≪巻頭言≫ 「ゆめもくば」に期待したいこと 広島大学大学院教育学研究科 教授 七木田 敦 先日、PC 内の写真を整理していたら、「おやこひろば『ゆめもくば』オープニングイベント」の写真が出てきました。 今は無き土与丸のスーパーの空き店舗で開催したオープニングイベントは、手作り感満載で、会場の最前列に 木馬が置かれていたのを記憶しています。撮影日時を確認すると、なんと 2002 年 10 月。そもそもの開所のきっか けは「愛子さま記念事業」だったのですね。いやはや、月日が経つのは早いものです。じっくり写真を見ていたら、い ろいろなことが思い出されます。 あれから 13 年。「子育て」を巡って、世の中はいろいろな変化がありました。「次世代育成支援」「ワークライフバラ ンスの充実」「子ども・子育て支援」等々。お題目はさまざま変わっても、「子育て支援」の本質は変わっていないと 思うのは私だけではないと思います。 それは、どこまでを「支援」して、どこから「自立」なのか、というものです。 ある子育て支援の関係者は、こう言います。「現代社会はさまざまなストレスに置かれている。子育てをする女性も、 その中で生きていくためには、昔と異なった支援が必要なのだから、母親が望む支援はすべて与えるべきだ」と。で も一方で、こういう声も聞きます。「こちらが支援してしまうことで、きちんと子どもを育てない親が、ますますサボれ る口実を与えるような気がして、子育て支援をすることが良いことなのか悪いことなのかと迷う」と。 この永久に解決されない問題のカギは何でしょうか。私はそこでなされている子育て支援が、「母親を楽にする」 だけでなく、「次の支援者」として育てているかどうか、にあるのではないかと思います。これは、そこでサービスを 受けた人全員が、次の世代への支援者になるということではありません。でも、その中の何人かは、次の母親に何 かを伝えるために支援者となる。少なくともそういう道筋を作っておく。こういう健全な経路があってこそ、「子育て支 援は親をダメにする」とは言わせない「支援」の仕組みができるようになると思います。 「ゆめもくば」に期待します。
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