カペシタビンが HER2 陰性・術前化学療法後の腫瘍残存乳がん患者の

2015 年 12 月 11 日
報道関係各位
カペシタビンが HER2 陰性・術前化学療法後の腫瘍残存乳がん患者の予後を改善
- HER2 陰性乳がんにおける術後カペシタビンの有効性の臨床試験結果を発表 -
乳がんの臨床研究事業を手がけるJBCRG(Japan Breast Cancer Research Group;東京都 中央区)は、
CREATE-X(JBCRG-04)「術前化学療法、原発巣手術施行後、病理学的に腫瘍が残存している乳がん患者を
対象にした術後補助療法における Capecitabine 療法の検討-第Ⅲ相比較試験-」で、HER2 陰性乳がん患者の
術後カペシタビンの有効性について、プロトコール規定に基づく登録終了 2 年後の中間解析を実施したところ、
術後カペシタビン投与群の DFS(無病生存期間)
、OS(全生存期間)が、ともにコントロール群(標準的な治
療)に比べ優位であることが確認されましたので発表いたします。
この結果は、米国テキサス州サンアントニオで開かれた San Antonio Breast Cancer Symposium 2015 に
て、2015 年 12 月 9 日に、JBCRG創設者であり一般社団法人JBCRG上席理事である、戸井 雅和 教授
(京都大学大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学)より口演発表 1)されました。本試験はKBCSG
(Korean Breast Cancer Study Group)、KCSG(Korean Cancer Study Group)との国際共同臨床試験と
して実施されたものです。
【DFS(無病生存期間)】
術後カペシタビン投与群:DFS(3 年)82.8%、DFS(5 年)74.1%
コントロール群:74.0%、67.7%に対し、30%の改善効果(HR=0.70)
【OS(全生存期間)】
術後カペシタビン投与群:OS(3 年)94.0%、OS(5 年)89.2%
コントロール群:89.2%、83.9%に対し、40%の改善効果(HR=0.60)
術前化学療法後の腫瘍残存(non-pCR)は完全消失(pCR)の場合に比べて予後が不良であることはわかっ
ていましたが、これまで、適切な化学療法の追加の是非は未解決であり、重要な課題でした。
乳がん全体のおおよそ 80%を占める HER2 陰性浸潤癌の患者さんの約半数が、手術の前もしくは後に化学
療法を受けています。術前化学療法を受けた場合、そのうち約 70%が、手術後も浸潤癌の遺残が認められる
non-pCR です 2)。本発表は、術前化学療法の結果に応じてカペシタビンの追加を検討することが、HER2 陰性
浸潤癌の患者さんの予後を改善する可能性を示しました。この結果は、今後、多くの乳がん患者さんの利益に
つながると期待されています。
本臨床試験にご参加いただいた患者さんおよびご家族の方々、各医療機関のメディカルスタッフの皆様のご
尽力、ご協力に心より御礼申し上げます。JBCRGは、今後も臨床研究運営を通して日本の乳がん治療成績
向上を目指し、明日の医療がよりよいものとなるよう邁進する所存です。今後とも当法人の研究活動に倍旧の
ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2015 年 12 月 11 日
CREATE-X (JBCRG-04)試験概要
◆研究代表者
増 田 慎 三(国立病院機構大阪医療センター 外科・乳腺外科)
戸 井 雅 和(京都大学大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学)
◆研究組織
JBCRG(Japan Breast Cancer Research Group)
◆共同研究組織
KBCSG(Korean Breast Cancer Study Group)
KCSG(Korean Cancer Study Group)
◆調査目的
術前化学療法、原発巣手術を施行後、病理学的にがん細胞の残存が確認された乳がん症例を対象に、術後補助療法
としての Capecitabine 単独療法の有効性、安全性を、Capecitanibe 無加療を対照として検討する。またその医療
経済性についても検討を実施する。
◆調査方法
中央登録方式による日韓共同、多施設共同無作為化比較試験。
参加施設数:日韓の乳がん医療機関 84 施設(日本 62 施設、韓国 22 施設)
◆調査対象
術前化学療法、原発巣手術を施行後、病理学的にがん細胞の残存が確認された HER2 陰性乳がん症例(non-pCR 症
例)の患者 910 名(日本:606 名、韓国:304 名)
◆調査期間
症例登録期間:2007 年 2 月~2012 年 7 月/追跡調査期間:最大 5 年間
本試験は特定非営利活動法人先端医療研究支援機構(NPO-ACRO)の研究助成および、企業・団体・個人の方々か
らのJBCRGへの任意のご寄付により運営されました。
◆出典
1) Lee SJ. et al.: A phase III trial of adjuvant capecitabine in breast cancer patients with HER2-negative pathologic residual invasive disease after
neoadjuvant chemotherapy (CREATE-X, JBCRG-04). SABCS2015. SY1-07. Dec 9.2015
2)Kuroi K. et al.: Prognostic significance of subtype and pathologic response in operable breast cancer; a pooled analysis of prospective neoadjuvant
studies of JBCRG. Breast Cancer, 2015 Sep;22(5):486-95.
〔本件に関するお問い合わせ〕
一般社団法人JBCRG(http://www.jbcrg.jp)
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