規制改革会議の目指す保育・介護改革のビジョン

規制改革会議の目指すべき保
育・介護改革のビジョン
東京学芸大学
鈴木 亘
第2次答申の概要(介護分野)
• 2次答申抜粋参照
• ア)ケアマネージャーに係る報酬の見直し
• イ)介護予防通所介護・介護予防通所リハに
係る報酬の見直し
• ウ)指定事業所の基準の見直し
• エ)介護サービス情報の開示の推進
• 介護サービス情報の公表制度の見直し(改
善情報等)
• 第三者制度の推進
• オ)介護人材の養成と確保に係る対策の見
直し
• 介護人材の養成に係る対策の見直し(基礎
研修の効果検証)
• 介護人材の確保に係る対策の見直し(実態
調査)
保育分野
• ア)「認定こども園」の普及促進のための取り
組み
• イ)保育制度改革
• 直接契約・直接補助方式の導入
• 保育所の入所基準等に係る見直し(保育に
欠ける子)
• 入所選考にかかる情報開示の徹底
• 保育所の最低基準の見直し
• 保育所定員の見直し
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ウ)様々な保育サービスの拡充
保育ママの活用促進と要件緩和
ベビーシッター育児支援事業の運営適正化
病児・病後児保育サービスの拡充
放課後こどもプランの見直し
• 両立支援レベルアップ助成金に係る運用の
見直し
• 事業所内託児施設等の質の担保の徹底
介護分野の問題意識
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福祉分野として最も革新的な制度
市場メカニズム導入の試金石
契約制度
応益負担
在宅福祉分野は、社会福祉法人以外の法人
の参入自由化
• しかしながら、施設介護や介護報酬単価など
は福祉的発想のまま。
• 近年抱えている問題
• 保険料増加、財政的な維持可能性
• 擬似施設(有料老人ホームなど)に対するコ
ントロールが出来ずにいる。
• 施設の待機老人。
• 保険者ごとの裁量による過度な適正化
• c.f.家族がいる家事援助の使用不可、施設の
参入拒否、宿泊所の介護利用不可、コムスン、
自治体ごとに変わる適正化
• ヘルパー不足の問題
• ケアマネ不足、質の低下問題
• これらの問題が起きる原因は、市場メカニズ
ムの不徹底と、措置時代への逆行的政策に
ある。
• ヘルパー不足・・・景気回復と少子高齢化に
よる人手不足により、市場賃金が上昇してい
るのに対して、財政的要請から、介護報酬単
価が引き下げられたことが原因。介護報酬単
価が市場メカニズムを拒否したものになって
いることが原因。
• コムスンなどの不正の背景にもこの問題があ
る。
• 保険者ごとの裁量・・・保険料上昇を防ぐこと
が目的であるが、①自治体間の負の競争が
働くために、過度な抑制となっている、②割当
や窓口規制という昔ながらの行政手段で、市
場メカニズムとは逆行。行政リスクが高いた
めに、魅力のない市場になりつつある。
• 一方で、有料老人ホームやその他の様々な
形態の擬似施設は、規制の網がかかりにくい
状態で、ダブルスタンダードとなっている。
改革の方向性
• 財政問題と市場化を切り離す。介護市場が
広がることは良いことである。一方で、財政問
題は負担の限界があるのであるから、公的
負担の範囲は上限を決める。
• その上で、市場メカニズムを徹底させる。
• 介護保険事業計画などの社会主義的発想は
やめる。
• 介護報酬単価は市場で決まるように自由化
すべきである。少なくとも、市場実勢に合わせ
たフレキシブルな改定を行なうべきである。
• 財政的な両立のための「混合介護」の導入。
• サービスに応じて、自由価格にするが、介護
保険給付は元の介護報酬単価に応じて決め
る。
• 自治体の裁量余地をなくし、ルールの透明性
を図る。
• 市場メカニズムが機能するように、情報公開
を進める。
• 施設介護の規制緩和を進める。
• その他、法人ごとに異なる競争条件をイコー
