ボランティアとの戦い 出版社との協業が無ければ、市場は作れない 2015 年 10 月 7 日 日本オーディオブック制作社協会 日本における視覚についての統計ですが、眼鏡白書によると、眼鏡を付けている日本人は 6000 万人いるそうです。恐らく、コンタクトレンズも含めての数字だと思います。狭義の 視覚障がい者、分かりやすく言うと、盲目(差別用語と捉えられている部分もありますが、 分かりやすくするために使用します。)の方については、障がい者手帳所持者は 30 万人と 言われています。 6000 万人と言うと、日本の人口が 1 億 3000 万人いるとされているので、その半分が視 力が弱いという事であり、本を読むのでは無く、聞くという代替効果の需要も見込めると考 えます。しかしながら、視覚障がい者 30 万人については、オーディオブックの市場は必ず しも明るいわけではありません。 それは、点字図書館という、文字を点字や録音図書という形で無償提供する図書館があり、 視覚障がい者向けの制作物に関して言えば、著作権法 37 条 3 項に基づき、文化庁長官から 指定を受けている団体が製作したものについては、著作者に印税などの支払いが免除され る項目があります。 日本国内では、DAISY(デイジー)と言う名称で録音図書のサービスがされており、サピ エという厚生労働省補助事業「視覚障害者情報提供ネットワークシステム整備事業」(事業 委託:社会福祉法人日本点字図書館)が、インターネット上で、視覚障害者に対して、録音 図書を提供しています。 日本点字図書館としては、法律を盾に出版社に印税を支払う事が無いのと、著作権法 37 条 3 項によると、特許などで言えば先願主義で、最初に作った所に権利が与えられる形と なり、その提供は有償・無償を問いません。二番手については、権利はありません。作った 物は廃棄になります。これの罰則についての項目は特に見られません。補足として、正常な 市場で二番手で作る分には問題はありません。正常な市場で一番手で作られた場合は、著作 権法 37 条 3 項を利用しての二番手は制作出来ません。 そのため、オーディオブックの普及は日本点字図書館に取っては良い事では無く、寧ろ好 ましく無い事と捉えているようです。なぜなら、オーディオブック制作会社は費用をかけて 物を作っているのであり、その費用を回収するために、適切な対価を求めます。 日本点字図書館としては、無償で働くボランティアがやっていた物が、時代の変化によっ て有償化される事で、視覚障害者のサービスが低下する事を恐れています。しかしながら、 マラケシュ条約が批准され、国内法が整備され、出版社が出版と同時に録音図書やオーディ オブックを作るとなると、著作権法を盾に、無償で作る事は出来なくなります。むしろ、法 律違反となり、日本点字図書館に何らかの罰が与えられる事になります。 視覚障害者向けのサービスは、視覚障害者以外は利用出来ないので、調査は出来ませんが、 ボランティアと言うと、所得が高い人が余暇を利用して行っている事が多いので、労働力無 料と戦うのは容易ではありません。 まともに戦う事になると、オーディオブック制作者も無償で働く事になり、オーディオブ ックからお金を取る事が出来ないなど、産業振興の妨げになると思います。 マラケシュ条約の批准によって、どのような形で国内法が整備されるべきか、協会として も関係省庁に具申を行い、情報提供や情報協力をし、市場形成に努めて参ります。 以上
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