も・子育て会議」が開かれ,その中で細かな施策 が詰められてきた。 現在

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TEI S EI
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2 0 1 4 年 9 月1 7 日
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保育所入所基準と待機児童問題
も・子育て会議」が開かれ,その中で細かな施策
とったときに上の子が保育所をやめる必要がなく
が詰められてきた。
なるし(保育を必要としているから),仮に仕事
現在のところ,新制度の概略は以下のように
を途中で辞めても,子どもは認定こども園をやめ
なっている。
る必要がない。利用している側から見ると,入所
まず,児童福祉法の自治体の保育実施義務を規
条件が緩和されたことになる。
定した児童福祉法第24条について,民主党政権時
今回の新制度では,保育所や幼稚園,認定こど
代に「必要な子どもにサービス・給付を保障する
も園に入園・入所する際,市町村から条件と希望
責務」「質の確保されたサービスの提供責務」な
に応じた認定証を受け取るのだが,「現在仕事を
ど,
「責務」という言葉が使用され,取りように
探している」
「新しい仕事のために 勉 強 中」と
よっては努力義務的な意味合いに変わる提案がさ
いったことも,保育所の入所条件に入れてよいこ
れた。しかし,このことに対する社会からの批判
とになる。これらは「保育を必要とする」規定へ
もあって,自公連立政権に代わってからは,
「責
の変化がもたらした,入所条件の緩和策と言える。
務」ではなく「義務」であることを明確にするた
さらに,待機児童問題の解決のため,新制度で
めに,第24条の「保育しなければならない」規定
は20人未満の小規模保育(6人から19人で乳児の
をそのまま残すことになった。この実施義務の履
み),保育ママが行う家庭的保育(1人から3人,
行を私立の保育所に委ねることとなったので,制
補助者がつけば5人まで),「居宅訪問型保育」
度上,私立の保育所についてはこれまでと基本的
(いわゆるベビーシッター),それと事業所内の保
に変わらないことになった。他方で,保育所の利
育所にも認可制度が適用され,国と自治体から給
用者枠を拡大するために「保育に欠ける」規定を
付費が配られることになっている。こうした小規
「保育を必要とする」規定に変更することとした。
模だが親密的な保育施設が増えることになれば,
変更された児童福祉法の第24条,第39条には「保
待機児童問題も大きく解決の方向に向かうことが
育を必要とする」という文言が使われているが,
期待される。この新制度には,消費税の値上げ分
この規定は実際に新制度が予算を伴って具体化さ
から7,000億円を充当することになっているが,
れるまでは施行しないと決められたので,2014年
40万人分の受け皿を増やすための整備など「量の
度現在の児童福祉法では,これまでの「保育に欠
拡充」にほぼ4,000億円が費やされる予定である。
ける」という言葉がそのまま使われている。実際
本格実施は2015年からになる。
に新規定が有効になるのは2015年4月1日からの
予定である。
以上のような概略であるが,認定こども園への
移行を促すこと,小規模保育などの多様な事業の
また,子ども・子育て関連3法の成立で,幼稚
支援を厚くしてこれを増やすこと,幼稚園の預か
園機能と保育所機能を併せもつ認定こども園の設
り保育を幼稚園型一時預かりにして補助金を増や
置や維持が簡便になり,幼保連携型以下4つの類
すこと等によって,待機児童を解消することが目
型の認定こども園がこれから広がることが期待さ
標である。安倍政権はさらに数十万人の待機児童
れている。改正された認定こども園法には第3条
解消を方針としているが,それにはこれだけの財
に幼保連携型以外の認定こども園についても記さ
政支援ではとうてい足りないであろう。と同時
れているが,ここでも「当該施設が保育所等であ
に,これまで定員を弾力化することで増やしてき
る場合にあっては,保育を必要とする子どもに対
た結果として,保育環境・条件が以前よりも悪化
する保育を行うほか…」と「保育を必要とする」
しているとも言われる状況をどう克服するのか,
規定になっている。
長時間保育が増えている中で子どもの育ちを保障
こうした新規定が通用するようになれば,本論
の冒頭で紹介したような母親の場合でも,育休を
社会福祉研究
する保育ができるのか等々,課題も多い。今後の
動向をじっくり見守りたいと思う。
第120号