ルフッティングにする。
• 質の規制は、きちんと全ての介護法人に網を
掛けて実施する。
• 介護予防、改善、高品質化などのインセン
ティブ政策は補助金で行なう。
• 自治体間は、施設同様の広域調整が出来る
仕組みを作る。
• 財政問題については、3割負担化で当面対処。
• また、ドイツ並みに給付範囲を限ることも議論
の余地が有る。
• しかし、根本的な問題は財政方式(賦課方式
と、最初の世代への過度なディスカウントに
ある)。少子高齢化に対処できる財政方式で
はない。
• 積立方式化と、資産拠出化が基本的な考え
方。
厚労省の考え方
• ヘルパー不足は、資格高度化と人件費情報
の開示で対処。
• 混合介護は問題外。ケアマネに対しても報酬
自由化は反対。
• 質情報の情報開示も否定的。
• 介護報酬単価に対するインセンティブ付けの
改革(事業主のみの加算)も後ろ向き。
保育分野の問題意識
• 99年の児童福祉法改正は時期尚早。
• 市場メカニズムの導入が極めて不徹底であっ
た。
• c.f.選択性の導入。契約概念なしの措置の持
続。応益負担。認可と認可外というダブルス
タンダード。
• 現在有る問題点
• 待機児童問題
• 保育所間、子育ての形態で公的支援が非常
に異なる不公平の問題
• 両立化支援にはほどとおい内容(病児保育、
延長保育、休日保育)
• 低所得者、ワーキングプア、母子家庭などの
就労対策としても問題点
• 未就学児童に対する教育などの新しいテー
マにも対応不能。
改革の方向性
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•
•
市場メカニズムの徹底
直接契約方式の導入。補助金の公平化。
東京都の認証保育所がモデル。
応能負担から応益負担へ(低所得対策、障
害者対策等は別途行なう)
• 保育に欠ける子の要件を見直して、保育サー
ビスを受けたい人が、自由にサービスを購入
で切る制度に自由化。
会議の主張① 「保育に欠ける」要件の見直し
問題意識
児童福祉法(昭和22年制定)にうたわれている「保育に欠ける」という概念
標準的な家族の形
⇒
正
常
家族が保育
* 広辞苑・大辞林より
できない
「欠ける」:
家庭⇒「欠ける」*
完全なものの一部がこわれる。
また、そうして不完全になる。
損じる。
かわいそうな子
保護者の就労状況・形態の多様化、
社会・地域・家庭の状況が大きく変化
しているにもかかわらず、見直しが
されていない。
官が保育を
施す
共働き世帯数は、専業主婦世帯を上回り、
平成18年には53%に達している。
(男女共同参画社会白書平成19年度版より)
会議の提言
保育の対象を「保育に欠ける子」に限定している現行の要件を抜本的に見直し、
さまざまな様々な保育支援を必要としてる 子ども・保護者に、多様な保育サービスを
提供できる制度へと転換すべき。
認可保育所の入所基準
「保育所」の入所
保育所は、児童福祉法第24条で規定する「保育に欠ける児童」を保護者に代わって
保育する児童福祉施設。
【児童福祉法第24条 (要約)】
「市町村は、児童の保育に欠ける場合、保護者から申込みがあったときは、
児童を保育所において保育しなければならない。」
「保育に欠ける児童」の要件
【児童福祉法施行令第27条(要約)】
保護者が次のいずれかに該当し、保育ができ
ないと認められる場合
•
昼間の就労を常態としていること
•
妊娠中または出産後間もないこと
•
病気・けが、または心身の障害があること
•
同居の親族を介護していること
•
災害の復旧にあたっていること
•
その他、上記に類する状態にあること
(参考)入所手続き
・入所申込書に必要な書類を添付し、役所の
保育課等又は第1希望の保育所に提出
・申込書には第3希望まで書けるが、自治体ごと
に対応(第6希望まで、無制限等)
・入所できなかった場合は、自治体により差異は
あるが、概ね以下の対応
(1) 定員に余裕がないため入所できない利用者に
