.5㎜なので、2億枚を積 かさ たか おく まん たか み重ねると、高さは3億㎜=30万m=300㎞。高さが100㎞ こ くうかん う ちゆう よ にんげん いつしよう かせ かね を超える空間は、宇 宙 と呼ばれるから、人間が一 生 に稼ぐお金を えんだま つ あ う ちゆう とど 1円玉にして積み上げると、宇 宙 に届くということだ! にんげん 人間が はたら 働 くって、すごいことなのだ。 今日の1日1科学 おくえん えんだ ま う ちゆう とど 2億円の1円玉は宇 宙 に届く 4 せ 6 かい たか さつ 世界でいちばん高いお札 に ほん やす かね えんだま たか まんえんさつ 日本でいちばん安いお金は1円玉で、いちばん高いのは1万円札 ほか くに かね だ。他の国のお金は、どうなっているのだろうか。 せ かい つか たか かね みぎらん いま世界で使われているなかで、いちばん高いお金は、右欄の しやしん せん さつ げんざい えん 【写真①】にあるスイスの千フラン札だ。現在、1フランは125円 まん えん としだま ぐらいなので、 なんと12万5千円! うれ お年玉でこれをもらったら、 しやしん せん し へい 【写 真①】スイスの千フラン紙幣。 せ かいいちこう か さつ 世界 一 高価なお札だ としだま 嬉しいだろうなあ。スイスにお年玉はないけど。 えん かんが だが、1フランが125円となると、考 えたくなる。スイスにも えん やす か ひと 125円より安いものはあるはずだが、それを買うときスイスの人 した はどうするのだろう。スイスには、フランの下にサンチームという かね たん い お金の単位がある。100サンチームで1フランだ。 せ かい かね たん い した やす かね たん い 世界にはこのように、1つのお金の単位の下に、安いお金の単位 くに ゆうめい がある国がたくさんある。有名なのはアメリカのドルで、1ドルが 100セントだ。 に ほん えん やす かね たん い むかし いまの日本には、円より安いお金の単位はないが、昔 はあった。 せん せん えん しやしん ねん それは「銭」で、100銭で1円だった。 【写真②】は、1936年 つく せんぎん か えん はんぶん か ち りつ ぱ に作られた50銭銀貨だ。1円の半分の価値なのに、こんなに立派 ころ えん いま か ち たか なコインだったのは、その頃の1円は、今より価値がずっと高かっ たということだ。 しやしん せんこう か えん 【写 真②】50銭 硬貨。いまの1円 はんぶん か ち りつ ぱ の半 分の価値なのに、立派なコイ ンだね 今日の1日1科学 せ かいいちたか さつ か ち まん えん 世界一高いお札の価値は12万5000円 やなぎ た り か お へんしゆうこう き 柳 田理科雄の編 集 後記 ぼく はじ としだま しようがく ねんせい そ ぼ とし 僕が初めてお年玉をもらったのは 小 学1年生のときです。祖母がくれたお年 だまぶくろ えん はい い えんだま こ 玉 袋 には300円が入っていました。と言っても、100円玉が3個コロンと はい ほんぶん しようかい えんさつ まい はい 入っていたのではなく、本文の3で 紹 介した100円札が3枚も入っていたの ころ えん しようがく ねんせい えん たいきん です。その頃は、パンが20円ぐらいで、小 学1年生にとって300円は大金 ぼく えん なが き おく でした。僕はいつまでも、その300円を眺めていた記憶があります。いまも、 えんさつ まい おも だ かね たいせつ き も あの100円札3枚を思い出すと「お金を大切にしよう」という気持ちになり ます。 5
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