対しては、選考結果を文書で通知
(2) 入所申込書は申込みの日の年度中は有効で、
希望の保育所に受入枠が生じるごとに入所選考の
対象となる
保育・子育てをめぐる社会状況の変化
• 働く女性の増加(共働き世帯>片働き世帯)
• 雇用形態の変化(パート、アルバイト、派遣、深夜)と保育
ニーズの多様化(一時・深夜保育、病児・病後児)
• 子育て困難とすべての家庭への子育て支援の必要性(平成
18年度における児童虐待相談件数は全国で37,000件以上)
• 保育サービスへの多様な事業者の参入の萌芽(社会福祉
法人のみならず民間企業、NPOも)
• 子育て経験者等、地域の既存資源の潜在化
保育サービスの普遍化、量的拡大と多様化
質の向上につなげることが必要
会議の主張②
問題意識
利用者選択による直接契約方式等の導入
市区町村が、施設に対し入所児童を割り当て。
⇒ 施設間で切磋琢磨し、利用者本位でサービスを向上させようという
インセンティブが働きにくい構造になっている。
都市部を中心に、自治体独自の取組が行われている。直接契約を採用した先行事例
として、東京都「認証保育所制度」があり、待機児童の受け皿として一定の機能を
果たしている。
会議の提言
利用者が保育所を選択する直接契約方式等を導入する。
⇒ 施設が選ばれるための創意工夫をし、多様な保育ニーズに応じたきめ細かい
サービスの提供が行われるようになる。
※
低所得者層や虐待児等、配慮や緊急的対応を要するケースについては、直接契約・直接補助方式のもとでも十分に
対処可能であると考える。
都の「認証保育所制度」において、直接契約による利用者にとっての不都合や
問題が生じてないかを早急に検証すべき。
厚労省の意見
認定こども園の実施状況等を踏まえ、保育所において一体的に導入する
ことの可否について長期的に検討
認可保育所を直接契約方式にすると
現在の仕組み
申込み
改正後のイメージ
入所決定
市区町村
利用者
保育料徴収
要保育度に
応じた補助
市区町村
利用者
委託費
申込み
事業者
認定
入所決定
入所
情
報
公
開
保育料徴収
保育所
保育所
【特徴】
【特徴】
待機児童のいる地域では、利用者が
保育所を選べない
利用者が保育所を選べる
保育所側に「効率的で良いサービス」を
提供する意識が起こりにくい
多様な主体が参入し、競争で保育
サービスの幅も広がる
• 認定こども園は問題山積。これを規制や補助
金のあり方を自由化して、普及を図る。
• 低所得者、母子家庭、障害者などは直接補
助方式の中で、手厚い補助を出して対処する。
• 公立保育所のコスト問題は、自由化の中で解
決できる。
• 一方、病児・病後児保育は、外部性が発生し
ているので、もっと補助金を増額すべきであ
る。
•
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•
•
市場の競争条件整備のための規制緩和
保育士、保育ママの要件緩和。
最低基準、定員、調理施設など規制緩和。
様々な法人が参入・競争できるための実質的
な規制緩和
• 競争条件を公平にするためのイコールフッ
ティング
• 情報開示の徹底。
• 入所選考についても情報開示。
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•
•
•
財政問題の対処のためには、
①育児保険の創設
②年金積立金の活用
が考えられる。
学童保育についても、規制緩和。
• 認定こども園に代わるべき幼保一元化も。
• 公立保育所、幼稚園の夜スペ化も一案。
• 教育、特別保育に対しては適正料金徴収。
厚労省の考え方
• 直接補助・直接契約は、障害者や低所得者
が犠牲になるとの当初反論。
• 検証は、認定こども園で行なうが、数が少な
いので長期的に検証できない。
• 認証保育所は、東京都独自の認可外施設な
ので、対象外。
• 保育に欠けるも問題ない。一時保育の拡大
で対処。